聖者ホトケと神の孫ベル   作:カイバーマン。

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仏ファイナル号
三十一説 聖者ホトケと女神ヘスティア


冒険者と勇者一行の活躍により破壊神シドーは遂に倒された。

 

ちなみに破壊神にトドメを刺したのはヨシヒコでもベルでもなく、飲み屋の店員のリューであった。

 

「これでようやく終わりですか、流石に私も疲れました、しばらくお店は休ませて頂きましょう」

 

「色々と腑に落ちない所はあるが……なんとか倒せたみたいだ」

 

巨体を地に置きピクリとも動かなくなったシドーを見つめながら、リューとヨシヒコは長かった戦いの終わりを静かに実感していた。

 

「しかしまさか私の力で神を討ち取る事になろうとは……」

 

「いえ私の力でトドメ刺したんで倒したのは私ですね」

 

「いや、実はその前に私の攻撃の時点で奴はもうやられていた」

 

「あなたの攻撃を受けてもまだ倒れてませんでしたよ? 決定打は私の一撃です」

 

「おのれぇー!」

 

「止めて下さいヨシヒコさん! みんな! 倒せたのはみんなのおかげですから!」

 

ドサクサに自分の手柄にしようとするヨシヒコに対し、相手が勇者であろうと頑なにそこは譲らない態度で事実を突きつけるリュー。

 

それにヨシヒコは負けじと彼女に詰め寄ろうとするが、慌ててベルが後ろから彼を羽交い絞めにする。

 

「でもコレどうするんですかね? このままほっといて良いんでしょうか……」

 

「それはダメだよベル君」

 

「神様?」

 

倒れたシドーを眺めながらこのまま放置してもいいのだろうかと疑問に思うベルに背後から警告するのは

 

ついさっきデビルマンを読み終えた女神・ヘスティアであった。

 

「コイツは一応ボクと同じ神だからね、いくら倒したからといってしばしの時が過ぎればまたすぐ復活してしまうんだ」

 

「えぇー!? じゃあどうすればいいんですか!?」

 

「おいおいコイツが今まで長い間現世に戻れなかった理由を忘れたのかい? 破壊神シドーはゼウスによって長い間封印されていた、つまりもう一度封印すればまたコイツは復活する事は出来なくなってしまうのさ」

 

「……本当に最後までしぶといんですね……」

 

破壊神シドーを完全に倒す唯一の方法、それは過去に一度彼を破ったゼウスがやった時のように封印してしまう事だ。

 

今はこうして倒れてはいるが、それを行わないと何度でもシドーは蘇る

 

サラッと怖い事を言いのけるヘスティアにベルが改めて自分達が戦っていたい相手が神なのだと実感していると、彼等の下へ他の面子も次々と押し寄せて来た。

 

「なになに? 終わった? 破壊神やっつけた?」

 

「いやそれが、神様が言うにはまだ封印をしないと復活しちゃうみたいで……」

 

「ベル様ベル様、リリはみんなが戦っている間、ちゃんと壊れた魔法の杖の破片を全部拾い集めましたよ、褒めて下さい」

 

「ああうん、じゃあここの用事が済んだら一緒に店主さんに謝りに行こうか」

 

「えぇ~それはちょっと止めた方が……ぶっちゃけあの店主、破壊神より強いと思いますよ?」

 

やって来たメレブとリリにベルが対応していると、ダンジョーとムラサキも事が済んだのかと確認しにやって来た。

 

「どうにか終わったみたいだな、それでヨシヒコよ、俺達が求む絶世の美女は無事に復活したのか? 俺にとって一番大事なのはそこだ……俺はとにかく美女が欲しい」

 

「いえ、残念ですがどこにも見当たらないんです……私もさっきからずと血眼になって探しているんですが」

 

「そうか、く! どうすれば破壊神に奪われた魂を取り戻せるというのだ!」

 

「お前等が必死に頑張ってた理由って結局それかよ、ホント男って奴はどいつもこいつも……ん?」

 

二人して意気消沈した様子で語り合うダンジョーとヨシヒコを呆れた様子で呟くムラサキであったが、ふとすぐ傍にいたヘスティアを見てカッと大きく目を見開く。

 

「ってうわぁ! なんじゃあこりゃあ!! なんだこのデカいおっぱいぶら下げた女ァ!」

 

「ボクの事? ああ、ボクはただの女神だよ、ヘスティアって言うのさ、よろしく」

 

「ああん女神だろうが知ったこっちゃねェよ! いいから寄越せぇその乳ぃ!」

 

「いや渡せる訳ないだろ! 待て待て胸を掴もうとするな! 引っ張っても取れないから!」

 

目の前に現れたヘスティアのたわわに実った巨乳を見た瞬間、突如ムラサキは豹変し彼女の胸を鷲掴みにして奪おうと襲い始めるのであった。

 

どういう訳か、ここ最近あちらこちらで巨乳の人物ばかり見てきたせいで、貧乳であるが故のコンプレックスが爆発しやすくなってしまう傾向にあるらしい。

 

そんな予想だにしていなかったムラサキの攻撃にヘスティアが慌てて逃げ回っていると

 

「しかし困りましたね、このままほおっておいたら復活してしまうとは」

 

倒れた破壊神を見つめながらリューは一人だけで静かに分析する。

 

「生憎、神を封印する術など見た事も聞いた事もありません、どうにかせねば……」

 

「ん? どしたの~むっつり? お困り事かな~? 胸が膨らまない事に、泣きたくなるぐらい悩んでるのかな~?」

 

「は? この状況の中でそんな下らない事に頭を悩ます余裕があると……」

 

不意に背後から聞こえて来た心底腹立たしい声でナメた口で叩かれたので、リューは腰に差す剣の柄に手を置きながらすかさず後ろに振り返った。

 

するとそこでヘラヘラと笑いながら立っていたのは

 

 

 

 

 

「仏……」

 

「どーもー! 仏でーす! ってオイ、様付けろよ、仏様だろコノヤロー!」

 

 

音も気配もなく突然リューの背後に現れたのは仏、破壊神シドーが真の正体を晒した瞬間ずっと雲隠れしていた薄情な仏であった。

 

いきなり自分の背後で手を挙げながらヘラヘラと笑っている彼が現れたので、リューは少々驚きはするもののすぐに目を細めて

 

「一旦逃げたと思えば、事が済んだ頃合いにまた戻って来る……それはつまり己の罪悪感に耐え切れず、ケジメを付ける為に私に斬られにやって来たと解釈してよろしいんですか?」

 

「ちょちょいちょいちょい待って待って待って、そういう自分勝手な解釈は嫌い、仏そういうの嫌い」

 

彼が現れると途端にずっとため込んでいた彼に対する苛立ちが目覚め始め、早速リューは剣を抜こうとするが仏は慌ててそれを止める。

 

「もっと平和的なケジメの付け方考えておいたから私、聞いてお願いだから」

 

「仏! 仏もこちらの世界に来ていたんですか!?」

 

「お! ヨッく~~ん!! 超久しぶり~! って訳でもないか」

 

相変わらず人の神経を逆なでする言動ではあるが、どうやら考えがあってここに来たらしい仏

 

すると彼がいる事にリューだけでなくヨシヒコを始め他の面子も気付き始めた。

 

「あ! おい仏コラ! なに終わった頃合いにノコノコと出て来たんだよ! お前ちょっとは段取り考えろよ!」

 

「全くだ、魔王を倒した次にいきなり破壊の神などという訳の分からんモノと戦わせおって、お前には仏としてのプライドは無いのか!」

 

「しかもアレをこの世界に連れ込んだのってお前らしいじゃん、また私等に尻ぬぐいさせやがってマジふざけんな!」

 

「あ~うん、予想はしていたけど皆さん大分怒っていらっしゃるようですね、みんな揃って仏の事お前呼ばわりだし」

 

メレブ、ダンジョー、ムラサキが一気に不満を爆発させ、総出で仏を責め立てるも彼はハハハと笑いながら全く反省していない様子。

 

「よし、じゃあみんな一旦落ち着こう、私にはちゃんと今まで姿を見せなかった理由がちゃんとあるから、それをちゃんと聞いて、ね?」

 

「仏、破壊神を倒す事は出来ましたが、我々の力では奴を封印する事が出来ません、一体どうすれば」

 

「ほい来たヨシヒコ! お前は本当に分かってるねぇ~! 今正に私はその件について言おうとしてたんです!」

 

ヨシヒコの言葉にすぐに彼を指をさしながら嬉々とした反応を見せると、突如バッと彼等の方へ両手を突き出して

 

「私が今まで姿を見せなかった理由はただ一つ……それは破壊神を封印する術をとある神から教えて貰いに行ってた為であ~る!」

 

「とある神から? それってもしかして……」

 

自信満々にそう叫ぶ仏にヘスティアは一人顔をしかめる、どうやらそのとある神とやらに何か心当たりがあるらしい。

 

「それってもしかして……大昔に破壊神を初めてこの地に封印した、あのエロジジィの事かな?」

 

「そうです! めっちゃ浮気ばっかする上に性格も超悪い心底救えないクソジジィです!」

 

「はぁ~? リリ達が戦ってる中そんなよくわからん人物と会ってたんですかぁ?」

 

ヘスティアだけはどんな人物なのかは特定したみたいだが、他の者達は分かっていない様子。

 

胡散臭そうに眉間にしわを寄せながら、リリは隣にいるベルの背中を軽く叩く。

 

「もうベル様からもガツンと言って下さいよこの使えない仏様に」

 

「いやでも……仏様はその人から破壊神の封印する方法を学んで来たらしいし……ですよね仏様」

 

「任せて! ちゃんと教えてもらったから! それは自信を持って言えます! 多分!」 

 

「ど、どっちなんですか!?」

 

こちらに親指を立てながらも心許ない返事をする仏に、流石のベルもちょっと心配になって来ていると

 

仏はササッと懐からあるモノを取り出そうとする。

 

「私は最初からベル君達が破壊神を倒してくれる事を信じていたからここを任せていたのよ、そんで私はその間、こうして破壊神を封印させる為にアイテムを用意してきたの、はい」

 

「そ、それは……!」

 

懐から仏が取り出したあるモノを見てベルは驚愕を露わにする。

 

それは少し前に仏から貰ったとあるお土産と酷似したデザインの……

 

「前に貰った夢の国とかいう所で手に入るとか言っていたあの……!」

 

「そうです! その夢の国で買って来たクッキーの缶詰です! ハハッ♪」

 

「……なんですかその笑い方?」

 

仏が独特な笑い声を上げながら自信満々に取り出したのは、魅力あふれるキャラクターが描かれたちょっと大きめの缶。

 

一体これでどうやってあの巨大な破壊神を封印するというのだろうか……

 

「よーしお前達下がっているいい! 今から私はこの夢の国で買って来たコレで……あ、中身入ってた、クッキー欲しい人いる?」

 

「はい!」

 

「うわヨシヒコ、超手上げるの早い、お腹空いてた? じゃあこれみんなで分けて」

 

パカッと缶を開けて何かを始めようとする仏、中にまだ残っていたクッキーを全部ヨシヒコに渡して平等に分けなさいと伝えた後、改めて仏はその缶を地面に置いて封印の準備を始めた。

 

「うっし! 見とけよお前等ー! こっからいよいよ仏の偉大な力を見せてやる時が来たぜー!」

 

「うわヤベェ、このクッキーマジ美味い、マジ夢の国最高」

 

「もう一度行きたいですね夢の国」

 

「ヨシヒコさんは行った事あるんですか夢の国?」

 

「クラネルさん夢の国とは一体何ですか? 少々お話をお聞かせ願いますか?」

 

「フフフならばボクが代わりに教えて進ぜよう、夢の国とはボク等神々の間でも大人気スポットで……」

 

「あーッ! みんな仏の活躍より夢の国に夢中ー! 流石夢の国!」

 

気合を入れて仏が封印の準備に取り掛かるが、みんな彼をそっちのけで夢の国トークに花を咲かせてしまう。

 

恐るべし夢の国が持つ魔性の魅力。

 

「てか紐コラ! お前まで一緒に夢の国クッキー食ってんじゃねぇよ! 同じ神なんだから仏を手伝いなさい!」

 

「仕方ないなぁ、借りはちゃんと返しておくれよ、期待しないけど」

 

「え!? 神様が仏様の封印をお手伝い!?」

 

ドサクサにヨシヒコ達と一緒にクッキー食べていたヘスティアに気付くと、仏は彼女に叫んで助力を要請。

 

ヘスティアは渋々と言った感じでそれを了承すると、まさか彼女がここに来て仏と共に破壊神を封印してくれると聞いてベルが目を見開く。

 

「無理はしないで下さいね神様! どうやって封印するかわかりませんけど危なくなったら僕が護りますから!」

 

「平気平気、ヤバくなったら全部仏に丸投げして逃げるから」

 

「なるほど、それなら大丈夫ですね!」

 

「全然大丈夫じゃないよベルくん!、仏が犠牲になってるからね!?」

 

天然なボケをかますベルに仏は素早くツッコミを入れ終えると、改めて準備が済んだのか

 

「よし! そんじゃいきます! 仏、いっきま~す!」

 

かつての友である破壊神シドーに向かって「むぅん!」と変な声を出しながら両手を突き出す。

 

「さよならタケちゃん! 食らえ! ゼウスのクソジジィからネチネチ言われながら伝授された! 神をも封印する秘術! でやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

仏様が叫んだその瞬間、ベル達の前で破壊神に異変が起こった。

 

彼を中心に突如時空が歪んでいるかの様に渦巻く螺旋が発生し、シドーを瞬く間に飲み込んでしまうと、空中でその巨体が圧縮する様に縮んでいき、次第にそのまま高速に回転していく。

 

「グギャァァァァァァァァァァ!!!!」

 

「ああ! ちょ! あのジジィに聞いてたのと全然違う! めっちゃ抵抗されて全然コントロール出来ない! 紐! ヘルプ!」

 

「仕方ないなぁ、ぬぅん!」

 

両手を掲げながら仏は意識が覚めて暴れようとするシドーを抑え込むだけで精一杯。

 

しかしそこへヘスティアがやれやれと言った感じで彼と同じように両手を突き上げると、2柱の神の力が重なった事により抑え込む力が破壊神の抵抗を上回った。

 

そしてその両手を突き出しながらグルグルと回り続ける破壊神を抑え込もうとしている仏をぼんやりと眺めながら、メレブはクッキー片手に

 

「いやそれぇ……魔封〇じゃね? え? 神を封印する術ってもしかして亀仙人のじっちゃんが使ってたアレ?」

 

「おい、仏の野郎が戻って来たと思えば破壊神相手になんかやってるみてぇだが、何が起きてんだ説明しろキノコ野郎」

 

「え~仏が〇封波使って破壊神を封印してる所、あ、クッキー食べる?」

 

仏が頑張って破壊神を封印しようとしてる中、異変に気付いてベート達も何事かと集まって来た。

 

そんな彼等にメレブは優しくクッキーを手渡す。

 

「いくら破壊神を倒しても時期にまた復活するらしいから、ああやってまた封印し直すんだって」

 

「あぁぁぁぁぁぁ!! いける!? いけるコレ!? ああやっぱ駄目! 一旦元に戻して! 体制変えさせて!」

 

「おいもっと本気を出せ仏! ボクの方に負担を押し付けて一人で楽してるんじゃないぞ! ああもう! また軌道が反れたじゃないか!」

 

「いや封印すんのは別にいいんだけどよ……上手くいってんのかアレ?」

 

仏とヘスティアの頭上ではまだ抵抗するシドーがあっちこっちに飛び回っている。

 

ギャーギャー叫ぶ2柱の神を眺めながらベートが不安そうに呟いていると、アイズとオッタルはポリポリとクッキーを食べながら

 

「問題ない、失敗したらしたらでもう一度倒せばいいだけの事」

 

「というかここで封印してしまったら奴に奪われた兄貴の魂を救えないのではないのか? 俺にとってそれだけが心配だ、他はどうでもいい」

 

「お前等少しは現実的にモノ考えろよ……」

 

三人の中では割と常識人であるベートが呑気なアイズとオッタルにポツリと呟いていると

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! よしイケる! このまま夢の国クッキーの缶にドーンだyo! 呼吸を合わせろ紐! せーので行くぞコラァ! はいせーの!」

 

「ちょ! 合図の段取り下手過ぎだろ君! まだこっちは心の準備ってモンが! あーもう!」

 

勝手に自分発信で合図を送ってきた仏にヘスティアは腹が立ちつつも、こうなったらヤケだと言った感じで両手にグッと力を込めて

 

 

「「はいドォォォォォン!!!」」

 

「ギヤァァァァァァァァァァダンカンコノヤロォォォォォォォォォ!!!!!」

 

奇跡的に仏とヘスティアの掛け声が合わさったその瞬間、地面に置かれたクッキーの缶に向かって彼等が同時に両手を振り下ろすと、破壊神シドーは竜巻の如く回りながらクッキー缶の中へと吸い込まれていき、そして

 

「はいヨシヒコ! 缶閉じて!」

 

「ふぁい!!」

 

最期の断末魔の叫びを上げながらシドーが完全に缶の中にとじこめられたのを確認するとすぐに仏がヨシヒコに支持。

 

口の中にクッキーを入れながらもヨシヒコは即座に従ってその缶の蓋を持って固く閉じるのであった。

 

「ほれで封印完了でひゅか? ひょとけ?」

 

「ヨシヒコ、口の中にモノ入れたまま喋るの止めなさい、あ~口からポロポロクッキーの滓が落ちまくってるし」

 

ビシッと決めるべき場所で決めてくれない残念な勇者に仏はしかめっ面で首を傾げながら窘めた後、その場にゆっくりと座り込んだ。

 

「あ~~、なんかすっげぇ疲れた、この封印、滅茶苦茶しんどい……体痛いし明日筋肉痛で動けないわコレ」

 

「その程度のレベルで済むんならまだマシだろ、亀仙人のじっちゃんなんかそれ使ったら死んじゃったんだぞ」

 

「ううん何言ってるのか全然わかんない、まあ何はともあれ、ね、無事に封印も済んだ事だし、この世界の脅威は完全に去ったという事でしょう」

 

メレブのよくわからない言葉を軽く流して仏は安堵したかのように座ったまま休んでいると、ヘスティアもまた彼と同じように地面に座り込む。

 

「こ、ここまで体力を持っていかれるとは聞いてないぞ……あーもうダメだ、ベル君、もうボクはここから一歩も動く事は出来ない、という事でおんぶしてくれ」

 

「それぐらいならお安い御用ですけど、ホントに大丈夫ですか神様? 本当にしんどそうですけど」

 

「ん~人の温もりを貰えれば少しはましになるかもね~、ということでベル君、早くおんぶ」

 

ここぞとばかりに自分を労えと要求するヘスティアにベルは心配そうに尋ねつつも、とりあえず彼女の要求通りに背負おうとする。

 

だがその時

 

「おい見ろ! 破壊神が封印されたと同時に! 何やら人らしきモノが現れたぞ!!」

 

「え?」

 

突如ダンジョーが大声を上げながら指を差して叫んでいるので、ベルは釣られてそっちの方へ振り返る。

 

見るとそこにはぼんやりと薄いピンク色のシルエットが徐々に人の形になっている所であった。

 

するとヨシヒコやオッタルもいち早く反応してダンジョーの隣に駆け寄り

 

「もしやアレは! ダンジョーさんが言っていた世界一美しいと称される者の魂!!」

 

「封印が完了した時は不安であったが……どうやらあの方の魂も救われたみたいだ……俺はとても感動している」

 

「ハッハッハ! 待っていたぞこの時を! さあ俺の元へ来るがいい!」

 

一時はシドーの復活の糧として奪われてはいたが、皆の尽力によってようやくその魂がこの地に帰還する事が出来た様だ。

 

オッタルが感動して一人涙を流しているのをよそに、ヨシヒコとダンジョーは今か今かとその者の復活を興奮した様子で待っていると……

 

 

 

 

 

 

「ホイホイチャーハン♂」

 

「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」

 

ピンクのシルエットから現れたその正体は、ガチムチボディを堂々と曝け出す角刈りの屈強な大男であった。

 

予想していたモノと遥かにかけ離れた存在の御光臨に、ヨシヒコとダンジョーは同時に大声を上げてショックを受ける。

 

するとオッタルは現れた男を懐かしむような目を向けながら

 

「あれぞ兄貴……崇高で偉大かつ、この世で最も美しく素晴らしい肉体を持つ唯一無二の存在だ……」

 

「お前がずっと何度も美しいと言っていたのは! 男だったのかぁ! ふざけおってぇ!」

 

「俺は一度も女だと言った覚えはないが?」

 

兄貴のはち切れんばかりの肉体をうっとりと眺めながら呟くオッタルにダンジョーが声を荒げるが

 

何故かヨシヒコはその兄貴という男に何やら思う所があった様子で

 

「ダンジョーさん、私……あの男前にどこかで見た様な気がします……夢の中で会ったような……」

 

「イッケメーン!」

 

「は! 間違いない! あの者は私の夢の中に出て来た男だ!」

 

「ゲイパレス♂」

 

「止めろ! 私の方へ来るんじゃない!」

 

別の世界でのトラウマが徐々に蘇っていき、ヨシヒコが気が付いたのも束の間、兄貴は笑みを浮かべながらゆっくりと彼の方へと歩み寄って行った。

 

「来るな! ニヤニヤしながら私の方へ来るなーッ!」

 

「歪みねぇな!」

 

慌ててヨシヒコは後ずさりをするも、兄貴の鋭い眼光は彼を決して逃がさないという強い意志が現れている。

 

そして

 

「私の傍に近寄るなぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

「抑えられないよ!!」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「え、ヨシヒコさんがこっちに向かって……ってうわ! た、助けてぇぇぇぇ!!」

 

「仕方ないね!」

 

「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」

 

突然全力ダッシュで突っ込んで来た兄貴にヨシヒコは咄嗟にベルの方へと駆けていく。

 

すると兄貴はヨシヒコだけでなく彼もターゲットに加えたのか、目を爛々と輝かせながら襲い掛かって来たので、ベルもまたヨシヒコと共に逃げ回るハメになるのであった。

 

 

 

かくして破壊神シドーは、仏とヘスティアによって再び封印され

 

世界滅亡の危機はなんとか防ぐ事が出来た。

 

魂を奪われていた兄貴も晴れて復活を果たし

 

これでようやく長かった物語は終わりを迎える準備が出来たのであった。

 

 

 

 

 

しかし唯一人、そうは上手くいかせないとする悪しき心を持った者が一人いる事を

 

ここにいる者は皆、すっかり忘れてしまっているのである。

 

次回、最終回

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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