聖者ホトケと神の孫ベル   作:カイバーマン。

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仏10号
二十八説 勇者、帰りたがる


世界の滅亡がダンジョン内で始まろうとしたその時

 

そこへ駆けつけ助けにやって来たのは、紫色のターバンを頭に巻いた謎の人物

 

その名はヨシヒコ、彼はまたしても異世界に振り立ったのだ。

 

「ヨシヒコ、さん……てことは仏様から前に聞いたあの伝説の……!」

 

「なるほど、彼が仏が連れて来るとか言っていた英雄でしたか……」

 

「リューさんは知ってたんですか!? 伝説の勇者様がやってくる事を!」

 

「去り際に仏が言っていたので、しかしそれがこの様な男だったとは……」

 

破壊神シドーの攻撃に真っ向から挑み、両手に持った剣でバッサリとその攻撃を斬り伏せてしまう程の強者。

 

コレが勇者と呼ばれし者の力なのかと、ベルとリューが無言で見つめていると、彼はこちらへゆっくりと振り返り

 

「……すまない、ここはどこだ」

 

「へ?」

 

真顔で不意に尋ねて来たヨシヒコに、ベルが一瞬呆気に取られるものの、すぐに彼に向かって口を開いた。

 

「えと……ヨシヒコ、さんですよね? 勇者様の……この世界を救う為に仏様が連れて来たんじゃ……」

 

「いや、そんな話は聞いていない」

 

「ええ!?」

 

「仏によって仲間と共に元の世界へ帰る筈だったんだが、気が付いたら目の前にいきなり凄い炎が飛んで来たので思わず斬ってしまった」

 

淡々とした口調で経緯を話すヨシヒコだが、どうも彼と上手く話が噛み合わない

 

もしかして仏は勇者ヨシヒコになんの説明もなくいきなりこっちの世界に飛ばしたのだろうか……

 

「少年、ここの出口は一体どこだ、私は早く故郷のカボイの村に帰らなければ」

 

「ええー!? 帰るんですか!? だってほら! 恐ろしい破壊神が目の前にいるんですよ!?」

 

「破壊神……?」

 

せっかく異世界にやって来たというのにもう帰りたがるヨシヒコに、慌ててベルが後方を指さして後ろに振り向かせると

 

ヨシヒコの前に異形な姿をした強大なる破壊の神・シドーがいた。

 

「我、ハカイスル……スベテハカイ……!」

 

「……」

 

こちらを見下ろしながら何か呟き始めるシドーを無言で見上げしばし見つめた後、ヨシヒコは再びベルの方へ振り返り

 

「それで、どこから行けばここを出られるのだろう」

 

「見た上でやっぱり帰るつもりなんですか!? 破壊神ですよ破壊神! どうかこの世界を救う為にやっつけて下さい勇者様!」

 

「いや私は魔王と戦う勇者であって、魔王じゃないなら別に……私がやらなくてもいいんじゃないかと」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

ここでまさかの破壊神を前にして、この世界の滅亡の危機を前にしてなお帰りたいと呟く勇者

 

非情にドライな対応にベルが思わず大声を上げていると、そこへ他の者達も何事かと集まって来る。

 

「どうしたんだいベル君! 一体何を慌てて……! って誰だいその男!? どこから湧いて出て来た!?」

 

「ヘスティア様見ていなかったですか? 先程破壊神の攻撃からベル様とリューさんを助けてくれたお人ですよ、どっから現れたのかはリリも知りませんけど」

 

「んん? どしたどした? なんか気になる事でもあったの?」

 

ベルの叫びを聞きつけて、ヘスティアとリリも駆け寄って来て

 

そして鼻の下にホクロを付けた金髪キノコヘッドの胡散臭い男も一緒にスキップでやって来た。

 

「神様大変です! この方はどうやら仏様がこの世界を救う為に召喚して下さった勇者・ヨシヒコ様らしいんです!」

 

「な、なんだってー!? 君がよく仏から聞いていた勇者ヨシヒコ君なのかい!?」

 

「でも相手が魔王じゃないなら専門外という事で帰るみたいです!」

 

「おう!? なんだそのマニュアル的対応は!」

 

「いやー、ウチのヨシヒコって昔からそういう子なんですよ、他人に厳しく自分にはとことん甘い子なんで」

 

ベルから話を聞いたヘスティアはすぐに慌ててヨシヒコの方へ振り向いた。隣で彼のフォローをしている金髪キノコヘッドを無視して

 

「えーと君がヨシヒコ君かい、話は仏から嫌という程聞かされたよ、なんでも魔王を幾度も倒し世界を救ってきた根っからの勇者だと聞いていたんだが?」

 

「……失礼ですがあなたは?」

 

「ボクは女神・ヘスティアさ、仏から聞いていないかい?」

 

「女神!? 凄い!」

 

 

子供っぽい外見の割にはかなりの巨乳だなとヨシヒコ自身がそんな感想を胸に抱いていると、ヘスティアが女神だと名乗った瞬間すぐに驚きの声を上げた。

 

「まさかまた女神と会う事になるとは! あの、失礼ですが女神は水色の髪をした女神と胸をパッドで誤魔化す女神を知っていますか!?」

 

「水色の髪をした女神……あーひょっとしてこことは別の世界で水の女神とか名乗ってるあのいつもやかましい子か、何度か一緒に飲んだ事あるよ? 胸をパッドで誤魔化す女神ってのはよく知らないなー、その水の女神の後輩ちゃんなら知ってるけど」

 

「ヘスティア様、今はそういう世間話をしてる暇ないとリリは思うのですが?」

 

不意にヨシヒコの方から尋ねられたので律儀に答えてあげるヘスティアだが、そんな事している場合では無いとリリが冷静にツッコミを入れて間に入る。

 

「あの、あなた勇者様なんですよね? 勇者様であれば普通は目の前で「全てを破壊するー」だののたまっている奴を野放しにして帰るとは到底思えないんですが? 違いますか?」

 

「違う、魔王を倒す事を宿命とする者が勇者だ、なら相手が魔王じゃないなら、勇者である私は戦う気はない」

 

「いや! そんな訳ないでしょ! 相手が魔王じゃないから駄目だとかそんな理由で勇者は断りませんよ! 目の前で困っている人! 困っている世界を救うのが勇者です! 言い訳ばっか言ってないでさっさと破壊神をやっつけて下さい!」

 

この期に及んで全く戦おうとしないヨシヒコについ説得の途中でカッとなって怒鳴るリリ

 

だがそれに対してヨシヒコもまた目を大きく見開き力強い口調で……

 

 

 

 

 

「破壊神なんてどうでもいい!!」

 

「「「「!?」」」」

 

「あーあ、出た出たヨシヒコの伝家の宝刀、どうでもいい宣言」

 

まさかの逆切れに一同一瞬言葉を失う、キノコヘッドだけは呆れたように呟いていた。

 

「いいですか皆さん、私はここに来る直前魔王を倒したばかりなんです! 竜王と呼ばれ、人の心を操る力を持った恐るべき魔王を頼もしき仲間たちと共に! だからもう私は全力で休みたいんです!」

 

「大変だったよねー、そんで魔王を倒したばかりの直後にこのデッカイ破壊神とかいう奴を倒せって、正直しんどいよねー」

 

「カボイの村に帰って、暖かい布団の中でグッスリ寝て、長い旅の間で出来なかった事をして沢山遊び呆けたいんです私は!」

 

「ん? はて、ヨシヒコ君は長い旅の間でも好き放題にやっていたと俺は記憶してるんだが?」

 

勇者とて人間、休みたい時は休みたいのだ、それが例え世界の滅亡の危機を目の当たりにしても。

 

しかしそんなワガママをこの状況で通せる筈も無く、彼の話を黙って聞いていたリューがようやく重い口を開いた。

 

「まあ仏が連れて来る勇者という時点で、どうせ俗世にまみれた人間が来るのだろうと薄々予想していましたから、これぐらい想定内です」

 

「ほほう、この誰もがドン引きするヨシヒコの叫びを前にしてその冷静を崩さぬ態度、この胸平娘、やりおる」

 

「しかしそんな私でも予想が付かないことが一つだけありました」

 

「おお? それは一体なんなんでござんすかね?」

 

リューの話に興味津々の様子でキノコヘッドが杖で体を支えながら首を傾げていると

 

そんな彼の方へ彼女がゆっくりと振り返り

 

「……あなた一体誰ですか? さっきからずっと周りでブツブツ呟いてるみたいですけど」

 

「あ、ようやく俺の存在にツッコんでくれる人がいた」

 

警戒の眼差しを向けて来るリューに

 

ヨシヒコの仲間の一人であるヘッポコ魔法使い・メレブがようやく気付いてくれた事に表情をほころばせた。

 

「うわ! なんだいこの頭にキノコを被った怪しい男は! 女神であるボクでさえ気配に気付けなかったぞ!」

 

「さては破壊神の手下ですね! ベル様まずはコイツをやっつけましょう!」

 

「ちょちょいちょーい、待って待って、俺さっきからずっと君たちの周りでウロチョロしてたぜ? なのになんで気付けなかったの?」

 

ヘスティアとリリもやっと彼の存在に気付いて驚くので、それにメレブが不思議そうに苦笑しているとベルもまた初めて彼を見たかのように怪訝な表情を浮かべ、恐る恐る話しかけてみた

 

「あの、失礼ですがもしやあなたも仏様が連れて来てくれた方ですか……?」

 

「うむ、よくぞ聞いてくれた白髪少年、何を隠そう俺こそ、ヨシヒコと共に幾度も世界を救った者の一人であり、世界中の誰もがあっと驚く凄い呪文を扱う事の出来る唯一無二の魔法使い、メレブとは私の事だよ」

 

「アッと驚く凄い呪文!? 凄い!」

 

「うわ、ヨシヒコと全く同じ反応、やだこの子、凄いピュア」

 

ベルの反応にメレブは満足げにヘラヘラと笑うと、そこへリューがヨシヒコの仲間と聞いて胡散臭く思いながらもとりあえず「何か役に立つのであれば」と彼から情報を引き出そうと試みる。

 

「どう見ても立派な魔法使いとは程遠く見えますが、本当に勇者の仲間であるのであればあなたに問いたい」

 

「ほう、それはつまりこの俺を頼っているという訳だな、よかろう、なんでも聞くがいい三代目胸平娘」

 

「とりあえずこの騒動終わったらあなたは斬るとして、このわからず屋で空気を読まない勇者をやる気にさせるにはどうすればいいのか教えて欲しい」

 

三代目という事は初代や二代目もいるのだろうかとかそんな疑問などすぐに頭から払拭し、リューは若干イラッとしながらもヨシヒコの扱い方についてメレブに聞いてみる

 

そうしている間もヨシヒコは頑なにベル達からのお願いを拒否していた。

 

「お願いします勇者様! 僕等の世界を救ってください!」

 

「くどい! 私は絶対に破壊神などと戦いはしない!」

 

「あーもうイライラする人ですね全く! リリ達がこんなにも頼んでるのに断るとかそれでも勇者ですかあなた!」

 

「勇者だって死にたくない! 私はこのまま無事に村に帰る!」

 

ベルとリリの必死の説得にも断固として破壊神と戦おうとしない勇者ヨシヒコ。そんな彼を冷たい目で一瞥するとリューは改まってメレブの方へと振り返り

 

「あの男を操るにはどうしたらいい」

 

「いやーそれに関しては長い付き合いである俺も知りたいぐらいだねー、まあ強いて言うなら? 仏とか水色頭の自称女神(笑)の言う事は多少聞く感じ、あと他の方法は~……」

 

メレブでも多少は言う事を利かせる事も出来るが、あそこまで全力で嫌がるヨシヒコとなると少々難しい。打つ手があるのであれば……

 

「ムチムチの巨乳の娘を餌にすれば、ホイホイなんでも聞いちゃう所あるんですよねー、はい」

 

「……勇者のクセにそんなので釣られるんですか」

 

「釣られる、全力で釣られる、おバカだから、ヨシヒコホントおバカだから」

 

巨乳の娘……そんなモノでいう事を聞くというのは果たして勇者としてどうなのであろうか……とリューは首を傾げて呆れつつも傍にいたヘスティアの方へ振り返り

 

「という事で上手い具合にあの勇者を誘惑して下さい、ヘスティア様」

 

「な! いきなり何をいいだすんだい君は!」

 

「だってここにいる女性の中で最も胸が大きいのはヘスティア様じゃないですか」

 

いきなりヨシヒコを誘惑しろと言われ流石に困惑の色を浮かべるヘスティアをよそに、澄ました表情でリューはヨシヒコの方へ振り返り

 

「勇者さん、いい加減破壊神の封印に協力してくれませんか? 手伝ってくれたらここにおられるヘスティア様が好きなだけ乳を揉んで良いという事なので」

 

「ちょ! そんな事すると言ったつもりはないぞボクは!」

 

勝手に話を進めておまけに変な追加報酬まで条件に加えだすリュー、しかしヨシヒコの反応は意外にも

 

「……」

 

相手が大好きな巨乳だというのに、ヨシヒコはヘスティアをジロジロと眺めながらも眉間にしわを寄せて悩んでいる様な表情であった。

 

そしてしばしの間を置くと左右に首を横に振り

 

「……確かに巨乳ではある……だが外見があまりにも幼過ぎるのでどうも女性として見る事が出来ない」

 

「はぁ!?」

 

「あちゃー、ヨシヒコはロリ巨乳属性は無かったかー」

 

「すみません、今回はご縁が無かったという事で」

 

「な、なんでボクが君にフラれたみたいな感じになってるの!?」

 

ペコリとこちらに頭を下げて謝るヨシヒコ

 

どうやら彼は巨乳であればなんでも良い、という訳ではないみたいだ。

 

何故かフラれてしまったみたいな感じになってしまったのでヘスティアが頭を抱えてショックを受けていると、メレブは「ドンマイ」と軽く茶化しながらふとリューの方へ振り返り

 

「こっちは……試す必要も無いか」

 

「……」

 

「リューさん落ち着いて下さい!」

 

ドサクサに失礼な言葉を浴びせて来たメレブに無言でリューが剣を振り上げたので、慌ててベルが後ろから羽交い絞めにして彼女を止める。

 

果たしてヨシヒコを見事やる気にさせる方法があるのだろうか……

 

 

 

 

 

 

そしてこんなアホなやり取りをしている間にも、破壊神はあらゆる術を持ってアイズ達を相手にしていた。

 

「グギャァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

ベル達がヨシヒコに気を取られている間にもアイズは果敢に攻め続けるも、それを全て無にするかのようにシドーは雄叫びを上げながら負った傷を……

 

『破壊神シドーはベホマを唱えた、HPが全快した』

 

「無詠唱の全回復魔法……凄い」

 

「クソが! 無詠唱の全回復なんざウチのエルフ野郎でも出来ねぇぞ!」

 

まるで何事も無かったかのようにみるみる傷が塞がって行き、あっという間に全回復してしまうシドーにアイズも素直に驚いた。

 

破壊の神であろうとかつては創造の神、破壊だけでなく己の傷を癒す事さえも容易となるとやはりこのままでは……

 

「やっぱ手数を揃えて一気に削り斬らねぇとこっちが先にくたばっちまうか……」

 

向こうは体力全快したがこちらには回復役などおらず、長引けばその分消耗し続ける一方だ。

 

これでは戦いにすらならないと、珍しく弱気になりながらベートは片膝を地面についてどうするべきかと奥歯を噛みしめていると……

 

 

 

 

 

「ベホマズン!!」

 

「!?」

 

突然背後から聞き慣れない女性の叫び声が聞こえたと思いきや、自分の体の傷がみるみる癒されている事に気付くベート。すぐに彼が振り返ると、そこに立っていたのは……

 

「あーもうあのクソ仏ぇ~! 苦労して魔王を倒したと思ったらいきなりこんな訳わかんねぇ所に飛ばしやがってー!」

 

「あぁ!? 誰だこのアマ! どっから湧いて出てきやがった!」

 

「私だって知らねぇよ! 元の世界に帰れると思ったらいきなりここに飛ばされたんだよ!」

 

誰であろうと喧嘩腰のベートに対し、負けじと乱暴な口調で返しながら不機嫌な様子の貧相な体つきをした謎の女性。

 

彼女もまたメレブと同じくヨシヒコの仲間の一人、村の娘でありながらなぜか上級呪文を扱う事が出来る者・ムラサキである。

 

「てかあのデカい魔物なに? なんか竜王と同じぐらいヤバく見えんだけど?」

 

「何もわかってねぇならすっこんでろ! そこにいると邪魔なんだよ!」

 

「んだとこの野郎! そのだっせぇ耳千切ってやろうかコラ!」

 

「上等だやってみろクソアマ! どこぞの双子アマゾネスの妹みてぇな貧相な乳してるクセに!」

 

「あぁぁぁぁぁん!? テメェ言っちゃいけない事言いやがったな! 謝れ! 私だけじゃなくてその妹ちゃんにも謝れ!」

 

この二人どうも相性が悪いのか、口の悪いベートに対してムラサキもまたヤンキー口調で応戦。

 

そんな不毛な争いを続けていると……

 

「よせベート、どうやら彼女達は、我々に助力する為に天から遣わされた英傑達らしい」

 

そこへオッタルがフラリと現れ、彼女がヨシヒコの仲間の一人だと既に知っている様な口振りで現れたのだ。

 

「この中々に魅力的な体付きをしたもみあげの長い男から、色々と話を聞かせて貰った」 

「全く仏の奴め、なんの話も言わずに俺達をこんな場所にほおり込みおって……」

 

「って今度は誰だそのオッサン!?」

 

「オッサン言うな!」

 

オッタルが連れて来たと思われる威厳のある顔付きをした凄味のある中年の男性。

 

またしても見知らぬ人物が現れた事にベートが驚くと、間髪入れずに男がオッサン呼ばわりされた事にすぐに反応した。

 

彼もまたヨシヒコの仲間の一人、年長者として、そして戦士としてヨシヒコ達の盾となって戦い続ける猛者・ダンジョーである。

 

「事情はこのデカい男から聞いた、どうやら俺達は仏の奴の尻ぬぐいをする為にここへ召喚されてしまったみたいだな、ったくあの仏め、自分で起こした不始末をまた俺達に丸投げするとは……」

 

「何はともあれこちらとしては大助かりだ、共にあの忌々しい破壊神を討ち滅ぼし、奴に奪われた美しき高潔な魂を取り返す事に力を貸してくれ」

 

「フン、たかが破壊の神などウチのヨシヒコにとってはどうってことない相手……美しき魂? なんだそれ?」

 

ブツブツと文句を垂れながらも一応は協力してくれる態度を見せるダンジョーに、オッタルは彼にとって少々興味深い話を話し始めた。

 

「実はあの破壊神は復活する際に、我が世界において最も美しい唯一無二の存在の魂を奪い去ったのだ」

 

「世界において最も……てことはもしやそれは世界一美しいと称されるほどの……美女か?」

 

「その程度ではない」

 

ヨシヒコ程ではないが美女となるとすぐスケベ心を露わにするダンジョーに、オッタルは静かに首を横に振る。

 

「上手く言葉で説明できぬ程の至高の存在だ、その美しい体付きを視界に入れれば、きっと誰もが虜になるであろう」

 

「なん……だと!? そこまで言える程に凄いのか……!?」

 

嘘偽りは無いと真剣な眼差しをこちらに向けて来たオッタルに、ダンジョーの目は勢い良く見開き驚愕を露わにするのであった。

 

「破壊神を封印すればきっとその魂を助ける事が出来るはず、その暁にはきっと分相応の”褒美”を下さるであろう、それは公には言えない様な形で……」

 

「!?」

 

世界一の美女という言葉では足りない程の美貌を持つ人物……その者の褒美というのは一体どんな形で頂けるのであろうか……

 

想像しただけでダンジョーはいやらしく笑みを浮かべる。

 

「よーしやる気出たぁ! 行くぞ者共ぉ! この戦士・ダンジョーに続けぇ!」

 

「うわ……オッサンがすげぇスケベなツラしてやがる……ぜってぇなんか企んでるな」

 

ウキウキしながら軽やかな足取りでシドーの下へ走っていくダンジョー

 

そんなスケベ親父に軽蔑の眼差しを向けながらも、ムラサキは後を追うのであった。

 

目指すは破壊神シドーこの世界を救う事、ではなく特別なご褒美をもらう為……

 

 

 

 

 

「おい、あのオッサン絶対勘違いしてやがるぞ……」

 

「俺は正直に話しただけだ、兄貴こそこの世で最も美しい存在、それは紛れもなく事実だ」

 

「まあお前にとってはな……」

 

そして何も知らずに突っ込んでいくダンジョーの背中を、哀れんだ目で見送るベート。

 

しかしこの”オッタルにとって”の嘘偽りのない話が

 

ダンジョーだけでなく勇者の心も動かすキッカケとなるのであった

 

次回、勇者一行、本気出す

 

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