織田信奈の野望~乱世に舞い降りた黒の剣士~   作:piroyuki

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更新お待ちの皆さまもお待ちでない皆さまもおまたせしました!


舞台は南近江攻略軍、信奈パートです。



※追記:中盤の矛盾点を修正しました。


南近江攻略戦

~美濃~岐阜の町

 

 

里香の工房に一人の男と小さな娘が訪ねてきた。浅黒い肌に逞しい身体つき・・・十河一存とその娘の存保(まさやす)である。

 

 

「よう、里香ちゃん!明日菜ちゃん!」

 

「十河さん!?どうしたの?こんなところに・・・」

 

「十河のおっちゃんじゃん!」

 

「おっちゃんっておめぇなぁ・・・おっと、こいつは俺の愛娘の存保だ。ほら、挨拶しろ」

 

「は・・・はじめましてだよ」

 

 

どうやったらこの野蛮人もといこのいかつい親父からこんなちっこい娘が産まれてくるんだよといわんばかりの里香の顔である。

おかっぱ頭で真上にピョンっと一つ結んだ髪型に、色白の肌、くりくりの目をしたかわいらしい女の子だ。8歳だそうな。

 

 

「十河さんの娘!?か・・・かっわいいいいいぃぃ!!!」

 

「お母さん似ね・・・うん」

 

「可愛いだろう!」

 

「はうぅ・・・」///

 

 

照れる顔も可愛いものである。

 

 

 

 

 

十河は娘を連れてここに遊びに来たわけではなかった。一大事である。

 

 

「三好三人衆と松永弾正が二条城を襲った。俺ぁ援軍を出そうとしたところを待ち構えられててな・・・どうにかここまで来たってわけだ。」

 

 

この事態を察知していた織田家は事を阻止すべく動いていたが、五右衛門の動きを封じられ、更に武田襲来の為にうごいていたため、対処することができなかった。

しかし、織田家・・・むしろ他大名家すべてに上洛の名分が立ったということにもなる。不幸中の幸いというべきであろうか、六角家はこの事態を静観・・・よって織田家は将軍家救援と、京から目と鼻の先に居を構えるにもかかわらず救援に向かわなかった六角を成敗するという名分を引っ提げて、堂々と南近江を切り取ることができる。

 

 

 

十河から話を聞いた里香と明日奈は、岐阜城に登城した。

 

 

 

 

 

~岐阜城~広間

 

 

「そう、わかったわ。京に向かうわよ!」

 

「京に!?」

 

「そうよ。将軍家救出に向かうわ!もし邪魔をする大名がいるのなら成敗するのよ!」

 

「織田の姫さんよ・・・ちょっといいかい?」

 

「十河だっけ?なによ?」

 

「もし行くんなら俺も連れていきな。」

 

「来なくていいわよ。あんたはその子のそばにいてあげて。」

 

「あ?なにいってんだ?こいつも連れていくに決まってんじゃねぇか」

 

「はぁ!?」

 

 

十河の話によると、存保は京で剣術名門の京八流を学び、6歳にして免許皆伝の印可を受けているという。

 

 

「はっはっは!こいつぁ天才なんだよ!」

 

 

十河は豪快に笑っているが、織田家の面々は半信半疑であった。

 

 

「まぁ、好きにしなさい。明日の朝、出陣よ!」

 

「「「はっ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~南近江国境付近~

 

 

織田軍は京に向けて進軍を開始。その動きに合わせて六角軍も国境付近に軍を進めていた。

六角家・・・近江源氏の末裔で、かつて管領の地位を持っていた名門であったが、六角承禎(しょうてい)が当主になると、三好や浅井との戦いに敗れ、六角家は衰退していた。

兵力も充分に無い状態であり、練度も低い。この状態では二条城の救援も無理がある。そう考えた承禎は静観を決め、山名や波多野といった大名家が動くのを待っていたのだ。

衰退した大名ほどか弱いものだ。しかし国を守るにあたっては動かざるをえない。甲賀を動かし、織田家の切り札暗殺を命じたのも「織田家上洛の兆しあり」というある筋からの情報を聞き、危険を感じたためである。

 

 

「父上の代で管領を賜り、その息子の代で滅ぶ・・・か。」

 

 

目に見えて衰退してしまった六角家・・・あと2~3年で家督を義治に継がせるつもりでいたが、これも承禎の逃げ腰故だったのかもしれない。

兵の士気も低い。黒の剣士擁する織田軍に恐れ慄いているのだ。

 

 

「ふん、アタイらが手を貸してやるよ。」

 

「ぬ・・・お主らか・・・」

 

「なっさけないツラしてんじゃないわよ!ほら、お前達!行くよ!」

 

「「おう!姐御!!」」

 

 

「・・・・・なさけない・・・か。ほんに、なさけないのぅ・・・蒲生よ、あとは任せたぞ・・・。」

 

 

丸めた頭をポリポリと掻きながら、承禎は観音城に戻っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵よ!邪魔する者は蹂躙あるのみ!皆の者!我に続けぇぇ!!!」

 

 

勝家の号令と共に、織田軍は突撃を開始した。

六角軍の士気は低く、初戦は順調・・・かに思われた。

しかし「かかれ柴田」の勝家の突進を謎の女性が食い止めた。

 

 

「あんたが柴田勝家かい?ふぅん・・・」

 

「貴様・・・名を名乗れ!!」

 

「アタイかい?よーく覚えておくんだね・・・アタイはロザリア。あんたに用はないのよ!キリトを出しなさい!!」

 

「キリトだと?ふん、ここにはいない!」

 

「いないの?なぁんだ。じゃあどこにいるのか聞きださないと・・・ねぇ」ニヤッ

 

 

勝家はこの時、ものすごい殺気に気付いていた。彼女が五右衛門の言っていた人物であるとすれば、自分では相手にならないと思っていたのだ。

しかし武人故か・・・血が滾るのだ。

 

 

「戦場ではその余裕が命取りになるのだ!!はぁぁ!!!!」ガキィィン

 

 

ガキン!カン!キン!!シュバッ!!ガィィン!!

 

 

戦人ならばわかる。剣を交えただけで相手の強さがわかってしまう。

勝家が全力で斬りかかっているのに対して、この相手はまるで本気を出していない。

キリトの剣舞を見たときに感じたものを、いまこの戦闘の最中に感じていた。

心が折れかけていた。そのときだった。

 

 

「どけぇぇぇ!!!!!」

 

 

ガキィィィン!!!!

 

 

大きな体躯にそれ相応の斧、黒い肌の男が勝家の前に立っていた。

 

 

「じゃ・・・邪魔をするな!!」

 

「アンタじゃ勝てねぇ。俺に任せな。」

 

 

その背中はとても大きく見えた。折れかけていた心が修復されていくような感覚を感じる。

突然の攻撃に、ロザリアと名乗る女性の表情が歪んでいた。

勝家はこんな時にもかかわらず、思わずこんなことを口にした。

 

 

「貴方の・・・お名前を・・・」

 

 

その男はチラリと横目で振り返ってこう言った。

 

 

「エギル。キリトの連れだ。助太刀するぜ。」

 

 

柴田勝家ぼいんty(ゲフンゲフン)恋に落ちる音がした瞬間である。

 

 

 

 

 

ロザリアの率いる集団は、里香とエギルの奮闘により撤退した。SAOではレベル差補正があるが、この世界はそうではないらしい。ロザリアは何故か中途半端に戦って撤退したのである。

六角軍は恐慌状態に陥り退却。織田軍は初戦をモノにした。

 

 

(さっさと終わらせてキリトを追うのよ!!)

 

(・・・早く戻ってキリトのとこいく)

 

(はぁぁ・・・帰って肉まんたべたい)

 

 

信奈は上洛するつもりはない。南近江攻略の段階で救援が間に合わないのはわかりきっている。これはたんなる名分にすぎなかった。

そう、二条城襲撃、南近江進軍の名分発生、すべては半兵衛の予定通りに進んでいるのである。

しかし信奈に制圧の意思あらず。あくまでメインは武田の撃退である。

半兵衛の策よりも、信奈は自らの理念を貫く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かたじけない・・・エギル殿、助かりました。」

 

「あぁ、気にするな。それより姫様はどこだ?」

 

「姫様なら本陣におられます・・・ご案内します・・・//」

 

「すまんな。」

 

 

本陣に案内されたエギルは信奈と対面した。

あらかじめエギルのことを知らされていた信奈はエギルの容姿に驚きつつも、めずらしいものを見るかのように質問責めをした。

 

 

 

そんな折、本陣に報告が入った。

 

 

「将軍、足利義輝様が弑逆されました!」

 

 

将軍義輝は二条城に立て篭もり、三好と応戦。しかし僅かな手勢のみで守備する二条城はまもなく炎上。義輝は持ちうる武器で奮戦するも及ばず、命を落としたという。

ここに室町幕府13代将軍足利義輝は短い生涯を終えた。

三好三人衆及び松永弾正は後継として義輝の従弟にあたる足利義親を将軍候補として擁立、それを良しとしない朝倉の手により義輝の妹、義秋(千歳丸)が保護された。

 

 

これによって信奈は上洛の名分を失った。南近江制圧は事実上の失敗となったのである。

しかしこれを悔いる者はおらず、織田軍は即座に撤退した。西の戦力は充分に削いだ。これが信奈の本来の目的であった。

ここからは東から来る脅威、武田軍に備えることができるのである。




ほんと更新亀ですんません。
年の瀬は忙しいのですよ!

勝家×エギルのフラグが立っちゃいましたけど!!!エギルさん奥さんいるですけど!!



足利将軍家のことは原作から大きく外れました。

次回は美濃防衛軍のパートです。

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