問題児たちが異世界から来るそうですよ?~二天龍を従えし者~ 作:眠らずの夜想曲
境界壁・上空二〇〇〇〇m地点。
そこに奴らはいた。
三人の人影を確認。
「プレイヤー側で相手になるのは……《サラマンドラ》のお嬢ちゃんを含めて四、五人ってとこかしらね、ヴェーザー?」
「いや、四人だな。あのカボチャは参加資格がねぇ。特にヤバイのは吸血鬼と火竜のフロアマスターだが……」
「?」
「いや……気のせいだと思う……」
「そう」
気のせいではなかった。
気のせいなはずがないだろ?
だって―――
「―――ギフトゲームを始めるわ。貴方たちは手筈通りお願い」
「おう邪魔する奴は?」
「殺していいよ」
「いや、殺されるのはお前らだ」
「「「!?!?」」」
声をかけた瞬間、ペストを守るようにウェーザーとラッテンが構える。
「だ、誰?」
ペストがどもりながら訊いてくる。
「神浄刃」
「そう……死ね!!」
「お前がな」
黒い風を送ってきたので、それを全て魔力を開放して消しとばす。
「「マスター!!」」
「あなた達は、行きなさい!!」
「でも……」
「いいから!!」
「はい!!」「おう!!」」
面倒なことを……
これではまとめて殺せないではないか。
「さぁ、お前の殺されを選ばせてやろう」
「はぁ?何言っているのあなた」
「絞首・斬首・銃殺・釜ゆで・溺死・電気・火あぶり・生き埋め・薬殺・石打ち・鋸・はりつけ、 好きなのを選んでね♪」
「―――ッ!!」
ペストがものすごい勢いで逃げていった。
仕方ない…少し泳がそう。
と、言うとでも?
「―――見つけた」
「嘘でしょ!?」
「嘘ではない。―――現実だ」
ペストを補足した俺は、一瞬で近づきペストの腹に蹴りを放つ。
蹴られたペストは地面に叩きつけられる。
かなりの大きさのクレーターがペストを中心として出来上がる。
追撃を与えるために天空から回転しながら落ち、ペストに踵落としを決める。
「ぁ……ぁぁ……」
叫び声すらあげられないらしい。
それほどか。
「もぉ……やめ……」
「何言ってんだ。そっちから仕掛けてきたんだろ?ならこのくらいは覚悟の上だろ?」
追撃を加えようと、腕を引き絞った時だった。
「『審判権限』の発動が受理されました!!これよりギフトゲーム『The PIED PIPER of HAMELIN』は一時中断し、審議決議を執り行います!!プレイヤー側、ホスト側はともに交戦を中止し、速やかに交渉テーブルに移行してください!!繰り返します―――」
ペストは一気に脱力した。
俺は、
「あの駄ウサギだ……余計なことしやがって」
かなり怒っていた。
このままペストを殺してゲーム終了だったはずなのだが、それを邪魔されたのだ。
当たり前だろう。
「た、助かった……」
ペストなんか、すっかり安心している。
だがなかなか立ち上がらないところを考えるに、ダメージが多すぎて立ち上がれないのだろう。
仕方ない。
「―――おい」
「ひぃ!?な、なによ……」
目尻に涙を浮かばせながら返してきた。
やばい、少し可愛いかも。
「立てないのだろう?連れて行ってやる……」
そう言い、ペストをお姫様抱っこする。
「え、え!?あ、ありがとぅ」
ペストの頬が赤く染まっていたのは気のせいだろう。
今の俺の怒りはペストには向かっていない
俺の怒りの矛先は、黒ウサギにあるからだ。
あの駄ウサギ、絶対に調教してやる。
☆☆☆
「退け、俺の進路に存在するではないッ!!」
現在、祭運営本陣営、貴賓室に文字通りまっすぐ進んでいます。
進路方向に建物があれば、
「邪魔だ」
蹴りで建物を破壊し、進路を確保する。
だが、腕の中にいるペストの様子がおかしい。
顔が先ほどから赤いままなのだ。
「どうかしたのか?」
「にゃ、にゃんでもない……」
さらに顔が赤くなってしまった。
まぁいいだろう。
しばらく進むと、大祭運営本陣営、貴賓室の前までやって来ることができた。
扉を蹴り飛ばし、部屋の中に入る。
「な、何事でございますか!?」
「おい、今ゲーム一時停止してるはずだろ?」
「は、はい。確かにそうです」
「ならなんでだ……?」
中からは、十六夜と黒ウサギのやり取りが聞こえてくる。
だが、関係ない。
「黒ウサギの馬鹿野郎は何処だ!!」
魔力を纏い、威圧しながらゆっくりと部屋に入っていく。
「「「や、刃(さん)?」」」
「俺だが?それより―――黒ウサギ」
「な、なんごがざいますか?」
少し身を引きながら返してくる。
「お前のせいでな……」
「や、刃さん?」
「お前のせいでペストを殺し損ねたんだぞ?」
「「「「「!?!?」」」」」
この場にいる全員が驚いているようだ。
理由はわからないがな。
「マ、マスター本当かよ!?」
「え、えぇ本当よ」
「怪我は!?大丈夫、マスター!?」
「だ、大丈夫だから……は、放しなさい!!」
ラッテンがペストに抱き着き、その豊満な胸にペストの顔をうずめていた。
そのせいで、ペストが窒息しそうになっていたが。
それよりも黒ウサギだ。
「それで黒ウサギ……一回死ぬか?」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ」
悲鳴のようなものを上げながら後ずさる黒ウサギ。
「何か言ったらどうなんだ?」
「ひぅ……う―――」
「なんだ?」
「うわぁぁぁぁぁぁん!!」
黒ウサギが床にへたり込んで泣き始めてしまった。
威圧を掛け過ぎたのか?
それとも途中から殺気が乗ったのか?
「お、おい……刃、その辺で勘弁してやれよ」
十六夜が俺をたしなめるに声をかけてきた。
「十六夜、お前は黙っていろ。―――それともお前が俺の相手をしてくれるのか?」
「い、いや、いいわ。続けてくれ」
十六夜はすぐに引いてくれた。
さて、黒ウサギをどう調教しよう。
「黒ウサギ、覚悟はいいか?」
「ひぃぃぃぃぃ!!」
悲鳴を上げている黒ウサギにゆっくりと近づいていく。
すると、
「や、刃さん」
「どうした?」
ジンが話しかけてきた。
ジンから話かけてくるなんて珍しいな。
「黒ウサギも理由があって止めたんです」
「どういう理由だ?」
「は、はい。あのままでは《ノーネーム》のみんなが死んでしまったかもしれないんです。だから……止めた黒ウサギを許してあげてください」
「へぇ?でもな、一番の理由はそれではない」
「「え?」」
黒ウサギとジンは同時に気の抜けたような声を発した。
「一番の理由はな、俺とレティシアの初デートを邪魔した事だ」
「「「はい?」」」
何を言っているんだ、という目で二人が見てくる。
「十六夜の奴と黒ウサギは簡単なゲームしていただろ?お前ら何か壊さなかったか?」
「「「―――あ」」」
どうやら自覚があったらしい。
でもまさかそれが理由とは思わなかったのだろう。
でもな、その場に行って、俺は注意したはずなんだが。
「黒ウサギよ何か言うことは?」
「は、はい。す、すいませんでしたぁぁぁ!!」
すごい勢いで土下座をする黒ウサギ。
「よし、黒ウサギは俺のメイドを一年間やれ」
「へ?え、えぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「何か文句でも?」
「いいえ、ありません!!」
巨乳ウサ耳天然メイドを俺は手に入れた。
「ふぅ、まぁこの件についてはこれでいい。それでギフトゲームの話し合いは?」
「そ、そのことなんだけど……」
「どうしかしたのか?」
ペストの顔が真っ赤になっているのだが……
なんだ?
どうしたんだ?
「ギフトゲームをやめましょう」
その言葉に、部屋にいる全員が驚く。
当たり前だろう。
自らが仕掛けたゲームを自らやめようといったのだから。
「理由は?なぜやめようと思ったのだ?」
「もう勝てる気がしないし……そ、それに―――」
チラチラ俺の方を恥ずかしそうに見てくるペスト。
まさか―――
「―――刃」
「な、なんだ?」
「私のお兄ちゃんになって!!」
俺は耳を疑った。
私のお兄ちゃんになって、とペストに言われたからだ。
「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」
部屋にいる全員が驚きに声を上げた。
そりゃそうだろう。
「ま、まぁいいが……よろしくな、ペスト」
「えへへ~、よろしくお兄ちゃん」
まさかペストが妹になるとは……
世の中わからないものだな。
「なんでペストは刃の妹になりたかったんだ?」
十六夜がもっともな質問をする。
それは俺も知りたかった。
「さっき、ここまで来るときにお姫様抱っこされたんだけどね、なぜかすごく安心できたの。私は家族に裏切られたから……あまり人を信じられなかったんだけど。お兄ちゃんは違った……だからよ」
「そ、そうか」
そうか、俺の腕の中で安心してくれたのか。
それはうれしいこだがな、なぜか複雑だ。
まぁ妹ができるのは嬉しいからな。
素直に喜ぶか。
「ま、まぁあれだ。頑張れよ刃」
「「頑張ってください」」
「「マスターを頼んだぜ(わよ)」」
どうやらウェーザーとラッテンは一緒に来ないらしい。
頼む、という言葉からの推測だがな。
「ペストは《ノーネーム》に来るのか?」
「うん♪お兄ちゃんの入っているコミュニティだからね」
どうやらペストはうちのコミュニティに来るらしい。
「ラッテンとウェーザーはどうするのだ?」
「いや、俺達はいい。《グリムグリモワールハーメルン》以外のコミュニティにはいられない。これは、前のマスターに頼まれたんだ」
「何をだ?」
「『《グリムグリモワールハーメルン》を頼む』ってな」
そうか。
頼まれてしまったのなら仕方ない。
「なら仕方がないな。なんかあったら俺を頼れよ」
「あぁ、そうさしてもらう」
「まぁ、これで魔王については終わりだ。―――ペスト」
「ん?なぁに?」
ペストが俺の腕に抱き着きながら返事をしてきた。
「ゲームを終わらせてくれないか?」
「うん、わかった♪」
と、軽く返してくれたのだが―――
「ゲ、ゲームが終わらない!!」
ゲームが終わらせられない。
ゲームを仕掛けた本人なのにだ。
仕方ないがやるしかない。
「『契約書類』を出してくれ」
「う、うん……はい」
ペストに差し出された『契約書類』を手に取る。
これがオリジナルの『契約書類』か。
そしてそのまま『契約書類』を破く。
「これでいいだろ?」
「う、うん……確かにゲームが終了してる」
ゲームに関してはこれでいいか。
あとは、この街を元通りにしないとな。
「―――サンドラ」
「はい?なんでしょうか」
可愛いな……
服装も露出が激しいし。
おっとおれはロリじゃないからな。
「あの、それでなんのごようでしょうか?」
「いやなに、街を元通りにしてやろうと思ってな」
「本当ですか!?」
サンドラが飛び上がりながら驚く。
「ああ、やっていいか?」
「はい、お願いします!!」
了承を得たので、《時間を操る程度の能力》で街全体の時間を巻き戻す。
街は元通りになった
「俺は疲れたから寝る。レティシアとペスト以外俺の部屋に入れたら殺すからな」
「「「「「サー、イェッサー!!」」」」」
全員が訓練された軍人みたく、敬礼しながら返してきた。
なかなか気分がいい。
「―――ペスト」
「なぁに?お兄ちゃん」
「一緒に寝るか?」
「う、うん!!」
さて、今日は早く寝てレティシアとデートを楽しもう。
明日になれば、また祭りは再開されるだろうしな。
今回は短めです。なんか、ペストにフラグが…
2014/04/29、肉付け&改変。