問題児たちが異世界から来るそうですよ?~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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第4話~秒読~

「行きましょう。鬼化した巨人族が雪崩れ込めば、ゲームに勝っても町がおしまいよ」 

『えぇ。ただ心配なのはスミス・ジャックです。これ以上の戦いを重ねては衰退の呪いで体力が危ぶれあれるのでは?』

 

 

アルマティアがもっともなことを言う。

だがまぁ、俺がジャックの体力を限定的に減らないようにすればいいのだが……

 

 

「あ、あぁ……いえ、お気になさらず!!諸事情でこの呪いは効きませんから!!」

『そうですか。ならば手遅れになる前に向かいましょう』

 

 

その諸事象とやらがものすごく気になる。

どんな事情だ。

 

飛鳥は山羊に戻ったアルマティアの背中に跨った。

それを確認した俺達は、突破された外壁へと急いだ。

 

そういえばリンは何をやっているのだろうか?

余計なことをしていなければいいのだが。

まぁ余計なことをしていたら、調教をし直せばいいだけの話だ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

『煌焰の都』の外壁までやってきた。

さすがに吸血鬼化してしまった巨人族と火龍の群れの相手はキツかったらしい。

混戦極まっていた。

唯一の救いは、巨人族が陣形をとらずに、闘志に任せてやみくもに動いていることだ。

だが気になることがある。

 

なぜペストがここに居る?

 

ジンの護衛のはずだったのだが……

嫌な予感しかしない。

とりあえずはペストの援護をしなければ。

 

 

「禁手化(バランス・ブレイク)!!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!』

 

 

《赤龍帝の籠手》を禁手させる。

赤より深い、紅い赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)が身を包む。

鎧を纏っているのだが、全く行動に支障はない。

流石、神滅具だ。

 

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

 

 

瞬時に十回の倍化を済ませ、それを攻撃に乗せる。

 

 

「オラァ!!」

 

 

俺が放った蹴りは、衝撃波を縦にまき散らしながら直進していき、範囲にいる巨人族を吹き飛ばしていく。

 

 

「大丈夫か!!ペスト!!」

「お兄ちゃん!?ダイジョーブだよ!!お兄ちゃんが助けてくれたからね!!」

 

 

どうやら無事のようだ。

ペストは俺を見るやいなや、俺に近づいてきて腕に頬ずりを始めた。

 

 

「DEEEEEeeeEEEEEN!!!」

 

 

飛鳥のディーンも張り切って巨人族を殲滅してくれている。

右腕の拳から灼熱を迸らせ、伸縮する剛腕を叩きつけている。

炎を散らして撃ち込まれた拳はさすがに効き目が大きかったのだろう。

巨人族は身体を燃やしてのた打ち回っている。

 

ここまでで、全体の約三分の一を殲滅した。

だが後方で召喚され続けている巨人族は総数で千二百は超えているだろう。

 

ジャックも遠方で次々と仮り続けているが焼け石に水だ。

吸血鬼化した巨人族は命を落とした仲間の血を啜って傷を癒してまた立ち上がってくる。

 

一気に吹き飛ばしたほうがいいだろう。

 

 

『……マスター』

「何!?いい案でも浮かんだ!?」

『逆です。この都市はもう駄目です。同志を集め、そろそろ退却の準備を』

 

 

アルマティアが飛鳥に退却を促している。

おいおいなにを言っていやがるんだ。

やっと面白くなってきたのに。

 

 

「飛鳥。そろそろ俺も本気を出す。自分の身を守るか、退却するか三秒以内に答えろ」

 

 

すると飛鳥は一秒も経たないうちに返事をしてきた。

 

 

「身を守るわ」

 

 

それが聞ければ万々歳だ!!

 

 

「ATフィールド展開、モード天使」

 

 

ATフィールドでできた三対六枚の翼が出現する。

頭上にはATフィールドでできた天使の輪のようなものが出現する。

 

 

「―――最大の拒絶」

 

 

キューブ状のATフィールドが円形に複数展開され、それが外方向に回転する。

そして一回転した瞬間―――

 

周りにいた巨人族が吹き飛んで行った。

 

この力はなかなか便利だ。

先ほどの一撃を見たからか、他の種族から意気込みの雄たけびのようなものが聞こえてきた。

 

 

『名無し風情にそこまでの覚悟を見せられちゃ、我々も退けんな』

『応よ。振りかぶってきた戦斧の刃を逆に叩き折ってくれるわ』

 

 

調子に乗ってくれたようだ。

このまま巨人族を一気に殲滅していければいいのだが……

 

そして戦況は更にこちらに有利に進む。

 

 

「あいや、そこまでや」

 

 

一人、たった一人だがもの凄い強さの者があらわる。

 

海千山千の霊格を持ち、『仙龍』―――『覆海大聖』蛟魔王だ。

 

 

「いやぁ、えらい遅れてしまった。大丈夫か飛鳥ちゃん」

「え、えぇ」

 

 

あっけにとられたようにうなずく飛鳥。

だがそれより―――

 

 

「俺は無視か蛟劉」

「なんや、刃くんやったんか。鎧を纏っておったからわからなかったわ」

「嘘つけ」

 

 

顔面に張りつけた笑顔がそれを物語っている。

だがいいタイミングできてくれた。

 

蛟劉が放出した水流で巨人族の殲滅が完了した。

 

 

「本当にすまん。いざ北側に向かおうと思ったら、東側でもゴタゴタがおきてな。その始末に手間取ってしもた」

「ゴタゴタ……?」

「そう。だけど詳しい話は後にして―――まず、このゲームを終わらせよか」

「それに関しては俺も同意だ」

 

 

蛟劉が右手を掲げる。

すると刹那、巨大な影が『煌焰の都』を覆った。

その正体は水だ。

そしてソレは―――

 

 

「つ……津波だぁぁぁ―――!!!」

 

 

『煌焰の都』にいる火龍や化生たちがそう叫んだ。確かにソレは津波だ。

これに乗じてさらに攻撃を加えてやるか。

 

素早く術の印を結び、

 

 

「千鳥流し!!」

 

 

水流に千鳥を流す。

これで水に触れた相手は感電する。

それと同時にこちらも感電する確率が増えるのだがな。

 

そして俺はアンダーウッドで見かけた巨人族の支配者を発見する。

 

 

「―――久しぶりだな」

 

 

数十キロ離れているが聞こえただろう。

魔力に乗せて直接脳に響かせたのだから。

そいつは黄金に輝く竪琴をギフトカードから取り出した。

そして演奏を開始した。

その音色はこちらまで微かに響いてくる。

それと同時に、流され感電していた巨人族が身体を起こして進軍を再開してきた。

 

蛟劉が海象を起こしているのは都市部の外壁付近までだ。

だから俺達は巻き込まれずに済んでいる。

だからその空間まで攻め込めば楽に勝利することができる。

 

巨人族が海流を掻き分け、大海を突破した。

 

 

「ウオオオオオオオオォォォォォォ――――――!!!」

 

 

巨人族三体が海域を踏み出て同時に戦斧を振るった。

それは蛟劉を目がけて振るわれていた。

蛟劉は腕を組んだまま微動だにしない。

そしてその刃は蛟劉に突き―――ささるわけないだろ。

 

 

「……ゥオ……!?」

 

 

巨人族ごときに蚊魔王―――四桁の魔王を傷つけられるわけがない。

蛟劉はその五体で戦斧を受け止めたまま、細目を吊り上げて失笑した。

 

 

「眠い一発やなぁ。まるで岩礁を打つ浅瀬の飛沫や」

「……ッ。……!!」

 

 

さすがとしか言いようがない。

周りからの評価が低かろうと、その実力は衰えていなかった。

 

 

「ヒハハハ!!相変らずお強いじゃねェか、東海の皇子様よォ!!」

 

 

この声は混世魔王だ。

外壁の上に、腕を組んで仁王立ちをしていた。

 

それを確認した俺は奴の背後に瞬間移動をする。

 

 

「くたばれ」

「ヒヒ……あ?」

 

 

サンドラの身体だが後で直せば問題ない。

そう思い、本気で拳を背中にねじ込む。

混世魔王はそのまま真っ直ぐ海面に激突―――するだけに収まらず、何度も海面をバウンドしながら吹き飛んでいく。

 

 

「……刃くん。サンドラちゃんの身体もう壊れたんとちゃう?元通りになるんかいな、あれ」

「大丈夫だ、問題ない」

「具体的には?」

「時間を巻き戻す」

「なるほどなぁ。相変わらずのバグっぷりや」

 

 

魔王である蛟劉に言われたくはないが、蛟劉は精々チート止まりか。

ここで新たな乱入者を確認する。

黒いグリフォン―――グライアだ。

今は人型―――あぁ、黒いグリフォンの姿に戻ったな。

気配がグライアのものだったのですぐにわかった。

 

蛟劉はギフトカードから身の丈の倍はあろうかという棍棒を二本権限させて三体の巨人族の背中を殴打し、空中へ跳ね除けた。

その三体は共に混世魔王とグライアを狙って跳ね除けられたのだが、その程度で屈する相手ではない。

黒いグリフォンから黒龍に姿を変えたグライアが巨人族をその剛腕跳ね飛ばしながら突進してくる。

 

この前龍殺しの効果で散々苦しんだの懲りない奴だ。

 

その陰からは、いつの間にか復活した混世魔王が忍び寄ってきていた。

 

 

「ヒハハハ!!さきはよくもやってくれたな!!さぁさぁ、千年越しのリベンジマッチだ!!しかも此方の器は超極上!!大聖の代わりに、そのすかした顔を歪めてやんよ!!」

 

 

混世魔王の一言に蛟劉が吠える。

 

 

「―――へぇ?五桁(オマエ)が四桁(オレ)を?身の程を知れや山猿ッ!!」

 

 

この二人の闘いは、見ているだけならいい。

吹き荒れる炎と海流の渦。

どこかの演劇のようだ。

その戦闘に巻き込まれて巨人族も減っていくが、やはり完全には殲滅しきれないか。

いっそのこと元を潰すか?

 

だが俺はそこで感じた。

何やヤバイものが近づいてきていると。

 

ソレを感じた直後だった。

 

大地が揺れた。

ただの揺れではない。

ものすごい揺れだ。

立っていることが不可能なほどの。

 

だがソレとは違う。

 

俺がヤバイと感じたソレは、今『サラマンラ』の宮殿の方から感じるものではない。

何だコレは……

何なんだよ!!

 

活火山が噴火した。

それと同時に戦況は一時的に停止した。

火龍も古豪の戦士も巨人族も、巨峰の峰からあふれる溶岩を目の当たりにして一斉に動きを止めたのだ。

巨人族や古豪の戦士もさすがに溶岩に呑みこまれては一たまりもないだろう。

だがそれだけではなかった。

 

 

「……なんや、今の」

 

 

蛟劉の一言を聞き、俺は辺りを見回す。

飛鳥も蛟劉も、ペストも、混世魔王も、グライアまでもが活火山に視線を向けていた。

 

空だ。

 

空にみんなが感じた気配の主はいた。

夜天を照らす凶星の様な紅玉の眼。

顎から頭蓋骨を貫通した杭に討たれた偉業の三本首。

三つの双眸と六つの眼球は敵の胆力を根こそぎ枯れさせるだろう。

全長は十尺前後だろう。

だがその威圧感は、アンダーウッドを襲った巨龍のソレを越えている。

 

さすが最強種としか言いようがない。

 

三頭龍は羽ばたいた。

それだけで雲海は左右に引き裂かれて消失し、大気を揺らす衝撃は波となって星の光を捻じ曲げた。

その波は二つの竜巻となって都市部を駆け抜け、蛟劉がつくり出した海流までも瞬く間にかき消した。

 

 

「なッ……なんやとッ!?」

 

 

だがそれだけにとどまらなかった。

蛟劉が召喚していた大海象は竜巻に呑み込まれて、有象無象の区別をせずに、全ての勢力を飲み込んで崩壊させていった。

 

 

「クソッタレが!!アルマティア!!飛鳥達と一緒に逃げろ!!―――ここは任せろ」

『感謝します!!』

 

 

フラグを立てたような気がするが気にしない。

そして一番気になったのは―――

 

 

「なぜお前がここにいる!!―――黒ウサギッ!!」

 

 

黒ウサギの姿を確認した瞬間に俺は行動を開始していた。

なぜなら黒ウサギに三頭龍が迫っていたからだ。

瞬間移動を使い、黒ウサギの前に立つ。

 

 

「―――GYEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」

 

 

三頭龍が俺の目の前で叫び声を上げる。

 

 

「うるせぇンだよ!!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

 

 

瞬時に十回の倍化、からの強化をする。

 

 

「―――ATフィールド全開!!」

 

 

目に見えてATフィールの濃度が上がったの分かった。

三頭龍からの一撃を防ぐのと同時に一撃をその頭蓋にいれる。

三頭龍が彼方に吹き飛ばされるのを横目に黒ウサギに声をかける。

いろいろ文句はあるがまずは、

 

 

「無事か黒ウサギ!!」

「……刃、さん……?」

 

 

自らが無事なことに驚いているようだった。

だがそんなことを気にしている暇はない。

 

 

「黒ウサギ、そこでじっとしていろ。俺が上げたネックレスと指輪はつけているだろう?」

「は、はい……」

 

 

三頭龍が相手だが――――

 

 

「やるしかねぇだろ。―――なぁ、ドライグ?」

『応よ!!完全に掌握しきった俺達の「覇」、見せてやろうぜ相棒!!』

 

 

さぁ唱えよう。

『覇』を身に纏う呪文を。

 

 

「我、目覚めるは―――」

 




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