仏は悩んでいた、破壊神が今にも復活しそうな緊迫した状況下で
このオラリオで勇者に相応しい人材が中々見つからないのだ。
「てか時間足りな過ぎでしょ~、いくら仏でもそんな簡単にスパッと勇者なんて見つけられる訳ないっつうの」
一人噴水広場に座り込んで、ブツブツと不満を漏らしながら仏は途方に暮れていると
そんな彼の隣にスッと一人の老人が馴れ馴れしく座って来た。
「ほほう、どうやらお困りのようじゃの」
「ええそうなんすよ、このままだと私ね、仏のクセに間接的に人二人を見殺しにしかねない状況なんすよ、ってあれ? あ! お前は!」
急に隣から話しかけられた老人にぼやきながら仏は振り返るとすぐに驚いた表情。
そこにいたのはこの辺では見かけない黄色い作業着を着こなし、頭にゴーグルを掛けた白髪の老人。
「よければこの江戸一番のからくり技師と称される、平賀源外の助言を与えてやっても良いのだぞ」
「で、出たー! またまた銀魂キャラー! もういい加減にしろって抗議殺到するよコレー!」
前回だけでなくまた性懲りもなく新キャラを投入して来た銀魂陣営に、仏は「どんだけこの世界に出てくるんだよお前等!」とツッコミながらも、ふと目の前に現れたその源外という男を見て「あれ?」とすぐに顔をしかめる。
「てかお前……あの金髪ホクロじゃない? すげぇ顔似てるんだけど?」
「え、なに金髪ホクロって? 俺、いや……私そんな人知らないけど? え? そんな似てるんすか? わしと?」
「似てるつうか本人だよね明らか、喋り方も原作じゃなくて実写版寄りだし、しかもよく見たら隣にさ、エリザベスもちゃっかりいるし」
「あ、ホントだー気が付かなかったー」
源外の顔付きは何処かで絶対に見たと確信出来るぐらいある男と酷似していた。
おまけに前回、仏が即座に中にいるのが誰なのか見破った謎の着ぐるみ珍獣・エリザベスもセットで座っている。
すると自分に気づいた仏に、エリザベスはひょいとプラカードを掲げて
『私の事は気にしないでください、仏、ここはまずメレ外さんの話を聞くべきです』
「ほら、メレってちょっと書きそうになってるじゃん、エリザベス、否、ヨシザベスもう完全にわかってるじゃん」
「いやーわし全く心当たりないんすけどねー、どうしたのエリザベス? 打ち合わせで出す予定だったプラカードと違うよ? 間違えないで、ここ大事なところだから間違えないで、アドリブとかまじいらないから」
『すみません、源ブさん』
「なに源ブって? 名前の響き的には超カッコいいけど読むとすげぇダサいから止めて」
もはや隠す気ないんじゃないかコイツ、と思いつつも自分も口調が素になっている事に気づいていない源外は、改まった様子で仏の方へまた振り返る。
「実はな仏、わしはこの町で、お前が求むちょいとした勇者候補を見つけたのじゃ」
「いや今更口調元に戻してももう遅いんだけど、って勇者候補見つけた? なにそれ仏的には超助かる情報」
「豊饒の女主人っていう飲み屋があるじゃろ?」
「ああはいはい、私的には結構トラウマあるけど知ってますよ、はい」
豊饒の女主人と言えば、色んな冒険者が集う人気のお店だ、仏は前に行って酷い目に遭わされたが、あそこには強者の名だたる冒険者達がよく通っている。
「あ、もしかしてその店で偶然滅茶苦茶強そうなお客さんを見つけちゃった的な?」
「ううんお客さんじゃない、あそこですげぇ無愛想に働いている店員さん、マジ強いから一回会って来てみ?」
「うわ、急に雲行きが怪しくなって来た……」
自分の推測にあっけらかんとした感じで首を横に振って答える源外に、仏はますます顔をしかめて嫌そうな表情。
あの店で無愛想に働いている店員と言えば、間違いなくあの万年むっつり顔の”彼女”だ。
「え~いや確かにこの私を一方的にボコボコにするやべぇ奴だけど……アイツ? あのむっつり貧乳娘? 勇者っつうかバーサーカーじゃね?」
「いやマジで保証するから、だってさっきその店で銀時達と飲んでたんだけど、あの我等が主人公の銀時をもう容赦なくボコボコにしたからね、ヤバいぞアイツ、マジ強キャラ」
「異世界に勝手に来てなにやってんのお前等? 私が言えた義理じゃないけどあまりこちらの方達を刺激しないでくれないホント?」
「うん、ホントにお前が言えた義理じゃないな」
どうやら銀時はまたどこかで騒動を起こしていたらしく、今度は自分をとっちめた店員がいる店で同じようにフルボッコにされてしまったらしい。
白夜叉と呼ばれ、戦争時代はブイブイいわせていたあの銀時であるが、早速異世界の洗礼を受けてしまったみたいだ。
「まあ仮にも元ジャンプ主人公を倒したのであれば……確かに戦力としては申し分ないし、果敢に強敵に挑むその勇気も捨てがたい、けどあのむっつりはなぁ、私の事すげぇ嫌ってるしなぁ~」
「まあダメ下で一回会うだけ会って見ればいいじゃろ、な、エリザベス」
『いいんですか? 彼女胸なかったですよ?』
「いやー勇者に胸とか必要ないでしょが、それ本人に言うなよ、ムラサキみたいにショック受けるぞ、おら仏、さっさと行ってこい」
「え~~~~なんかまたぶっ飛ばされそうで会いに行くのすげぇ怖いんだけど私……」
源外とエリザベスが所々別のキャラで喋っている光景をよそに
仏は頬に手を当ててしばらく悩む仕草をした後、仕方ないといった感じでため息をつくのであった。
「まあ、ね、時間も無いしやれるべきことはやっときましょうか……」
「てかお前等もう帰ってお願いだから、今すげぇ大事な所じゃん、なにこっちで遊んでんの?」
「バッカ遊んでんじゃねぇよ! これも仕事だよちゃんとした! なあエリザベス!」
『当たり前です、我々は決して異世界にいる巨乳を探しに来た訳じゃありません!』
「なるほど……ヨシヒ……君は着ぐるみ着てても馬鹿なまんまなんだね」
一方その頃、仏達がそんな会話をしているのも知らず、豊饒の女主人では店員の一人、シル・フローヴァがやや沈んだ表情でカウンターの前で突っ立っていた。
「ん~ホントにどうしちゃったのかしら……」
「シル、まだ彼はここに来ていないのですか?」
「そうなのよ、いつもならもうここに来てもおかしくないのに」
心配している様子のシルに言葉を掛けるのは、同僚のリュー・リオンだ。
「来たとしても今店に入られても困りますけどね、この辺では見かけない変な男が暴れたせいで店は滅茶苦茶ですし」
「凄かったわねあの人、ウチの店であそこまで暴れておいて逃げれるなんて……おかげで店の人達は私達以外あの人を捕まえに行っちゃったし」
「私が結構締め上げたつもりだったんですが……思いの外生命力が高かったみたいで、不覚です」
現在、この店にはシルとリューだけがおり、二人で後片付けの真っ最中であった。
数十分前に銀髪天然パーマの男が店内で酔っぱらって大暴れしたので
彼女と他の店員、そして店主のおかげで見事に撃退に成功はしたモノの、店内は荒れ放題な上に怒り狂った店主を筆頭に男を捕まえに出掛けているので、店は休業中である。
「ここ最近はた迷惑なお客さんが増えて困りますねホントに、しかもそれに比例して良い客であるクラネルさんは来る頻度が減ってしまっているようですし」
「そうなのよね……おかげで今日も弁当渡せそうにないかも」
仏といい先程の天パの男といい、最近この店にはマナーの悪い客ばかりやってくる、元々荒くれ者の冒険者が集う店ではあるが、あの二人はかなりタチが悪い。
しかもそれが原因なのかは知らないが、シルの想い人である駆け出し冒険者のベル・クラネルがあまりこの店に顔を出さなくなってしまったのだ。
「もしかして何かあったのかしら、冒険者って常に自分の命を危機に晒すモノなんでしょ? もしかしたらダンジョンで何かあったんじゃ……どうしよう、すごく不安になっちゃった、まさか事故に遭ってたりしてないよね?」
「あり得ますね、確かに冒険者に類する者であればいつどこで命を落としてもなんら不思議はありません、私にも覚えはあります。クラネルさんも冒険者ですから当然例外では無いですし、何かしらのトラブルに遭遇して死亡している可能性はありますね、もしくは生け捕りにされて身動き取れない状態にされて、もっと大きな獲物を惹きつける為の餌となっている可能性も捨てがたい」
「……」
不安がる自分に対して仏頂面でサラッと物騒な推測を口走るリューに、シルは思わず心配するのを止めてジト目を彼女に向けた。
「……そこは「そんなことある筈ないですよ」とか言って励まして欲しかったかな……」
「いや私にそんな事を求められても困る、残酷な一面を知っている元冒険者であった私にとって、冒険者関連の事に上っ面の言葉を並べて取り繕うなんて話術は生憎持ち合わせていない」
「あなたの場合、冒険者関連以外の事でも正直にズバッと言う所あるけどね……」
かつて冒険者時代に悲惨な経験を得たリューは、元々嘘をつかずに正直に物申す性格なので、こういう時は毎回最悪の事態を想定してシビアな回答をするのだ。
彼女のこういう所は慣れているのだが、やはりこうして面と向かい合っている状態で言われると少々心臓に悪いな、とシルはそう考えながら訴えるような眼差しを彼女に向けていると
「ごめんくださ~い」
「あ、いらっしゃいませ、すみませんお客様、ただいま当店は休業中……え?」
ふと店の入り口からどっかで聞いた感じの野太い声で誰かが入って来たので
シルはつい反射的にそちらへ振り返ってお引き取りを願おうとしたのだが、勝手に店の中に入って来たその来客に彼女は戸惑いの表情を浮かべる。
「……仏、様ですよね? どうしてあなたがここに……」
「ハハハ、久しぶりぶり~! 来ちゃった!」
「あんな真似しておいてそんな軽い感じで言われながら来られても困るんですけど……」
そこへやって来たのはこちらに陽気に手を振って歩み寄って来る仏であった。
彼がこの店でリューにとっちめられ、更にはその報復でベルを利用しようとし、失敗したとわかったらすぐに逃げた事を知っているシルは、何事も無かったかのようにいきなり来店してきた彼にどういう事だと疑問を浮かべていると
「性懲りもなくノコノコとこの店に足を運ぶとは大した度胸ですね、また私にシバかれに来たんですか?」
「ちょっとリュー!? さっき暴れたばかりなのにまた店の中で暴れるつもりなの!?」
早速拳をポキポキと鳴らしながら、既に戦闘モードにスイッチを切り替えているリューが、獲物を見つめる狩人の目で仏の方へ自ら近づき始めた。
「すみませんシル、この男だけはどうしても生理的に受け付けられないんです私、目の前にいたら全力でぶん殴りたいという強い衝動に掻き立てられるんです」
「それは、わからなくもないけど……せっかくお片付けも終わりそうなのにまた店の中を滅茶苦茶にされちゃったら今度こそミア母さんにおしおきされるわよあなた……」
「覚悟の上です」
「ハハハ、相変わらず強い敵意を向けてきますなーこのむっつり小娘め」
リューからえらく嫌われている事を自覚していてもなお、ヘラヘラと笑いながら仏は出ていくつもりもなく、彼女に睨まれた状況下でその場に留まった。
「えーしかしですね、そんな神をも恐れぬお前だからこそ、果たせる事もあるやもしれぬ、という事でお前に仏からのお告げを下そう、と思うので心して聞くがいい」
「は?」
「……うわなんかもう、マジで怖ぇいよコイツ……すげぇ睨んで来るよ、私に対して物凄い殺気を放ちながらすげぇメンチ切って来るよ……」
いきなり訳の分からない事を言う仏にリューは僅かに眉を動かしつつ、明確に敵意の眼差しを向ける。
それに仏はちょっとビビりつつ、思わずちょっと笑いながらも静かに彼女に口を開くのであった。
この世界の命運を託すために
「この店の店員であるむっつり貧乳鉄仮面小娘、いや、才能ある力を自ら眠らせているリュー・リオンよ」
「今こそ世界を救う勇者となり! ダンジョンに潜む恐ろしい悪魔・ハーゴンを倒し! 破壊神シドーの復活を阻止してこの世界を再び平和に導くのだー!」
「絶対に嫌です、遺言はそれでいいんですか?」
「ええー!?」
仏のお告げを聞いても全く動じてない様子で拒否するリュー、そればかりかまだ仏を殴る気満々で彼の方へ歩み寄っていく。
果たして仏は無事に彼女を説得してダンジョンに行かせることができるのだろうか……
次回、結成、仏ファミリア