聖者ホトケと神の孫ベル   作:カイバーマン。

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三説 仏、喧嘩する

前回のあらすじ

 

少年・ベルの下へ仏が直接侘び入れに来た

 

そこへ彼の所属する神であるヘスティアが現れて仏をグーパンで殴った。

 

そしてどれだけ時が流れてもやはりデビルマンは名作だった。

 

「あーもう……よりによってベル君にこんな奴と会わせる事になってしまうなんて……」

「え、なにがいけないんですか神様?」

「全部だ全部! コイツは本当にボク達神々の中でも生粋のロクデナシなんだぞ!」

 

仏がヘスティアに殴られてから数十分後、彼等三人は近くの飲み屋に足を運んでいた。

 

ベルとヘスティアは隣同士、そしてその向かいの席ではまだ仏が痛そうに氷詰めの袋でヘスティアに殴られた目を押さえている。

 

「あーいてて……おいお前、お前コレ本当にアレだぞ、アレだからな、アレにするからマジにアレ覚悟しろよ」

「まさかこの男がこっちに降りてくるなんて……」

「ベル君、さっきから目が痛いよー、君の所の女神に殴られたから目が痛いよー、だからこいつに謝らせて」

「仏様……謝ってください神様」

「ベ、ベル君! なんで仏なんかの肩を持つんだい!?」

 

目を押さえて痛がる仏に同情したのか、すぐにこちらに振り返って謝るよう強要してくるベルに

 

少しショックを受けた様子を見せながらも、ヘスティアはフンと鼻を鳴らして

 

「まあ確かに、出合頭にいきなり殴ったという事に関してはボクも非があると認めよう。だけどね! 君がボクの眷属に余計な事を吹き込んだ件についての謝罪を済ませるのが先ってモンだろ!!」

「は? いや私、ちゃんとその件についてはベル君に謝ったから、ね? 謝ったよね私?」

「あ、はい、それに見た事のない書物もお詫びの印として頂きました」

「読み終わったら感想教えてね、デビルマンの」

「神の眷属になんてモンを貸しているんだ! そこはゲッターロボだろ!」

「気にするとこそこですか神様!? なんですかゲッターロボって!?」

 

よりによって悪魔を題材とした漫画をお詫びとして持ってくるとは……

 

というか仏はまさか、ベルだけに謝ればそれでいいと思っているのだろうか?

 

「というか仏、ベル君に謝ったのは良いとして、そのベル君を預かっているボクに対しての謝罪はまだなのかい?」

「ハッハッハー! なんでお前に私が謝らなきゃいけないんだバカヤロー!」

「あぁ!?」

「うわ! 落ち着いてください神様!」

 

本来ベルの身元を預かる立場にある神に対してもなんからの謝意を表す必要があるのが筋だというのに

 

仏はこちらに対しては悪びれもせずにヘラヘラ笑うだけ

 

元々嫌な奴だと思っていたがここまで性格が悪い男だったとは……

 

ヘスティアは再び殴りたい衝動に駆られ立ち上がろうとするが、そこをベルが慌てて止めに入る。

 

「ここ店の中ですから! 喧嘩したら追い出されちゃいます!」

「む~……そうだね、本題に入る前に怒ってる場合じゃなかった……」

 

ベルにそう言われると渋々席に座りなおすヘスティア、そして急に改まった様子で仏の方へ顔を向け

 

「さて仏、君にはハッキリとこの場で伝えておくべきことがある」

「わかってる皆まで言うな、ベル君を仏・ファミリアに改宗させる事だろ」

「そんな訳ないだろ! 誰が許すかそんな事! ボクが言いたいのは、もうこの世界に来るなって事だよ!」

「えーとカシスオレンジ一つと、枝豆、あと焼き鳥の盛り合わせ、塩ね、塩」

「注文は良いから話を聞け!」

 

こちらの話を全く聞こうとしないどころか店員を呼んで注文までする始末。

 

日頃仲の悪いロキと顔を合わせた時でさえここまで強い苛立ちを持った事がない。

 

「とにかく君がここに来ると色々と面倒なんだ! 現にベル君に魔王を倒せとか訳の分からないこと抜かしたり! ボクのホームに押し入ってベル君に良からぬ事吹き込んだりと! ここに来ただけで君は必ずボクだけじゃなくて他の神々にとっても災厄になるんだよ!!」

「あ、他の神々で思い出したけどタケミカヅチの奴今どこ住んでんの? 久しぶりにちょっとイジり倒しに行きたいんだけど?」

「これ以上タケをイジメるな! 天界にいた時に散々弄んでただろ!」

 

仏は全く自分の言葉に耳を貸さなかった、それ所か更なる被害者を生み出そうとする始末。

そんな相手にヘスティアは深々とため息をついて隣のベルの方へ振り返り

 

「わかったかいベル君、これが仏という他の神々に迷惑を掛ける事も厭わない最低な神様さ、だからもう絶対にこの男と関わらないと誓ってくれ」

「で、でも神様? 仏様は勇者様を導き世界を支配しようとする魔王を倒す手伝いをするのが仕事だと聞きました、それってとても素晴らしい事ですよね?」

「確かにそう聞いた事はあるよ、けどね、果たしてその仕事をこの仏が真面目にやっていると君は本当に思うのかい?」

「そ、それは……」

 

真顔で尋ねてくるヘスティアにベルは口をごもらせる。

 

確かにさっきから焼き鳥をほおばりながら嬉々とした様子でカシスオレンジを飲んでいる仏が、まじめに仕事してる姿は想像できない

 

すると

 

「お前さぁ、さっきからね、仏の事を最低だとか災厄を呼ぶとか、挙句の果てには真面目に仕事しないとか、勝手なこと抜かしてるけどさー」

「紛れもない事実だろ、文句あるのかい?」

 

一気にカシスオレンジを飲み干して、空になったコップをテーブルに置くと

 

仏は急にしかめっ面を浮かべてヘスティアの方へ向き直った。

 

そんな彼に彼女もまた挑戦的にジロリと睨みつける。

 

「ボクが言ってる事に何か間違いがあるなら遠慮なく言ってみるがいいさ」

「いやそもそもさ、お前が言ってる事ってさ、私以外の神にも当てはまる事だよね?」

「う!」

 

言われてみれば確かに仏以外にもいい加減な神はたくさんいる、下手すれば仏以上に災難を振りまく奴だっている。ロキがいい例だ、彼女も今となっては丸くなってはいるが、天界では色々と厄介な事ばかりしでかしていた。

 

「そもそも紐って、今仕事何してるの?」

「バ、バカにするな! じゃが丸くんを売るバイトと、ヘファイストスの店でのバイトと掛け持ちさ!」

「え、なに? じゃが丸くん? なにじゃが丸くんって? すげぇ自信持った表情で言ったけどバイトだろそれ? なに? バイトするのがお前の仕事なの? 神様の仕事、バイトなの?」

「……」

「神様どうしたんですか!? 仏様からのまさかの反撃に怯んでいるんですか!?」

 

天界から降り立った身である神様の中にはヘスティアの様に細々とバイトしている神もいる。

 

果たしてそれが神様が為すべき仕事なのかと真顔で尋ねてくる仏に、彼女は言葉を失いベルが心配そうに見つめる。

 

「い、いいだろ別にバイトぐらい! これもファミリアを支える為に必要な事なんだ! そうだろベル君!」

「はい! じゃが丸くんを売る事が神様の大事なお仕事です! シフトもフルタイムで週六ですもんね!」

「あ、あぁそうだよ……一日のノルマを達成しないとおばちゃんに怒られる大変なお仕事さ……」

 

面と向かってそれが神様の仕事だと眷属であるベルに言われるとちょっと精神的に来る。

 

自ら自爆行為に出てしまったヘスティアは苦笑しながらちょっと泣きそうになっていると

 

仏は店員に「カシスウーロン!」と注文しながら彼女の方へ目を向け

 

「だから私の言いたいことは、いい加減な神様なんて全然珍しくないって事よ、不倫ばかりするクズ神とか姉ちゃんの家の前で脱糞する神とか、週六でじゃが丸くんを売りさばいてる神とか色々いる訳じゃん? なのに私だけここに来ちゃダメって言われるのは、ちょっと納得いかないなー」

「うぅ……」

「はい、という事で紐もわかってくれた事だし」

 

具体的な神を並べながら説明しつつ焼き鳥を食べ終えると、改まった様子で仏はベルの方へ顔を上げ

 

「改宗しよっかベル君」

「えぇー!?」

「なんでそうなるんだよ!」

 

上手く反論できないヘスティアをよそにまたもやベルに改宗をしようと誘う仏。

 

ドサクサに紛れてなにしてんだとそこは断固止めに入った。

 

「ベル君は渡さないぞ! 好き勝手言ってくれたがこれ以上君なんかをボクのベル君に近づかせるものか!」

「え、なんなのお前? そこまで言うって事はもしかしてアレ? 好きなのベル君? ノーライク、イエスラブ的な感じなのお前?」

「!?」

 

単刀直入にぶっちゃけた事を聞いてくる仏に、ヘスティアは顔を真っ赤にしてまたもや言葉を失う。

 

すると仏は彼女の反応を見てすぐに察し、「あ~そうか~」とニヤニヤしだして

 

「ベル君ベル君、紐が君の事を好きなんだって~どうする~?」

「おいコラ仏ェェェェェェェ!!!」

「アハハ……多分神様として好きって意味ですよきっと、そうですよね神様?」

「い、いや~……その……」

 

躊躇もなく本人に確認を取り始める仏にヘスティアはキレるも

 

そういう事に関してはてんで鈍いベルはその辺ハッキリとわかってない模様

 

ほっと安心しつつも上手く伝わってないのだと少しモヤモヤした気持ちになる。

 

そして歯切れ悪そうにつぶやきながらなんとか誤魔化そうとするヘスティアを見ながら、仏はフフッと軽く笑いながら

 

「でもまあベル君にはもう好きな人いるからね~、紐、フラれちゃったね~」

「ほ、仏様!?」

「ベル君! 君はあれだけボクが口を酸っぱく言ってもまだ諦めていないのかい! あのヴァレン某の事を!」

 

まるでこの状況で更にヘスティアに火を付けるかのように余計な事を言い出す仏。

 

彼女にとってベルに想い人がいる事が何より面白くない事なのと既に察しているのだ。

 

「考え直すんだベル君! ロキ・ファミリアで剣姫として名を馳せる女が君と釣り合うわけないだろ! 身の丈を知るんだ! そしてもっと身近にいてくれてかつ常に見守ってくれるそんな優しい人がいる事に気付くんだ!」

「そ、そこまでハッキリと無理って言わなくてもいいじゃないですか!」

 

突き飛ばした感じに言いながらも遠回しに自分の方へと誘うヘスティアだが

 

逆効果だったのかムキになった様子でベルは叫び

 

「僕だってこれから頑張って強くなればきっと振り向いてもらうチャンスがあるかもしれないんですよ! チュー出来るチャンスはあるんです!」

「チュ、チューは駄目だ! チューとは一生を添い遂げる事を誓った者にしかしちゃいけないんだ! 軽々しくチューしたいなんて言うな!」

「軽い気持ちで言ってません! 僕は本気です! 本気でアイズさんとチューしたいんです!!」

「そ、そんなハッキリと言うなぁ~!!」

 

力強く想い人とチューしたいのだと全力で叫ぶベルにヘスティアは泣きそうな顔をしながら無理やり黙らせようとする。

 

そんな状況を作り出した張本人の仏は、愉快そうに眺めながら「ヨシヒコみてぇ~」と笑い声を上げると、席から立ち上がり店員を呼んで

 

「んじゃ、お勘定で」

「待った仏! まだボクの話は済んでないぞ! 君のせいでベル君がますますあの女に熱を上げてるじゃないか!」

「そりゃね、私、ベル君の恋路を応援するキューピッドだし」

「はぁ!? ペヤングフェイスの君がキューピッドだってぇ!?」

「誰がペヤングフェイスじゃい! 誰が! 誰が焼きそば顔なんじゃい~!」

 

仏がベルの想いを無事に成就する事を願っていると聞いては、ヘスティアも黙っていられない。

 

そんなことはさせないぞと立ち上がる彼女だが、既に仏はお勘定を済ましてそそくさと退散。

 

「じゃあ私、一人で飲み直してきまーす、ベル君、この辺に美味い飯が食える所ってどこ?」

「えーと、豊饒の女主人ですかね?」

「サンクス、じゃ行ってきまーす」

「おいコラ待て! 逃げるな仏!」

 

ベルに良い店を紹介してもらった後ヘラヘラしながら仏は行ってしまった。

 

残されたヘスティアはすぐに彼を追おうとするが

 

「ぐぬぬ! やっぱりアイツは迷惑を振りまく存在だ! 一刻も早くここから追い出さないと!」

「待ってください神様! 僕の本気を認めて下さい! そして願わくば神様にも仏様の様に応援してほしいんです! 僕とアイズさんの結婚……へぐッ!」

「いい加減君は正気に戻れ!」

 

身を挺して通せんぼしてきたベルのまさかの発言にヘスティアは鉄拳で制裁。

 

それからしばらく、店の者から追い出されるまで二人でギャーギャーと揉め続けるのであった。

 

そしてまんまと逃げおおせた仏はというと

 

ベルの紹介で行ってみたお店で酔っ払いながら勇者達にお告げをしている真っ最中で

 

そこで働く店員に店内での通話は禁止されていると言われながらも無視してやり続け

 

挙句の果てにその店員に失礼な事を言いながら喧嘩を売る行為に走り出し

 

あっという間にボコボコにされてしまったみたいだ。

 

 

 

 

次回、仏、入院する

 

 

 

 

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