問題児たちが異世界から来るそうですよ?~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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第3話~南瓜ノ力~

「いざ心して受けろ、混世の魔王よ!!この私の……『パンプキン・ザ・クラウン』の試練を―――!!」

 

 

この一言がかっこいいと思ってしまった俺は悪くないだろう。

 

業火をまき散らして爆せるカボチャの王冠。

その破片は輝く紙片となり、輝く羊皮紙を展示回廊にばら撒いた。

 

 

 

『ギフトゲーム   『Jack the monster』

 

 参加条件 

  ・幼子の殺傷歴がある者。

  ・幼子を利用し悪徳を働いた者。

 

  ・参加者 混世魔王(ゲームの妨害をする者は殺傷可)

  ・ゲームマスター ジャック・ザ・リッパー

 

 勝利条件

  その一:主催者『パンプキン・サ・クラウン』の打倒。

  その二:歴史を紐解き、『ジャック』の謎を解け。

 

 敗北条件

  その一:参加者はゲームマスターに殺されると敗北。

  その二:ゲームマスターは己が何者か暴かれるたびに力を失い、最後は敗北する。

 

 宣誓 参加条件を満たした者に執行する限り、この試練が正当であることを保証します。

                                  『聖ペテロ』印』 

 

 

 

俺、幼子は殺したことないよな……?

大丈夫だ。

よし、し、心配ない。

 

 

「ジャックが……『主催者権限』を!?」

 

 

飛鳥が驚きに声を上げた。

確かに驚くだろう。

かくいう俺も驚いている。

 

ジャックの身体に変化が起きた。

カボチャの頭蓋から溢れた炎の中心で佇み、やがて人の姿を構築していった。

真紅のレザージャケットケットと野獣みたいな荒れた亜麻色の長髪。

両手にはい濡れのナイフを逆手に構え、瞳には射殺すほどの殺気を充満させている。

これは大物に出会ってしまったかもしれないな。

 

切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)

 

ほとんどの者が一度は耳にしたことがあるだろう。

一八八八年にイギリスを震撼させた連続殺人鬼。

だが死んだはずだ。

となると、転生か。

 

 

「殺戮劇(ショウタイム)だ……踊れ、混世の魔王―――!!」

 

 

ジャックが行動を開始した。

ジャックが持つナイフは深々と混世魔王の胸を貫き、サンドラの身体を先決で汚していく。

今の奴は殺人鬼であり、道化師ではない。

救う方法がないというなら、サンドラが相手でも容赦はしない。

まぁ方法はあるのだが。

 

ジャックのナイフがサンドラの胸に突き立てられ―――

 

 

「―――甘ぇんだよ新参が!!」

 

 

ジャックの位置が駆けだす前の位置へと戻っていた。

恐らく混世魔王がなにかをしたのだろう。

証拠に、『一事夢成』と書かれた巻物を広げている。

それにしても―――

 

速いな。

 

尋常でない速度だった。

一瞬だったが、ジャックの姿を見失ってしまった。

 

 

「速いね」

 

 

隣に立っているなじみもそう言っている。

ただ混世魔王が笑っているのが不思議でたまらない。

 

 

「コイツァおお!!聖人様お墨付きの『主催者権限』とはなァ!!あの『切り裂きジャック』の正体が死刑執行人だったとは知らなんだ!!」

「あぁ、そうだ。幼子を誑かして喰らう貴様は、今ここで!!俺が殺す!!」

 

 

血で濡れたナイフは炎に包まれ、斬撃は一直線上にある尖塔をなぎ倒した。

受ければ確実に致命傷だろう。

 

 

「面白ェ……!!人様のゲーム招待されるなんて数百年ぶりだ!!あぁ、踊ってやるよ!!踊ってやるともッ!!だが閉幕に立っているのは俺様一人で十分だッ!!」

 

 

それはそうだろう。

だってお前は魔王なんだから。

招待するのが基本だ。

理不尽な条件を叩きつけて、無理やりゲームに参加させるのがお前達魔王の意義だもの。

 

龍角が光を放ってサンドラに呼応する。

右手を翳し、上空に幾百の大火球を出現させる混世魔王。

サンドラはまだ幼いが才能がないわけではないはずだ。

なんせ最強種の血を濃く受け継ぐ家系なのだから。

単純な火力で言えば、五桁でも屈指の実力だ。

それ練達の魔王が乗っ取って使うのだ。

 

曇天を埋め尽くすほどの火球を滞空させ、混世魔王が叫んだ。

 

 

「今だッ!!やれ、グライア!!」

「GEYAAAAAAaaa!!!」

 

 

どうやらあの黒龍になった黒いグリフォンはグライアというようだ。

 

混世魔王を追っていたジャックが背後を振り返る。

グライアはジャックの後ろへ回り込んでいた。

 

腹部が紅く光るほど気焰をため込み、挟み込むように両者はジャックを狙い撃つ。

だが、そうやすやすとジャックを殺らせるはずがない。

 

ソレを瞬時に空間から取り出す。

そして黒龍まで一瞬で近づき、ソレで斬りつける。

グライアは俺が接近したのに気づいたのか、回避に移っていたので剣先がかすれる程度しか届かなかった。

 

だがそれでもいい。

 

 

「グアァァァァァ!?」

 

 

グライアが叫び声を上げる。

それは苦しみから来るものだと誰でもわかるであろう。

なぜなら地面に落ちて、のたうちまわっているのだから。

 

 

「貴様ッ!!その剣ッ!!なんだソレは!!圧倒的なまでの龍への悪意と魔の気配がするソレはなんだッ!!」

 

 

グライアがのたうちまわりながらも訊いてきた。

 

 

「コレか?コレは―――魔剣の帝王、魔帝剣グラムだよ」

 

 

魔帝剣グラム

 

それは何もかも切り刻める凶悪な切れ味と、強力な龍殺しの呪いを有する最強の伝説の魔剣。

魔剣の帝王とも呼ばれる。

己の意思で使い手を選ぶ魔剣で、剣に認められなければ所有者にはなれない。

だがそんなものは関係ない。

俺が創造したのだから。

 

今現在、グライアが黒龍の姿をしているからまさかと思ったのだが……

予想通りだったようだ。

龍殺しの効果があった。

 

 

「無事か?ジャック」

「……えぇ。おかげさまで」

 

 

やはりいつもの陽気さがない。

と、どうやら飛鳥もこちらに来たようだ。

 

 

「それがジャックの……本当の姿?」

 

 

飛鳥がド直球に容姿について問う。

 

 

「……そうです、飛鳥嬢。この血塗れの姿こそが、私の真実の姿です」

 

 

血に濡れたナイフ。

返り血を隠すための真紅のレザージャケット。

乱れた髪と死神のような殺気を持った瞳。

 

ふむ、ものすごくファンキーだ。

今までのジャックの正反対だな。

 

 

「ジャック・オー・ランタンの伝承には続きがあったのです。二度の人生を血塗れで過ごした罪人と、それを救った幼い悪魔。本来なら二人とも浄化されて消される宿命にあったところを……御人好しの聖人殿が、もう一度だけ改心の機会を与えてくれたのです」

 

 

なるほど、それが幼子を守り、不当に破棄された人々の魂を見つけて救済するという彼の役目か。

改心することを決した彼はカボチャの道化を演じ、ハロウィンの主役となった。

怪物の代名詞から、道化の代名詞へ生まれ変わったのか。

 

 

「……でもね。私達が同盟を組もうと思ったのは、カボチャの紳士であって、殺人鬼ではないわ。そうよね、ジャック」

「はい。重々承知の上でございます。今日まで身分を偽っていたこと、心より謝罪いたします」

「そう。なら後でちゃんとカボチャ頭に戻ってね。じゃないとリリや年長組のみんなが怯えてしまうもの」

 

 

飛鳥、そう言う問題なのか?

年長組だけではなく、年少組も怯えるだろ。

 

しかしジャックの格好はイカしてるな。

なんだよ真紅のレザージャケットって。

それもジャックの髪型も相まってすげく……かっこいいです。

まぁ少し威圧的なところは認めるけど。

 

 

「……ヤホホ。えぇ、当然です。こんな姿で『trick or treat』を叫んでは、泣いて怖がられるのがオチです。そんなのは御免ですね」

「えぇ。カボチャ頭のあなたの方が今の何倍も素敵よ」

「ジャック今度うちに来てくれ。ハロウィンをやったことがない子がいてな」

 

 

そのやったことがないという子はメルだ。

学園都市の雑貨稼業(デパート)に捕らわれていたせいで普通の子が経験するようなイベントを知らない。

ハロウィンはもちろんのこと、ひな祭り、クリスマス、正月などもだ。

俺はそのすべてをメルに経験させてやりたい。

 

 

「……ヤホホ。それは行かなくてはなりませんね」

 

 

何処か恥ずかしそうにジャックが返してくる。

 

 

「さぁ……次は私が行くわよアルマ!!あの無礼な子悪党を倒しに行くわッ!!」

『了解です、マスター』

 

 

飛鳥はギフトカードから四つの宝珠を取り出し、それらに言葉を込めていった。

 

 

「『雲霞のように漂い、雹のように吹雪き、雷霆のように撃て。天空をかける山羊よ。無貌の城塞と化し、敵を討て』―――さぁ、行くわよアルマティア!!」

 

 

飛鳥の言葉によって、宝珠に疑似神格が宿ったようだ。

恩恵(ギフト)を強化する神託(ことば)だが、こまま消費すれば一瞬で砕けてしまうだろう。

だから飛鳥はアルマティアに四つの宝珠を噛み砕かせてその恩恵を取り込ませたのか。

 

その瞬間、アルマティアの霊格が膨張し始めた。

 

四つもの疑似神格を体内に取り込んだからか、アルマティアは体毛から激しい稲光を放って雄たけびを上げた。

鋼の身体は熱によって融解し、水銀のように流体へ変わった。

 

アルマティア

 

その正体は、ギリシャ神群の主神を幼少より育てた豊穣の女神である。

彼女の肥沃な大地に数多の実りを結び、その毛皮は金剛鉄を覆うことであらゆる攻撃を防ぐギリシャ神群最強の楯、《イージスの楯》となる。

 

ジャックは金剛鉄とアルマティアの毛皮を組み合わせることで疑似的な《イージスの楯》を造り出したようだ。

だがどうやらこの楯を起動させるには必要不可欠なものがあるようだ。

 

天空の神格だ。

雲の如く、雹の如く、雷の如く主人を守って敵を討つ。

《イージスの楯》とは、天空神であるゼウスが操る天候の象徴なのだ。

 

今飛鳥がしようとしていることが成功したらものすごいことが起きるだろう。

 

本来の神格を取り戻し、嘶きを上げるアルマティア。

龍どうするエネルギー体をなった彼女は蹄を鳴らし、主人である飛鳥の命令を待っている。

 

 

『ご命令を、マスター』

「命令なら既に与えたわよ。雲霞のように漂い、雹のように吹雪き、雷霆のように撃て、アルマティア!!」

 

 

飛鳥がかっこよく見えるのは気のせいではないだろう。

実際、アルマティアを従えている飛鳥はものすごく凛としていてかっこよかった。

 

轟と空気が熱膨張を起こして爆せた。

その音と同時にグライアの胸に鮮血が舞う。

 

爆音を発したアルマティアが、グライアの胸部を打ち抜いたのだろう。

先ほどまでの速度とはまったく比べものにならない。

 

 

「グッ、ヌゥ!!」

 

 

そのまま展示回廊から商業区画まで一直線に貫通して建造物をなぎ倒す。

これを直すのを同じ『ノーネーム』である俺であることを忘れないでほしい。

 

守りが無くなった飛鳥を、すぐに混世魔王の放った火炎弾が襲う。

 

 

「隙だらけだぜ、小娘!!」

「させるとでも?」

 

 

飛鳥が右手に握られた鈴の付いた笛を鳴らそうとしたが、鳴らされる前に俺が火炎弾の前に飛び出してノートゥングを振るって空間ごと火炎弾を消し去る。

 

 

「飛鳥、無事か?」

「え、えぇ……ありがとうね。刃くん」

「いや、淑女を守るのは男の使命だ」

 

 

そう言ってやると、少しだけ飛鳥の顔が赤く染まった。

 

 

「その剣……それも魔剣なの?」

「あぁ。ノートゥングだ。薙ぐだけで空間を裂くことができるほどの切れ味重視の伝説の魔剣だ」

「刃くんはいろいろなものを持っているのね」

「まぁな」

 

 

飛鳥と軽口をたたいていると、混世魔王が行動を起こした。

 

 

「残念だが、そろそろ潮時だなァ。ヒヒ、そろそろお暇するかね」

「……逃がすと思うか?俺の『主催者権限』が発動している限り、お前はこの『煌焰の都』からは出られない」

 

 

ナイフを構え、腰を落とすジャック。

しかし混世魔王は余裕の笑みを浮かべて巻物を取り出した。

 

 

「なぁに、仕切り直すだけさ!!テメェらはそれまで、巨人族とでも遊んでやがれ!!」

 

 

巻物が説かれ、文字が浮かび上がる。

 

虚度光陰と。

視界がモノクロに変わる。

そこまでは分ったが、混世魔王が消えたところは分らなかった。

 

 

「嘘……!?本当に消えた!?」

『一瞬ですが、虚度光陰という文字がみえました。推測するに体感時間を操る呪いでしょう。アレがある限り、私たちでは彼を捕らえられない』

「ですが奴には『主催者権限』が発動してます。この都市からは逃れることは―――」

 

 

その時だった。

 

都市を守る外壁が砕けたのだ。

外堀の駐屯兵立ちが突破されたのがわかった。

 

また面倒事の予感がするな。

 

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