聖者ホトケと神の孫ベル   作:カイバーマン。

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二十六説 真の黒幕、仏

前回のあらすじ

 

破壊神シドーは元々仏の世界にいた創造の神だった。

 

そして仏は何も考えずに後にベル達の世界を破滅寸前にまで追い込む彼を送った戦犯だった。

 

 

 

 

つまり、仏のせいで世界がヤバい

 

 

 

 

 

「あん時はもう溜まりに溜まったうっ憤を晴らす為に散々暴れ回ってすげー楽しかったのによ、そのせいでゼウスとかいうクソジジィに封印されちまって参ったぜチクショウ」

 

「うん、うん、そうかー、でも私、羽目を外してこいとは言ったけど……まさかそこまで外しちゃうとは思わなかったなー、まさか世界を滅ぼそうとしちゃうなんて全然考えてなかったなー」

 

仏は破壊神と化したかつての同郷の中であるシドーの苦労話を、頬を引きつらせながらえらく動揺している様子で聞いていた。

 

まさか全ての元凶がここに来て自分だったとは夢にも思っていなかったのだ。

 

「それであの~タケちゃん? あ、今はシドーって名乗ってんだっけ? シドーさんはその……この度復活しましたけどその~……これからどうします? 過去の過ちを反省して大人しくしておきますとか思ってくれてます?」

 

「なに言ってんだよバカヤロー! こうしてまた復活出来たならやる事は一つしかねぇだろ! またこの世界をぶっ壊してやるに決まってんだろコノヤロー! それとゼウスの野郎を今度こそぶっ殺してやる!」

 

「オホホホホ! ですよねー! もうすっかり破壊神だもんねー! もはや私一人じゃ抑えきる事の出来ない程滅茶苦茶ヤバい破壊神様になっちゃったんですもんねー!」

 

出来れば今後は問題を起こさずこの世界に何も危害を加えないで欲しいと願う仏であったが

 

その願いも虚しく破壊神シドーはもうすっかり自分を封印したゼウス、そしてこの世界を滅ぼす気満々のご様子。

 

これには流石に仏も手詰まりの状態のご様子で

 

「ごめん、みんな、この件はちょっと私の手には負えないかなぁ……」

 

と言いながらチラリと助けを求めるかの様に振り返ると……

 

 

 

そこにはこちらにむかってゴミを見るかのような目つきで剣を振り上げるリューの姿が

 

「初めて会った時からいつかこうなる時が来ると思っていましたよ……さあ、この世界に懺悔しながら死に果てなさい仏……」

 

「あぁぁぁぁぁぁ~~~! 未だかつてない程の殺意に満ち溢れたむっつり! むっつり様が神殺しを行おうとしている~~~!!」

 

いつか絶対本気で殺そうと常々思っていたリューは、絶好の大義名分を得た事により遂に実行に動き始めたのだ。

 

今にも躊躇なく手に持つ細剣を振り下ろそうとして来るリューに、仏は命の危機をガチで感じて慌てて他の者の方へすがり寄る。

 

「紐様、紐様、女神であるあなたならね、同じ神である仏をね、助けてくれるよね絶対」

 

「ううん、君が全ての元凶だとわかったからもう絶対助けない、大人しく彼女に斬られてくれ」

 

「むっちゃいい笑顔で言うんじゃないよそんな事! お前なんかもう友達じゃねぇよバカ野郎! 絶交だ絶交!」

 

「元から君とは友達になったつもりはないんだけど?」

 

もはや愛想は尽きたと笑顔で彼の最期を見送ろうとするヘスティアに、女神の慈悲もあったもんじゃないと仏は悪態を突きながら今度はリリの方へ振り返ると、縋るように駆け寄って行き

 

「あの、賢くて可愛いお嬢さん、どうかこの私、仏が助かる可能性を是非とも教えていただきたいのですが……」

 

「はぁ……ここはもう諦めついて潔く最期を迎えたらどうです? あなたがリリ達の世界を滅ぼしかけた全ての元凶なんですから、責任取ってその命で償って下さい、以上、永遠にさようなら」

 

「いやだ~! もうなんか「めんどくせぇから話しかけんなイケメン野郎」って感じを全力で出しながら投げやりにならんといて~!」

 

「イケメン野郎とは微塵も思ってないですよ」

 

ヘスティアの時と同様彼女にも助けを求める仏だが、リリはただこちらにジト目を向けながら心底呆れた様子で彼を冷たく突き放す。

 

「あー四面楚歌ー、今の私超嫌われてるー、誰でもいいから助けてー」

 

「必死な割にはやけに軽い感じで助け求めますね」

 

完全にアウェイという状況の中で仏は頭を抱えながら、もはや己の人望の無さにショックを受けるしかなかった。

 

しかしリューはそんな事お構いなしに剣を振り上げ、マジでぶった斬ろうと詰め寄っていく。

 

するとそこへ

 

「ま、待ってください皆さん! いくらなんでも仏様を殺すのはあんまりですよ!」

 

「はい出ました主人公ー!」

 

リューに殺されかけていた寸での所で、颯爽と駆けつけて仏の盾となるように身を張って制止をかけたのはベルであった。

 

彼の登場に実はちょっと期待していた仏はすぐにいつものウザいテンションに逆戻り

 

「確かに僕等の世界が大変な事になっているのは仏様のうっかりのせいです! ですがこの世界が崩壊し掛けた張本人はあの破壊神シドーですよ! ならまずはあっちを倒すべきです!」

 

「そうだそうだ仏は偉いんだぞ! 私は何もしてねぇじゃん! 悪いのはタケちゃんだ! 私は悪くねぇ!」

 

「クラネルさんに援護された途端急に強気になりましたね……バカの声を聞いているとイライラしますよホント……」

 

元凶よりもまず先に倒すべき相手は別にいると慌ててリューを説得しようと試みる

 

ベルの背後で仏がウキウキした様子でこちらに叫んでくるのでそれがまた癪に障るとイラッと来ている彼女であったが、ヘスティアの方は彼の意見にも納得がいくとため息をつき

 

「全くどこまでお人好しなんだベル君は……ていうかもう人が良いというより甘いって言うべきかな? でもねベル君、流石に世界が滅ぶ原因を作った事はうっかりじゃ見逃せないよ、殺しはしなくてもせめて後で責任は取って貰わないと」

 

「ん~まあリリもベル様のその寛容なお心に許されて今もなおこうして生き長らえているので感謝はしているのですが……今回ばかりはそうあっさり許しちゃいけない事だとリリは思います、なんらかの罰を与えるべきです」

 

「残念ですがクラネルさん、あなたの意見はもっともだがどうしても私はこの神が生理的に受け付けないんです、破壊神以前に一度斬っておかないと気が済まないんです私」

 

「なんでだろう、神様とリリは妥協してくれたのにリューさんの殺意は増すばかりだ……」

 

「アイツ私の事嫌いだからね~……」

 

とりあえずヘスティアとリリは命までは取らないと言ってくれたものの、リューは以前仏を斬る気満々のご様子。

 

これにはベルも困り果て、チラリと他の面子の方へ振り返り

 

「アイズさん達もわかってくれますよね! ここで仏様を殺す意味なんて無いって!」

 

「今の私は銀色ヌメヌメモンスター以外全てどうでもいい」

 

「あ? どっちでもいいわボケ、いいからさっさと破壊神ぶっ倒すぞトマト野郎」

 

「兄貴こそ俺にとって至高の神、それ以外はどうなろうと構わん」

 

「え、え~……皆さん仏様がどうなろうが知らないスタンスなんですか……?」

 

「ねぇなんか冷た過ぎない? 薄々気づいてたけどこの面子、あまりにも私の事軽んじし過ぎじゃない?」

 

仏頂面で素っ気なく呟くアイズと、ぶっきらぼうに返すベート、そしてもはや引き返せない様子のオッタル

 

各々の反応がかなり冷たかったのでベルはますます困った様子で呟くも、こうなったらと拳を固めて仏の方へ振り返る。

 

「仏様、ここはリューさんに斬られる前に自らの手で破壊神を倒しましょう! 死に物狂いで戦うお姿を見ればきっとリューさんも”今は”殺すの止めておこうと思いますよきっと! ”今は”!」

 

「おいおいおーい! ここに来てもう打つ手がないから玉砕覚悟でラスボスに挑めってか!? も~無理だって~!」

 

男は度胸、なんでもやってみるモンだという熱い心意気で仏に戦う姿勢を促すベルであったが、そんな熱意に対しても仏は空気を読まずにブンブンと顔を横に振った。

 

「言っておくけど私ってば偉い神様だけど戦う事に関しては全くの専門外だからね! それにこのダンジョンの中じゃ神の力を使っちゃいけないんでしょ!」

 

「でもほら! こうしてる間にもリューさんがもうジリジリと歩み寄って仏様の背後を完全に取っていますよ! もう逃げ場はないんですよ仏様には!」

 

「いや~~~~!!! でもいきなり斬りかかろうとはしないからちょっと優しいこの子!」

 

既に仏の背後では今か今かとタイミングを待ってスタンバっているリューの姿が、慌てて叫ぶベルに仏は情けない声を上げながら、もはや残された道は一つしか無かった。

 

「わかりましたやります! 友の過ちを正すのは友の役目! ここらで仏! いっちょ男を見せて破壊神に挑ませて頂きます!」

 

「おお!」

 

ヤケクソ気味に腹をくくると、仏はシドーと戦う事を決意、するとそれを聞いたシドーは「お?」と顔を彼の方へ向ける。

 

「ちょっと待てよホトちゃん、もしかしてオイラと戦うって言うのかい? なんでだよ、俺達友達じゃねぇか」

 

「黙らっしゃい! 仏の導きは悪を駆逐する為! 破滅に導こうとする今の貴様はもはや邪悪の根源そのもの! ならばかつての友であるこの私の手によって! 悪に墜ちた貴様を討ち滅ぼす事は仏の通りである!」

 

「しょうがねぇな~、まあちとやりにくいけど、そっちがやる気なら仕方ねぇか」

 

「おう! お手柔らかにお願いします! それと出来れば手加減してください! あと命だけは取らないでください!」

 

「おい、なんか急にカッコ悪くなってるぞ、相変わらず締まらねぇな」

 

こちらに拳を構えて戦う姿勢を見せつける仏に対し、苦笑しながらシドーもまたようやく封印されていた力をこの場で使ってみようとゆっくり動き出したのであった。

 

「オイラとやろうってんなら誰だろうと容赦しねぇぞ、よしかかってこいホトちゃん、いっちょリハビリがてらに戦ってやるぜ」

 

「いよーし! かかってこいコラー! 破壊神がなんぼのもんじゃいボケー!」

 

「頑張ってください仏様!」

 

周りに目もくれずに仏だけを相手にしてやるといった感じで静かに笑うシドー。

 

ベルの応援を背中で受けながら仏もまた勇気を振り絞って彼と対峙。

 

今、破壊神と仏の戦いが幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

だがその時

 

「あ、ごめん、ちょっと待って」

 

「ん?」

 

「え、どうしたんですか仏様?」

 

「いや今ちょっとね。天界から連絡来た、ちょちょ、ちょっと待ってホント、すぐ済むから」

 

 

急にこめかみを押さえながらシドーとベルに待ってくれと言い出す仏。

 

何事だと首を傾げる彼等をよそに、仏はこちらに背を向けてブツブツと呟き出す。

 

「うん……うん……あ、倒したの! ついさっき!? へ~、じゃああの、私行かないとダメだよね……? いやいやお前一人じゃ無理だって! ここは先輩に任せとけって!」

 

ベルは不思議に思った。

 

ここにはいない別の人物と会話してるかのように呟く仏だが、今から破壊神に挑む割にはやけにその顔にはいやらしい笑みが見える。

 

まるで突然のタイミングで予想だにしなかった幸運を見つけたといわんばかりの表情だ。

 

「あ、そうじゃあすぐに私も行くから、いや全然、忙しくないから、今丁度暇してた所だし、平気平気すぐ行きまーす、あ、そうだ、パッドバズーカ事件はごめ……あ、その話は無しで、了解でーす」

 

最後に何度か頭を下げながらそう言うと、会話を終えたのか仏はふぅ~とため息をつき、改まった様子でこちらの方へ振り返ると

 

 

 

 

 

「え~誠に申し訳ありませんが、私が担当する勇者一行が今無事に魔王を倒す事に成功したという連絡が入ったので、このタイミングで言うのもアレなんですが」

 

 

 

 

 

「担当責任者としては私は急遽あちらの世界に向かわなけばいけない事になりました」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

「ど、どういう事だい仏!」

 

ここでまさかの離脱宣言である

 

あまりにも急展開過ぎてベルも思考が追いつかず、ヘスティアもまたふざけるなと慌てて彼の方へ駆け寄った。

 

「今こっちの世界が君のせいで大変な事になってるのに! このタイミングで余所の方へ行く気なのか!? いくらなんでもそれは笑えないぞ!」

 

「いやーすみませんねホント、私もホントはこっちに残りたいんだけど、仕事上それは通らなくてさー、マジでごめん、もうホントに超ごめん」

 

「いやさっき暇してるからすぐに行きまーすとか言ってただろ! それに向こうは別に君がいなくてもなんとかなりそうな雰囲気だったぞ!」

 

「……ハハハ」

 

「笑って誤魔化せるか! さては目の前のボスを相手に逃げる気だな!」

 

仏の思惑など長い付き合いですぐにわかる、ヘスティアは気付いた。ここに来て仏は仕事だなんだの建て前を立ててこの場でとんずらをかまそうとしているのだ、よりにもよってラスボスと戦うという物語のクライマックスで

 

 

彼の数々の身勝手な行動には幾度も呆れて来たヘスティアであったが、こればっかりは援護しようのない最悪の所業だ。

 

周りの者もこれにはドン引きしている様子で、彼をずっと匿ってくれていたベルも言葉を失ってると

 

「いやはや元から軽蔑していたが恐れ入りましたよ」

 

そこへリューがフラリと仏の方へ歩み寄る。手に持つ剣を地面スレスレに動かしながら、その眼には今まで以上に強い殺気が現れている。

 

「あっさりと底値更新だ、おめでとうございます仏、さて、懺悔の準備は出来ましたか?」

 

「えー懺悔ですか、はいそうですね、それでは最後に言わせてください」

 

氷の様な冷たい視線を受けながら、意外にも仏は落ち着いたそぶりを見せながら懐をゴソゴソと探り出す。

 

そして

 

「今まで散々迷惑かけてしまった皆さんに、えー私からの最後の言葉を贈ろうと思います」

 

「あ!」

 

仏が懐から取り出したある物を見て、リューよりも先にリリが気付いた。

 

アレはこのダンジョン内に落ちていた、書かれている言葉を呟くだけでどんな呪文も使える不思議な巻物だ、何時の間に彼は手に入れていたのだろう。

 

もしかしたら、前々からこういう事態が起きる事を予測してこっそり拾っておいたのでは……

 

「リューさん早くその巻物を取り上げて下さい! 仏様はなにかしようと企んで……!」

 

「それでは皆さんお聞きください」

 

慌ててリリが手を伸ばしてリューに叫ぶが時すでに遅し

 

仏は全員を見渡しながらスゥ~と息を吸うと大声で……

 

 

 

 

 

 

 

「リレミト~~~~~~~!!!!」

「「「「「!?」」」」」

 

仏が力強くそう叫んだ瞬間、彼の姿が一瞬にして全員の目の前でパッと消えてしまう。

 

行方をくらます効果の呪文、いやきっとそれだけではない、別の世界へ行くと言っていたのだから恐らくダンジョンから一瞬で脱出出来るような、それぐらいの芸当が出来る呪文だったのだ。

 

「えーと神様……仏様ひょっとして……僕等を残して逃げちゃったんですかね……?」

 

「く~!! 仏めぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「最・低・です!! なんなんですかあの外道! どうしてあんなのが神様なんですか! もう絶対に許しません!! リリの怒りは頂天に達しました!」

 

自分達を置いて消えてしまった仏に地団駄を踏んで悔しがるヘスティア、そしてリリもまた怒り心頭といった感じで既にいない仏に悪態をつきまくる。

 

しかしそんな中、ずっと仏に対して嫌悪感と苛立ちと殺意しか無かったリューは、当然この所業には一番の怒りを露わにするであろうと思われていたのだが

 

「……」

 

何故かその場で無言で固まり、仏が消えてしまった所をじっと見つめながら神妙な面持ちで立っているだけで特になんの反応もしなかったのだ。

 

「まさか……」

 

「へっへっへ、こうなるとは思ってたぜ」

 

するとそこへ、破壊神シドーの笑い声が木霊する。

 

「アイツはよぉ、昔からああいう奴なんだよ、どんな目に遭っても自分だけは助かろうとする、誰を見捨てる事になろうともな、人がどうなろうが世界がどうなろうが、結局アイツは自分一人が助かればそれでいいのさ」

 

「黙ってろ破壊神! 今ボク等の怒りの矛先は仏だけに向けられてるんだ! お前なんかもうどこにでも行ってしまえ!!」

 

「そんなつれない事言うなよコノヤロー、せっかく復活出来たんだからよ、オイラの遊びに付き合ってくれや……」

 

「!」

 

「遊びのルールは至って単純、オイラが世界を破壊し、お前達はそれを食い止める、そんで消えちまった方が負け、よぉし久々にいっちょ派手にやろうかねぇ」

 

仏に対して腸が煮えくり返っているヘスティアに、シドーはへらへら笑いながらそう静かに呟くと、彼の雰囲気がゆっくりと変わっていくのを感じた。

 

全身が漆黒に染まっていき、人間の姿から徐々に変貌し始め、みるみるその身体が大きく肥大し始め、そして蝋人形の館は天井から崩壊していき……

 

 

 

 

 

 

「グギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」

 

 

天井が跡形も無く消え去った上空で、六本の手足を持ち、尾は蛇、翼はコウモリ、顔は竜の様な巨大な化け物が突如現れ咆哮を上げたのだ。

 

アレこそ正に破壊神シドーの偽りなき姿なのだ。

 

目の前に降臨したその真の姿を前にして、一同は仏の事などすっかり忘れてしまう。

 

「……コイツは……予想以上にヤベェな」

「……その様だな、フレイヤ様が懸念していたのがコレでハッキリと分かった」

 

軽口を叩く余裕さえ起きないとベートは眉をひそめ、さっきまでおかしかったオッタルも真面目に戻っていた。

 

「ど、どうしましょうアイズさん……こんなの僕等だけで一体……」

「倒すしかない、そして生き延びる、私にはまだ、やるべき事があるんだから」

 

現れた怪物を見上げ、恐怖が交じった表情で不安そうに呟くベルに対し、アイズもまた覚悟を決めるしかないと剣を抜いて本気で戦う体勢に入る。

 

「見て下さいヘスティア様、仏のクソ野郎が連れて来た化け物が今リリ達を殺そうとしていますよ……こんなの絶対勝てっこないですってば……」

 

「フン、たかがデカくなっただけで諦めるなんて君もまだまだだね、相手が神だろうがボクは君達で何とか出来るって信じてるよ、人は時に神の予想をも超えてしまう事を成し遂げてしまう面白い生き物なんだから」

 

ネガティブ思考に陥りもはや戦意すら失いかけて自らの死を悟るリリとは対照的に、ヘスティアはこちらを見下ろすシドーを負けじと睨み返しながら本気でそう思ってるかの様に力強く呟いている。

 

そしてリューはというと、真の正体を現したシドーを呆然と見つめてはいるが、頭の中では別の事を考えていた。

 

(あの時、消える間際に私にだけ聞こえるようにあの男は確かに言った……)

 

 

さっきからリューがずっと気になっていたのは、リレミトを使って逃げ出した仏が最後に自分に向けて贈った言葉であった、それが彼女の中でずっと引っ掛かっている。

 

彼の去り際の言葉は

 

 

 

 

 

 

『かつて女神・アストレアに仕えしリュー・リオンよ、彼女に変わり私がお前を救う英雄を授けよう』

 

どういう意味なのかはまだわからない、力ではなく英雄を授けるとは一体……

 

それにどうして”彼女”の事を知って……

 

「いや、今はそれを考える必要は無い」

 

ただ一つ、この場で自分がやっておかねばいけない事がある。

 

「あのふざけた神を全力でぶった斬るまでは」

 

 

 

 

 

「こんな所で死ぬ訳には行かない」

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」

 

咆哮を上げる巨大な怪物に対してリューは剣を構えて対峙する。

 

いずれ”その時”が来るまで、なんとしてでもこの場で破壊の神を食い止めようと強い覚悟を持って

 

 

 

次回、???

 

 

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