聖者ホトケと神の孫ベル   作:カイバーマン。

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二十四説 解決? 蝋人形の館

「ベル様~! うげ!」

 

「ベルくぅぅぅぅぅぅぅん!!」

 

「リリ!? いやちょ! 待ってください! どうして神様まで!?」

 

 

仏達がハーゴンを倒したアイズとベルと会ってからしばらくして

 

蝋人形の館にやってきたヘスティア一行も無事に彼等と合流する事が出来た。

 

大広間でベルの顔を見るなり、喜ぶリリを押しのけて感動の再会と言わんばかりにはち切れんばかりの笑顔でヘスティアは勢いよくベルに抱きつく。

 

「君があのヴァレン某に誘惑されてダンジョンの中にホイホイついて行ってしまったと聞いて! 居ても立っても居られずにここまではるばるやって来たんだよ!」

 

「い、いやーなんだか微妙に誤解していますけど神様に出会えて僕も嬉しいです、あれ? でも良いんですか? 神様がダンジョン内に入るのって禁止されてるんじゃ……」

 

「細かい事を気にするとハゲるぞベル君、まあボクは例え君がスキンヘッドになろうがありのままを受け入れてあげるけどね、だからボクに気を遣わず思う存分ハゲたまえ!」

 

「ハゲませんよ!」

 

ベルに会えた事が嬉し過ぎて変なテンションになってしまっているヘスティアに、ベルはすっかり押されてしまっていると

 

そこへヘスティアにとって最も憎むべきライバルだという事を全く自覚していない、ヴァレン某ことアイズがヒョコッと二人の傍に現れる。

 

「すみませんヘスティア様、彼が帰還出来ずにいた原因は、彼が私を心配してここまでついて来てしまったせいです、責任は私にあります」

 

「出たなヴァレン某! いよいよここに来てボクと決着つけるつもりか! メインヒロイン権獲得頂上決戦をお望みとあれば受けて立とうじゃないかッ!」

 

「落ち着いて下さい神様! 言ってる事意味わかりません!」

 

「君の無垢なるベル君を誘い込む策は素晴らしかった! あざとい天然キャラな所やベル君を魅了させてしまう戦略も! だが、しかし、まるで全然! このボクを倒すには程遠いんだよねぇ!」

 

「神様それ誰の真似ですか!?」

 

ベルとの再会の喜びと、宿敵の到来による怒りと嫉妬心により、どこぞの人物みたいな台詞を吐きながらアイズに食って掛かるヘスティアを、流石にヤバいと慌ててベルが後ろから彼女を羽交い絞めにする。

 

「とりあえずこうしてお互い無事に会えたんですから良いじゃないですか! 余計な争いはせずにもう家に帰りましょう!」

 

「離せベル君! これは女と女の戦いだ! ボクは今こそ君にとって誰が一番君に相応しい者なのかハッキリと証明して見せる!」

 

ベルに後ろから拘束されようともそれでもなおアイズに食って掛かろうとする女神・ヘスティア。

 

それに対してアイズは彼女の奇行を目のあたりにしてどう反応すればいいのやらと無表情で立ちすくむのであった。

 

そして彼女達から少し離れた場所で

 

「いやー……醜い、女の嫉妬は本当に醜いねぇ、ジジィのカミさん程じゃないけどアイツも相当ヤバい」

 

「やはりクラネルさんの主神ですから独占欲も強いんでしょうか、シルがあの女神に勝てるかどうか心配です」

 

ヘスティアの醜態を目にしながらのほほんと感想を呟く仏と、自分の友人に勝算があるのか冷静に分析するリューがそこにいた。

 

そして二人の隣にはあからさまに不審な人物。ハーゴンがまるでパーティーの一員の様ににこやかに笑いながら立ち

 

「あぁ~こういうの吾輩よくわからないんだけど、三角関係って言うんだっけ? いいね~神が人間と青春する良い時代になったモンだね~っぐふッ!!」

 

しかしその瞬間、腹に一撃食らわせられて呻くハーゴン

 

彼のお腹にボディブローをかましたのは、先程ヘスティアに邪魔されてベルと再会を喜び合う事が出来なかったおかげですっかりご機嫌ななめなリリ

 

「や、やった……! やりましたよベル様! なんかよくわからないけど妙に悪そうな奴をリリがやっつけました!」

 

「あ、その悪魔なら既にアイズさんがとっくの昔に倒してましたよ」

 

「えぇー!?」

 

目の前で苦痛に呻くハーゴンを見てリリは歓喜の雄叫びを上げるも、そこへリューが冷静に彼の正体を話す。

 

「その悪魔、色んなモンスターを使役する力はあるみたいですが、肝心の本体は見掛け倒しだったみたいです」

 

「てことはあまり強くないんですかこの男……」

 

「どちらかというと弱い部類に入るかと」

 

「……私達そんな奴のおかげで大騒ぎしてたんですか? はぁ~なんだか拍子抜けというか盛り上がりに欠けるというか……」

 

リューの説明を聞いて目の前で「イタタタ……」とお腹を押さえて痛がっているハーゴンを見つめながらリリがガッカリと肩を落とすも、「まあいいんじゃね?」と仏は何もかも無事に終わればそれでよしと満足げな様子。

 

「撮れ高は無かったけど、これでマルッとスッキリ解決出来たんだから。誰もがみんなハッピーでエンディングを迎えられる事が、一番のご褒美だと私は思います!」

 

「なに勝手に上手く纏めて終わらせようとしてるんですかあなたは?」

 

これ以上ゴタゴタが続くといずれ自分がやらかした事が公に出ると恐れ、仏がここでスパッと終わらせてエンディングにしようとしていた所で、冷ややかな視線を向けながら彼の天敵、リューが口を挟む。

 

「言っておくけど私は気付いていますからね、クラネルさんがこの悪魔の破壊神だのなんだのに巻き込まれた原因はあなたにあると」

 

「は!? それどういう事ですかリューさん!? ベル様がここに迷い込んだ原因が仏様にあるって!」

 

「言葉通りの意味ですよ、このブツブツ頭こそ我々が本当に倒すべき敵だったんです」

 

「なるほどそうだったんですか、では倒しましょうか」

 

「おっとー! 私が原因なのかどうか詳しくも聞かずに、もう私を倒す気満々でファイティングポーズ取るとはどういう事だチビ助ー!?」

 

とりあえずこの仏を懲らしめるチャンスが出来るのであればそれでいいと言った感じで拳を構えるリリに、仏はすぐ様危機感を覚えてジリジリと歩み寄って来る彼女とリューから逃げ回る。

 

結局仏は自らがやらかした事の責任を取る羽目になってが、大きな犠牲も無く破壊神が復活する事も無く、少々拍子抜けだがあっさりとこの騒動は幕を閉じるのであった。

 

これにて世界に迫りくる脅威は消し去り、彼等は再び平穏なる日常を取り戻す事であろう。

 

 

 

 

 

「まだだ、まだ終わらぬぞ吾輩は……! 破壊神様に、破壊神様に穢れなき無垢なる魂を捧げさえすれば……!」

 

っと思われたのだが……

 

どうやら物語はここで終わりという訳にはいかないみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

そしてその頃、蝋人形の館の一階ではベートが追い付かれぬよう必死に逃げ回っていた。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!! なんでテメェがここに来てやがんだぁぁぁぁぁ!!!」

 

「イッケメーン♂!!」

 

ここに来るまで幾度の試練もなんとか乗り越えて来たベートであったが、最後の最後に彼の前に現れたのはなんと屈強な肉体を惜しげも無く晒すパンツ一丁のナイスガイ♂、兄貴であった。

 

かつて力づくで大切なモノを奪われてしまったベートにとっては正にトラウマの中のトラウマであり

 

そんな兄貴とダンジョンに鉢合わせしてしまっては、もはや戦意すら消え失せただただ逃げるしか彼には残されていなかった。

 

「カモーン♂!」

 

「来るんじゃねぇ化け物! これ以上俺は心に闇を抱えたくねぇんだよ!!」

 

どんだけ逃げても兄貴はまるで鬼ごっこでもしてるかのように無邪気に笑いながら、楽しんでる様子でどこまで追いかけて来る。

 

その笑顔に一層背筋が凍り付くほどの恐怖を感じつつ、ベートが破壊神の部屋の前にまで差し掛かると

 

「待つんだベート……」

 

「げぇ! オッタル!」

 

突如彼の目の前に現れたのは兄貴よりも巨漢のオッタルであった。

 

しかし以前見た時とはどこか違うとベートは違和感を覚える、明らかに彼の目が死んでいたからだ……

 

「どうしてテメェが邪魔を! は! まさかテメェも兄貴に……!」

 

「そのまさかだ、冒険者として長く死線を潜り抜けて来た俺だがあのような”経験”は未だかつてない程の体験であった……お前にも同じ体験をさせてやろう……」

 

「なんでそうなるんだよ!? 俺はお前よりも先にとっくに体験してるんだよ! 同じ目に遭わせるなら今度はあのトマト野郎かペヤング野郎だろそこは!」

 

「いやお前でなければならないんだ、悔しいが兄貴のお気に入りはお前みたいなのでな……俺の事などただの遊びとしか思っていないらしい……」

 

「へ?」

 

心なしかちょっと悔しそうに何か呟かなかったこの男と、ベートはオッタルの様子にますます不安を覚える。

 

 

「大丈夫だ安心しろ、きっと今度こそ今まで見えなかった新しい道を見つける事が出来るはずだ、さあ力を抜けベート、そして兄貴の全てを受け入れるのだ」

 

「ちょちょちょちょっと待ておい! うっそだろお前! フレイヤ・ファミリアのお前が! あの女狐に誰よりも心酔しているお前が! まさかこの化け物に!? いやいやいやいや!」

 

「化け物ではない兄貴だ、そして今日から俺達は兄貴♂ファミリアだ、仲よくしよう兄弟♂」

 

「うぎゃぁぁぁぁぁぁ目覚めやがったコイツ! 最強と呼ばれたレベル7の冒険者のクセがあっさり兄貴に鞍替えしやがった!!」

 

前門のオッタル、後門に兄貴。

 

二人の巨漢に挟まれて絶体絶命のピンチにベートは顔を青ざめながら頭の中に走馬灯が駆け巡っていると

 

 

 

 

 

「お~い、あんちゃん達、さっきからうるせぇぞコノヤロー」

「!」

 

突然、何処からか見知らぬ声が耳に入って来たのでベートはビクッと反応する。

 

低くしわがれたその声を、オッタルと兄貴も聞こえたのかふと足を止めて何処から聞こえたのかと周りを見渡していると

 

「人が寝てる部屋の前で、野郎共三人でいかがわしい事おっ始めようとしてんじゃねぇよバカヤロー」

 

「おいこの声……ひょっとしてこの部屋から聞こえてねぇか?」

 

「どうやらそうみたいだな……」

 

もう一度聞こえた声は明らかに彼等のすぐ目の前にいる部屋からだった。

 

ここは『破壊神様の部屋』と書かれた部屋……

 

「なんなららっきょの奴も呼んでよ、お前等とらっきょで、誰が一番先に土佐犬のタマ触れるか対決とかやってみろよ、まあ今のテレビじゃ絶対流せねぇだろうけどな、へへっ」

 

「誰だよらっきょって……つかこの部屋にいるって事はテメェまさか……」

 

ドアの向こう側から聞こえて来る声に耳を傾けながら、ベートは眉間にしわを寄せてそっとドアの方へ近寄ると

 

「パチュリー! うー☆」

 

「ってげぇ! 兄貴!」

 

「ホイホイチャーハン?」

 

彼を押しのけてドアの方へ近寄ったのはまさかの兄貴、ドアの向こうにいる人物が「男性」だと察して、居ても経ってもいられなくなったみたいでニヤニヤしている。

 

「まさかテメェ……この部屋に入ろうとかしてんじゃねぇだろうな……」

 

「そうでーちゅ♂」

 

この部屋は破壊神の部屋……ハーゴンが弱かったとはいえ、ここにはあのロキやフレイヤでさえ厄介と称する、世界を破壊に導く程の神が封印されている可能性が高い、迂闊に立ち入る事はいくら兄貴とて絶対にマズイ。

 

しかし自らの欲望に逆らう事はしない性格なのか、兄貴は興味津々のご様子でドアノブに触れてしまう。

 

「おいおい大丈夫かあの野郎……まあ死んでくれた方がこちらとしては都合が良いけどよ……」

 

「残念だったなベート、どうやら兄貴はお前より先に新しい男がいたもんだからそっちを最初につまむつもりらしい」

 

「いや全然残念じゃねぇし、てかお前マジで手遅れなの? もう引き返す事出来ねぇの? 知らねぇぞ俺?」

 

後ろから自分の方に優しく手を置くオッタルに、ベートは哀れみながら彼の方へ顔を上げている隙に

 

「歪みねぇな~」

 

兄貴はホイホイと破壊神の部屋をガチャリと開けて中へと入ってしまうのであった。

 

するとその時、部屋の中から

 

「あ~? 誰だよいきなり人の部屋に入って来て……うげ、色っぺぇネェちゃんなら歓迎したけど、よりによってそっち系の外人じゃねぇかコノヤロー! ふざけんなチェンジチェンジ! 水道橋の所行って来い!」

 

「カモーン!」

 

どうやら兄貴は部屋の中にいる者と接触したらしい、相手は兄貴を見るや否やすぐに呻き声を上げて嫌がるが、次の瞬間「ん?」と何かに気付いた様子で

 

「おいちょっと待て外人のあんちゃん……お前まさか、オイラと同じ異端の神様かい?」

 

「仕方ないね♂」

 

「……こいつはたまげた、オイラが復活するときに必要な純粋無垢な穢れなき魂まで持ってやがる……へへ、あの相撲好きの悪魔の野郎にしちゃ極上のモンを持ってきてくれたみてぇだな」

 

急に部屋の中から不穏な雰囲気が匂い始める。

 

それもとんでもなくヤバい事が、世界を揺るがす程の出来事が今から起こり得そうな……

 

「おい兄貴! さっさとこっち戻ってこい! テメェが話してる相手は……!」

 

「まあ美人なネェちゃんじゃねぇのが残念だけどよ、貰うわ、あんちゃんの魂」

 

「あーん? 茂美怖いでしょう?」

 

急いでベートが部屋に入り込もうしたその瞬間、開いてるドアの隙間から突然カッと黒い煙の様な立ち込み始め……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーーーーーーーーーーッ!!!!」

 

部屋の中から聞こえた雄叫びに、入ろうとしていたベートと後ろのオッタルは咄嗟に後ろにのけ反った。

 

このいつも兄貴が欲望のままに襲って、相手に上げさせる悲鳴が

 

 

 

 

今回は兄貴の叫び声であったのだ。

 

 

次回、復活、破壊神

 

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