問題児たちが異世界から来るそうですよ?~二天龍を従えし者~ 作:眠らずの夜想曲
白夜叉とのゲームが終わった俺たちは、しばらく歩いたあと、『ノーネーム』の住居区画の門前についた。
門を見上げると、旗が掲げてあったような跡があった。
「この中が我々のコミュニティでございます。しかし本拠の館までは更に歩かねばならないのでご容赦ください。この辺はまだ戦いの名残がありますので………」
「そうか……」
「ちょうどいいわ。箱庭最悪の天災が残した傷跡、見せてもらおうかしら」
飛鳥が少し、機嫌悪そうだ。
プライドが高いであろう飛鳥がさっきみたいに見下されたらな……
黒ウサギが躊躇いつつ門を開けた。
すると門の向こうから乾ききった風が吹き抜けた。
砂が少しだけ顔にかかった……
「っ、これは………!?」
「すごいな……」
街並みに刻まれた傷跡を見た問題児たちは、すごく驚いていた。
俺?
神界にいた百年でこの程度なら何回も経験しましたとも。
十六夜が木造の廃墟に近づいて囲いの残骸を手に取った。
少し握っただけで、木材は乾いた音を立てて崩れていった。
「………おい、黒ウサギ。魔王とのギフトゲームがあったのは―――――今から何百年前だ」
「僅か三年前っでございます」
「この風化しきった街並みが三年前だと?」
『ノーネーム』のコミュニティは―――まるで何百年前と時間経過で滅んだように崩れ去っていた。
「………断言するぜ。どんな力がぶつかっ「なぁ、黒ウサギ」…ッチ、なんだ刃?」
「な、なんでございますか、神浄さん?」
「これ、元に戻せるけど元に戻してほしいか?」
「「「「!?!?」」」」
「ほ、本当でございますか!?」
「マジかよ……いや、バグの存在なお前なら……」
十六夜の野郎……
後で覚えておけ。
「そ、そんなことより元に戻していただけるんですか」
「あぁ、黒ウサギがいいなら戻してやるよ」
「お願いします、神浄さん!!」
「少し待っていろ」
さて、やりますか。
『時間を操る程度の能力』発動。
一瞬だけ、もの凄い閃光が辺りを包む。
閃光がやむと、その場所にはかつての輝きを取り戻した街並みがあった。
「「「「!?!?」」」」
「ウキャー!!ありがとうございます!!神浄さん」
「礼はいい。早く行こう」
☆☆☆
「黒ウサギ!!今のはいったい……」
「ジン坊ちゃん!!先ほどのはこちらの神浄さんがやってくれたんですよ!!」
「そ、そうでしたか。コミュニティのリーダーとして礼を言います。ありがとうございました」
『ノーネーム』の住居区画、水門前に移動した俺たちは男の子に出会った。
ジン、と言うらしい。
しばらくジンと黒ウサギが問答を繰り返していた。
それが終わると水樹を植えることになった。
その前に子供達に自己紹介をしたが、問題児たちはすごく複雑な表情をしていた。
おそらくだが、子供が苦手なのだろう。
「さて、自己紹介も終わりましたし!!それでは水樹を植えましょう!!黒ウサギが台座に根を張らせるので、十六夜さんのギフトカードから出してくれますか?」
「あいよ」
それにしても大きい貯水池だ。
ちょっとした湖くらいはありそうだ。
それに、水路もかなりの数がある。
こうやって改めて見ると、この『ノーネーム』がすごいコミュニティだったことがわかる。
俺が水路をマジマジと観察している間に、十六夜は黒ウサギとじゃれあっていた。
何か話しているようだった。
そこに飛鳥が混じり、耀は―――一番最初に混じっていた。
あれ、俺もしかしてボッチ?
そんなことはどうでもいい。
いや、どうでも良くないけど……
「さっさと水樹を植えろよ」
俺が黒ウサギに促す。
黒ウサギは思い出したように、
「そ、それでは苗の紐を解いて根を張ります!!十六夜さんは屋敷への水門を開けてください!!」
「あいよ」
十六夜に促した。
十六夜は貯水池に下りて水門を開けた。
黒ウサギが苗の紐を解くと、根を包んでいた布から大波のような水が溢れ返った。
そして激流となって貯水池を埋めていく。
水門の鍵を開けていた十六夜が叫んだ。
「ちょ、少しマテやゴラァ!!さすがにこれ以上は濡れたくねぇぞオイ!!」
そのままずずぶ濡れになれ。
そんな俺の願いは叶うわけもなく、十六夜は石垣まで跳躍してしまった。
「うわお!!この子は想像以上に元気です♪」
黒ウサギよ、何をのんきなことを言っているのだ。
問題児たちはジンと何か盛り上がっているし……
まさか本当に俺、ボッチ?
友達、できるかな……?
できるといいな。
☆☆☆
屋敷に着いた頃にはもう夜中だった。
屋敷はすごく大きかった。
そして俺が時間を巻き戻したせいかとても綺麗で高級ホテルのような感じがした。
俺と問題児たちの『今はとにかく風呂に入りたい』という強い要望の下、黒ウサギはすぐに準備をしにいった。
準備が終わるのを知らされると、女子から先に入ることになった。
それには依存はない。
女子が入った後って、なんだかワクワクしない?
俺と十六夜は視線を交わらせる。
「さてと―――今のうちに、外の奴らと話をつけておくか」
「そうだな」
俺はニヤリと笑いながら返した。
☆☆☆
今夜は十六夜の月だ。
だからといって何があるわけでもないが。
屋敷を出た俺と十六夜は、コミュニティの子供達が眠る別館の前で仁王立ちをしていた。
まぁ仁王立ちをしていたのは十六夜だけで、俺は胡坐をかいて『重力を操る程度の能力』を使って、宙に浮かんでいた。
「おーい……そろそろ決めてくれねぇと、俺が風呂に入れねぇだろうが」
十六夜がしびれをきらして声を上げる。
だが、侵入者からの反応はない。
「ここを襲うのか?襲わねぇのか?やるならいい加減に覚悟決めてかかってこい」
もう一度十六夜が問うが、侵入者からの反応はない。
俺は相変らずプカプカ浮いている。
これ楽しい……
癖になったぞ。
そこで、十六夜が動いた。
呆れながら石をいくつか拾い、木陰に向かって軽く投石した。
「よっ!!」
ズドガァン!!とあんなに軽いフォームからは普通では考えられないデタラメは爆発音が辺り一帯の木々を吹き飛ばす。
「ど、どうしたんですか!?」
別館からジンが出てきた。
かなり慌てているようだ。
「侵入者っぽいぞ。例の『フォレス・ガロ』の連中じゃねぇか?」
どうやら十六夜は侵入者のことは知らないのに攻撃もどきをしたらしい。
空中からドサドサと黒い人影と瓦礫が落ちてくる。
意識のある奴はかろうじて立ち上がった。
そして俺たちを見てきた。
「な、なんというデタラメな力……!!蛇神を倒したというのは本当の話だったのか」
「あぁ……これならガルドの奴とのゲームに勝てるかもしれない……!!」
侵入者からは敵意が感じられないが、会話の内容は虫唾の走るものだった。
十六夜もそれに気づいたのか、侵入者に歩み寄って声をかけていた。
「おぉ?なんだお前ら、人間じゃねぇのか?」
侵入者の姿はそれぞれ一部が人とかけ離れているものだった。
獣耳だったり、獣毛だったり、獣爪だったり、虫みたいな奴もいた。
はっきり言うと、どれも男なのでまったくもって気持ち悪い。
これが女の子だったらもっと違った反応ができるだろうが。
十六夜は物色するように彼らを興味深く見つめていた。
「我々は人をベースにさまざまな『獣』のギフトを持つ者。しかしギフトの格が低いため、このような半端な変幻しかできないのだ」
「へぇ……で、何か話をしたくて襲わなかったんだろ?ほれ、さっさと話せ」
十六夜はイイ顔で話しかけていた。
しかし侵入者は全員、沈鬱そうに黙り込んだ。
侵入者は互いに目配せをした後、意を決するように頭を下げて、
「恥を忍んで頼む!!我々の……いえ、魔王の傘下であるコミュニティ『フォレス・ガロ』を完膚なきまでに叩き潰してはいただけないでしょうか!!」
などとふざけたことを言ってきたのだ。
もちろん返答は、
「「嫌だね」」
の一言だった。
十六夜も同じことを考えていたらしく、同時に声を出した。
ハモった。
この一言に、侵入者だけではなく、ジンも固まっていた。
十六夜はつまらなそうな顔になり、侵入者たちに背を向けた。
「どうせお前らもガルドにって奴に人質を取られている連中だろ?命令されてガキを拉致しに来たってところか?」
「は、はい。まさかそこまで御見通しだとは露知らず失礼な真似を……我々も人質を取られている身分、ガルドには逆らうこともできず」
十六夜が口を開こうとしたが、それを手で制す。
不満そうな顔をするが、アイコンタクトで何をするかわかったらしく大人しく引いてくれた。
「人質?アハハ、もう死んだって聞いたけど?」
「――――――………なっ」
「刃さん!!」
ジンが慌てながら割って入ってきた。
だが、俺は冷たい声音で話す。
「隠す必要あるか?どうせいずれかは知ることだ」
「そ、それにしたって言い方というものがあるでしょう!!」
「気を使えというのか?馬鹿かテメェは。今まで殺された人質を命令されるがままに、人形のように攫ってきたクズはどこのどいつだ?そこにいる奴らだろうが」
はっとジンは振り返る。
どうやらジンは頭が回るらしい。
「確かに悪党狩りはカッコイイかもしれないがな、根源に頼まれてやるわけがないだろ」
「そ、それでは、本当に人質は」
「……はい。ガルドは人質を攫ったその日に殺していたそうです」
「そんな……!!」
侵入者は全員、その場で項垂れた。
ドンマイとしかいいようがない。
「『フォレス・ガロ』が憎いかお前ら」
「あ、当たり前だ!!俺たちがあいつのせいでどんな目にあってきたか……!!」
「おまえらにはその力がないと?」
ぐっと唇をかみしめる侵入者たち。
「ア、アイツはあれでも魔王の配下。ギフトの格も遥かに上だ。俺たちがゲームを挑んでも勝てるはずがない!!いや、万が一勝てても魔王に目をつけられたら―――」
俺はジン坊の頭を撫でまわしながら、
「その魔王を倒すコミュニティをこのジン坊が作ってくれるってよ。よかったな」
こう言った。
この一言に十六夜以外のこの場にいた全員が驚いた。
どうやら十六夜は全て理解したようだ。
「質問は受け付けない。これだけは言っておこう。魔王のことなら何でもまかせろ。魔王のことはジン=ラッセルまで」
一息入れて、続ける。
「人質のことはドンマイとしか言いようがない。まぁ安心しろ、明日ジン=ラッセルが率いるメンバーが仇を取ってくれるだろう!!その後も心配するな、なぜならジン=ラッセルが『魔王』を倒すために立ち上がったのだからな」
「「「「「おぉ………!!」」」」」
侵入者が希望を見た、とばかりに声を上げる。
ジンが俺の腕の中でもがいている。
が、そんなものは関係ない。
俺の腕力から人間が逃げられるわけがない。
「さっさとコミュニティに帰れ。そして言いふらせ、ジン=ラッセルが『魔王』を倒してくれるとな!!」
「わ、わかった!!明日は頑張ってくれジン坊っちゃん!!」
「ま……待っ……!!」
ジンの叫びが届くはずもなく、侵入者たちはあっという間に走り去っていった。
拘束を解くと、ジンはがっくりと膝を折った。
☆☆☆
本拠の最上階、大広間に引きずり込まれた俺は、十六夜に爆笑されていた。
だが、それ以上にジン坊が大声で叫んでいるのが目に入る。
「どういうつもりですか!?」
「打倒魔王を掲げたんだろ?このくらいはしなければ」
「魔王の力はこのコミュニティの入口を見て理解できたでしょう!?」
「もちろんだ。俺はがっかりしたよ」
「はい?」
ジン坊は逆に落ち着いてしまったようだ。
冷静になってくれたのは嬉しいな。
「『箱庭』の『魔王』の力はこの程度かとね」
「な―――」
ジン坊は驚愕の表情を顔に張りつける。
そして、
「この程度って……あんなにひどいことになっていたんですよ!?」
「あぁ、だからあの程度だろ?あの程度なら俺は何千回を経験したぞ」
「なんだと?」
今度は十六夜が声を上げた。
だがこれは事実だ。
神界にいた百年の中で、俺は数億回、死を経験した。
世界が破壊しつくされたり、崩れ去ったり、死に侵されたり……
物質はまったく残らなかった。
だが、ここの魔王は物質を御丁寧に残してくれているではないか。
その分まだ、『魔王』の方が優しい。
「アレを何回も経験しただと?刃おまえ一体どんな世界から来たんだ?」
十六夜が珍しく真剣な顔つきで言った。
「何、ただ修行の為に寄った世界だったからな。その世界の前はごく普通の平和すぎる世界だったさ」
俺はそれだけ言い残して二人に背を向ける。
「『魔王』の件は十六夜もわかるだろうから、十六夜に訊いてくれ。俺は風呂に入って寝る」
そして今度こそ、二人の前から去った。
☆☆☆
風呂は大きかった。
すごく、大きかった。
気持ちよかった。
やはり風呂は良いな。
特に大きい風呂はリラックスできる。
風呂をあがると未だに十六夜とジンが話をしていた。
まだ説明しているのか……
まぁそれはいいか。
俺は適当な部屋に入り、ベットに横になり眠りについた。
―――――――――――――翌朝
「あぁぁ…」
そういえば今日は飛鳥と耀のギフトゲームの日だったな。……………
すいません。今日は短いです。次回はギフトゲームから…ついにレティシアが出ます。
2014/04/03現在、肉付け&改変。