問題児たちが異世界から来るそうですよ?~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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〈新約〉第1話~帰還~

異世界旅行から『箱庭』へ帰ってきた俺なのだが……

俺は今すごいところに居る。

 

 

「久しぶりじゃないか刃!!まったく……途中ではぐれるから心配したんだぞ!!それよりはやく服を脱げ!!まったくここは温泉だぞ?服を着て入るな。なじみもだ」

「ん、そうだね」

 

 

と言ってなじみは服を脱ぐ。

まぁ俺も脱いだが。

飛鳥と耀はとっくに上がった。

俺が来た瞬間にだが。

 

 

「ふぅ、久しぶりだな」

「「「「「お兄ちゃん(お兄様)!!」」」」」」

 

 

と言いながらみんな一斉に俺に突っ込んでくる。が、

 

 

「危ないだろ!!」

 

 

俺は全部避ける。

全く、裸なんだしもう少し恥じらいを持ってほしいよ。

 

 

「そんな事より……どうだ?なにかあったか?」

「………それについてなんだが……嫌な予感はする……十六夜も何か感じているようだし」

「………そうか」

 

 

何かに気づいてはいるが隠している。

そのように少しだけ感じている。

 

俺を守るため。

 

そんな理由が頭に浮かぶ。

が、それより俺の方が心配だ。

レティシアが隠し事をしたせいで傷つくなんてことがないか。

 

 

 

「そろそろ上がらないか?のぼせてきてしまった」

「む?そうかでは上がるか」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

風呂からあがった俺はレティシアの部屋に来ていた。

 

 

「さて、私と離れた後何があったんだ」

「ん?あぁ、実はな―――」

 

 

仕方ないから俺は話した。英霊と闘ったこと。

仲間もあまり増やすことはできなかったがなかなかの人材が集まったということも。

そして途中でなじみに会ったことも。

 

 

「今日はここで寝ていいか?」

「当たり前だ。むしろこちらから頼みたいくらいだ」

 

 

この日は、特にナニもせずに寝てしまった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

『煌焰の都』本拠宮殿・第三右翼の宮。

そこに俺たちは来ていた。

 

この『煌焰の都』は北側の支配者『サラマンドラ』が治める都市だ。

第五桁の外門に住む彼らは、箱庭の天災―――魔王の気配に敏感だ。

さすがに俺には劣るがな。

 

数日前に起こした、俺と殿下の戦いは噂になっていた。

その噂は『煌焰の都』を巡りに巡って住人の誰もが知っているらしい。

そう遠くない日に魔王の襲撃があると考えている者も少なくはないだろう。

彼らは己のコミュニティを守るために動き出している。

 

危険を察知してとから離れる者。

魔王との戦いが終わるまで本拠に閉じこもる者。

これを機に、魔王の首級を上げてみせると意気込む者もいた。

そして、己の力を試したい。

 

どいつも馬鹿ばかりだ。

 

危険を察知して離れる。

まぁこれはしょうがないだろう。

本拠に閉じこもるだと?

本拠ごと消しとばされてお終いだ。

魔王の首級を上げる?

そんな風に浮かれていたら殺されるのがオチだ。

己の力を確かめたいだと?

そんなもの身内内にとどめておけ。

調子に乗りすぎだ。

やはり殺されるのがオチだ。

 

だが、そうな名乗りを上げた者たちが今ここにいるのだ。

 

サンドラと俺の最愛の義妹、ペストが会議場の檀上に上がった。

 

 

「これより魔王連盟―――『ウロボロス』と名乗る集団に対抗するための会議を始めます」

 

 

サンドラが赤髪を揺らしなが凛とした声で宣言した。

隣に立つペストは投獄されかけた。

だがそんなことを俺が見逃すわけがない。

ペストの分身を創造し、代わりに投獄させておいた。

分身とはいえ、かなりイラついた。

 

この会議室には彼女が人選したコミュニティも同席している。

 

火竜の旗印を持つ『サラマンドラ』

蒼炎の旗印を持つ『ウィル・オ・ウィスプ』

ゴーゴンの首の旗印(笑)を持つ『ペルセウス(笑)』

無印だが創造神である俺がいる『ノーネーム』

 

以上のコミュニティが上座に構えている。

『ウロボロス』と相対するときは、主軸に戦うだろうと見越しているのだろう。

ジンは隣の席にいるカボチャ頭のジャックに話しかけている。

何を話しているのかはどうでもいい。

いや、よくないがな。

気にしなくてもいい、が正しいか。

 

 

「『黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)』。貴女の加盟していた『ウロボロス』の詳細を皆に話してください」

 

 

サンドラよ、それはペストに対しての見せしめなのか?

そしたら黙っている訳にはいかない。

 

 

「サンドラ、次にそうペストのことを呼んでみろ。―――『サラマンドラ』を消しとばすぞ?」

 

 

殺気を込めながら、静かに平坦な声でサンドラに言う。

 

 

「も、申し訳ありません。失礼しました、ペスト」

「……いいよ。もぅ、お兄ちゃんはもう少し押さえてよね♪」

「すまないな。ペストへ敵意にはどうしても反応してしまってな」

 

 

ククク、と笑いながら返す。

 

壇上に立ったペストは第三右翼の宮をぐるりと見渡し、主力を一人一人確認しているようだった。

 

全員の顔を一通り見たペストは一呼吸置いた後、小さくため息を吐いた。

 

 

「魔王連盟―――『ウロボロス』について語ることに異論はないんだけどね。その前に、一つ言っておくことがあるんだけど……いいかな?」

 

 

ペストの不遜な態度に会議室がざわつく。

いちいち反応するなんて、余裕がなさすぎだ。

もう少し余裕を持ってほしいものだ。

 

ジンとジャックは何やらあたふたしているようだ。

 

ペストは壇上からイイ顔をみんなに向け、悪気の全く感じさせない声音で宣言した。

 

 

「お兄ちゃん、それとお兄ちゃんの眷属以外戦力外。荷物まとめて帰ってね♪」

 

 

ビシィ!!と、第三右翼の宮に絶対零度の寒波が襲った。

ような気がした。

仮にもここに集まったのは腕に自信のある猛者たちだけだろう。

あくまでも自信があるだけなので、実際に実力があるかどうかはわからない。

 

気焰を口内から吐き散らす亜龍や鬼人たちは青筋を立ててペストをにらんでいる。

あいつ……殺してやろうか?

それとも破壊しつくしてやろうか?

 

 

「貴様………敗軍の将の癖に何を生意気な」

「フン。元魔王を名乗ったところで所詮は小娘だろうが」

「この場に居合わせているのは魔王との戦いを勝ち抜いた猛者揃い。どの減らず口を黙らせるぐらい訳もないのだぞ………?」

 

 

こいつら……殺してやろうか。

俺はそんなに我慢強いわけではないのだ。

 

 

「貴様ら、殺されたいのか?俺のかわいいペストにふざけたことを言いやがって」

 

 

我慢せずに思ったことを全て言う。

 

 

「小僧!!貴様こそ何様のつもりだ!!」

 

 

馬鹿な三人が俺に襲い掛かってきた。

どうやら死にたいようだ。

望み通り殺してやろう。

 

始めに、プログレッシブ・ナイフを創造し、右手で逆手に持ちながら一番距離の近い奴の懐に入り込む。

そしてそのまま腹から撫でるように喉まで引き裂こうとした時だった。

 

 

「た、大変ですサンドラ様ぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 

バタン!!と会議室に飛び込んできたのは亜龍だった。

それと同時に俺の中の殺意が一気になくなる。

 

 

「何かありましたか?まさか魔王が「ち、違います!!『ノーネーム』です!!例の『ノーネーム』の三人組が鍛練場で腕試しをすると言って………つ、次々に駐屯兵を相手に戦い始めたのですッ!!」…」

 

 

サンドラの言葉を最後まで聞かずに続けた亜龍。

仮にも上の者の言葉を最後まで聞かないとは……

 

ジンは「うわぉ」と小声でうめいて頭を抱えていた。

ペストは口元をニヤリと歪めながら、

 

 

「ほらね。やっぱり打豪の衆だったね♪」

 

 

と嫌味たっぷりに言った。

 

 

「くっ、図に乗るな貴様ッ!!」

「我らにも意地がある!!そこまで言われて引き下がることは出来んなッ!!」

「応よ!!吐いた唾飲み込むんじゃねぇぞ―――!!」

 

 

などと、三下が言うようなセリフを言いながら、人化の術を解いて次々と変幻していく。

人狼、妖狐を始め、鬼種、亜龍など全身から熱気を放つ暑苦しくてたまらない者達が一斉に席を立った。

 

ペストはニコニコしながら俺に近づいてきて、俺に腕に自分の腕をからめて頬ずりをしてきた。

そんなペストの頭を撫でながら、

 

 

「いっそ全員潰してみるか……」

 

 

と、呟いてしまった。

 

ペストと一緒に部屋を出る。

目指すは鍛練場。

少し調子に乗った馬鹿者達を静かにさせるために。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

『煌焰の都』本拠宮殿・隊舎前の鍛練場に来たのだが……

凄く騒がしかった。

 

 

「えぇい、小娘相手に何を手間取っている!!」

「陣形を組み直せ!!」

「数の優位を生かすのだ!!決して勝てぬ相手ではないぞ!!」

 

 

方向を上げて疾駆している七体の火龍。

鍛練場の中心で耀は七体の火龍を相手にしていた。

 

 

「このっ……!!」

 

 

耀は今まで以上に輝く旋風を巻き上げて空を疾駆する。

だがその足には、光翼馬(ペガサス)の具足は装着されていなかった。

なるほど、自力で輝く旋風を放出しているのか。

その点は評価しよう。

 

だが、それ以外は甘すぎる。

 

なぜそれを利用して高速でナイフを放出しない。

旋風にナイフを乗せればそれだけで殺傷能力は上がり、回避の必然性は上がる。

同時に相手の行動を制限し、次の行動が読みやすくなる。

そうなればそれに合わせて攻撃を加えるのは容易だ。

 

まぁ必要はないのかもしれないが。

 

耀は滞空したまま激しい稲妻を迸らせる。

眩い稲光を放つその手に握られていたのは―――三百六十種の獣の王とされる、麒麟を模した矛だった。

横一文字に振るうと、雷鳴を轟かせながら扇状に稲妻が放射される。

それらは七体の火龍を貫いた。

 

当たり前だ。

 

火龍と言えど、神獣の放つ稲妻が相手だ。

部が悪い。

 

じゃあそろそろ行きますか。

 

ペストを腕から引き剥がし、狐の面を創造して顔にかける。

 

 

「行ってくる」

「いってらっしゃい、お兄ちゃん♪」

 

 

ペストから激励をもらった。

これはやるしかないだろう。

 

バルムンクを創造し右手で持ち、そのまま突き出す。

すると破壊の渦が放たれ、空間を削り取りながら耀の元へ飛んでいく。

 

 

「春日部ッ!!」

 

 

十六夜の叫び声が鍛練場に響き渡る。

そに耀は反応し、ギリギリのところで渦から逃れる。

 

 

「テメェ!!春日部を殺すか!!」

 

 

十六夜が俺に叱咤する。

殺す気はなかった。

避けるだろうと信じていたから。

 

 

「ククク、それはどうかな?」

 

 

声音を変えながら十六夜に返す。

その返答に十六夜がキレて、俺に殴りかかってくる。

だが、

 

 

「なんだ?この程度か?」

「な―――」

 

 

渾身の一撃を放ったつもりだった十六夜が目を見開く。

なざなら、俺が左手一本でその拳を受け止めているからだ。

 

 

「動きを止めるな馬鹿者め」

「ガハッ!!」

 

 

十六夜の腹に蹴りを放つ。

抵抗できなかったのか、面白いように鍛練場の中を吹き飛んでいく。

 

バルムンクを消し、そのまま今度は耀に攻撃を仕掛ける。

耀は右手に持つ矛で俺に攻撃を加えてくるが、それを難なくよける。

素人の振るう矛など簡単に躱せる。

 

矛を掴み、そしてこちらに引く。

 

 

「あ―――」

 

 

耀が声を漏らした。

それに構わず腹に掌底を放つ。

もちろん、十六夜に与えた攻撃よりかなり弱い。

だが耀も面白いように吹き飛んでいく。

 

さて、残るは―――

 

 

「飛鳥だけだ」

「くっ!!」

 

 

悔しそうに、だが忌々しそうに悪態をついた。

一瞬で飛鳥に近づき、腕を引き絞る。

 

 

「ひっ―――」

 

 

と、短く悲鳴を上げる飛鳥。

ははは、飛鳥は貧弱だから二人みたいに吹き飛ばしたりしない。

人差し指でコツン、と額を小突く。

 

 

「え……?」

 

 

殴られると思っていたのか、目尻に涙を浮かべている飛鳥。

なんだ、普通に可愛いじゃないか。

俺は面を取り、飛鳥に顔を見せる。

 

 

「や、刃くん!?」

「そうだぜ、飛鳥」

「もぅ!!」

 

 

そう言い、バシバシと可愛く俺を叩いてくる。

 

その後、十六夜と耀が気絶していたので目を覚まさせる。

十六夜と耀が文句を言ってきたが、睨んだらすぐに黙った。

それから十六夜は、鍛練場にいるみんなにこうなった経緯を説明し、みんなに「手伝ってくれ」と、頭を下げた。

 

 

「第一段階クリア、か。問題は―――」

「あぁ、ここからだぜ」

「えぇ………黒ウサギがあんな状態じゃ、『審判権限』で中断する事も出来ないもの」

「うん。私たちが頑張らないと」

 

 

俺達は難しい顔で向かい合う。

だが黒ウサギの『審判権限』を必要としていたのは俺以外の連中だ。

俺自身は『審判権限』に邪魔された思い出しかない。

 

そこから、話は黒ウサギの耳の話が始まった。

自分の耳が頭上にあるとか怖すぎる。

トラウマになってもおかしくない。

 

そして話合いは誰が誰を相手するかに進展した。

十六夜が殿下を相手にするらしい。

途中から、ウィラが手を挙げて話し合いに参加してきた。

 

『マクスウェルの魔王』や側近の倒し方を何か考え付いたようだ。

 

 

「出現位置を押さえればいい」

 

 

サラリと難題をブチ込みやがった。

それは現状俺以外には難しい。

確かに出現位置が特定できれば《境界門》の攻略は難しくないだろう。

 

 

「―――なるほど。春日部の親父っていうのは、そうやってマクスウェルを儀期待したわけか」

「「え?」」

 

 

飛鳥と耀が驚きの声を上げた。

俺も驚いた。

そのあとは十六夜が次々に話を進めていき、『マクスウェルの魔王』の相手を誰がするかを決めたのだが……

まさかまさかのだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「―――ッ!?」

「どうしたんだい?刃」

 

 

隣にいるなじみが俺が肩をビク憑かせたのに反応し、声を出した。

 

鍛練場での一件を終えた俺はなじみと今までの経緯を話していた。

なじみは今の今までこの街を見回り、力の変動を確認していたらしい。

 

 

「サンドラの近くに何かしらない者の気配がする」

「なんだって?」

「そして―――今サンドラの気配が消えた」

「……神隠しかい?」

 

 

なじみがニタァと口元を歪めながら言う。

 

 

「そうだな……なじみ」

「わかってるよ。―――軽くひねりつぶしてくる」

 

 

そう言い残し、なじみは俺のもとから消えた。

多分《腑罪証明(アリバイブロック)》を使ったのだろう。

 

とりあえずジン達に報告をしておくか。

と、移動しようとした時だった。

 

殿下だ。

 

殿下の気配がやってきた。

しかも近くには十六夜と―――黒ウサギ!?

まずいぞ!!

黒ウサギは現在ただに人と変わらないほど弱っている。

 

俺は黒ウサギを守るべく、十六夜の元へ瞬間移動した。

 




2014/05/03肉付け&改変&第1話と第2話の統合。
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