聖者ホトケと神の孫ベル   作:カイバーマン。

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二十九説 勇者一行、本気出す

あまり接点のない異世界を救う為に、仏の勝手な都合で強制的に召喚されてしまったヨシヒコ一行

 

既に別の異世界で魔王を倒したばかりという事もあって、どうにもモチベーションが上がらないと破壊神を前にしてもやる気が出ないと文句を垂れ始める彼等だが

 

その中のダンジョーだけは一人、どことなくいやらしい顔をしながらボス相手に果敢に剣を振るうのであった。

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!! 食らえこれが!!」

 

雷系、炎系、氷系あらゆる上級呪文だけでなく完全治癒まで併せ持ち、ここに来る前に倒した竜王という恐るべき魔王にも匹敵する強さを持つ破壊神シドー。

 

しかし勇者一行の盾となり、先陣を切って戦う事を主体にする戦士・ダンジョーは

 

例え相手が神であろうと臆することなく攻めかかり

 

雷が降ろうが炎を吐かれようが氷で凍てつかれそうになりながらもその勇ましい歩みを決して止めようとはしなかったのだ。

 

「戦士・ダンジョー! 渾身のまじんぎりよぉ!!」

 

「ウギャァァァァァァァァァァ!!!!」

 

力強い咆哮と共に大振りで振り下ろしたダンジョー必殺のまじんぎりが炸裂し、あの破壊神シドーが会心の一撃をまともに食らい怯み始める。

 

己の一撃で苦しみ悶える破壊神を前に、ダンジョーは慢心せずただキリっとした険しい顔つきで鋭く睨みつけ。

 

「貴様が奪い取ったという『この世界で最も美しき存在で』と称される程の者の魂……俺がもらい受ける!」

 

「甘いな、褒美を欲しいのはお前だけではないぞ戦士・ダンジョー、この俺もまたあの方の愛に縛られ戦う男」

 

明らかに不純な理由で戦っている事を宣言するダンジョー背後で、同じく破壊神の贄となってしまった存在からの褒美を貰う為に

 

オラリオ最強とまで呼ばれる程の武神・オッタルも加勢する。

 

「ハカイハカイハカイハカイハカイ……!」

 

「破壊神、貴様に奪われたあの方の魂、下僕たるこの俺が取り返させてもらう」

 

「フ、愛ゆえに死地へと赴くか……それでこそ戦士、いや男であるが故の宿命か」

 

同じ言葉を叫び続けながらなりふり構わず狂ったように周りを攻撃するシドーを相手に、得物の大剣を担ぎ上げながら走っていくオッタルにダンジョーは感心したようにニヤリと笑いつつ、急いで彼の後を追って破壊神の方へ再び突っ込む。

 

「しかし! その美しき魂を救うのは俺が一番先だ! そこだけは絶対に譲らん!」

 

「俺は負けん、破壊神であろうが、そして英傑の一人であろうと俺はあの方の為に勝ち続ける……」

 

「ゴルアァァァァァァァァァァ!!!!」

 

既に自分がフレイヤ・ファミリアだというのも綺麗さっぱり忘れ、オッタルはダンジョーと手柄を奪い合いつつも、協力してシドーに攻撃を与えていくのであった。

 

「うわぁ、濃いオッサンの傍これまた濃い奴が増えやがった、絵面サイアクだなマジで……」

 

そんな状況を少し離れた後方から眺めながら呟くのは、ダンジョーの仲間であるムラサキ。

 

目を細めながら二人を眺めつつしかめっ面を浮かべながら、ムラサキはめんどくさそうにしながらも肩を回しながら戦う準備を開始

 

「さぁて、レベルも前にいた世界の時と同じレベルの状態で来れたし、ムラサキちゃんの最強呪文をバンバンぶっ放してやりますか」

 

「……おいテメェ」

 

「あ、なに?」

 

せっかく戦おうとしている最中に後ろから話しかけられ、不機嫌そうにムラサキが振り返ると

 

そこにはついさっきしばらく口喧嘩を交えた仲である、ベートが立っていた。

 

「俺の傷を癒した回復の呪文あったよな、アレは後何度連続で使えんだ」

 

「なんだよ急に……使える回数? まあ最低2回ぐらいしか使えないんじゃない? アレ結構消費バカ高いから」

 

「よし、ならテメェはもう無駄に魔力消費すんじゃねぇ、戦いは俺に任せてテメェは後ろで隠れながら支援担当に回れ」

 

「……は? なんで?」

 

何急に偉そうに命令してんだと言いたげな表情で、ムラサキはベートに食って掛かる。

 

「つうかさっきからなんなのその態度、私達、事情もよく知らないのに戦ってあげてる人に対して言い方ってもんがあるんじゃない?」

 

「あぁ!? 元はと言えばテメェの所の仏が蒔いた種だろうが! それでテメェ等が奴のケツ拭く為に来たんだろ! だったらつべこべ文句言わずに黙って俺達に従いやがれ!!」

 

「ふーん、はいはいそうですかそうですかー、そう来ますかー……」

 

彼が言っている事はイマイチわからないが

 

要する仏の代わりにやって来たのだから、自分達は大人しくこちら側に従って仏が持って来たトラブルを解決しろと言う事。

 

しかしそれを傲慢かつ喧嘩腰で命令してくるベートの態度にカチンと来たのか、ムラサキは少しわかった様な口振りをしながら不意にダンジョー達と戦っているシドーに向かってヒョイと手の平を向け

 

 

 

 

 

「イオナズン!!」

「んな!?」

「ゴアァァァァァァァァ!!!!」

 

彼女が叫んだその瞬間、ベートがかつて見た事無い程の強力な爆発系呪文がシドーに思いきり炸裂。

 

かなりのダメージが入り激しい音と共に地面に倒れてしまった破壊神を見つめながら思わず絶句するベート。

 

魔力が温存して後方支援役に徹しろと言った直後だというのにこの女は……

 

「んーやっぱアレだなー、めぐみんちゃんみたいには上手くいかないなー」

 

「テ、テメェ何やってんだゴラァ! さっき俺はいざという時の為に魔力は温存しとけってご親切に忠告してやったんだぞ!」

 

「知りませーん、可愛いムラサキちゃんは偉そうで高慢ちきな犬っころの話なんて聞いてませーん」

 

「こ、この野郎……!」

 

自分の忠告に全く耳を貸すどころか、絶対に聞くもんかといった感じで目を逸らしながらすっとぼけるムラサキに、ベートはイライラしながら舌打ちするも、何はともあれシドーが倒れたという絶好の機会を逃してはいけない。

 

「クソアマが! テメェこの戦い終わったら覚えてろよ!」

 

「いいからさっさと戦って来いっつうの、ああだこうだ言ってないでとっとと倒しに行けよ」

 

「だぁぁぁぁぁぁぁ!! コイツあのクソアマゾネス姉妹よりウゼェェェェェ!!!」

 

彼の背中を思いきり小突きながらムラサキはさっさと彼を倒れたシドーの方へ向かわせる。

 

それにベートは沸き立つ怒りを必死に抑えながら、仕方なく素直に従い追撃に赴く事に。

 

大人しい相手にはとことん強く出れるのだが、こういう負けじと言い返してくる強気な女には少々弱いベートなのであった。

 

 

 

 

 

「グルアァァァァァァァァァァ!!!!」

 

「ダメ、これだけの手数が揃っていてもまだ倒れない……」

 

ベートがムラサキに追いやられてる一方で、アイズもまたしばしの休息を終えて再び破壊神シドーに挑もうと立ち上がっていた。

 

「やっぱり私が行かないと……」

 

さっきからずっと戦っている中で彼女は静かに破壊神を観察し、状況を見据えていたのだが、やはり神というのもあってあれだけダメージを負いながらも一向に弱らない所から察するに、階層のボスなど目じゃないぐらい相当タフだという事にほんの少し危機感を覚え始める。

 

「このまま長く続けていればいずれ向こうより先にこちらが全員倒れる、そうなったら……」

 

「おお?」

 

「?」

 

ここで消耗戦となると流石に厳しいと、アイズも流石に少々焦りを覚え始めていると、ふと背後からこちらに向かってちょっと驚いたような反応をする声が

 

「んん~? なんだかちょっと……前に見た覚えがある気がする……様な気がしないでもない」

 

「あなたはいつぞやの……銀色ヌメヌメモンスターの存在を教えてくれた」

 

「おおそうそう、あ、てことはアレ幻覚じゃなかったのかー」

 

彼女の背後に現れたのは、戦いを放棄して動きそうにないヨシヒコを一旦放置して救援に来た魔法使い・メレブであった。

 

彼が現れた事に対してアイズは全く驚きもせずに真顔で軽く会釈し

 

「こんにちは」

 

「ああはい、こんにちはー。そうそう、挨拶は大事だよねー」

 

こんな状況でも律儀に挨拶して来た合図に若干戸惑いながらも軽く会釈するメレブ。

 

「っでどう? アレから銀色のヌメヌメでドロドロなスライムは見つかった?」

 

「……見つからない」

 

「やっぱり? いやあの魔物ホント見つける事だけでもめっちゃむずいからなー、まあもう根気でやるしかないよね、アイツに会うには」

 

残念そうに呟くアイズを見て励ますようにうんうんと頷き返すメレブ、だが

 

「あ、ちなみに俺達はあの後あっちの世界で1匹だけ見つけました」

 

「!?」

 

「しかも倒した上に仲間にしました、まあその後悲しい別れがあったんだけどねー」

 

「!?」

 

「ああ出た、「!?」だけで驚きのリアクション取る奴、変わってないわぁ、けどそれ、あんま見てる人には伝わらないから、こちらとしてはあまり多用しないでいてくれた方が助かります」

 

話を聞いてこちらが驚く様を見て何故かニヤニヤと笑うメレブにアイズは「?」と疑問に思うが、今は聞いてる場合じゃないとすぐにシドーの方へ振り返った。

 

「早くあの面倒なのを倒さないと……」

 

「ほほう、どうやらこの天然娘、お困りの様子、ならばこの大魔法使い・メレブの活躍をお見せする時が来たようだ」

 

「……出来るの?」

 

「……出来ます、多分」

 

自信満々の様子で笑っていると彼女が素朴に尋ねて来たので、思わずぎこちなく返事するメレブ。

 

「聞いて驚くなかれ、実は俺達がこの世界に来る前の別の世界で竜王という恐ろしい魔王がおったのだが、何を隠そうその相手に決定打の呪文をかけたのは……私です」

 

「凄い」

 

「ハハハ、そういう素直に言ってくれる子俺好き」

 

本人が言っているだけでイマイチ確証はないが、それを信じ切った様子で素直に感心するアイズにメレブは満足げな表情を浮かべ

 

「という事でここは私に任せてみんさい、あの破壊神とかいうデッカイ奴を、見事に止めてみせよう」

 

「……ならアレが全回復魔法を唱える前に止めて、かなり攻撃を加えているからまた唱えそうな気がするから」

 

「うわ、それって最悪じゃん、ラスボスがそんなの使って来るとか反則でしょ~、今だったら子供泣くよ?」

 

破壊神が回復呪文を使えると聞いて嫌そうな顔を浮かべて文句を垂れていると、タイミングを狙ったかのようにシドーが動き始める。

 

「カイフク……! 我……! スベテカイフク……!」

 

「マズイ、やっぱりもう回復しようとしている、早く止めないと」

 

「あ、もう!? なんだよも~、もうちょっと心の準備させてよ~!」

 

呻きながら回復呪文をすぐに唱えようとするシドーを見てアイズが早速合図を送ると、メレブは慌てつつも構えた杖を彼に向けそして……

 

「そい!」

 

奇妙なSEが流れると共になにやらシドーに呪文を掛けたみたいだ、するとその時、回復しようとしていたシドーは突如ピタリと止まり……

 

 

「ゴ、ゴアァァァァァァァァァァ!!!!」

 

「……止まった?」

 

「フフフ、ここからでは一体どんな事になっているかはわからんが、あの両目を抑えて悶えている様から察するに……」

 

 

苦しそうに呻きながら両目を抑え、回復どころでは無いとその場でうずくまるシドー。

 

それにアイズがキョトンとする中、メレブだけはしてやったりの表情でニヤリと笑っていた

 

「間違いない、目に……超とんでもなくデカいゴミが入ったのだ」

 

「……どういう事?」

 

急に何を言い出すのだとアイズが不思議そうに尋ねると、メレブは得意げな顔を浮かべ

 

「実は先程俺が掛けた呪文は、こういう緊迫した状況の中で突如予想だにしなかった不幸に襲われる運命に巡り合わせるという恐ろしい呪文なのだよ、かつて俺はこの呪文で数多の困難を乗り越え、更には竜王を倒すキッカケを作ったのだ」

 

「そうなの?」

 

「そして私はかつてこの呪文に……」

 

 

 

 

 

「『ソゲブ』という名前を付けたんだよ」

 

「……そんな呪文聞いた事の無い……リヴェリアやレフィーヤでも知らないかも……」

 

「ん~~~まあ? ちょっと呪文をたしなんでるレベルの人ではわからないんじゃないですかぁ~?」

 

自分が披露した『ソゲブ』を見て素直に感心してくれたアイズに、メレブは満更でもなさそうに鼻を高くしてかなり調子に乗る。

 

そもそもメレブの完全オリジナル呪文なので、彼と関わらない限りどれほど高名な魔法使いでもまず知る訳がないのだが、知ったとしてもそれをアイズの知る者達が頭の中に覚えておくかどうかさえ疑問だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、両目を抑えながら苦痛に悶えるシドーを見ていたのは当然アイズだけではなく、ダンジョーやオッタル、ベートやらムラサキもその隙を突いて総攻撃を開始していた。

 

本来真っ先に向かうべきである筈の勇者ヨシヒコを除いて

 

「見て下さいヨシヒコさん! 破壊神が呻きながら倒れましたよ! チャンスですチャンス!」

 

「そんなモノに興味はない! 私が今興味があるのはただ一つ!」

 

興奮しながらすぐに向かうべきだと抗議するベルに素っ気なく返事して、彼に背を向けながらヨシヒコはある書物に夢中になっていた。

 

「この物語の結末だけだ! 不動明はこれからどうなってしまうのだ! 負けるなデビルマーン!」

 

「ってあぁー! いつの間にかヨシヒコさんが「デビルマン」に夢中になってしまっている!!」

 

自分の仲間と破壊神が熱く戦ってる中で、ヨシヒコはなんと漫画に対して熱くなっていたのだ。

 

完全に戦う気など無く、その場に寝転がって完全に自分の家にいる感覚でくつろいでいる。

 

「ていうかなぜここにデビルマンが……」

 

「すみませんベル様……前にベル様からお借りしたアレ、うっかりリリのリュックの中に入れちゃってました……」

 

どうやらリリのリュックにあった本をヨシヒコが見つけ、それを勝手に取って読み始めてしまったらしい。

 

来れにはベルも腕を組んで大いに困り果てた、あの本を一旦読むとマズイ……

 

「困ったな、アレを読むと誰だってみんなあんな風に周りの事などお構いなしに読みふけってしまうんだ……僕も何度それで神様に怒られた事か……」

 

「いやそうなるのはベル様とあの勇者様だけだと思いますけど……」

 

「なんとかしてヨシヒコさんの興味をデビルマンから破壊神に移させないと!」

 

自分の経験談を踏まえてあの物語に一旦触れると止まらなくなるのはわかっている。

 

「こうなったら神様に知恵を貸してもらうしか……は!」

 

ジト目でツッコむリリをよそにベルはなにか策はないかと自分の頼れる主神・ヘスティアの方へ振り返るが

 

「はぁ~、久しぶりに読むとハマるねコレ、懐かしいよホント」

 

「しまったぁ! 神様までもがデビルマンの魅力に憑りつかれてしまった! 恐るべしデビルマン!」

 

「なんで自分の世界の危機を前にして漫画なんか読んでるんですかあの神様! ホント役に立たないですね! 仏と同類です!」

 

気が付くとヘスティアまでもがヨシヒコと同じように本を読み始めていた。リリが怒ってもページをめくるのを止めず、ただただ読書にふける女神、しかし……

 

「心配しなくてもこの後ちゃんとキッチリ仕事するから安心してよ、ボクにだって神の面子ってモンがあるしね」

 

「へ?」

 

「だからその前にあの破壊神を何とかしてくれ、それが終わったらボクと”アイツ”の出番だから」

 

「わ、わかりました……え、アイツ?」

 

本から視線を逸らさずにそれだけ言うヘスティアに、リリとヘスティアは一体何をするのか全く見当もつかないでいると、そこへそっと一人の女性が歩み寄る。

 

「どうやらまだそのヘタレ勇者は働く気がないみたいですね、クラネルさん」

 

「リューさん……どうしましょうか、僕達だけ戦わずにこんな状況で……」

 

「やれやれ、他のお仲間は戦っているというのにこの勇者は……」

 

やって来たのは現在ベル達と行動しているリューであった。

 

相変わらずヨシヒコは動く気配が無いとわかり、彼女は軽くため息をつくと

 

「仕方ない、ではとっておきの餌を用意しますか……」

 

「え、もしかしてヨシヒコさんに戦ってもらう策があるんですかリューさん!?」

 

「あります、彼の仲間の一人を見て気付いたんです、この男を釣れるとびっきりの疑似餌がある事を」

 

「疑似餌?」

 

彼女にはなにか考えがあるらしく、不思議そうに首を傾げるベル達をよそに、リューはまだ本に夢中になっているヨシヒコの近くで腰を下ろすと

 

「読書中の所悪いですが、あなたに耳寄りな情報を教えに来ました」

 

「なんだ……? 残念ながら今の私には何を言っても無駄だぞ、今の私はもうすっかり不動明の事しか考えられない」

 

「実はあの破壊神、ずっと昔からこの地に封印されていたみたいなんですが、ある者から魂を奪い去って再び現世に蘇ったんです」

 

「ある者の魂を奪い復活……フ、ありきたりな話だな、このデビルマンのストーリーに比べたらなんともお粗末な」

 

「ちなみにその魂を奪われたという存在は……」

 

すっかり本の世界にどっぷりハマり全く関心を示さないヨシヒコに、リューの目が怪しく光り輝く

 

「何を隠そう、この世界で多くの男性が惹かれる程の絶世の美貌を持っているらしいんです、とオッタルさんから聞きました」

 

「絶世の美貌!?」

 

「って速攻食いつきましたこの勇者!」

 

彼女の言葉を聞き流そうとしていたヨシヒコだったが、絶世の美貌を持つ存在と聞いてすぐに本から顔を上げてリューの方へ振り返った。

 

その恐るべき反応の速さに驚くリリをよそに、リューは彼が餌に食らいついたとここで畳みかける。

 

「はい、それにとんでもなく胸が大きいです、しかもその方、常に服は着ずに下着しか穿いてないんですよ」

 

「胸が大きい、ということは巨乳……! そ、それに服を着ていない……!」

 

「お~ホント面白いぐらいにグイグイ釣れますねこの勇者……リリも最初からこれやっておけば良かったです……」

 

「なんて事だ……そんな素晴らしい人の魂を奪うとは……! 破壊神! 絶対に許さん!」

 

「正確には”元”人なんですけどねー……ていうかさっきまで破壊神なんてどうでもいいって言ってたクセに……」

 

リリがちょいちょい小声でツッコむが、それすら全く聞いていない様子でヨシヒコはもう既に手に持っていた本を地面に置き、リューの話に鼻息を荒くして偉く興奮している様に見えた。

 

こうなったら後は最後のダメ押しだ。

 

「オッタルさんは言っていました、この世で最も美しき肉体、そこまで言うんですからきっと凄いのでしょうね」

 

「おお……! おおー!! おおぉぉぉぉ!!!」

 

「もし破壊神を無事に倒せばその者も助けれるでしょうね、この世で最も美しい存在を助けた時、一体どんなご褒美を貰えるのでしょうか、わかりますか勇者さん?」

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

リューの囁きにヨシヒコは滾るムラムラを抱えながら力強く雄叫びを上げた。

 

想像しただけですっかりテンションMAになってしまったらしい。

 

「何をやっている! さあ! 一刻も早く破壊神を倒すぞ! 世界の危機を前にこんな所で遊んでる場合じゃないぞ!」

 

「ええ!? なんですかその急な心変わり!?」

 

「グズグズするな!」

 

そう言って立ち上がると、ヨシヒコは眼前の破壊神シドーを見据えながら、腰に差す剣を引き抜く。

 

「私に続けぇぇぇぇぇぇぇ!!!! 待ってろ私の巨乳ゥゥゥゥゥゥ!!!!」

 

「おお! ヨシヒコさんがすっかりやる気になってくれた! 凄いですリューさん!」

 

「大した事じゃありませんよ、単純な相手には単純に攻めれば良いって事です、さあ私達も行きましょう」

 

「なんなんですかこの戦い……ホントに世界の命運を賭けた戦いなんですか……?」

 

居ても経っても居られず早速駆け足で走り去ってしまうヨシヒコを見て、各々反応しながらヘスティアを除く三人もまたようやく動き出す。

 

ようやく駒は揃った、やるべき事は破壊神を倒し、奪われた魂を救う事、そして……

 

 

 

 

 

 

「ま、”アイツ”も今頃頑張ってる頃だろうし、そん時はボクも手伝ってやらないとね」

 

一人寝転がって本を読みながら、ヘスティアもまた「自分の出番」を待つ事にするのであった。

 

次回、勇者ヨシヒコと神の孫ベル

 

 

 

 

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