鉄血×AC カルタ・イシューを王に据える話   作:蒼天伍号

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書きたいことが多過ぎて……でもそれを纏める能力はない。
酒飲まなきゃやってらんねぇっすよ!


エドモントン

ーーアーヴラウ領・エドモントン郊外。

 

ここに至りすでに三日が経過していた。

 

 

 

「くそっ、いつまで待たせる気なんだアイツは!」

 

「まだ相手側に動きはないけど、このままここに陣取っていても状況は変わらない。もし、これで背後から襲撃を受ければこっちはジリ貧だ。

……考えたくはないけど、謀られたと見るべきかな」

 

援軍として訪れるはずであった『あの人』の姿は三日経っても見えず、鉄華団の中でも不安と疑念が広がりつつある。

 

「いや、あの人は妙に義理堅いところがある。やると言ったらやるよ」

 

「モージさん……」

 

彼が信頼する人ならば大丈夫、私はそう思えるからまだ冷静だ。だが他のメンバーからしてみれば『あの人』は敵対組織の権力者で二度も戦闘を行なった関係だ。

信じろというのが無理な話かもしれない。

 

「……モージ。この際だからハッキリ言っておくが、俺らはまだお前を許しちゃいない。ただ、これまでお前に助けられてきたのも確かだ。

だから、今回の件でしくじったらーー」

 

「ああ、煮るなり焼くなり好きにしてくれ。……それだけの覚悟は出来てる」

 

団長さんの言葉に、彼は強い意志を持った瞳で応え真っ直ぐとその目を見つめた。

 

「お前……」

 

「……まあ、あくまで最悪を想定した話だよ。僕としてもモージさんの覚悟を疑うようなことはしたくないしね」

 

「……俺だって分かってるさビスケット。なにより、お前の策だ。俺はいつだってお前を信じてる」

 

ビスケットさんの言に団長さんも少し笑みを見せた。

孤島で二人の間に何かがあったらしく、これまで以上に両者の絆が深まっているように思う。

やはり、団長さんの隣にはビスケットさんがいないと。

 

「フミタン……」

 

ーー私も、彼女にもらったたくさんのものを胸に、ちゃんと彼女に胸を張れるように頑張らなくては。

 

ふと、横に視線を向けると彼が複雑そうな表情でこちらを見ていた。

 

「モージさん?」

 

「あ、いや、なんでもない。……ちょっと、機体の調整に行ってくる。どのみち戦闘は避けられそうにないしな」

 

そう言ってそそくさと格納庫に向かう彼。何か、隠し事をしてるように見えたけど。

 

とにかく。

 

「今は、あの人を信じて待ちましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄華団とトールの密約。

それはエドモントン到達に際しての助力である。

 

厳密に言えば、エドモントン市街地に至るための助力。ギャラルホルン内部に潜む協力者たちを率いて、アーヴラウ政権に介入しているイズナリオ・ファリドを糾弾。その悪事を世間に公表することでファリドの権威を失墜させ、ギャラルホルンという組織に変革を齎す。

というもの。

 

これにより、イズナリオを引き摺り下ろすついでにアンリ・フリュウを追放し蒔苗をアーヴラウの代表の座に据えることができる。

あくまでイズナリオへの制裁を名目にしているため蒔苗とトールが関わることは無いし、そもそもそんな情報はトールを警戒していたイズナリオくらいしか持っていない。……正確には、情報そのものはラスタルも耳に入れている。だが、動けるだけの材料が揃わないのだ。

トールもそれを見越して最小限のリスクで蒔苗と関係を保ってきた。

 

鉄華団としては願っても無い助力であり、ギャラルホルンの変革についても半信半疑ながらも現実となればプラスに働くことは間違いない。

 

 

団長オルガ・イツカとしては賭けに近い決断だが、ビスケットにとっては成るべくして成る策だという確信めいた思いがあった。

それは事前に調べたトールの履歴と民からの絶大な支持によるもの。

民衆から『ヒーロー』として見られている彼ならば、必ず民衆受けを狙ってくると考えたのだ。

 

 

果たしてその予想は的中しており、三日という遅延こそあったものの。トール・ファルクはヴィーンゴールヴを中心に駆けずり回って集めた『同志』を纏めてエドモントンへと到達した。

 

ーー同時に、イズナリオの要請によって出兵した一軍も三日の遅延によって到着する。

マクギリスの妨害工作によって遅れに遅れたイズナリオの私兵と、鉄華団への復讐のためだけに部隊に加わったガエリオ、アインである。

 

本来、この戦いに参戦するはずだったボードウィン家の戦力はなぜか現れず、本隊の遅延と予定していた戦力の半分という事実にイズナリオが憤慨したのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『突然のご無礼、失礼する。

 

私はトール・イブン・ファルク。

此度は、我がギャラルホルンの法を乱す不届き者を裁きに参った次第。

アーヴラウの賢明なる識者諸君には暫しお時間をいただきたい』

 

昼下がり、エドモントン市街のディスプレイに流れるニュースの殆どが一斉に切り替わり一人の男が現れた。

次いで、広告を垂れ流す巨大ディスプレイも男の映像へと切り替わる。

 

突然の事態に市民は困惑し、アーヴラウの議会場も混乱に見舞われた。

 

『今回特別に何社かのTV局に協力を仰ぎ、このような形での“会見”を実現させてもらった。

 

単刀直入に言おう。

セブンスターズが一角、ファリド家当主イズナリオ・ファリド。貴様がアーヴラウのアンリ・フリュウ議員と手を組み、不当に経済圏の政治に介入している事実。これを私は糾弾しに来た』

 

その言葉の後、映像がまた切り替わり、次々に写真や映像が流れる。それらは全てイズナリオがアンリと密かに手を組み政治に介入している証拠となるものだった。

こんなものを市街地に垂れ流され、当然のごとくアンリ・フリュウは激昂した。

 

「な、なんなのこれは!? 今すぐ止めさせなさい!」

 

怒声を飛ばす彼女だが、その言葉に議会の者たちもどよめくばかり。その光景に彼女は自身の政治生命の終わりを予感した。

 

 

 

イズナリオもまた映像を目にしながら、手にした杖をへし折らんばかりに握りしめた。

 

「やってくれたな……トール・イブン・ファルク!!」

 

激しい怒りを発露すると同時に、彼は『どうやってこんな大それた事をしたのか』を冷静に推理した。

 

TV局への協力、それは言うほど簡単ではない。つまりはメディアの掌握ということなのだから当たり前だ。加えてトールはアーヴラウに対してパイプを持たない。

たとえ蒔苗を通じて事を成すとしても、亡命していた蒔苗にそれは難しく、イズナリオも当然、その辺りの根回しは行なっていた。

 

では、どういうことなのか。

 

 

根回しは確かにした。だが、それはアンリ・フリュウを通してのことであってそれを越える『力』の前には意味を成さない。とは言え、ギャラルホルン最高権力者たる自分の後ろ盾は絶大な影響力を持ち、逆らえる存在など地球圏に存在しない。

つまりはギャラルホルンの力たる『軍事力』。それに対抗できて初めて自分の根回しを打ち消すことができる。

しかし、そうするためにはやはり自分のようにセブンスターズと手を組むほかなく。加えて、その軍事力を効果的に運用できるだけの『パイプ』、影響力を持つ組織または権力者でなければーー

 

 

「報告します! 映像の発信源はグレート・スレーブ湖、北の湖上です!」

 

部下からの報告に、イズナリオはようやく解答を得た。

 

「!! レイレナードか!」

 

 

 

レイレナード社。

新興企業でありながら、超高密度水素吸蔵合金及びそれを燃料とする実用燃料電池の開発によって一気に勢力を拡大した大企業である。

エイハブ・リアクターが実現されたこの時代ではあるが、リアクターの欠点である通信障害は依然として問題となっており、通信障害を発生させない理想的なエネルギーは常に求められてきた。

 

そこに現れた、効果対質量体積比に非常に優れた強化実用燃料電池は圧倒的なシェアを誇り、同社の開発した専用冷却装置の費用を鑑みても、ギャラルホルンが独占しているエイハブ・リアクターよりコストパフォーマンスに優れていることも人気を後押ししていた。

 

そんなレイレナードが本社エグザウィルを構えるのが旧カナダ北部にあるグレート・スレーブ湖の湖上なのである。

 

アーヴラウ領内に居を構える以上、同経済圏への影響力は当然絶大なものとなっており、老舗ながら技術的な衰えを見せる同経済圏の主要企業テクノクラートと比較しても、その勢力の差は歴然。

実質的なアーヴラウのトップ企業となっていた。

 

 

 

「馬鹿な、レイレナードと奴に繋がりなど無かったはずだ!」

 

イズナリオも当然、そこは入念に調べていた。調べた上で、見抜けなかった。

 

政治家としては間違いなくトールより数段上の手腕を持つ自らの『政治的敗北』に、イズナリオは言葉を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

アーヴラウが混乱状態となっている頃、トールはすでにエドモントン郊外に到着していた。

 

手勢を率いて郊外に陣取る彼の一団は、MS数機と複数の『MT』によって構成されている。

 

愛機アーサソールのコックピットから顔を出し、トールはエドモントン市街地へと目を向けていた。

 

「生憎とライブ映像を送れるほど余裕はなかったのでな。……『本社』の連中にはあとで礼をせねばな」

 

ほくそ笑むトールの耳に付けられた通信機からマグニの声が響く。

 

『彼らからは言伝を預かってます。

“いずれ来たる『罪の清算』、それを成し遂げてくれるならば助力は惜しまない。故に礼は不要”……とのことです』

 

「相変わらず律儀な連中だ」

 

苦笑しながらトールは、彼らの言う『罪』を思い浮かべ、すぐに振り払った。

 

「……それは後で考えるべき事柄だな。

とりあえずは目の前のスケジュールからこなしていかねば」

 

ふと、時計に目をやり予定の時刻が来たことを確認した彼はコックピットに戻り、レーダーに視線を移した。

 

そこに、まるで示し合わせたかのように出現する複数の反応。

トールの部隊の背後から続々と現れる。

 

「マクギリスの報告通りだな。恐らくはイズナリオの私兵、そしてアインとガエリオか」

 

幼馴染の言う通り、ボードウィン家の戦力は訪れずイズナリオの直轄部隊のみが出現した。そのことに安堵しながらも、その中にもう一人の幼馴染の機体の反応があったことに少なからず複雑な心境を抱いていた。

 

予想はしていた、が、やはり落胆はある。

 

「……いや、それがお前の『選択』ならば、俺も全力でそれに応えよう」

 

呟き、部隊全体へと通信を繋げる。

 

「予定通りMS隊はここで敵の増援を迎撃する。MT部隊は先行しエドモントン市街への進入を阻むモビルワーカー隊を撃破せよ。

 

この戦いこそが『変革』を齎す大いなる一歩である。

腐敗せし『この世界』を変えるため、諸君らの健闘に期待する。

 

では、作戦開始」

 

雷神トールの言葉を受け、黒塗りの一団は一斉に行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちらMT部隊、予定通りこれから三隊に分かれて作戦を開始する』

 

「了解した。()()()たちはちゃんと鉄華団の方に回してやれよ」

 

通信機から聞こえる部下の言葉に冷静に応える。しかし隊長たる部下は疑問を感じたのか、少し言い淀んだあと質問を投げかけてきた。

 

『閣下、彼らはもう立派な兵士です。それを小僧共の寄せ集め集団にみすみす渡すなんて……本当に意味のあることなんですか?』

 

部下の言葉は最もだ。新入りと呼ばれている元スペースデブリの少年たちは、少し前にトールが海賊討伐をした際に保護した少年たちなのだが。

これまでと同じように、本人たちの意思を確認した上で、訓練所にぶち込みみっちりとしごき倒した新兵である。

 

隊長を務める彼は訓練所で教官役を請け負っていた人物でもあり、少年たちに愛着が湧いているであろうことはトールも承知していた。

 

「意味はある。鉄華団は確かに素人の集まりだがその熱意と『クーデリア』という駒は重要だ。

そして今後の歴史において『表舞台』に立ってもらう人材は是非とも欲しいからな。そのための先行投資が『それ』なのだ」

 

憮然とした態度のトールに、部下も諦めたのか小さく溜息を吐いて、

 

『分かりましたよ。でも、あいつらめっちゃ使える兵士になってますからね? あとで惜しかったなんて言わないでくださいよ!』

 

「うむ、惜しかった。……先に言っといたぞ、これでいいか」

 

『……』

 

ふざけているのか真面目なのか分からないトールの返答に、部下も沈黙した。

 

やがて何もなかったかのように気を取り直した二人は簡単に作戦の確認をして通信を切るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『レイヴマスカー』各機へ、これより我々はエドモントン市街入り口を封鎖するイズナリオ旗下のモビルワーカー隊を排除する。

なお、先に分かれたシャフター隊が鉄華団と合流次第こちらの救援に駆けつける。ブリーフィング通り彼らと協力して事にあたるのだ」

 

『了解!!』

 

通信機から返ってくる元気のいい返事に、隊長も笑みを浮かべた。

そして、アクセルを全開にし隊長機たるレイヴマスカーのブースト速度を加速させる。

 

「では、攻撃開始ぃ!」

 

 

 

 

 

 

 

一方、エドモントン市街入り口を守るギャラルホルン正規軍は穏やかな空気の中にあった。

 

「郊外に布陣して三日、ここまで何もしてこないとなると交戦無しに帰還できるかもな」

 

兵士の言葉に、同僚が苦笑交じりに同意する。

 

「違いねぇ。それにしてもバカな連中だぜ。ギャラルホルンの、それもトップに君臨する御方に真っ向から反抗しようなんて。

戦乙女だかなんだか知らねぇが、小娘一人担ぎ出したところで今更ギャラルホルンの体勢が揺らぐはずがないのにな」

 

二人して笑いながら、呑気に川の向こう側を眺める。その先には鉄華団が拠点とする建物があり、ここからは見えないもののもはや相手には戦意もないものと高を括っていた。

 

だが、次の瞬間その認識がまったくの誤りであることを彼らは知ることになる。

 

 

 

 

 

唐突に爆発し、炎を上げながら崩れ落ちるモビルワーカー。

 

「な、なにが起きた!?」

 

「わ、分からねぇ……っ、おい、アレを見ろ!!」

 

兵士の一人が叫び指を指す先。そこには真っ黒な塗装に統一された機械たちが疾駆する姿があった。

MSを小型化したような人型に、簡素なライフルとシールドを備える姿はエイハブリアクター搭載兵器に見える。が、その実態は実用型燃料電池で駆動するMT(マッスルトレーサー)と呼ばれる兵器群であり、中でも『レイヴマスカー』はリアクターを必要としない兵器の中でも総じてスペックの高い優秀な機体として主要企業に知られていた。

当然、ギャラルホルンの末端が知る由もないことだが。

 

パニックに陥ったギャラルホルンは各々が慌ててモビルワーカーに飛び乗って行く。が、それより早く接近したレイヴマスカーの一団が右手に装備した実弾ライフルを斉射した。

正確に動力部をぶち抜いた銃弾は、次々とモビルワーカーたちを爆散させていく。

 

運良くその攻撃を逃れた何機かが各方面に散らばる部隊に救援を要請しつつ、敵の方へと向き直り戦闘態勢を取った。

 

「やってくれたな貴様ら! 仲間の仇だ!」

 

咆哮し二門の砲塔から弾丸を打ち出す。

が、それらはシールドによって防がれ、防いだ機体の背後からぬるりと抜け出してきたもう一機のレイヴマスカーがライフルは放った。

 

「うわ、うわぁぁ!?」

 

コックピットに直撃したモビルワーカーは爆発と共に崩れ落ちた。

 

他にも全力疾走で逃げ惑うモビルワーカーたちに、レイヴマスカーはその長所の一つであるブーストを噴かし、彼らを上回る速度で逃げる背に追いすがる。

ロックオンと共に引き金が引かれ放たれたライフル弾がモビルワーカーを貫く。そして爆発。

これにより数分としないうちにエドモントン入り口の一つを封鎖していたモビルワーカー隊は全滅した。

 

「こちらの殲滅は完了だ、急ぎシャフター部隊に連絡しろ。モタモタしてると他所のモビルワーカーが寄ってくる」

 

周囲を警戒しながらレイヴマスカー隊隊長は述べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、トール率いるMS隊はイズナリオの部隊と間も無く接敵する頃合いだった。

 

 

 

 

 

「我が『血潮』に等しきレイレナードの助力、反乱分子の結束、リアクターを有さない機動兵器MT。

これだけ揃えたのだ。そう易々とイズナリオに見抜かれては困る」

 

コックピット内、モニターに映る地平線の向こうから小さな影が幾つも現れた。

それらは土煙を巻き上げながら地上を疾走している。

 

イズナリオの私兵部隊である。

地球圏において最大の権力を有するイズナリオ。当然、彼が動かすことのできる戦力というのは膨大だ。

……が、それ故に私は『ギャラルホルン内部の反乱分子を集めた』。つまり、ヤツが出兵要請を出す相手を奪ってやったのだ。

 

もちろん、全てを味方に引き込むことはできなかったが『中立の立場』へと追いやるという手もある。

その残りカスというのが今、こちらに向かってきているMS部隊ということになる。

 

ギャラルホルン最大戦力たるアリアンロッドに比べれば虫のような小部隊に過ぎない。

対して、こちらには警備隊から連れてきた精鋭と、マグニがいる。

 

負ける道理がない。

 

 

 

やがて、敵集団の先頭を走るMS、ガンダムタイプからLCSが照射された。目標はもちろん俺の機体、『アーサソール』である。

 

『トール』

 

「ガエリオか、久しい……いや、そういえばこの前宇宙で会ったか?」

 

脇役過ぎてあまり記憶に残っていないのだが……。

 

『真面目な話だ、聞いてくれ』

 

「……」

 

『お前が何を考えて、こんなことをしたのかは分からない。お前はいつだって俺たちよりもずっと先を歩いていたからな。

 

だからなぜとは問うまい。

 

だが、俺にも、譲れない信念というものがある』

 

いつになく真面目なガエリオだ。

 

「鉄華団のことか」

 

前世の記憶でも、奴は鉄華団の殲滅に執着していた。その末にアイン・ダルトンを生体ユニットにし、正義などカケラも見出せないイズナリオの手先となって無様な姿を晒したのだ。

 

だから坊やなんだよ。

 

 

とはいえ、幼馴染の想いを無碍には扱えん。

せめて、その想いには正面から当たるとしよう。

 

『……それもあるが、俺が一番超えたいのは()()()、トール』

 

「……なに?」

 

……と、思っていたが違ったらしい。

おかしいな、こいつは今、鉄華団にご執心のはず。

予定とは異なる展開だ。

 

『お前はいつも俺たちの誰よりも先を行った。才能や努力、そんなありふれた言葉では言い表せない、なにか『執念』のようなものをお前には感じていた。

おそらく、そこなんだろう。

 

俺とお前、決定的に違う人間へと分けたのは』

 

「何の話をしている?」

 

『……アイツが()()()()()にご執心なのを知っていながら、お前はアイツを支え続けた。その側で()()の道を支えていたんだ。

 

俺には到底できないことだ。

正直、羨ましいよ』

 

さっきから何の話をしているのか、と思っていたが。

なるほど、ようやく何を言いたいのか分かってきた。

だが、それは大きな勘違いを含んでいる。

 

「お前が思っているような仲ではないぞ、俺とアイツは。

……結局、俺は『華』にはなれず。さりとて道端の石ころになる勇気も無かった半端者だ。

 

さしずめ、『美しい花』に寄る『羽虫』のようなものだ」

 

つまり、俺がカルタと『そういう関係』にあるとでも言いたいのだろう。

だが、それは当然ながら間違いだ。

 

俺は俺であり、彼女は彼女の道を行く。それに彼女は未だにマクギリスへの想いを胸の内に秘めたままだ。

……ちゃんと秘められてるかは別として。

 

『そういうとこなんだよなぁ……』

 

急に軽い口調で溜息を吐かれた。いったい何だというのか。

こいつにだけは溜め息とか吐かれたくないのだが。

 

『要するに、俺はお前を倒してカルタを貰い受ける。そういう話だ』

 

どういう話だ。

 

だがガエリオの考えは分かった。

俺という後見人をここで倒せば、その座に自らを滑り込ませることができるとでも考えているのだろう。浅はかな男だ。

 

……まあ、そういうのは嫌いじゃない。

 

「男と男の戦いというやつだな?

いいだろう。

俺に勝てば、彼女をやる。

俺が勝てば、彼女はそのまま俺の『傀儡』としてトップに立つことだろう」

 

まあ、俺という後見人を失ったからとてカルタがガエリオに惚れる道理が見当たらないのだがな。

そもそも、俺が居なくなればセブンスターズでの立場が益々危うくなることだろう。

 

だが、これは『そういう話じゃない』。

 

俺は通信で部下に『攻撃許可』を出しながらガエリオへと声をかける。

 

「話は分かった。そして、司令官としての立場からして貴様らが我らに敵対する武装集団という判断も下した」

 

瞬間、無機質なシステム音声が『AMS』の起動を伝える。

同時に『いつもの精神負荷』がのし掛かる。

 

いつものように柔らかく、その激しい衝動を撫で回し、飼い慣らす。やがて俺の精神は戦闘に特化したものへと置換されていく。

 

「……御託はいい。かかってこい、ガエリオ」

 

『っ、トール!!』

 

叫び声と共に、先頭のガンダム。キマリスがブーストを全力で噴かしながら突撃してきた。

 

俺は冷静に部下たちに指示を与えつつ、突貫してくるキマリスを眺めた。

 

「クローズプラン、その第一幕の開演だ。精々、派手に踊り明かすとしよう」

 

 

 




MTっていうのは、ロボットものに出てくる『ヤラレメカ』のことだと捉えてくれれば問題ないです。

ガエリオの今後の展開について参考程度に

  • 歴史は変えられない、二代目謎仮面爆誕!
  • 謎の仮面騎士として随所で活躍
  • ヒミツ
  • 死亡。慈悲はない。
  • お好きに。
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