聖者ホトケと神の孫ベル   作:カイバーマン。

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仏8号
二十二説 潜入、蝋人形の館


魔物に追われ、パーティーと別れてしまったリューとベート、そして仏。

 

魔物の大群をなんとか退き、彼等が向かった先は

 

ダンジョン内に突如現れたかつてない程の怪しさ満点の館であった。

 

「ね? ね? 仏の言った通りすっごい怪しい建物でしょ?」

「……こんな建物、今まで見たねぇな」

「ええ、ダンジョン内にこんなモノがあるというのは聞いた事もありません」

「はいスル~ 私の事完全にスル~~」

 

隣で仏がドヤ顔で相手して欲しそうな目を向けてくるが、ベートとリューはそれを知らんぷりして目の前に現れた謎の館を静かに見上げる。

 

破壊神を復活せんと動き出した悪魔、ダンジョン内に現れた不可思議なモンスターやアイテム、そして極めつけはこの今まで見た事のない不思議な館、偶然重なったとは思えない異変を前に、リューは確信した様子で頷いた。

 

「状況的に考えてここが敵の総本山と捉える方が正しいかと思います」

 

「親玉がここにいると考えるのは早計じゃねぇか、確かに怪しさ満点だがよ」

 

「だってほら、館のドアの隣に表札掛けられてますし」

 

「うわ、マジで名前書いてやがる……『悪魔神官・ハーゴン』、新聞勧誘とセールスお断りします? おい、新聞勧誘とかセールスってなんだ」

 

「さあ? 魔族に与する者達の間でのみ理解出来る言葉なのでしょうかね」

 

リューが差した方向を見てベートは眉間にしわを寄せてそのドアの隣に掛けられた表札を見つめた。

 

確かにロキから聞いていた討伐対象のハーゴンという名前がしっかり書かれている、中々の達筆だ。

 

「アイツ等との合流を待つ前に、敵の本丸に乗り込んでさっさとぶっ潰した方が手っ取り早そうだな」

 

「異論はありません、私もシルを安心させる為に一刻も早くクラネルさんを助けなければならないので」

 

 

二人して敵陣に真正面から乗り込む気満々のご様子で、未だ他の者達の安全も確認せずにさっさとこの館に入って見ようと館の扉の方へ歩み寄るベートとリュー

 

しかしそんな二人の後をずっとついて来ていた仏が「ええ~……」と嫌そうな声を上げて

 

「お前等冒険ナメてんの? ここってばアレだよ、ラスボスがいるかもしれないのよラスボスが、それをお前等たった二人でどうにか出来るとか考えてるとか、ちょっと甘くない? ここは仲間との合流を最優先にして、万全の態勢で挑むべきだと私は思うんだけど、どう?」

 

「驚きました……あなたでもまともな事は言えるんですね」

 

「どういう事それ? それじゃあまるでいつもの私がまともじゃない的な感じに聞こえるのですけども?」

 

「ツッコミませんよ、時間も惜しいので」

 

仏がしかめっ面で珍しく勇者を導いて来た経験を踏まえて、ここはもうちょっと慎重にするべきではともっともな意見を言い出したので、リューは振り返りほんの少し、本当にほんの少しだけ彼の事を感心した。

 

「あなたの意見もまた正しいのはわかる、全く未知数の相手になんの情報も無く少数で挑むなど愚の骨頂だというもわかります、けれどここで手をこまねている間に、もしクラネルさんの命が潰えたりでもしていたら、私は一生シルに顔向けできなくなる」

 

「ムカつくが俺も同じ考えだ、トマト野郎はともかくアイズの方は死んでる筈もねぇけど、ここで助けてやったら俺の事を惚れ直すかもしれねぇからな、余計な連れがいないのが好都合だ、アイズもようやく自分にとって最も頼れる男が誰なのかわかる筈だろうよ」

 

「いや私と全然違う考えですよね、私は友人の為ですがあなたはどう見ても自分の為だけに考えてますから、おまけにちょっと痛い妄想まで含まれてますし」

 

「妄想じゃねぇ! 確実なる現実を元にして将来性を見据えた俺の近未来だ!」

 

最初はただ口が悪いだけの傲慢な冒険者だと思っていたのだが、なんだか段々可哀想に見えて来たと、ベートに哀れみの目を向けるリュー。少々優しく接して上げた方が良いのだろうか

 

「とにかく例え愚か者と罵られようと、私は一刻も早く彼を救いたい。故にここは一気に突っ切らせて頂きます」

 

「そういう事だ、おいブツブツ頭、テメェは行きたくねぇならここで大人しく他の連中が来るのを待ってろ、下らねぇ忠告なんか聞いてる暇ねぇんだよこっちは」

 

「んだとテメェコラ、誰がブツブツ頭だコラ、コレはお前、仏としての象徴を現す神々しいセットなんだぞオイ、なんなら真似しちゃってもいいんだぜ? 仏ヘアを流行らせてもいいんだぜ?」

 

「しねぇよ! てか突っかかる所そこかよ!」

 

仏の忠告を聞かずにリューとベートは仲間が来るのを待たずに館の中へと踏み入る事となった。

 

果たしてこれが吉と出るか凶と出るか……

 

 

 

 

「あ! てかお前等仏のありがたいお言葉を聞いた上でなに勝手な行動してるんだよ! もうちょっと自分達の行動に危機感を持ちなさいっての!」

 

「遅ぇよ! もう扉開けちまってんだよボケ!」

 

「ホントあなたも律儀ですね、毎度毎度こんな仏の言葉に反応してあげるなんて、意外と気に入ってたりとか?」

 

「ヤダ! 仏の事気に入ってくれてたの!? 超うれぴー!」

 

「死ね! マジでテメェ等死ね!」

 

 

 

 

 

 

ラスボス手前に来ている状況でもなお下らない言い合いを済ませた後。

 

リューを先頭に三人は扉を超えた先にある館内部へと侵入するのであった。

 

「内装からして気味が悪いですね、壁際に置かれている何体もの白い人形もですが、暗くてジメジメしてて陰気臭い」

 

「んだこの人形……気持ち悪ぃ」

 

中へ入るとすぐに目に入ったのは、壁際に置かれた大量の白い人形の様な者。

 

どれもこれもかつてない程の恐怖を体験してるかのような絶句の表情を浮かべ、まるで”本物の人間が生きたまま蝋人形にされた”かのような、とても見ていて面白く思える代物では無かった。

 

「それに何か、どこからかとても酷い臭いがします」

 

「……」

 

「おい仏、どうして俺を無言で見てんだコラ……」

 

リューがポツリと呟くと、そっと真顔でベートの方へ振り返る仏。

 

「してねぇよ! お前がしたんだろ!」

 

「あ、バレた? なるべく音を出さずにスゥ~と放ったんだけど誤魔化せなかった?」

 

「してたのかよ! もうマジで帰れお前!」

 

うっかりすかしっ屁をかました事を周りに悟られぬ為に、ベートに罪をなすり付けようとしていた仏であったがあっさりとバレてしまった。

 

「つうかなんでお前が一緒に来てんだよ……俺達に危ねぇって警告してたクセに」

 

「バカ野郎お前、私はね、仏だよ? 人を導く事を生業とする生粋の仏だよ? そんな私が君達だけを行かせる訳ないじゃない、こうして見守ってあげてるんだよ君達を」

 

「本音は?」

 

「一人でいるの怖い、私も一緒に連れてって」

 

「正直にぶっちゃけたなコイツ……」

 

自分で言った建て前をあっさりとぶん投げて本音を零す仏に、いっそ清々しいとさえ思えるとベートが呆れつつ感じていると

 

「ここは……」

「あ?」

「ん? どしたどした?」

 

館の中を進んでいる途中でリューがふとある部屋の前で足を止めたので、後ろの二人も怪訝な様子でその部屋を目にする。

 

「見て下さい、この部屋は明らかに怪しい」

「ああ、怪しい匂いがプンプンするな……」

「ん~ここは~……ちょっと露骨に怪し過ぎない?」

 

リューが警戒しながら見つめているその部屋のドアには、とてつもなく怪しい事が書かれていたのだ。

 

 

『破壊神の部屋・ただいま封印されているので対応できません、御用の方は復活した時にお尋ね下さい』

 

 

「あの、ここってもしや、悪魔が復活させようとしているあの破壊神の部屋なんでしょうか?」

 

「その悪魔がわざわざ破壊神用の部屋用意したって言うのか……? 館入ってすぐの所に」

 

「いや~ラスダンに入ってすぐラスボスの部屋見つかるって……それぶっちゃけどうなの?」

 

見た感じ普通のドアだし中の部屋も大した事なさそうだが、破壊神の部屋と書かれているだけで十分シュールである。

 

三人はしばらく胡散臭そうに見つめると、何事も無かったかのように立ち去ろうとする。

 

「ま、今は入る意味は無いですし先に行きますか、私達が用があるのは悪魔の方ですし」

 

そう呟いてリューは二人と共にその部屋の前を後にして歩きすのであった。すると……

 

 

 

 

「……おいコノヤロー、せっかく俺がいるのに行くんじゃねぇよバカヤロー」

 

その部屋から呻くように呟いた低い声は、幸か不幸か立ち去る三人の耳には届かなかったのであった。

 

 

 

 

 

 

しばらく奥へ進んでいるとリューはある事に気付いた。

 

ここは敵の本拠地である可能性のなのだが、先程から一向に罠や魔物の気配すらない事に

 

「さっきから怖いぐらいにすんなりと先へ進めてくれますね、肩透かしというかなんというか」

 

「ああ~、多分予算の方でちょっと問題あったんじゃないかな~? なんか結構ギリギリだって聞いたし、館のセットにお金掛けた分、人件費はカットしたんじゃない?」

 

「おっしゃる意味が分かりませんが?」

 

「まあアレだよ、ウチのヨシヒコの方の冒険が終わったら予算を割く必要もなくなるし、そのおかげでちょっとウチ等の方も余裕持てる用になるかもしれないから、それまでは我慢しよう、うん」

 

「おっしゃる意味がさっぱり分かりませんが?」

 

しかめっ面で本気で悩んでる仕草をしながら何度もこちらに頷いて来る仏だが、彼の言ってる事が全く理解出来ないでいるリューは軽く流そうとしていると

 

突如そんなゆったりとした雰囲気を引き裂くかの様な

 

『う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

「「「!?」」」

 

館の奥からいきなり聞こえたのは、恐怖が混じった聞き覚えのある少年の悲鳴。

 

三人はビクッとその叫びに反応すると、すぐにその声の主が誰なのかと気付いた

 

「もしやクラネルさ……!」

「もしやキリト君!? やっべぇラノベ界の超有名人じゃん! サイン貰おうぜ!」

「……どちら様ですか?」

「あ、ごめん、人違いだった、翌々考えればベル君だった、声がすんごい似てたから」

 

と思いきや仏の方は思いきり間違えていた、彼が叫んだ名が一体何者なのかは知らないが

 

今はそんな事を考える暇は無いとリューは脱兎の如く声が聞こえた方向に駆け出す。

 

「私は行きます、この叫びからして尋常じゃない事が起こっている可能性があるので」

 

「待てぃ私も行くぞ! キリト君! じゃなかった天木君! んん!? 正宗君!? あ、いやベル君のピンチなら仏の出番だ! 待ってろ御手洗翔太く~ん!」

 

「そんな何べんも名前間違える薄情な奴に出番なんて無ぇよ!」

 

危険を顧みずにベルを助ける事だけを一心に考え単独で突っ走ろうとするリュー

 

そして人の名前を一度間違えると中々本当の名前を思い出せないという中年あるあるに苛まれている仏

 

そんな彼に呆れてツッコミを入れながら、ベートも一応彼等の後をついてくのであった。

 

 

 

 

 

悲鳴が聞こえてから数分後、リューとベートは遂にその声の主がいると思われる大きな扉の前へと来ていた。

 

「間違いありません、クラネルさんはここにいる」

「ここが最深部か、つう事はアイズもいる可能性があんな」

「ハァ……! ハァ……! お前等ホント走るの速過ぎ……!」

 

目の前に現れた扉を見上げて二人が呟いていると、その背後からゼェゼェと息を荒げながら仏もやっと追い付く。

 

「こっちはもう年でロクに走れないんだから……! 気を遣ってペース落とせよ!」

「それじゃあ開けます」

「はいまた仏スルー! いいよ別にもう慣れたから! 気にしないモンそんな事!」

 

疲れていてもなお無駄口をたたく仏を無視して、リューは頑丈そうな扉を両手で開く。

 

するとその扉の先には

 

予想だにしなかった衝撃的な光景がそこにあったのだ。

 

「なんと……」

「げ!」

「なに? え、え~……」

 

三人が各々驚く中、彼女達の目に映るモノは……

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! アイズさんダメです! それ以上やったら死んじゃいますって!」

 

「もう一度聞く、銀色ヌメヌメのモンスターはどこ?」

 

「あ、あ~……吾輩の首絞めないで……! もう許してくださいお願いします……! いやホントにもう、吾輩が悪かったです、反省してます……!」

 

館の部屋の中でも一層広い大広間にいたのは

 

悲鳴を上げてやり過ぎだと慌てて注意するベルと

 

彼の言葉に耳も貸さずに無表情で淡々と質問をぶつけるアイズ

 

そしてそんな彼女に尋ねられながらも、既にボコボコにされた痕跡がある顔面白塗りの…… 

 

「あ……」

 

アイズに首を絞められながら今にもヤバそうな男が扉を開けたリュー達に気付くとそちらの方へ顔を向けて

 

「フッフッフ、よくぞ来たな冒険者達よ……! 吾輩は悪魔神官・ハーゴンだ……! だが今はちょっと取り込んでるんでまた後に来るのだぁ……! あ、でも出来るならちょっと助けて貰えないでしょうか……この子思った以上にすんごい強くてですね……」

 

苦しそうに顔を歪めながらこちらに必死に助けを求めるその姿に

 

三人は言葉を失いポカンと口を開けて固まるしか無かったのであった。

 

悪魔神官・ハーゴン

 

仏達が赴く前に、まさかの討伐完了

 

 

次回、攻略、蝋人形の館

 

 

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