聖者ホトケと神の孫ベル   作:カイバーマン。

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十八説 結成、仏ファミリア

「お断ります」

 

「そこをなんとかお願いしますよ、むっつりさん」

 

「いい加減にしてください、またシメますよ」

 

「おい! 一体なんなんだ君は! どうしてそうすぐ暴力で片付けようとするんだい!? 言っておくけど私って神様だからね!? その神様をシメるってのはどう……! ちょ、止めて、グーはダメ、グーはマジでダメ」

 

まさかの因縁の相手であるリュー・リオンを勇者と任命しようとする仏だが、案の定あっさりと断られてしまった。

 

おまけにしつこい仏に限界が来たのか、拳を固めてこちらに無表情で近づいてくる始末

 

しかしそれにめげずに仏は慌てて口を開き

 

「んーけどねー、このままだとこのお店に通っていた少年、白髪紅目のショタボーイが大変な事になっちゃうよー?」

 

「白髪紅目のショタボーイ……まさか……」

 

「あ、ショタボーイで通じるんだ」

 

仏の口から出て来た引っ掛かる名称に、彼女の耳がピクリと反応して拳を構えるのを止めた。

 

「そのショタボーイとはもしやクラネルさんの事ですか?」

 

「ご名答、そのショタボーイこそベル君です、彼は今、ダンジョン内で悪魔に襲われ超ピンチでございますです、はい」

 

「そ、そんな!?」

 

悪魔に襲われベルの命がマジでヤバい

 

仏の短く簡潔にまとめた話を聞いてすぐに反応したのは、リューではなく隣に立っていたシルの方であった。

 

「ベルさんが大変な目に!? それならすぐに助けに行かなきゃ!」

 

「その通-り! あーこっちのお嬢ちゃんはちゃんと状況をわかってくれてるみたいで偉いねー、それに比べてむっつりコラ!」

 

「は?」

 

待ってましたと言わんばかりにシルの反応を見てご満悦の表情を浮かべると、仏はすぐに表情をガラッと変えてリューに向かって怒りの形相

 

「なんなんだよお前! ベル君が大変な目に遭ってるから助けてって仏が頼んでるのに速攻拒否りやがって! あんなに良い子な! 良い子というよりちょっとアホなベル君を助けに行きたくないとか最低だぞコノヤロー!」

 

「最初からクラネルさんが大変だと聞いていればすぐには断りませんでしたが」

 

「ドライ! この子本当に超冷たい! あんなに一人前の冒険者になろうと一生懸命頑張ってたベル君を、豪快にジャイアントスイングした上に見殺しにするとか! テメェの血の色は何色だーッ!」

 

「彼が私にジャイアントスイングされた件はあなたのせいでしょ」

 

好機と見た様子でここぞとばかりに批判して来る仏に、リューは非常に腹立たしく思うものの

 

確かにシルの想い人であるベルの命が危ないと聞いたら、さすがに聞かなかったフリをするのは無理だ。

 

彼女はすぐに決めた、自分が今、何をすべきなのかを

 

「わかりました、あなたの命令を聞くつもりはありませんが、同僚であるシルの為にここは彼を助けに行くとしましょう」

 

「そうそう、最初からね、私の言う事素直に聞けばいいんだよ、むっつりのクセにゴチャゴチャ言わずに大人しく私のお告げに従い……いって!」

 

まだ偉そうな態度をして来る仏にリューは無言で強めの肩パンをかます。

 

殴られた右肩を抑えながら悶絶する彼をよそに、彼女はシルの方へと振り返る。

 

「シル、申し訳ありませんが店の後片付けは任せます、急に出掛けねばいけない用事が出来てしまったので、ミア母さんにはなんとか上手く言っておいて下さい」

 

「それぐらいお安い御用だけど……いいの? 確かにベルさんが助かって欲しいとは思ってるけどあなたにまで危険が及ぶんじゃ……」

 

「私の心配はいらない、元より私はとっくの昔に死んでいた身だ、かつてあなたに拾われたこの命、あなたの為に使うのであれば惜しくはない」

 

「リュー……」

 

リューがこの店に雇われる前、彼女はとある事件をきっかけに多くの罪を犯し、その因果で瀕死の重傷を負ってしまう。

 

そんな死ぬのをただ待って倒れていた彼女を路上で拾い介抱し、この店で働くよう手引きしてくれたのがシルなのである。

 

その彼女の為であれば自分は何でもすると、嘘偽りない真剣な眼差しで宣言するリューに、シルは複雑な表情を浮かべて彼女を心配していると……

 

「あーもうそういうのいいから、そういうシリアスっぽいのいらないから、ちゃっちゃっと支度してダンジョン行くよ、ったく手間かけさせるなよむっつりー、あたッ!」

 

空気も読まずに二人の間に割り込んでしかめっ面で文句を垂れる仏に

 

またもやリューは無言で彼の左肩を殴るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

それから数十分後、地下迷宮に繋がる摩天楼施設、バベルの前には悪魔討伐&ベルとアイズ救出大作戦のメンバーが集まっていた。

 

「フフ、穏便に済ます必要があるから少数精鋭にしようとは言ったけど、このメンバーで大丈夫かしらね」

 

「フレイヤ様が心配せずとも、何かあったらこの身一つで作戦を完遂させます故」

 

「そうね、あなたなら例え死んでも私のお願いを聞いてくれるとわかっている、期待しているわオッタル」

 

「は」

 

レベル7の冒険者として正にトップクラスの実力者であるフレイヤ・ファミリアのオッタル

 

「ぬおぉぉぉぉぉ……! 外になんか出たくなかった……! けどアイズの野郎がヤベェってなら……は! おい! 今悪寒が走ったぞ! アイツか!? アイツが傍にいるのか!?」

 

「落ち着けやベートただの気のせいや、ここにお前を襲うマッチョでダンディで笑顔の素敵な神様はおらんから」

 

「アイツはヤベェ……! とにかくヤベェんだ……! 迂闊に外をブラついてたらアイツにまた襲われる……! 俺はもう二度とごめんなんだよ! アイツのせいで俺は! ぐ! 思い出したくねぇ記憶が!」

 

「ありゃりゃ、こりゃ相当トラウマ抱えとんなぁ、こりゃ兄貴♂ファミリアには文句言っておかんと」

 

荒くれ者であるがレベル6で底知れぬ潜在能力を秘めたロキ・ファミリアの特攻隊長、ベート

 

「な、なんだかリリ達だけ明らかに浮いてる様な気が……ヘスティア様、本当について来るんですか?」

 

「当たり前田のクラッカーさ!」

 

「意味は分からないけど凄く古く感じます……」

 

「ベル君の身がピンチな時に颯爽と駆けつける女神! これでベル君もボクにベタ惚れさ!」

 

「サポーターのリリはともかく神の力を使えないヘスティア様は本当にただの役立たずですけど良いんですか?」

 

「役立たずって言うなよ! ボクだってなんかの役に立つ筈! そう! ベル君をお姫様抱っこして救い出すのはボクにしか出来ない!」

 

「普通、逆だと思うんですけどねぇそれ……」

 

ソーマ・ファミリアに属するもののベルを助ける為ならばとサポーター役としてついていくレベル1のリリ

 

そして散々無理だと言ってるのに全く言う事聞かないので、仕方なく連れて行く事にしたベルの所属するヘスティア・ファミリアの主神・ヘスティア。

 

そして

 

「やれやれ、墓参り以外の目的でダンジョンに潜るのはいつ振りでしょうね……」

 

いつもの制服を脱ぎ捨て、軽やかに動けるよう軽装になった元冒険者のレベル4の魔法剣士・リュー

 

「相手が何者なのかはまだ把握していませんが、シルを悲しませない為にも一刻も早くクラネルさんを助けねば……」

 

ここに来てしまったのだからもう後には退けない、元より退くつもりは微塵も無いが

 

他にやる事もあるみたいだが、リューはただシルの為にベルを助ける事だけを最優先として動こうと決めている。

 

もっとも敵がこちら襲ってくるのであれば、それを速やかに討伐する事もキチンと考えてはいるが

 

「それより……」

 

リューはチラリと横の方へ目を向けると、まだリリと揉めているヘスティアがいたので、おもむろに彼女に向かって話しかけた。

 

「ヘスティア様」

 

「だからボクがいてこそベル君が喜ぶのであって……! ん? なんだい?」

 

「私は此度、あの仏によって呼ばれてここに来たのですが、肝心の呼びつけた本人が何処にも見当たらないんですが?」

 

「ああ、仏か。アイツなら今急な仕事とかでちょっと抜けてるよ、なんでも異世界に派遣してる勇者が心折れちゃって魔王討伐を諦めて逃げようとしてるから説得に行ったんだって」

 

「……」

 

自分の疑問にキョトンとした様子で答えるヘスティアにリューは怪訝な様子で固まってしまう。

 

あまりにもツッコミ所が多過ぎて反応に困ってしまったのだ。

 

「よくわかりませんが、とりあえず魔王から逃げようとするような輩が勇者と呼べるんですか?」

 

「んーボクはよく知らないけどさ、仏が言うにはなんだかんだで何度も世界を救った事のある英雄みたいだから、別に勇者と呼んでも良いんじゃないかな?」

 

「……どうして何度も世界を救った功績を持つ勇者が諦めて逃げるような真似をするんですかね」

 

「さあ? でも昔から英雄や勇者と呼ばれる様な人物だって、みっともない事とか恥ずかしい真似をしてる奴もいるからね、ボクの友人のタケ(タケミカヅチ)にはそういう知り合いが一杯いるんだってさ」

 

「そういうものなのですか……私の中の英雄とは随分イメージがかけ離れてますね」

 

話の中に出て来た勇者についてちょっと気になったのでヘスティアに尋ねると、彼女はあっけらかんとした感じで肩をすくめながら答えてくれたので、リューは微妙な気持ちになりながらもとりあえず頭を下げる。

 

「すみません個人的に気になった事を答えて下さって」

 

「構わないさ、ちなみに君の中の英雄ってどんなイメージなの?」

 

「サイボーグ009ですね、彼の生き様と死に様は、正に真の英雄と呼ぶに値するかと」

 

「わお、意外な答えでボクびっくり、でも嫌いじゃない答えだ」

 

真顔でサラリと漫画のキャラの名前を堂々と出すリューに、ヘスティアが思わず口をポカンと開けて驚いているとそこへ……

 

「は~い……お待たせしました~……めんごめんご~……」

「あ、仏! ってどうしたんだいその顔!?」

 

仕事を終えて戻って来たのか、仏がフラフラと彼女たちの方へ歩いて来た。

 

しかしヘスティアはそんな彼を見てギョッとする。

 

彼の左目周りの部分が思いきり腫れ上がっていたからだ。

 

「いや~、つい先ほど異世界でウチのヨシヒコにお告げして上手く説得できたんすけど……その時にうっかり私の後輩の恥ずかしエピソードを教えちゃってね~、それで後輩に思いきりぶん殴られた」

 

「後輩? ああ、あのやたらとボクに話しかけて来る人懐っこい可愛らしい銀髪の女神ちゃんか」

 

「あ~、いつもキレない奴がいきなりキレるとすんげぇ怖ぇよ~……」

 

どうやら仕事中に失言して、彼の後輩の逆鱗に触れてしまったみたいだが、一体何を言えばあそこまで思いきり殴られるのだろうと、ヘスティアは首を傾げる。

 

「まあいいや、とりあえずボク等はもう行くから。君はそこで大人しく待っていてくれ」

 

「いや、私も行く、私もダンジョンに潜ってベル君を助けに行く」

 

「へ!?」

 

いきなり変な事を言い出す仏に我が耳を疑うヘスティア、危ない事が大嫌いで基本的に人任せにする彼が何故……

 

「実は今、すんげぇ必死で後輩から逃げて来た所なの、もう今すぐにでもこっちに隠れてると気づく筈だから、その前にダンジョンに入って隠れる」

 

「な、なんてダサい理由なんだ……そんなくだらない事でボクとベル君の恋路を邪魔するなんて……!」

 

「ヘスティア様、ぶっちゃけリリからすればあなたも仏様も同レベルの下らない理由です」

 

未だ怒り狂う後輩から逃げ切る為に自分もまた隠れ蓑としてダンジョンに入ると言い出す仏にヘスティアが愕然としているも、そこへリリがボソッとジト目で口を挟む。

 

「ていうか仏様はついてこなくていいです、これ以上足手まといが増えるのは勘弁して欲しいんで……」

 

「よーし行くぞ仏ファミリアー! 私についてこーい!」

 

「ってリリの話聞いて下さいよ! 誰が仏ファミリアですか!」

 

仏の同行は勘弁願いたいと丁重にお断りしようとするリリーをスルーして、仏はもう行く気満々で仕切り出す始末。

 

彼は基本的に自分の都合の悪い事は聞かない主義なのだ。

 

「てかメンバーはこれで全員? 戦えるの4人だけ?」

 

「せやで、てか仏、ホンマついて行くんか? エリスちゃんに謝ればすぐ済むやろ?」

 

「謝って済まねぇから逃げるんじゃん! おっぱいバズーカ事件盛り返しただけですんごいキレやがったんだよアイツ!」

 

「……そりゃ怒って当然やろ、ぶっちゃけ今その話を聞いたウチもお前にキレてる」

 

「やだ、ロキちゃん怖~い……そういやあの時、アイツのフォローしてあげてたのお前だったね……」

 

あまり表には出してないが内面凄く怒っているロキをへらへら笑いながら仏はなだめていると

 

リュー・リリ・ベート・オッタルという急ごしらえのヘンテコなパーティもまた動き始める。

 

「さて、お荷物が増えましたが行くとしましょう」

 

「はぁ~、リリはもう不安でたまりません……」

 

「アイツは……! アイツは傍にいねぇよな……!?」

 

「ダンジョン中層に入ったら全員警戒心を緩めるな、それと些細な事でもすぐに報告しろ」

 

そして各々勝手に呟きながら進んでいくので、仏とヘスティアもまた後を追う。

 

「よし出発進行! 仏ファミリア!!」

「うわー、最初からグダグダでボク心配だなー」

 

不安がるヘスティアをよそに仏は急にテンション上げながら彼等と共にダンジョン内部へと侵入するのであった。

 

いざ悪魔の下へ

 

 

 

 

 

「ホイホイ♂チャーハン?」

 

そしてそれを隠れて楽し気に見ていたのは

 

煌びやかなマッチョボディを堂々と街中で晒す、素敵な笑顔をしたイタズラ好きのお茶目な神様であった。

 

次回、仏ファミリア、超仲悪い

 

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