世界はシャボン玉とともに(another version)   作:小野芋子

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主人公はNARUTOのない世界から来ました。
細かいところはスルーして欲しいです。


始まりは突然に

 気が付いたら見知らぬ場所にいた。

 何を言ってるか分からないかもしれないが俺も分からない。

 頭がどうにかなりそうだ。

 異世界転生とか神様転生とかそんなちゃちなものでは無い。

 もっとヤバいものの片鱗を味わったのだ。

 現に俺は先ほどまで……。さっきまで……。そう、さっきまで…?

 あれ?俺はさっきまで何をしてたんだっけ?

 どころか、俺は昨日まで、或いはそれ以前まで何をしてたんだっけ?

 何処で、誰と、何を……。

 

 あれ?ダメだ何も思い出せない。なんかやってたような気がする。忘れてはいけない何かを。俺にとって大事な何かをやってた気がする。

 なのに、今は何も思い出せない。

 なのに、ここは俺が本来いるべき場所ではないと、漠然とした何かが伝えてくる。

 分からない。記憶喪失なのか?その割にはなんかいろんなことを知ってる気がする。

 いや、確か記憶喪失で失うのは映像とか経験とかそんなもので、知識については何も失わないんだったっけ?

 しくじったな、そんなものあくまでもフィクションの話だったから特に深く調べることをしてない。こういうことになるならもう少し調べておけば良かった。

 

 それはそうとして、俺の体小さくない?

 最初は勘違いかと思ったけど、自分の手がまだ紅葉の名残を残している事実は変わらない。

 試しに近くにあった看板の隣に並んでみたが、ほぼ身長と同じ高さだった。

 この看板目測で1メートルもないにも関わらずだ。

 えっと、つまりどういうことだ?

 

 いったん落ち着こう。落ち着いて周囲を見よう。現実からは目を逸らそう。

 見回してみたところ、特に可笑しなもの目印になるような建物もない。一般的な住宅街といったところだ。ただ、霧が濃いためお世辞にも景観がいいとは言えない。

 はて?俺の記憶にこんな霧の濃い地域があっただろうか?

 少し記憶を掘り出してみるが、地名と写真は思い出せても実際にそこに訪れたことがあるかはまるで分からない。

 なるほど、少しわかってきた気がする。この記憶喪失、俺に直接関係のある出来事を全て忘れているのかもしれない。

 ふむ、だとすると少しばかり面倒であるが、そんなに問題はないかもしれない。

 正直な話をすれば不安で仕方がないが、俺が忘れていても俺と関わりのある人間は当然俺を覚えているはずだ。

 だとすれば、このまま適当に動き回っていればあちらから声をかけてくる可能性は高い。

 ならばそこまで不安になる必要もないのでは?

 そうと分かれば立ち止まって熟考する理由もない、適当に歩き回るとしよう。

 

 

 

 

 そう考えていた過去の浅はかな自分をぶん殴ってやりたい。

 

 言い訳させてもらうのならば俺も相当に混乱していたのだ。それこそ冷静に考えればわけの分からない結論を、まるで天啓のように感じる程度には錯乱していた。

 仕方ないね。まあ仕方ない。だから誰か助けて下さい。

 

 

 自分は何者なのか。そんな言葉にすれば哲学チックなものを軽い気持ちで考えていた俺は、取り合えず目についた比較的優しそうなおじいちゃんに話しかけた。

 いかにもどこにもいるようなおじいちゃんは、僕迷子なのー、とぶりっ子全開で話しかけた俺をみるや、その細められた両目をあらん限りかっぴらき、そのまま手近にあった酒瓶を担ぎ上げるや否や、その老いた体からは想像も出来ない野球選手もかくやといったスピードで俺めがけてシュート!超!エキサイティン!

 少しふざけて見たが、現実は何も笑えない。

 いきなりすぎて何も出来なかった俺は、そのまま酒瓶が直撃し、現在、地面には割れて無残な姿になった酒瓶の破片と、中身をもろにかぶり酒もしたたるいい男と化した俺が一人。

 ちょっと理解が追い付かない。

 一方のおじいちゃん。いや、もうジジイでいいや。ジジイは失せろ怪物が!等々とその年老いた体に鞭打って俺を怒鳴り散らしている。

 一応この場所は人通りがあるが、道行く人は老人に同情の視線を投げかけ、俺には侮蔑とか、嫌悪とかそういったマイナスの視線を向けてくる。

 

 なんだこれ?

 

 もしかして記憶がないだけで俺はとんでもない犯罪者なのではないか?

 そんな考えも思い浮かんだがそれについて深く考えるだけの余裕はない。

 何より頭が痛い。そのせいで頭が上手く回らない。

 それによく足元を見てみれば酒とは別の赤い液体が滴っているではないか。

 試しに頭に触れてみれば、ぬめりとした感触と鋭い痛みが。どうやら酒瓶が直撃したことで割れた破片が頭を切ったのかもしれない。

 自覚してみれば途端にずきずきと痛みが走る。

 取り合えず手当をしよう。結構痛いし怪我も酷いかもしれない。バンドエイドでいけるかな?もしくは包帯?

 いや、消毒が先か。でも消毒したら抗体ができにくくなるんだっけ?

 じゃあ消毒はなしか。

 ん?よく考えたら既に頭から酒を浴びてるわけだからアルコール殺菌はされているのか。

 なんだ、じゃあ全然問題ないじゃん。あのジジイアフターケアを考えて酒瓶を投げるとは、実はツンデレじゃないのか?

 けど、正直ジジイのツンデレとか需要無いからやめて欲しいな。寧ろ気持ち悪くなる。

 現に、今の俺は滅茶苦茶気持ち悪いぞ。ほんと、超気持ち悪い。 

 胸の奥からふつふつと形容しがたい何かがこみあげてきて、本当に気持ち悪い。

 気持ち悪いから、このまま吐き出してしまいたいくらいだ。

 

 けど、駄目だ。

 

 何を思ってか、近くを歩いていた子供の集団の一人が石ころをぶつけてきたが、我慢だ我慢。

 だって俺大人だから。

 うん、子供のいたずらにいちいち目くじら立ててたらストレスで将来ハゲそうだしな。

 ただし歩道で3列になってゆっくり歩くリア充ども、てめえらは駄目だ。

 

 よし少しだけ冷静になれた。

 

 傷口から直接アルコールが侵入しているせいか、正直足元がフラフラするけど、うん、大丈夫大丈夫。

 なんならさっきから石ぶつけてくる人数が増えた気がするけど、うん、気のせい気のせい。

 

 帰ろう。どこに行けばいいのか分からないけど、少なくともここからは離れるべきだ。

 どうやら、俺は随分な嫌われ者みたいだし。

 どうせ、記憶を失う前の俺が何かしらかをやったのが原因だろうし。

 だが、ここで謝ったとしても意味はない。

 そも、俺がやったことが謝って済むことかも分からない今、形だけの謝罪などに意味はない。

 だから、せめて自分が何者なのか、或いは何をしたのか、それを知って、思い出して、それから謝ろう。

 

 うん、そうと決まれば帰ろう。

 

 場所は分からないから、最悪野宿すればいい。

 幸いにも霧も多いが草木も生い茂っている場所もある。

 かたいコンクリートや、どろどろの土の上で寝るより遥かにましだろう。

 

 ああ、頭が痛い。足がふらつく。寒気がする。体が痛い。

 ああ、帰りたい。帰りたい。

 

 ★ ☆ ★ ☆

 

 いつの間に意識を失ったのだろうか。気づけば草も土も霧もない、よく分からない場所にいた。

 足元には波紋が出来ており、そこで漸く自分が立っていることに気づいた。

 寝ていた筈なのに立っているとは、ちょっと卑猥ですねぇ。

 冗談。自分がここまで寝相が悪いとは驚きだ。寧ろ夢遊病の類なのでは?

 だとしたらちょっと納得がいく。多分俺は眠っている間に別の人格が芽生え、それが人殺しなりなんなりを犯しているために、俺は嫌われているのだと。

 そして……、いや、無いな。いくら何でも突拍子がなさすぎる。

 何よりそれでは今の俺に自分の記憶がないことの説明にならない。事故にあったのだとすれば、当然どこか怪我しているはずだし。まあ、怪我はしたけどそれはまた別の事件だから。

 あれ?そう言えば。

 頭に触れてみる。指先に気持ちの悪い感触はないが、変わりに鈍い痛みが走る。

 だが、少なくともそれは傷口に直接触れたことによるものではない。

 傷口は確かにあるにはあった。だげそれは、既に完治一歩手前といった感じだったのだ。

 

 なぁにこれ?

 

 普通に考えて、あくまで体感でしかないがあの怪我は治るまでに2週間はかかるものだった。かさぶたが出来るにしても3,4日はかかる筈だ。

 それが一日も経たずに治ったのか?

 いや、もしかしたらあのまま長い眠りについて実はもう一週間は経過しているのかもしれないな。なにそれ、どこの浦島さんだよ。

 だが事実として頭に触れてみてもそんな感触はない。痛みがないわけではないけど、それでも怪我した当初に比べればマシなものだ。

 もしかしたらあれは夢だったのか?もしくは感覚がマヒしたか。

 

 だめだ、分からない。もう考えるのもめんどくさい。

 

 こういう時には寝るに限る。

 そういうわけで大人しく腰を下ろそうとして、そこで漸く後ろに何かいることに気づいた。

 何か、は何かだ。何やらブニブニした感触と、ぬめっとした感触のある何かだ。

 言葉にすると気持ち悪いことこの上ないが、不思議と不快感はない。

 むしろ、感じるのは安心感だった。やだ、俺もしかして相当追い詰められているんじゃ。

 けど、正直安心できるものがあるのはありがたい。なんか色々ありすぎて少しだけ、いや、かなり不安定だったので人心地つける何かが欲しかったのだ。

 だから、特に警戒することもなくその感触に身を任せた。加えて体重も預けた。

 

 ああ、安心する。

 

 家族の安心感とは、多分少し違う。

 それでも、気が楽になった。込めてもいない肩の力が抜けた気がした。力を抜きすぎてちょっと涙が出たけど。まあそれもいいだろう。

 どうせ誰も見てないんだし。

 

 ★ ☆ ★ ☆

 

 それはただ見ていた。

 自らにもたれ掛かり寝息を漏らす少年を。

 推し量るように。

 観察するように。

 決して手を差し伸べることはせずに。

 ただ見ていた。

 

 




前作の書き溜めていたものが全ロストしたためにやけくそで書きました。
誤字脱字等がありましたら申し訳ない。
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