聖者ホトケと神の孫ベル   作:カイバーマン。

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二説 仏、謝罪する

突如オラリオの上空に現れた神様、仏に

 

「魔王を倒しに行くのだー!」とか言われてしまった少年、ベル・クラネルは

 

一時のテンションに身を任せてオラリオを出て、魔王を倒しに行くことを決意。

 

しかしそこへ彼が所属しているファミリアの神様である、ヘスティアが断固阻止して往復ビンタと説教をかました

 

そしてそれから数日後

 

「……ごめん」

「いやいいんですよ、僕もそんな気にしてませんから……」

 

数日前に突如空から現れた仏は、今ベルの目の前で姿を現し、正座したまま申し訳なさそうに謝って来た。

 

何故だか知らないが左目の周りには殴られたようなアザを残して。

 

今日は朝から一緒に住んでいる女神・ヘスティアがバイトに出てしまっている。

 

そこでベルが一人ホームで暇を持て余していた所、テンションの低い仏がお詫びの品持参で突然やって来たのだ。

 

なんでもこの世界に魔王がいるというのは全て出まかせで、それがとある友人にバレると、すぐに呼び出し食らって出会い頭に思いきり殴られたらしい。

 

仏様を殴れるなんて一体どんな方なのか気にはなるが、とにかく仏は、自分の出まかせで迷惑を掛けてしまった事を詫びる為にベルの所へと自ら訪問しに現れたのだ。

 

「あ~……まさかあのクソジジィの孫だったなんてなぁ……」

「はい?」

「いやこっちの話だから気にしないで、あのね、あのねベル君、ガッカリさせちゃった事は本当にごめん、はいコレ、お詫びの品です」

「いえ、だからお気になさらずに……え? なんですかそれ?」

 

ボソボソと小声でなにか呟くと、仏はまたベルに頭を下げながら持って来たお詫びの品を両手で渡す。

 

パッと見だと少々古めの書物という感じだが、受け取ったベルが一体コレはなんなんだろうと首を傾げていると

 

「それ、「デビルマン」、名作だから読んで」

「デビルマン!?」

「あ、ハレンチ学園の方が良かった?」

「ハレンチ!?」

 

神の眷属であるベルにまさかの悪魔が主役の漫画をチョイスするというセンス。

 

漫画というモノを良く知らないベルは怪訝な様子を見せながらも、とりあえず後で試しに読んでみようと床に置いた。

 

「ところで仏様はあの、この世界に魔王がいるというのは嘘だったみたいですけど、勇者様の話は……」

「あ、やっぱベル君的にはそこ気になってた!? んとね! それだけはハッキリ言う! 勇者ヨシヒコがいるって事は本当の事!」

「!」

 

間違いなく勇者は実在すると断言する仏、驚くベルに力強く頷いた。

 

「ヨシヒコとその一行が魔王を倒す為に導く仕事をしているのが! この仏な訳なんです!」

「うわぁ、魔王と戦う勇者様がいるというのは本当だったんですね、それがわかっただけで僕嬉しいです」

「あぁ、そういやベル君って、勇者とか冒険とかに憧れ持ってる系男子だったね」

「はい、祖父から聞いたお話や本の影響で、自分もいつかそんな風になってみたいなぁと夢見てます」

 

 

憧れ持ってる系男子という言葉にはいまいちピンと来ないが、勇者とかそういう英雄には強く憧れている事をベルは主張する。

 

物語として書かれるようなヒーローにいつか自分も……

 

そんな大それた夢を密かに抱いている事を仏に暴露しながら、後頭部を掻きながらベルは苦笑する。

 

「まあでも今の僕じゃそんなの全然無理なんですけどね、魔王を倒すなんてそれこそアイズさんぐらい強くならなきゃいけないのに……」

「いいじゃないの~英雄になりたいとかカッコイイじゃーん、男の子ならそんぐらいデカい夢持ってる方が丁度いいぜ?」

「そうなんですかね……でも僕の場合は本当に実現するには程遠いんですよ……」

 

子供らしい夢だとヘラヘラしながら励ます仏だが、ベルは未だ己の力量がまだまだだと顔をしかめる。

 

「この前レベルアップしてレベル2になれたんですけど……あ、仏様はファミリアとか眷属の関係とか、レベルアップやスキルとかってわかりますか?」

「まあ一応ね、カミさんから聞いた事あるし」

「ええ!? 仏様の奥さんはファミリア結成してるんですか!?」

「んーそうそう、まー大分前に色々あって引退したから、そのファミリアってのはもう残ってないみたいだけどね」

「そうだったんですか……」

 

仏の奥方がかつてこの地でファミリアを築いてたと知ってベルは驚くも

 

「まあその辺は気にしないでいいから話し続けて」とちょっと素っ気ない感じで軽く流して、仏はさっさと話に戻る。

 

「あれ? でもベル君、こっちの世界でレベルアップするのって、結構しんどいって聞いたんだけど?」

「はい何度も経験を踏み続けてやっとレベルを上げることが出来るんです、僕も何度も死ぬ思いをしてやっと……」

「おーい! じゃあレベル2になれただけでも凄いじゃんベル君~!」

「でもまだ僕が目標としている人には全然届かないんです、もっと強くならなくなちゃ……」

 

ニヤニヤしながら拍手してくる仏だが、ベルは浮かない表情でポツリと呟く。

 

「僕は一刻も早く、あの人に追いつきたいんです」

「デビルマン?」

「違います!」

「あ、じゃあマジンガーZ?」

「それ人の名前なんですか!?」

 

見当違いな事を真顔で言い出す仏に即座にツッコむと、ベルは指を突き合わせながらちょっと恥ずかしがりつつ

 

「その、実は僕……ちょっと気になってる人がいてですね、異性として……」

「フゥー!! なになに好きな人いんのかよベル君! 急に面白い話になって来たぜフゥー!」

「ちゃ、茶化さないで下さい! でもその気になる人ってのが僕なんかよりもずっと強い高みの存在でして」

 

急にテンション上がり始める仏に赤面しつつも、ベルはずっと前から気になっている一人の少女の事を話し始めた。

 

「その人、僕とは違うファミリアの人なんですけど、あの、ロキって神様は知ってますか?」

「いやまあ、友達」

「えぇー!?」

「めっちゃ仲良いよ俺とアイツ、マジで、うん」

 

ベルはロキという神様自体はあまり知らないが、意外にも仏はその神と仲が良いらしかった。

 

「なに? もしかしてアイツの事好きになっちゃったの? あまりおススメしないよロキは? だって胸が……ほんっとうの平ら胸なんだぜアイツ!」

「違います違います! 神様の方じゃなくて眷属の方です! ロキ・ファミリアの一員です!」

「もう貧乳じゃなくてね、アレはそう、無乳! まさに無乳! 無い乳と書いて無乳!」

「いや胸の事もロキ様の事も良いですから!」

 

嬉々とした表情でロキの事をバカにし始める仏、本当に友人なんだろうか……

 

「そのロキ・ファミリアのアイズ・ヴァレンシュタインって人にちょっと前に命を助けられ事があったんです」

「アイズヴァレン……全く覚えられないけどなにその名前超カッコいいんだけど、ウチの所の勇者なんか名前ヨシヒコなのに」

「それでその……その時からすっかりその人の事ばかり考えるようになっちゃって……」

「好きになっちゃんだ! うぇ~い!」

「いた!」

 

そのアイズという人物に恋してしまった経緯を恥ずかしそうに話すベルに、仏はややウザいテンションでまさかの彼の肩に軽くパンチ。

 

「で? どこまでいった? チューした?」

「チュ、チュー!? そそそんなの無理に決まってるじゃないですか! 僕とアイズさんは出会ったばかりだし! レベルも実力も圧倒的に彼女の方が上だし! そもそも所属しているファミリアが違うからそういう関係にはなれないんですよ!」

「ごちゃごちゃ言い訳ばっか並べてんじゃねぇよバカヤロー! その子が好きならガツンと行けガツンと! ガツンとチューしろ!」

「だから今の僕じゃまだダメなんですってば! ていうかチューはいくらなんでも早過ぎです!」

 

自分の膝をパチンと叩きながら強い口調で一喝する仏、しかし彼が言う程この恋は簡単には実らないのだ。

 

ベルの言う通り、想い人である彼女との間にはいくつもの壁があり、成就にはそれら全てを打ち壊す事他ならない。

 

すると仏は「よしわかった!」と叫んでスクッと立ち上がると

 

「今からその子の所行って! ちょっと告って来い!」

「えぇぇぇぇ!? こ、告って来いって何を言ってるんですか! 無理ですよ僕なんかじゃ!」

「ならお前はその子とチューしたくないのかコノヤロー!」

「したいです! 凄くチューしたいです!」

「フ、その言葉が聞きたかった……よっしゃあ! じゃあ行くしかねぇだろうがぃ!」

 

つい仏に乗せられて日頃思っていた事をポロリしてしまうベルに、立ち上がった仏は「早く来い」と誘いながら部屋のドアの方へと歩き出す。

 

「案ずるな冒険者ベルよ! この私が上手くお前を導いてやろう! 勇者を導く仏が! 恋のキューピッドとしてお前をチューまで導いてやろう!」

「えぇ!? ほ、本当ですか仏様!?」

「さあ私について来るのだー!」

 

ぶっちゃけ暇だしなんか面白そうだから、という理由で仏はベルを連れて彼の想い人の所へ向かおうとする。

 

別々のファミリア同士では結婚してはならないとかそういったルールも仏には関係ないのだ。

 

「よーし、とりあえず今日のベル君のノルマは……チューまでやれ、以上」

「ちょ! だからそれはいきなり過ぎますって!」

「なんならもう、告白する前にチューしちゃえ」

「そんな真似したら僕殺されますよ絶対……」

 

無茶振りにも程があるノルマを掲げるのでベルも赤面させながら慌てて首を横に振るが

 

その反応を楽しむかの様にヘラヘラ笑いながらガチャリとドアノブを回して扉を開けた。

 

するとその扉の先に

 

「……」

「……は? なんでいんのお前?」

 

こちらを待ち構えていたかのように両手を腰に当てて立つ、ジト目でこちらを見上げる女神が現れた。

 

ロリ巨乳、ロリ女神、紐、等々言われているヘスティアだ。そしてベルの所属するヘスティア・ファミリアの神様でもある。

 

そんな彼女がただジッと明らかに何か言いたげな様子でこちらを睨みつけているので

 

仏はちょっと驚いた様子を見せるも、すぐに持っていたドアノブを自分の方へ引き戻してパタンと閉め

 

 

背後に立っているベルの方へとそっと振り返り

 

「え、え、え、ちょい待ち、ベル君ちょい待って……キミが所属しているファミリアってもしかして……」

「ああはい、ヘスティア・ファミリアですけど」

「……ヒモ・ファミリア?」

「ヘスティア・ファミリアです」

「おぉ……思いもよらぬ事実に仏困惑」

 

そこで初めてベルがヘスティア・ファミリア所属の冒険者だと知った仏は、軽く苦笑しながら困惑するリアクションを取ると

 

急に真顔になってベルに向かって

 

「よし、改宗しよう」

「なんで!?」

「改宗して、仏・ファミリアに入ろう」

「仏・ファミリア!?」

 

急に何を言い出すんだと慌てるベルをよそに、仏は真顔のまま再びドアノブを回してガチャリと扉を開けて

 

「おい、急に無言でドアを閉めるとか! キミは相変わらず同じ神に対して無礼……!」

「チェンジ!」

「はぁ!?」

 

開けたと同時に待っていたヘスティアが苛立ちを隠さずに抗議しようとするが

 

仏はチェンジ!とだけ叫ぶとすぐにまた閉める。

 

「ベル君、今すぐに改宗しよう、アレはダメ、アレだけは絶対にダメ、水色頭のバカ女神の次にダメ」

「どういう事ですか仏様!? 神様はとても素晴らしい方ですよ!?」

「あのねよく聞いて、素晴らしいとかそう言うんじゃなくてね? ダメなモノはダメなの、あんな奴の所にいたら絶対にロクな事にならない、はいじゃあ仏・ファミリアに入りましょうねー」

 

そう捲し立てて無理矢理ベルを自分がまだ立ち上げてもいないファミリアに改宗させようとしたその時

 

 

 

 

「扉越しでハッキリと話が聞こえてるんだよー!」

「ポピィィィィィ!」

「仏様ァー!」

「ボクのベル君に! 余計な事を吹き込んだのはやっぱりお前だったんだなー!」

 

扉の前にいた仏を扉ごと思いきり蹴りつけながら激怒した様子で現れるヘスティア。

 

彼女の登場にベルは驚き、仏は奇声を上げながら吹っ飛んで倒れてしまう。

 

そして女神ヘスティアはフン!と強く鼻を鳴らしながら倒れた仏を見下ろしながら

 

「まさかお前がこっちに来ていたとはね! ボクだけじゃ飽き足らず眷属のベル君までからかいに来たのか! 今回という今回は絶対に許さないぞ! さあそこに直れ!」

「違うんです神様! 仏様はただボクの事を助けようとしてくれたんです! 僕がアイズさんとチュー出来る為の手助けを!」

「よしキミも座るんだベル君! そしてとりあえずもう一回ビンタだ!」

「ええ!? いだ!」

 

余計な事を口走ってしまったベルに、ヘスティアは強制的に彼を座らせてそこから流れる様に左頬にビンタをかますのであった。

 

 

 

次回 仏、喧嘩する。

 

 

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