問題児たちが異世界から来るそうですよ?~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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大鵬金翅鳥(ヴィナマ・ガルダ)の耀、可愛いですよね。
「だいほうこんじちょう」とも読むらしいですね。


第3話~目録~

「では、紅。頼むぞ?」

「まっかせてー!!」

 

 

紅は一瞬でもとの龍の姿に戻る。

『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッドの姿に。

その背中に、俺と『神使』達も乗る。

 

 

「いいぞ紅。降りてくれ」

『りょーかい!!』

 

 

ガァァァァ!!と叫びながら紅色の龍は下界を目指して飛翔を開始した。

翼を羽ばたくたびに、辺りには竜巻が巻き起こる。

そしてその一つ一つは台風並み―――それ以上のものだ。

 

しばらく下降していると、すぐに戦闘している人間が見えてくる。

 

俺の視界にとらえたのは、地面にへたり込んでいる耀とウィラだ。

耀は何度も立ち上がろうとしているが、立ち上がれないようだ。

恐らく、『恩恵』が機能していないのだろう。

それか代償として払ったかだ。

 

とりあえずわかったことが一つ。

 

さっさと耀のもとに行かなければ、耀の命が危うい。

いくらウィラがいるとはいえ、一人で耀を守りながら戦うのはキツいものがある。

 

 

「紅!!」

『わかってるよお兄ちゃん!!』

 

 

紅は耀目がけて一直線に降下を始める。

というよりも、もう目の前だ。

寸前で紅に人化してもらう。

そして近くにいて、ウィラが敵意を向けている者を本気で蹴り飛ばす。

そして一言。

 

 

「無事か?」

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

『大鵬金翅鳥』の力を使った私の身体は信じられないほど傷んでいた。

呼吸をするだけでもの凄い痛みが身体中を襲ってくる。

だけど今は気にしている隙はない。

 

 

「よ、耀さん……なんて無茶を……!!」

 

 

誰かが声をかけてきたけど、痛みのせいで誰だか判断できない。

私の両手は黒く焼け爛れていて、指先は痛みのせいで痙攣している。

確実に力の代償だ。

 

 

「でも……これだけなら、問題ない。傷は治るし、痛みは我慢すればいい……!!」

 

 

自分に言い聞かせるように私は口に出す。

それよりもさっきの光。

あれは十六夜のギフトだ。

なら―――まだ、間に合うはず……!!

 

焦げた両手を握りしめる。

この痛みは絆と根性で乗り越えてやる……!!

 

 

「っ、え……!?」

 

 

思わず声を出してしまった。

何の前触れもなく、《生命の目録》が変幻を解いてペンダントの姿に戻ってしまったのだ。

上空にいる私はもちろん落ちる。

だけど、虚空から現れたウィラが私を受け止め―――

 

 

「わっぷ!!」

 

 

―――られなかった。

腕をすり抜けて、胸の谷間に顔から落ちた。

そして結局私はディーンに受け止めてもらった。

 

 

「耀、大丈夫?」

「う、うん。ありがとう。でも、どうして急に―――」

 

 

そこで私は重大なことに気づいた。

足が……

 

 

「……足が、動かない」

「え?」

「あ、足が動かない……!!ピクリとも!!そんな、どうしてこんな時に!?」

 

 

何で?

どうして?

 

そして私はもう一つのことに気づきかける。

 

五感を澄まして周囲の様子を窺っても、普通の人間と同じ程度しか情報しか入ってこなかった。

これは―――

 

 

「ギフトが……恩恵が、無くなった……!?」

 

 

これだけは駄目だ!!

どんなリスクも覚悟していたけど、これだけは駄目なんだ……!!

私は咳き込み、倒れ込んだ。

目からは熱いものが流れているようだ。

私はグライアの言葉から、怪物化するというリスクだと勝手に勘違いしていた。

現実は、恩恵と絆の消失だったんだ……

これじゃ……

 

 

「これじゃ、十六夜を助けに行けない……友達の証も消えて……わ、私は……!!」

 

 

私が手にした者が、音もなく崩れていった。

父がくれた両足も。

種族を超えた友情も。

世界を越えて育んだ絆も、全部無に還っていく。

 

 

「―――クッ、ハハハハハハハハハハハハハッ!!これはこれは、重いもよらに僥倖だよ!!力の代価は思いの外大きかったようだなァ!!」

 

 

顔を上げると、そこにはマクスウェルの魔王がいた。

それから、マクスウェルはベラベラとしゃべり始めた。

ウィラが時々言い返していたけど、それどころではない。

 

これからどうすれば……

 

それだけがずっと私の頭の中を駆け巡っていた。

もう私は立てないし、歩けないし、走れない。

動くことができない。

 

どうすれば……

 

その時だった。

ウィラから悲鳴に近い叫びが聞こえてきたのだ。

 

 

「『境界門(アストラルゲート)』を壊したの!?」

「ハハ、ご名答!!隣の『境界門』まではさて……何万キロあったかな?」

 

 

『境界門』が壊された……

いよいよ私たちもお終いかな?

マクスウェルがウィラに案を出したけど、ウィラは乗り気じゃなさそうだ。

そりゃそうだ。

代価が花嫁になることなんだから。

 

その時だった。

 

龍の叫び声が聞えたと思うと、空いっぱいの紅色の龍が空を飛んでいた。

前に一度だけ見たことがある。

確か刃の義妹で、『真なる赤龍神帝』グレートレッドの紅。

 

 

「なぜあれ程の龍がこの場にいる!?あれはアジ=ダハーカなど霞むほどのものだぞ!?」

 

 

マクスウェルが叫ぶ。

だけどこれで退路が見えた。

きっと刃の仇を取りに来たんだろう。

アルマティアが十六夜から来たらしいけど、刃の気配が全く感じ取れなくなったらしい。

それも突然に。

近くに『死』をものすごく感じさせる―――それこそアジ=ダハーカが可愛く見えるほどのだ。

それが刃の近くにいたのだから、そいつにやられたと考えるのが妥当だ。

だから紅が仇を取りに来た。

私はそう思っていた。

 

だけどそれは違うようだ。

 

目の前で紅色の龍は人の姿になった。

すると、今までは確認できていなかったけど、今なら確認できる。

複数の人影が見て取れた。

そのうちの一人が私の前に降り立った。

その勢いのままマクスウェルを蹴り飛ばしていたのは気にしない。

そして一言。

 

 

「無事か?」

 

 

と、訊いてきた。

私は目からさらに熱いものが流れてきた。

でもそんなの気にしていられない。

 

 

「足が……足が……」

 

 

ただ泣きながらそう言うしかなかった。

すると刃はフィンガースナップをした。

それに呼応するように私の足が輝いていく。

数秒後、輝きが収まる。

 

 

「これで動けるはずだ」

 

 

刃がそう言うなら試そう。

足に力を込める。

すると―――

 

 

「動いた……動いた……!!」

 

 

今まで全く動かなかった足が動くようになった。

だけど『恩恵』はまでは戻っていないようだった。

 

改めて刃を見る。

姿が今までと違った。

気配が今までと違った。

威圧感が今までと違った。

 

圧倒的な『強者』の姿がそこにはあった。

 

それから辺りを見回すと、更に驚くことがあった。

黒い影のようなものに呑みこまれてしまったレティシアやペストがいたのだ。

あれから一度も私達の前に姿を現さなかったのに……

でも無事で良かった。

 

全員女の子なのは気にしないでおこう……

 

影を闇で包み込んだような翼。

蝙蝠の翼。

龍の翼。

天使の翼。

エネルギーが噴出したような翼。

 

さまざまな翼が背中から各々にあった。

いろんな子がいるんだな……

 

そんなことを考えていると、刃が声をかけてきた。

 

 

「耀、ギフトカードを見せてみろ」

「うん……」

 

 

刃に言われるがままにギフトカードを渡す。

すると、それを見た刃はジーっと見つめ、そしてうなずいだ。

 

 

「《生命の目録》の機能は停止しているのか?」

「うん……」

 

 

私は力なく答える。

刃には何て言われるのだろうか?

「役立たず」「もういらない」などと言われちゃうのかな?

それがものすごく怖かった。

でも帰ってきた言葉は私の想像とは全く違うものだった。

 

 

「耀に使ってもらいたい恩恵があるんだけど―――使ってくれるか?」

 

 

と、笑顔で言ってきた。

私に使ってもらいたい恩恵とはなんだろう?

やっぱり《生命の目録》に似たようなものなのかな?

そうじゃなくても答えは決まっている。

 

 

「うん……もちろん」

「そうか……なら耀に授けるよ。最強の魔導書―――《禁書目録》を」

 

 

刃が返してくれたギフトカードには、確かに《禁書目録》を書いてあった。

《禁書目録》ってどういうギフトなんだろう?

 

 

「その恩恵《禁書目録》は十万三〇〇〇冊分の魔導書の情報が記されている。別名『魔道書図書館』だ。その中に記されている魔術を自由に、何のリスクもなく使用できる恩恵だ」

「えぇ……」

 

 

どうやら凄まじい恩恵をもらってしまったようだ。

十万三〇〇〇冊分の魔導書とか、どれだけの量なのか想像できない。

しかもそれに記されている魔術を自由に、何のリスクもなく使えるだなんて……

 

チートだよ、チート。

 

 

「使用方法は至って簡単だ。どういうことをしたいか頭の中で思い浮かべて、念じればいい。そうすれば勝手に最適な魔術を教えてくれる。そしてその名を言えば使用ができる」

 

 

どうやらチートではなかったようだ。

バグだ、バグ。

 




次の話は、物語は進みそうにないです。
過去話になりそうです。
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