問題児たちが異世界から来るそうですよ?~二天龍を従えし者~ 作:眠らずの夜想曲
魔王アジ=ダハーカの件が無事に解決した俺たちは、つかの間の休息を楽しんでいた。
俺は天空に創造した『アブソリュート』の拠点で『神使』たちとにゃんにゃんしていた。
だがそれを邪魔する者が現れた。
「聞いてるの刃君!!」
「聞いてる聞いてる。で?何だ?未来の世界に行ってみたいと」
「そうよ!!」
前から飛鳥が未来の世界が気になっていたことは知っていた。
飛鳥は昭和から召喚されたお嬢様だからな。
だがその想いがここまでわざわざ来るほどとは思わなかった。
どうやって来たのか疑問に思ったが、飛鳥の後方で十六夜と耀が待機しているのを見て解決した。
十六夜はヤハハ、と笑っており、耀は相変らずの無表情だ。
「まぁいいけど……そっちの二人も行くのか?」
「「あたりまえ!!」」
そう叫びながら二人がこちらに駆け寄ってくる。
まぁ三人くらいなら余裕だしいいか。
「転移する前に着替えるぞ。―――ほれ」
フィンガースナップと同時に、三人の服装が変わる。
十六夜は黒のスーツに黒のシャツ、そして白銀のネクタイ。
飛鳥と耀は純白の七分丈のブラウス、紅いネクタイ、赤のチェックのミニスカート、そして極めつけは黒ニーソ!!
俺は白のスーツに黒いシャツ、白銀のネクタイを付けてその上から烏羽を羽織る。
「これで未来に行っても恥ずかしくないぞ」
「「「お……おぅ?」」」
少し疑問な口調だったが気にしない。
「それじゃあ行くぞ。俺に掴まれ」
三人が俺に捕まったのを確認してから時空間転移をした。
☆☆☆
『それでは、実りのなる時間となるよう期待を込めて開会のあいさつとさせていただきます』
スピーカ越しの女の子の声が聞こえてくる。
ちなみにどの世界に転移したかはわからない。
だって設定してないもん。
ただ未来って設定しただけだし。
「へぇ……ここが未来なのね」
「おいおいなんだここ。かなり科学技術が進んでるじゃねぇか!!」
「………私の世界より未来?」
三者三様の反応だ。
ただ悪評ではないようなのでスルーだ。
「勝手に動き回んなよ?最悪この世界に取り残されるからな?」
「「「りょーかい」」」
三人とも素直だ。
だがそれが心配だ。
『とまぁ、堅苦しいのはこの辺にして―――お待ちかね!!対戦表を発表しまーす!!』
女の子の背後のディスプレイの表示が移り変わる。
ってなんの対戦表だ?
まぁいいか、どうでも。
三人は、そのディスプレイをじーっと見つめていた。
何がそんなに面白いのかがわからない。
十六夜と耀は似たようなものを見て事があるはずだ。
飛鳥は仕方がないと思う。
と、ここで一度辺りも見回す。
どうやらここは屋内のようだ。
まぁ風や太陽の光などがまったくといっていいほど感じられなかったのでそれは分っていた。
あと人工的な光ね。
さらに詳しく見ると、体育館のようだ。
俺達がいるのはギャラリーだ。
そしてディスプレイがあるのがステージ。
念のため、時空間転移し終えた瞬間にステルスをかけておいたのが功をそうしたらっしい。
これからどうしようかと考えようとした時だった。
建物が激しく揺れた。
それも爆撃にあったかのようにだ。
とても地震の揺れだとは思えない。
瞬時に《円》を使い、辺りを捜索する。
案外早くソレは見つかった。
と、同時にこの世界がどの世界なのか確信した。
「ISか……」
「「「IS?何それ?」」」
「正式名称『インフィニット・ストラトス』。宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツだ」
「「「すごく未来だ……」」」
三人ともうんうん、とうなずきながら呟いていた。
「で、そのISがどうかしたのか?」
「ここを襲撃しているらしい。そんでもって大ピンチだ」
「ヤハハ!!なんだなんだ?楽しそうなことになってるしゃねぇか!!」
十六夜はカラカラと笑う。
いやいや、そんなヌルいもんじゃないから。
さっきステージで仕切っていた女の子もなんか瓦礫の上で倒れているし。
かろうじて意識があるのは確認できた。
そんでもって、それをみた女の子が突っ込んでいってまたピンチになってるし。
あーあ、ISまで解除されちゃった。
これは本格的にマズイか。
「そんじゃまぁ―――一仕事しますか」
「「「賛成!!」」」
☆☆☆
体育館を飛び出し、人外の速度で瓦礫の上で倒れている女の子の元へ行く。
ISの速度何て目じゃねぇ。
飛鳥も最近は人外化してきており、空は走れるし、もちろん水面も走れる。
故に、女の子の元へ行くのには一分と掛からなかった。
「お嬢さん、大丈夫?」
気軽に声をかける。
すると、うめき声を上げながら上半身を起こそうとし始めた。
それを右腕で補助しながら声をかける。
「おっと、無茶はいけないぜ」
「あなたたち……何者……?……どうして……ここ……に……?」
「それは秘密だ」
と、このタイミングで女の子の目が見開かれた。
「あ……危ない……!!」
その視線の先には、十六夜とISがいた。
どうやらISが十六夜に突っ込んでいったらしい。
十六夜はそれを嬉々として受け入れる。
「ヤハハ!!未来のロボットと戦闘とか超オモシロイじゃねぇか!!」
そう叫びながら右腕を引き絞ってISに向かって振り下ろした。
もちろんISは木端微塵だ。
「え……?」
腕の中の女の子が呆然と声を上げた。
と、いけねぇ、いい加減回復させたやらねば。
空間倉庫から『フェニックスの涙』を取り出し、女の子に飲ませる。
最初は拒否していたが、「回復薬だ」と告げると、素直―――までとはいかなかったが、警戒の度数を下げて飲み込んだ。
「治った……?え……?」
目をパチパチさせながら呟く女の子。
だがこの女の子ばっかり構っている訳にはいかない。
「それじゃ」
右手を挙げてその場を去ろうとすると、
「待って!!あなた、本当に何者?あれだけの傷を瞬時に回復させるなんて現代の医療でも無理なのよ?」
そう声を掛けられた。
「神をも浄化する刃、神浄刃だ」
どれだけ言って、その場を離れる。
三人と合流し、それぞれに指令を出した。
「十六夜、お空にいるISと遊んでやってくれ。飛鳥と耀は、ケガをしている女の子などを保護してくれ」
「「「りょーかい!!」」」
三人とも反論がなくてよかった。
まぁここで反論してきたら『箱庭』に送ろうと思ったんだけど。
三人がそれぞれの方向に移動するのを見届けてから、俺は行動を開始した。
☆☆☆
其処につくと、まさに絶体絶命の四文字が当てはまる状態の女の子がいた。
この学園の生徒だろうか、だがISが解除されている。
この女の子はさっき助けた女の子がボロボロにされているのを見て飛び出していった子だ。
おっと、さっさと助けないと危ういか。
あれこれ考えているうちに、女の子に向かってISが装備を構えているところだった。
「ATフィールド展開、モード天使」
背中からATフィールドでできた三対六枚の翼が出現し、頭上にはATフィールドでできた輪が出現する。
瞬時に女の子の前に移動し、そして右腕を掲げてISの攻撃を防ぐ。
キィィィィィン!!という、ATフィールドが攻撃を防いだときに鳴る音が辺りに響いた。
「大丈夫かい?」
「は、はい!!」
☆☆☆
お姉ちゃんが侵入してきたISにやられてしまった。
私はそれを見て、がむしゃらにそのISに攻撃を放つ。
全装備を使って、徹底的に。
でもそれは叶わなかった。
アリーナに戦場が移り、とどめを刺そうとした時だった。
トリガーを引いても弾丸が出ないのだ。
武器に目をやるとそこには、
『WeaponPower0%』
の表示があった。
呆然として固まっていると、背後からISが攻撃を仕掛けてきた。
もちろん私は動けないかった。
あきらめて攻撃を受けた際に起こる衝撃に身をそなえた。
だけど……
だけどいつまでたってもその衝撃は体を襲ってこなかった。
いつの間にかつぶってしまっていた目を開けて、原因を探る。
原因はすぐにわかった。
なぜなら―――
目の前で透き通った翼を広げて、右手を掲げている人がいたからだ。
その人は生身だった。
でもおかしいところがいくつかあった。
まず翼があることだ。
背中に三対六枚の透き通っていて綺麗な翼があった。
頭の上には似たように透き通った輪のようなものが浮いていた。
なにより気になったことが、右手を掲げるだけでISの攻撃を防いでいるところだ。
その右手からはたまに透き通った壁みたいのが見える。
ISに生身で勝つことはどうやっても不可能。
それが常識だった。
でも今目の前で起こっていることは全くの逆。
少し特殊だけど、生身の人間がISの攻撃を右手一本で楽々と防いでいた。
それに加えて―――
「大丈夫か?」
「は、はい!!」
などと平坦な声で、だけどどこか安心できる声音だった。
少し驚いちゃって、どもっちゃたけど……
そして改めて思った。
この男の人はまるで―――
ヒーローみたいだと。
☆☆☆
女の子の無事を確認した俺は、すぐに意識をISに戻す。
人の気配は全くしないので、無人機だと確定する。
遠慮なく吹き飛ばしてもいいだろう。
コアは………いいや、ぶち壊して証拠隠滅しよう。
流石に素手でぶち壊すわけにはいかない。
だからといって、二天龍の神滅具を使用するわけにもいかない。
アレを使うとこの辺り一帯が更地に変わってしまう。
だとしたらアレしかないだろ。
精霊の世界で慣れ親しんだ剣。
何度も何度も敵CR-ユニットを斬った剣。
「―――アスカロン」
アスカロン
それは形状は全長3.5m、総重量200kgの鋼の塊。
十六世紀末にとある作家が勝手に作った『聖剣の物語』に基づいて本物の魔術師が手掛けた霊装である。
『作中に登場する全長50フィートの悪竜が実在するものとして、その悪竜を切り殺すために必要な剣の理論値とは何か』を徹底的に計算し尽くして作り上げられた怪物兵器だ。
アスカロンを出し、右手一本で軽々と持ち上げると女の子が目を見開いた。
この大きさの剣は普通の人間は両手でも持ち上げられないもんな。
俺、神様だし関係ないか。
「―――最大の拒絶」
ISを吹き飛ばし、距離を取らせる。
吹き飛んでいる間にアスカロンに魔力を流し込む。
すると、刀身がプリズムのように様々な色に輝き始める。
やっぱりいつ見ても綺麗だ。
ちょうど流し終えて準備万端になったときにISがこちらに突っ込んできた。
そんなに直線的に突っ込まれると―――
「簡単に切り刻めちゃうぜ」
こっちからも突っ込み、すれ違いざまに斬撃を無数に入れる。
すれ違ってしばらくすると、IS破再びこちらに攻撃を加えようとしてきたがそれは叶わなかった。
なぜなら爆散したからだ。
これで証拠隠滅完了だ。
だが念のために破片すら残さないように―――
「ATフィールド再展開、モード天災」
頭上の輪と背中の翼が紅に染まる。
天空には紅い渦が広範囲で展開され、辺りが暗くなる。
対象を指定し、吸い込ませる。
ISの残骸が徐々に宙に浮き始め、最終的には紅い渦にすべて吸い込まれていく。
今度こそ、完全に証拠隠滅できた。
と、いいタイミングで問題児達も集結した。
「刃!!なんだよあいつら全然歯ごたえねぇじゃねぇか!!」
「負傷者は全員運び終えたわよ!!」
「………以下同文」
無論、三人とも生身で宙に浮いている訳で………
「ちょっと待って!!君達は一体何者なの!?襲撃してきたISを撃墜してくれたのには感謝するけど、さすがに―――」
金髪でオレンジ色のISに乗った女の子が声をかけてきたが、それは途中で遮られることになった。
なぜなら―――
空中に亀裂が現れ、そこから巨大な紅色の龍が現れたからだ。
もちろんその正体は我が愛しの義妹、紅こと『真なる赤龍神帝』グレートレッドだ。
とうとう我慢できずに来てしまったか………
このままでは世界がパニックになってしまいそうだな………
さっさとお暇しようか。
「十六夜、飛鳥、耀!!紅が迎えに来てくれたから帰るぞ!!」
「「「りょーかい」」」
三人はヒョイヒョイっと紅の背に乗った。
「お嬢さん、俺達が何者かって聞いたよね?」
「う、うん……」
どうせこれっきりなので、原初神の姿に戻る。
そして一言。
「世界を創る神の一柱、原初神ノヴァだ。―――それじゃあね」
空を駆けて、紅の背中まで移動する。
背後から声をかけられたが無視をする。
こんな感じで飛鳥の未来見学ツアーは幕を閉じた。
☆☆☆
「原初神……ノヴァ……?」
ボクは思わずつぶやいてしまった。
ノヴァはそれだけ言って空を駆けて行ってしまった。
大きい紅色のドラゴンと影が重なったと思うと、閃光が辺りを包んだ。
閃光が晴れるとそこには誰もいなかった。
辺りを見回しても、どこにもいない。
だけど、空からハラハラと一枚の紙が落ちてきた。
それを掴み、見てみるとそこには―――
『なんか困ったことがあったら、この紙を握って「助けて」って念じてね♪そしたらすぐに飛んで行ってあげるから。ちなみに、この紙は一分後に二つになるから、片方は水色の紙で眼鏡をかけている女の子にあげてね。よろしく』
なにこれ……
まぁしょうがないか。
だって、神様だし……
簪、シャルロット視点もありました。