問題児たちが異世界から来るそうですよ?~二天龍を従えし者~ 作:眠らずの夜想曲
「さて、金糸雀。そろそろ『箱庭』に向かおうと思うのだがいいかな?」
「えぇいいわよ。久しぶりに十六夜に「会えないからな」…え?」
ギギギ、と効果音が聞えそうな動作で首をこちらに向ける金糸雀。
怖いぞ。
「だって今戦闘中だし、それに今の鈍りきった金糸雀じゃあ俺の邪魔になる可能性だってあるし」
「うぅ……」
「久しぶりに『神使』全員が揃うんだ。まずは合流する」
「一体何人いるの?『神使』は」
「それは会ってからのお楽しみだ」
そう言い、くるりとその場で一回転する。
金糸雀の『恩恵』が何なのかは分らないが、役に立つことには変わりないだろう。
それを磨くためにも、『神使』と合流し、切磋琢磨という名の調教を受けてもらわないといけない。
「金糸雀、言い残すことは?」
金糸雀は一度大きく息を吐く。
そして大きく息を吸い、一言。
「この時代の十六夜は任せたわよ!!」
それだけ言い、金糸雀は俺の方に体をくるりと体をこちらに向ける。
「行きましょう、ノヴァ」
「あぁ……ほら、握れ」
俺の手を握らせる。
そして魔法陣を展開し、時間跳躍を開始する。
☆☆☆
「さて、どうだい金糸雀。久しぶりの『箱庭』は」
「まったく景色が見えなくて答えようがないわよ……」
現在上空数十万km。
『箱庭』がどういう形になっているかがわかるほどの高さだ。
「悪い悪い。とりあえず一桁の上空に移動するぞ」
今度は魔法陣で移動せずに、直接移動する。
簡単に言えば―――
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「わははははは」
重力を操って一気に移動するわけですよ。
どんどん加速していき、やがて一桁の上空に移動が完了する。
「もぅ!!寿命が縮んだわよ!!」
「悪い悪い」
軽口をを叩きつつ、その場に土地を創造していく。
面積は半径十万kmの円状。
階層は存在させない。
海、川、山を創造して自然豊かにする。
住居区を整地し、人が暮らしやすいようにする。
こんなものだろう。
またまた重力を操り、金糸雀と共に創造したばかりの土地へ降り立つ。
「金糸雀。早速だが俺の『神使』を紹介しようと思うのだがいいか?」
「え、えぇ……こちらからもお願いしたいわ」
金糸雀からの了承を得たので、『神使』全員を呼ぶか。
「我が愛しの『神使』よ、我の前に顕現せよ」
これがまた面倒なことだ。
一人一人別々に世部分には簡単に呼べるのだが、まとめて呼ぶとこうやってしっかりと言わないといけないのだ。
虹色の魔法陣が展開され、そこへ次々を人影が現れる。
「ノヴァ……あなたハーレム作ったのね……?」
「……否定ができない」
それもそうだ。
可愛い女の子だけで編成されている『神使』。
見た者のほとんどがそう思ってもおかしくない。
「久しぶり―――でもないな。魔神を救い出して以来だからな」
「そうだなレティシア」
すぐにレティシアが歩み出して、俺にキスをしてくる。
そしてそれをきっかけに次々と『神使』が歩みだし、キスをしてくる。
く、唇が剝ける……
「はぁ……はぁ……お、落ち着けお前ら。とりあえず紹介する。こいつは金糸雀、新しい『神使』だ」
そう言い切った瞬間だった。
「ひっ……」
金糸雀が短く悲鳴を上げた。
その理由はすぐにわかった。
『神使』のみんなからドス黒いオーラが漏れ出している。
さらに、瞳からはハイライトが消え去り、黒く濁り始めた。
「また、なのか刃?」
レティシアのこの一言から始まり、
「またなんだね、お兄ちゃん」
「またですか?」
「また?」
「またなの?」
「またか……」
などと、次々に言葉が紡がれていく。
このままでは俺が袋叩きにされてしまう!!
「しょうがないだろ。金糸雀は死にかけてたし、俺の能力でもどうにもならなかったんだ。だから『神使』にした。後悔はまったくしていた」
「そうか……まぁ金糸雀だから許してやろう」
レティシアは許してくれたようだ。
他のみんなも徐々に瞳にハイライトが入り始め、ドス黒いオーラも消え去っていった。
よし、これで安心だ。
「とりあえずこの地を俺達の拠点としようと思う」
「俺達、ということは新たにコミュニティを作るということか刃?」
「あぁそういうことになるな」
「一ついいかしら?」
「なんだ?金糸雀」
金糸雀が恐る恐るといった感じで口を挟んできた。
「刃って……誰のことかしら?」
「俺の人間の時、普段名乗っている名だ。フルネームは神浄刃だ」
「そういうことね。納得したわ」
コミュニティを作るのはいいが名はどうしようか?
『サウザントアイズ』や『サラマンドラ』などの英語系が多いからそれに習うか。
なら―――
「俺たちのコミュニティ名は絶対を意味する『アブソリュート』だ。異論は?」
「「「「「ない!!」」」」」
『絶対』的強者、『絶対』的な能力、『絶対』的な戦力などあらゆる『絶対』を持っているからつけてみたのだが、異論が無いようで何よりだ。
さて、これからアジ=ダハーカとか言う魔王を倒しに行こうと思っているのだがその前にやることが一つある。
それは金糸雀の現在時点での強さだ。
純粋な戦闘能力を確認しておきたい。
「とうわけで、金糸雀。俺と模擬戦だ」
「どういうわけよ!!原初の神であるあなたと模擬戦なんてしたらこの島もただでは―――」
「安心しな。この島は俺の特別性だから、一桁の魔王が暴れ回っても怖る心配はない」
「……そうよね。そうだと思ってたわ」
そう言いながら金糸雀は上着を脱いでいく。
ちなみに、現在俺は原初神の姿だ。
人間の姿になる理由もないからな。
「じゃあ始めよう。レティシア、合図を」
「うむ、では―――」
金糸雀は構えたが、対して俺は腕をだらりとたらした自然体だ。
構える必要もないしな。
「―――始め!!」
瞬間、金糸雀が仕掛けてきた。
俺に向かって一気に跳躍し、その勢いを使って拳を放ってくる。
それを左手でいなして、右の拳で反撃に出る。
その時、金糸雀の目が大きく見開かれた。
それは拳がいなされ反撃されたことへのものではないことはすぐに分かった。
拳を引き、金糸雀から距離を取る。
そして金糸雀に訊く。
「どうした金糸雀?何か変わったことでもあったのか?」
「い、いえ……ただ思ったより体が動きすぎただけよ」
なるほど、そう言うことか。
いくら金糸雀ほどの霊格の持ち主だといっても限界はある。
だが『神使』になったことによって上乗せでスペックが強化されたわけだ。
「それは『神使』になってスペックが上乗せされたからだろう」
「そうだとしてもすさまじいわね。ここまで強化されるなんて。もはや狂化ね」
否定はできないな。
ヴィヴィオも『神使』する前までは下級悪魔すらやっと倒せる程度の力だったのに、『神使』にした直後にもかかわらず、並みの上級悪魔程度なら圧倒できる力になった。
それだけ『神使』化は凄いということがわかった。
「まぁその件に関しては追い追い詳しく話すとして―――再開しよう」
「―――ッ!!そうね!!」
威圧を掛けながら言うと、金糸雀が一瞬だけ身を引きかけた。
だがすぐに立て直し、獰猛な笑みを浮かべてきた。
それを合図に、再び俺と金糸雀は交差した。
だがさっきのようにはいかない。
金糸雀も強化された自身のスペックを把握し、それに合わせて攻撃を加えてきたが俺の敵ではない。
金糸雀の攻撃を全てかわし、カウンターで蹴りを放つ。
それを金糸雀は躱すが、高速で放たれた蹴りは竜巻を纏っていたので竜巻に巻き込まれて吹き飛んで行った。
それも海の方まで。
今まで戦っていたのは山だ。
海までは、川があり、住居区がある。
うむ、かなり飛んでいったな。
「やべぇ……」
思い出したように、金糸雀の吹き飛んで行った方に跳ぶ。
金糸雀、怒ってるだろうな……
☆☆☆
「まったく、もっと考えて飛ばしてよね!!」
「何も言い返せない……すまなかった」
金糸雀はびしょ濡れの状態で発見した。
俺の蹴りをかすったのにもかかわらず、気絶していなかった。
純粋に凄いと思った。
海から金糸雀を救出し、その後住居区に連れてきて風呂に入ってもらった。
なので現在金糸雀はバスローブなわけで……
いいねぇ……なんとも言えねぇ……
と、まぁ煩悩はここまでとして真剣な話に入ろうか。
「金糸雀の戦闘能力は凄いことは分った。だが今回は連れて行かない」
「えー!!なんでよ?」
「ぶーたれても無駄だ。今回お前を連れて行ったら十六夜や黒ウサギが混乱して無駄なアクシデントが起きる可能性がある」
「……それもそうね。今回はこの島で大人しくしてるわ」
金糸雀は納得してくれたようだ。
十六夜の前に連れて行ったら、「なんで生きてんだお前!!」みたいなことになりそうだし、それを聞いた黒ウサギは、「金糸雀様亡くなっていらしてんですか!?」みたいな感じで混乱を生みそうだ。
「さて、金糸雀の件はこれで終わりだ。―――早速だが魔王退治に行くぞ」
「それはいいとして刃。具体的にはどうするんだ?」
レティシアが挙手しながら訊いてきた。
そんな姿も可愛いぜ。
「普通に力でねじ伏せれば良くないか?だってこのメンツだぜ?『箱庭』の魔王全員一気に相手しても余裕で勝てそうな気がするんだが?」
「「「「「否定できない……」」」」」
吸血鬼、龍、悪魔、天使、魔法使い、神霊、精霊、妖怪、神獣、巫女、戦乙女だぞ?
メンバーだけでも十分チートだ。
それぞれのスペックに加えて、『神使』化による強化だ。
これはもうバグだ。
「では行こうか。―――魔王退治に」
「「「「「おー!!」」」」」
「そんな軽いノリで魔王を倒しにいくだなんて……」
金糸雀が何か言っているようだが気にしない。