聖者ホトケと神の孫ベル   作:カイバーマン。

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仏7号
十九説 仏ファミリア、超仲悪い


 

ダンジョン内部というのは薄暗く、ジメジメしてて、どこからモンスターが襲い掛かって来るかわからない危険な場所。

 

しかし現在、悪魔が潜み、そして破壊神が今にも封印が解かれるやもしれない緊迫した状況下では

 

正に魔王の城、いわゆるラストダンジョンと言っても過言では無いほど不穏な雰囲気に包まれているのであった。

 

「あ~~~~~~……なんかもう、超帰りたい」

 

「まだ入って間もないのにもう弱音かい、相変わらず君は口だけだね仏」

 

「だってぇ……私って現場に出向くタイプじゃないものぉ~、安全な場所で待機して上から指示するだけの簡単なお仕事担当だもの~私」

 

 

酷くゴツゴツしてて足場も悪い道とは呼べない所を歩く一行のパーティーの後ろを

 

どこからモンスターが現れるのかとビクビクしながらついて来ている仏に、隣からヘスティアが呆れた様子でため息をつく。

 

「ついて来るって言ったのは君自身だろ? だったらボク等の足を引っ張らないよう、そうやって泣きべそかきながら必死について来るんだね」

 

「おい! なんか自分もパーティーの一員ですみたいな感じで言ってる所悪いけど! 言ってるけど神の力を使えないお前も立派な足手まといだからね!」

 

「し、失敬な! ボクはボクなりにちゃんとした理由を持って彼等と共に行動する事を決めたんだ! 後輩ちゃんに怒られるのが怖くてダンジョンに逃げ込んで来た君とは全く違うよ!」

 

ダンジョン内で神の力を行使する事はご法度中のご法度。当然いくら女神であるヘスティアであってもここでは何の力も無い無力な人間としての行動しか許されていない。

 

つまり彼女と仏は、ぶっちゃけて言うと全く戦力にならないお荷物コンビでしかないのだ。

 

そしてそんなお荷物コンビの方にしかめっ面で振り返るのは、悪魔討伐パーティーの中で最も戦闘力が低く、最後尾でサポーター役として援護に徹しているリリであった。

 

「すみません二人共、さっきから物凄くうるさいです……ダンジョン内で騒ぐとモンスターが寄って来るなんて冒険者にとって常識中の常識ですよ? ついて来るのは許しましたがこちらに迷惑を掛けるといのであれば今すぐ入口まで帰ってください」

 

「君ってば最近どんどんボクに対して辛辣になってないかい? ボクってば君が慕っているベル君の主神なんだよ、少しは優しくした方が今後の身の為になると思うんだけどな~」

 

「リリが忠誠を誓った相手はベル様であってヘスティア様ではありませんので」

 

ベルにお近づきになりたいなら、自分に対しての態度を考えろと遠まわしに言ってくるヘスティアに対してもリリはキッパリと拒否する。

 

すると今度は仏の方がニコニコしながら彼女に笑いかけて

 

「おいロリっ子、私にもね、私にも優しくしてくれたら……今度漫画貸してあげる」

 

「いやいいです、ベル様みたいにおかしくなりたくないので」

 

「いいのかな~? とっておきの名作中の名作……はだしのゲンだよ……?」

 

「知りませんってば……なんだかほのぼのとしたタイトル名ですね、日常系ですか?」

 

「ん~……まあある意味では日常系、なのかな? 内容と絵が結構凄いんだけど……ある意味一度読んだら絶対に忘れない、というか一生モンのトラウマにもなりかねない程の強いインパクトが……」

 

ヘスティアよりも下手な交渉をしてくる仏にリリは一蹴するも、彼が挙げた漫画のタイトルにやや引っ掛かっているご様子。

 

そこへ仏がそこまで詳しく聞いていないのにペチャクチャと作品の詳細を語ろうとしていると、リリのすぐ前を無言で歩いていた……

 

「すみません、ちょっとそこのお荷物一号、いい加減黙っててくれませんか? さもないと二度と喋らないよう口縫いますよ?」

 

急遽仏に勇者候補として選ばれてしまった元冒険者、リュー・シオンがまっすぐな瞳を彼に向けながら、サラリと肝が冷えるような事を言って注意して来た。

 

しかしそんな彼女に対してもなお、仏は負けじと「あ~ん?」とヤンキーみたいな低いうなり声を出しながら首を傾げて

 

「テメェ仏に対して怖い事言ってんじゃねぇぞコラ、そんな事言うと仏泣いちゃうんだぞ? 大の大人が人前で大声でワンワン泣いたら、きっと魔物共がわんさか集まってベル君達を助ける所じゃ無くなっちゃうぞコラ」

 

「……一つだけ質問良いですか、あなたもしやクラネルさんを襲った悪魔の仲間ではありませんよね、先の行動とその発言といい、ただ我々の足を意図的に引っ張ってる様にしか見えないんですが」

 

「そんな訳ないでしょうが! 仏! 仏の私が悪魔の仲間とかマジこのむっつりチョー失礼なんですけどー!」

 

自分に対して人一倍嫌っている節があるリューの無礼な発言に仏は不機嫌そうに頬をプクーと膨らましながら抗議

 

その全く可愛くない絵面にも、リューは特に動じずに淡々とした口調で

 

「ちなみにかつて私は、ある事件を機に多くの人々を手にかけて殺めた事があります、それも少しでも事件に関連があるやもしれぬという理由で次々と……恐らくその中にはホントになんの罪もない人達もいたかもしれません」

 

「え、なに……どした急に? なんでいきなり自分の過去を語り出したこの娘?」

 

「お気になさらず、誰であろうとほんの少しでも疑いを持ったら目的の為に排除する、という私の性分をあなたにこの場でしっかり教えておこうと思っただけですから」

 

「おおぉ~そういうカウンターは予想してなかったなぁ……すみません次から気を付けます……」

 

これ以上迷惑を掛けて足を引っ張る様な真似をするなら殺すとでも言わんばかりに、リューが放つ殺気は本物であった。

 

一体彼女の過去に何があったかは知らないが、仏が思わず謝ってしまうぐらい今の彼女は特に怖い目をしている。

 

それからしばし無言で睨みつけた後、リューは再び前を向いてこちらにそっぽを向いてしまった。

 

「なんだろう……アイツってばもしかして、結構凄い暗い過去と罪を背負っているのかもしれない系女子?」

 

「リリは彼女の過去は知りませんが、少なくともかつて彼女に痛い目に遭わされたリリが予想する限り、相当の修羅場を見て体験した人物だと思います」

 

後ろから彼女の背中を眺めながら仏がボソッと呟いていると、リリもまた前にベルのナイフを失敬した時に彼女に拘束され腕の骨を折られかけた事を思い出す。

 

上手く誤魔化して立ち去ろうとした時に、氷の刃を背後から首に押し付けられた様な恐ろしい威圧と共にあっけなく捕まってしまった瞬間、自分は命の危機さえ感じた。

 

あの一瞬で空気を変える迫力と躊躇いの無い動きは、相当前から慣れていないと出来ない芸当だ……

 

「あまり彼女の過去については考えない方が良いですね、誰しも知られたくない過去の一つや二つあるもんですから、仏様も軽率な発言をしてこれ以上彼女を怒らせないようお願いしますよ?」

 

「……」

 

リリの忠告を聞いているのかいないのか、仏は顎に手を当てて眉間にしわを寄せながら、黙ってリューの背中を見つめて何か考えていた。

 

それを見たリリは、「このいい加減な神様の事だから、どうせ下らない事でも考えているのだろう」と特に何も言わずに前に向き直るのであった。

 

 

 

 

 

背後でそんな出来事が起こってる一方で

 

「クソが……どうして俺がこんな知りもしねぇ連中を子守りしてこんな真似しなきゃいけねぇんだよ」

 

リューとちょっと距離を空けてズンズンと前を歩くベートが、ズボンのポケットに両手を突っこみながら早速イライラしている真っ最中であった。

 

「アイズの野郎が関わってなきゃぜってぇ引き受けなかったのによ、なにが悪魔だくだらねぇ……」

 

「……いかなる時でも味方や敵を軽く見るのはよせ」

 

さっきからずっとブツブツと文句を垂れるベートに対して、彼の高い実力を唯一凌駕する人物であるオッタルが、盾役として最前列を進みながら静かに呟く。

 

「相手は今までに相対した事のない得体の知れぬ存在、それにフレイヤ様が警告をする様な相手だ。万が一にもその傲慢が仇となって死ぬ事になろうとも、俺は一切助ける真似はしないと心しておけ」

 

「はん、同じファミリアでもねぇ、ましてやウチと争っている陰気臭ぇテメェ等の助けなんか借りるなら、それこそ死んだ方がましだ」

 

振り返りもしないで面白くない事を言い出すオッタルに、それぐらい上等だとベートは鼻で笑い飛ばす。

 

「親玉を倒して手柄を取るのも、アイズを手にするのもこの俺だ、テメェ等はその為に精々隅っこで働いてれば……」

 

「む? あそこの曲がり角に凄い筋肉をした大男が見えたような……」

 

「!?」

 

相手が自分よりも高い実力者であろうと態度を改める気など一切無いベートであったが、不意にオッタルが歩いてる途中で不穏な事を言い出すと、ポケットから両手を出してすぐにバッと足を止めて警戒態勢に

 

「ど、どこだ!? どこにいやがる!?」

 

「ああすまん、気のせいだった」

 

「はぁ!?」

 

すぐに首を激しく左右に振って、何処からともなく”あのマッチョボディの大男”が現れるのだと思いきりビビっているベートに、オッタルは悪びれも無く真顔で呟く。

 

「しかし今のお前の動きはどう見ても怯えてる様に見えた様な気がしたが?」

 

「テ、テメェ! 俺の恐ろしい体験を知っていた上でカマかけやがったな!!」

 

「全くレベル6の冒険者がたかがマッチョな大男に惑わされているとは……」

 

「おい! テメェこそあのマッチョ野郎を甘く見てんじゃねぇぞ!」

 

この調子じゃ役に立ちそうに無いなと嘆くオッタルであるが、ベートは”あの時の出来事”をフラッシュバックさせて再び恐怖に襲われる。

 

「アイツはまともじゃねぇ……! 悪魔や魔王なんざよりもずっと恐ろしい存在なんだよ……! テメェの所の神がまだ全然まともに見えるぐらい野郎は別格なんだ……!」

 

「それはフレイヤ様をも凌ぐお力を持っていると言いたいのか? 悪いがその類の冗談はあまり好きじゃないな……」

 

「へ、いずれテメェだって奴に狙われた時にわかるだろうよ、そして分かったと同時に奴の餌食にかかるのさ……」

 

「戯言を、俺がいかに自分よりも屈強で美しい肉体を持つ相手であろうと、フレイヤ様の許可なく屈するとでも思ったか?」

 

あの時の出来事が未だトラウマとなり、未だ引きずっている様子のベート。

 

実の所こうして薄暗いダンジョンの中を歩く事さえ彼にとっては、もはやモンスターよりもあの男が現れるのではないかという恐怖が勝っており、さっきからずっと無理に強がって行動しているのだ。

 

かつてレベル6の冒険者・ロキ・ファミリアの特攻隊長として名を馳せていたベートが、すっかり牙を抜かれてしまったと、未だあの男の恐ろしさを理解していないオッタルは一人嘆いていると……

 

「ん? なにやら気配を感じるな……全員足を止めろ」

「はぁ!? もう騙されねぇぞコラ!」

「今回は虚言では無い、来るぞ」

「!?」

 

不意にこちらの方へ何者かが突っ込んでくる気配をすぐに感知したオッタル。

 

彼はすぐに背後のメンバーを止めて迎撃態勢に入ると

 

程なくして暗闇の中からギラギラと目を光らせたままこちらに向かって襲い掛かって来たのだ

 

 

 

 

 

『ギガンテスがあらわれた』

『デビルロードがあらわれた』

『アークデーモンがあらわれた』

『スライムがあらわれた』

 

「……あぁ?」

 

突然目の前に現れた三匹のモンスターに対し一同は固まった

 

何故ならその魔物は、今までこのダンジョンで見た事のない魔物であったのだ。

 

頭頂部に角を生やした一つ目の魔物

 

猿の様な手足とコウモリの様な翼を生やした魔物

 

刺股を構えてブーツを履き、膨らんだ筋肉を持つ大柄な魔物

 

そしてそれら魔物と比べるといささか見た目が可愛いと思える姿をした水色の小さな魔物。

 

どれもこれも上層部、いや中層でも下層でさえ見た事のない未確認の魔物達なのである。

 

「……おい、ありゃあなんだ? 俺はあんなモンスター見た事ねぇぞ」

 

「俺もだ、今まで確認されていない新種やも知れん……しかし何故このタイミングで」

 

「……どことなく愛嬌のある姿をしたモンスターですね、飼いますか?」

 

「いや、モンスターに愛嬌があろうがなかろうがどうでもいいじゃないですか……え? てかリューさん、今飼うって言いました?」

 

ベテランのベートやオッタルでさえ見た事のない魔物の群れにリューは一人ちょっとだけ可愛いと思っていると、リリが後ろからボソリとツッコミを入れる。

 

そして彼等の背に隠れて状況を見守っているヘスティアと仏はというと

 

「おっと、もしかして冒険者も知らないモンスターが現れたって感じか、もしかしたら追手を始末する為に悪魔が用意しておいたのかな……ううむこれはベル君がますます心配になって来たぞ……」

 

「あ、あれ~……?」

 

「おい仏、どうかしたのかい?」

 

「……いや別に……」

 

「?」

 

早速現れた魔物がどこからやって来たのかと推理し始めるヘスティアだが、仏は魔物を見つめながら顔をしかめるだけ

 

何故、彼が魔物をじっくり眺めながら困惑しているのかというと……

 

 

 

 

 

 

(あれ~~~?……もしかしてアレ……ウチの世界の魔物とかじゃないよね?)

 

突如現れた自分の管轄下にある世界からの魔物達。

 

一体どういう事だと彼が考える前に、その魔物達は容赦なくこちらに牙を剥くのであった。

 

 

次回、仏ファミリア、超戦う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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