鉄血×AC カルタ・イシューを王に据える話   作:蒼天伍号

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いろいろとac用語が飛び交ってますが、知らなくても話の大筋には殆ど関わり無いので問題ないです。




マン・マシン・インターフェース

いつからか、奴を目で追っていた。

 

俺より年上で、何をやらせても平均以上の成果を叩きつけてくる天才肌……いや、『執念の塊』。

基本的に無駄と判断したことはせず、常に『意味のあること』に時間を費やす合理主義者。

 

その反面、幼馴染である俺たちに対して勉強会を開催するなど、妙に面倒見がいいところもあったりする。

……だが、アレは断じて『お茶会』などではなかったと言い張りたい。

 

いつしか奴は俺たちの中でも中心に、いや、主柱とも呼べる拠り所となっていた。

 

 

そんな奴だが、昔から『そういう性格』だったわけではない。

幼い頃はともにはしゃいで、親に叱られるまで遊び明かす日も珍しくないやんちゃだった。

それが、いつの間にかアイツは笑わなくなった。

 

常に眉間に皺を寄せ、何かに『怯え』、また『憤怒』し、『憐憫』を携えながら冷ややかな目で世界を見るようになった。

 

 

照れる話だが幼い時分には相応の『憧れ』として奴の背を追いかけることもあった。正直、今もそれは変わらない。

アイツはいつも誰よりも先を目指して、いつしか当たり前のように先を歩くようになった。

俺たちをその道に誘うように見えて、それでいて『自由』を与える。その言動はどこか『試している』ようで気持ちが悪かったのを覚えている。

ーーいっそ、手を差し伸べてその道に誘ってくれれば。俺は喜んでその手を取ったことだろう。

 

だというのに。

 

時が経つにつれて奴はどんどん遠くへ行き、やがて俺たちとの距離も決定的なまでに離れてしまった。

おまけに、今度はイズナリオ様に反旗を翻すという。

訳がわからない。火星への監査以来、訳のわからないこと続きだ。

 

いったい、お前は何がしたいんだトール。

 

 

 

 

 

 

ーーだから、カルタとか、宇宙ネズミとかは。正直、どうでもいい。

 

アイツが何を考えているかも分からない。

それがどうしようもなく悔しくて『悲しい』。

 

あの時、励ましてくれたのはなぜなのか。

こうしてアーヴラウを舞台に戦端を開いたのはなぜか。

排除すべきギャラルホルンの敵、革命の乙女に協力するのは何故なのか。

 

全ての疑問と感情がないまぜになって、『奴を打ち倒す』という明確な意思が生まれた。

 

 

だから、この戦いに確かな目的はない。

ただ、俺がお前への『怒り』を抑えられないだけなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トール……!!」

 

だが、現実とは上手くいかないものだ。

勢いよく突っ込んだはいいものの、奴の愛機『アーサソール』の操るミョルニルによって散々に打ちのめされ、俺のキマリスは地面に横転した。

 

ランスによる突撃、ライフルによる撹乱も通じず長所であった機動性も、アーサソールの各所に付けられたゴツいブースターの出力には敵わない。

そして圧倒的な技量。

 

伊達に圏外圏で海賊狩りをしていたわけではない。トールは間違いなく世界でも五指に入るパイロットであった。

 

昔は訓練用MSで模擬戦もした仲だが、ここまでの実力差は感じなかった。まあ、勝てたことは無かったし手加減も多分にしていたのだろう。

 

「それでも……お前の真意を知るまでは!!」

 

負けるわけにはいかない。

誰にも心を開かず、一人で全てを抱え込むお前に。

お前は倒してその分からず屋な頭を叩き直してやる。

 

「ぐあっ!」

 

しかし、やはり思い通りにはならない。

ランスによる突撃に見せかけ、急速に側面に回りランスを突き出す。だがそれも予測していたように容易に躱され、お返しにハンマーによる打撃が襲ってくる。

もはや機体は軋み、各所からエラーが出ている。

 

「トール、お前は!!」

 

『……そうか、お前は()を気にかけてくれているのだな』

 

不意に、通信から穏やかな声が聞こえてきた。

久しく聞いていない、アイツが『気を抜いている時の声』だ。

 

『お前の想いは理解した。だが、当然応えることはできない。

俺には俺の使命がある。

 

その邪魔をするのならお前とて容赦はできん』

 

……そんなことを言いつつ、これまで何度も俺を仕留めるチャンスがあったにも関わらず手を下していない。

そういうところだ、俺が気にくわないのは。

 

迷っているのなら言ってくれればいい。悩んでいるなら俺にもいって欲しい。

なぜ、()()()()()()()()()()()()()()

 

俺では力不足だからか。だが、俺もお前にはこれまでずっと助けられてきた。その恩返しくらいはしたかった。

 

お前が本当はずっと優しい人間であることを俺は知っている。

『ノブレスオブリージュ、力があるのならそれに見合う働きをするべきだ』

そう言って海賊退治を始めた頃のお前は本気で人を救おうとしていた。

口では『円滑な統治のためだ』と冷たいことを言いつつ、真に困っている人々を見捨てることはしなかった。

 

 

「ぐっ!」

 

ハンマーによる打撃が胴体に直撃した。コクピット内が振動し身体が、脳が激しい揺れに痛む。衝撃によって内臓のどれかが破損し、口から血を吐き出した。

 

『……お前は確かに俺の友だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、変わらずお前の素直な心に助けられた。

感謝している、ガエリオ。だから安心して敗れるがいい』

 

「トー……ル」

 

もはや意識も薄れてきた。

結局、さしたる損傷も与えられずして俺の機体は大破した。戦闘の衝撃で肉体も至る所が損傷し指一本動かせない。

 

教えてくれ、お前はーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

キマリスへと振り下ろしたハンマーを、ゆっくりと持ち上げ肩に乗せる。胴体部分、特にコクピットが大きく凹んだキマリスはもはや機能停止状態であり戦闘続行は不可能と見て取れる。

 

しかし、ここで確認を怠ったから正史のマクギリスは最期にガエリオに敗れることになる。まあ、俺の場合は疚しいことはないしガエリオに遅れを取るほどヤワじゃない。

が、俺はそのような慢心はしない。排除すべきは排除し、塵一つ残してはおかない。

……アルミリアには悪いが、お前の兄はきっちりと消させてもらう。

 

 

 

その時、レーダーに新たなリアクター反応が検知された。

同時に、戦場の上空から大きな影が落下してくる。

 

「おでましか」

 

このタイミングとなれば十中八九『アイン』だろう。

さてさて、この世界の彼は一体どのような姿になっているのか。或いは正史通りのサイコグレイズか。

なんであれ屠ることに違いはない。

 

 

「……なに?」

 

だが、どの予想とも異なる姿の機体が目の前に降り立った。

いや、降り立つという表現は正しくない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『ああ、ガエリオ特務三佐。ご到着が遅れてしまい申し訳ありません。お怪我はありませんか?』

 

機体からスピーカーのようなものを通して音声が流れてくる。しかし発言はどこかズレていて搭乗者がまともな思考を持っていないことが察せられた。

 

お怪我も何も、機体ごとぺしゃんこなガエリオに話しかけているのだ、正気とは思えない。

 

だが、それよりも、俺は現れたこの機体のことをよく知っていることが問題だった。

黄色をベースとしたカラーリングに、人型から乖離した形状。『エビのように見える姿』は前世でプレイしたゲームで見慣れたシルエットだ。

 

()()()()()()だと……?」

 

厳密には『プロト・ファンタズマ』。

グレイズアインと同じく、搭乗者を機体と完全に融合させることで真価を発揮する狂気の兵器。

しかし本来であればこの世界、つまりはガンダムのいる世界とは何ら関係がない『AC絡み』の機体もとい『計画』の産物であり、この登場は俺の予想に反していた。

 

いずれにしろ、ファンタズマがここにいるという事実は変えようがなく、声からして乗っているのがアインである以上はここで倒すしかない。

 

だが、と俺は改めて機体の異様さを鑑みる。

 

『宇宙ネズミは……どうやらここにはいないようだ。特務三佐、私は少し辺りを見てきます。体調が優れないようでしたらここでお休みになっていてくださいね』

 

およそ俺の知るファンタズマとは異なる姿なのだ。

本来、プロトタイプには付いていない大型ミサイル発射管、プラズマキャノンが備えられていた場所には大型の実弾砲台。マニピュレーターであった腕部は人の五指を備えたものに置換され、側面には大型のパイルバンカーがそれぞれ装着されている。

そしてなにより『デカイ』。

 

通常のMSと比較しても実にニ倍以上の全長を持ち、それでありながら、キマリスの周囲をふわふわと移動する速度はMSと比較しても遜色ない。移動に際しての風圧だけでも武器になり得る異常さである。

 

「どうすれば、こうなる……」

 

なぜファンタズマにアインが『載っている』のか。そして誰がこんなものを作ったのか。

 

予想外過ぎる事態に、流石の俺も一瞬思考停止した。

 

周りではすでに他のMSたちが戦闘を始めており、突如として飛来したこの異常な物体に皆目を奪われていた。

 

やがて、ピタリと停止したファンタズマはスピーカーから怨嗟に満ちた声を発した。

 

『この反応……ああ、やっと見つけたぞ、宇宙ネズミ!!

クランク二尉を殺した憎きガンダム、クランク二尉の機体を辱めた憎き宇宙ネズミ!!

許さない、許さない、許さない!!!!』

 

最後に大きな叫び声をあげた彼は、上空へと急上昇し、ある方角へと向けて機体を飛ばした。

 

「いかんな、それはいかん。そちらにはクーデリアがいる」

 

そして、オルガ・イツカ。ここでやらせるわけにはいかない。

俺は機体のブースターを最大出力にして、飛び去ったファンタズマ擬きの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、鉄華団のMS部隊も後方から現れた敵MS集団との戦闘に突入していた。

トールの元に現れた数とほぼ同数の小部隊である。

 

彼らはマクギリスの妨害工作によって遅延した部隊の一つであり、先行したガエリオたちから僅かに遅れる形で鉄華団の拠点近くへと行軍していたのだ。

 

「ようやくあいつが来たっていうのに……奴らまで追いついてくるとはな」

 

「間が悪かった、としか言いようがないね。とはいえ敵もそれほど多くはない。撃破次第、トールさんたちの方に向かわせよう」

 

現在迎撃に出ているのは、鉄華団のメンバーたる三日月、昭弘、シノ。そしてタービンズのパイロットであるラフタとアジーである。いずれも並みのパイロットを超える実力者であり、鉄華団メンバーの方は昭弘以外二人とも阿頼耶識システムを施術済みであることもあって互角以上の戦いを繰り広げていた。

 

そして、MS部隊を残してオルガ以下主要人物たちはモビルワーカーの部隊に護衛されながらエドモントン入りを目指して車を走らせていた。

オルガは鉄華団メンバーの一人タカキの運転するモビルワーカーに乗り、蒔苗を乗せた車を先導する形で前を走っていた。

ちなみに車を運転しているのは鉄華団の料理長である幼女アトラである。

 

 

 

『こちら地球圏独立警備隊副隊長マグニニ佐(にさ)だ。鉄華団、聞こえるか?』

 

モビルワーカーに揺られていたオルガの耳に通信機から若い男性の声が届いた。

独立警備隊とは、確かトールが地球圏で活動する際に動かす部隊であったとオルガは思い出す。

 

咄嗟に通信機のスイッチを押し返事をする。

 

「ああ、聞こえてる。鉄華団団長オルガ・イツカだ」

 

『団長……好都合だ。手短に、こちらの作戦プランを伝える』

 

一拍おいてマグニは淡々と作戦を語る。

 

『まず、鉄華団側にあるゲートを目指してくれ。防衛に配備されていたワーカーはこちらの機動兵器部隊で殲滅済みだ。

そして、おそらくは向かう途上で二足歩行の兵器部隊と鉢会うだろう。そいつらは味方だ。合流次第そちらの戦力として使ってくれて構わない、と閣下からのお達しだ。まあ、報酬の先払いとでも思っておけ。

 

ゲートを抜けたら、そちらのデバイスに送信するルートに沿って進め。それが最短ルートになる。

なお、街中に配備されたワーカー部隊はこちらの機動兵器部隊で陽動、もしくは殲滅する。安心して会議場に向かってくれ。

 

こちらからは以上だ。何か質問はあるか?』

 

立て続けに多くの情報を発せられしばし混乱したオルガとビスケットだったが、すぐに内容を理解する。

 

「詳しく話す時間はないんだろ? 悔しいがあんたらを信用する他に手はない……信じて、いいんだな?」

 

『我が主君に誓って。

……では、諸君の健闘を祈る』

 

その言葉を最後に通信はぶつりと途切れた。

同時にオルガの持つ携帯用デバイスに詳細なルート情報がマップと共に送られる。

 

「手際がいいな……。

タカキ、このルートで走ってくれ」

 

モビルワーカーへと直接データを送ったオルガはそう声をかけ、再び前方を見据える。

前方、橋の向こうのゲート、そこには残骸となったギャラルホルン製のモビルワーカーがゴミのように散乱していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで3つ」

 

無表情で乗機バルバトスのメイスを振るう三日月。

コクピット付近に直撃したグレイズはひしゃげたまま地面に倒れ伏した。

 

「おらっ!」

 

少し離れた場所では、昭弘・アルトランドの乗るガンダム・グシオンリベイクが、手に持つ『大砲』を撃ち放った。

 

「っ!?」

 

着弾と同時に巻き起こる大爆発。直撃したグレイズは着弾部分を消し飛ばし、バラバラになって自由落下する。

当然、爆風に巻き込まれた他のグレイズも無傷ではなく、ナノラミネートアーマーを剥がされながら大きく吹き飛ばされていた。

 

地面をゴロゴロと転がり、起き上がろうとしたグレイズの一機を真上から斧で叩き潰しながら、漏影に乗るラフタが声をあげた。

 

『相変わらずエグい威力だよね、ソレ』

 

「ああ……撃つ度に、少しだが敵に同情しちまう」

 

撃った本人も気まずそうにそう答えた。

 

彼がグシオンの右手に装備しているのは『グレネードランチャー』という名称で送られた『手持ちのカノン砲』である。

例の孤島から発つ際に、蒔苗の旧知であるという『アリサワ』なる人物から唐突に送られたものであり、蒔苗曰く「若からの餞別」だとか。

 

ーー鉄華団の与り知らぬ話ではあるが、現在、オセアニア連邦内に本社を持つ日系企業『有澤重工』とアーヴラウは微妙な関係にあり、表立って蒔苗を支援できない『有澤社長』自らが部下を使って極秘に送らせた兵装である。

名を『SAKUNAMI』。

巨大な砲塔から放たれた高速の榴弾が敵陣を木っ端微塵に吹き飛ばす姿は同社のファンからすればごく当たり前の光景であり、それでいて感涙を誘う情景とも言われているのは全くの余談である。

 

 

いずれにしろ、この腕部用大砲を戦闘開始直後にぶっ放したおかげで戦況は終始鉄華団側に傾いたまま、すでに残敵僅かとなっていた。

 

「残りはあたしらだけでも十分だ。あんたらはセブンスターズの坊ちゃんの援護に行ってあげな」

 

「そうそう、あんまり気は進まないけどダーリンから念押しされてるからねぇ」

 

アジー、ラフタのタービンズ勢に促され三日月たちは残敵を尻目に、アーサソールのリアクター反応がある地点まで機体を走らせた。

 

と、その時だった。

 

 

 

『宇宙ネズミィィィィ!!!!』

 

「何事っ!?」

 

突如、上空から大音量のスピーカーで怒声が轟いた。

驚いたラフタが咄嗟に上へとメインカメラを動かす。

 

逆光により詳細は把握できないものの、そのシルエットがあまりにも大き過ぎることを即座に理解する。

そしてその影がどんどん大きくなり、近くに着地しようとしていることに気付いたラフタはすぐに機体を退がらせ、注意深く影をモニターに収め続ける。

 

やがて、地面スレスレの場所でふわりと浮き上がった影はその全身を鉄華団の面々に晒した。

 

「なに、あのでかいの……?」

 

「見たことない機体……いや、アレはモビルスーツなのか?」

 

数多の戦場を渡り歩いてきたタービンズの二人も現れた異形の兵器にしばし混乱した。

当然、鉄華団の三人も例外ではなくあまりにも人型から乖離したソレの姿に状況把握が遅れた。

 

「……エビ?」

 

昭弘の目には確かに『エビ』という海産物に似た兵器が写っている。

 

「エビ? エビってあれか? 蒔苗の爺さんが取り寄せてたあの変な匂いの。でもアレは赤いやつだろ」

 

「いや、咄嗟に浮かんだだけだ。そう、突っ込むな」

 

「いやいや、でもアレ黄色いしなんか不味そうなーー」

 

昭弘の言葉にシノが反応し、しばらくエビ談義が始まる。

 

それらを他所に、三日月だけは現れた異形が敵であることを即座に理解していた。同時に、その異形が『かつてない強敵』であるという直感めいた考えが脳内を駆け巡った。

 

「バルバトス」

 

呟くと同時に、三日月の駆るバルバトスが異形の兵器へと突撃した。

ブースター最大出力で急速に対象へと距離を詰めた三日月はそのまま手のメイスをフルスイングした。

 

が。

 

「っ!?」

 

つい先ほどまで視界に捉えていた異形は、驚異的な反応速度でアクセルターンを決め、バルバトスの背後へと回ったのだ。

そして、そのまま機体前方下部に備え付けられた巨大な砲塔を震わせた。

 

間一髪、三日月は機体の胴体を捻ることで砲弾を躱した。だが、至近距離に着弾した砲弾は即座に炸裂、大規模な爆発を引き起こした。

 

「ぐっ!!」

 

爆風によりバルバトスの機体全体が押し退けられ、搭乗者の身体に強烈なGが襲い掛かる。

 

なんとか体勢を立て直したバルバトスの目の前に、あの異形が姿をあらわす。

 

「やらせるか!」

 

異形がマニピュレータを突き出す直前、先ほどまでエビについて議論をしていた昭弘が左手のロングレンジライフルは放った。続けてシノの乗る流星号がライフルを連射する。

 

しかし、異形は巨体を器用に動かしその全てを避けきる。

 

「あの反応、阿頼耶識か!?」

 

あり得ない反射速度を目に、アジーはその事実に気づく。が、その直上に、またも凄まじい速度で移動した異形兵器が迫った。

 

「っ!!」

 

機体を動かす暇もなく、アジーの漏影に向けて巨大なマニピュレーターが突き出された。

 

ぐしゃり。

頭部から胸部にかけてを『鋭い鉤爪によって形作られた手刀』によって削ぎ落とされた漏影は、力なく地面に倒れた。

 

「アジー!?」

 

叫んだラフタの漏影にも、再び高速で迫った異形が手刀を突き出す。

 

ぐしゃり。

今度は胴体を貫き、そのまま機体を持ち上げるようにして腕を上げた。

 

「姐さん!!」

 

勝ち誇ったように手刀で貫いた漏影を掲げる異形に、昭弘が銃撃を浴びせる。

しかし、それらは『機体と一体化したアイン』の反応速度を捉えるには至らず。漏影を投げ捨て、ジグザグに移動しながら接近する異形に傷一つ付けることができない。

 

「くっ!」

 

そこへ、三日月のバルバトスがメイスを振るいながら駆けつけた。

正確に、異形の頭部を狙ったフルスイングに、アインも咄嗟に距離を取った。

 

「すまねぇ、三日月」

 

「まだ行ける? 無理そうなら……オレがやる」

 

短く告げた三日月が再度、バルバトスを発進させる。

その様を見ながら異形兵器につけられたスピーカーからアインが声を出した。

 

『分かる……考えなくても分かる。これがそうなんだ。これが。これこそが!

オレが本来あるべき姿!!』

 

叫びながら、異形兵器『ファンタズマ』を発進させたアインは、正面から突っ込んでくるバルバトス目掛けて両手のマニピュレーターを『回転』させ始め、突き出す。

 

鈍い金属音と共にメイスと回転するマニピュレーターが衝突する。一瞬、互角の状態で拮抗した両者だが、すぐにアインの側が押し始めた。

 

『死ねぇぇぇ!!!!』

 

「っ!!」

 

メイスを弾かれ、機体各所にドリルの直撃を受けたバルバトスは装甲を削られながら後方へと錐揉み回転で弾き飛ばされた。

さらに追い討ちをかけるようにファンタズマ上部に付けられた巨大な発射管から大型ミサイルが二つ、打ち上げられた。

 

それらはバルバトスが落下した地点に着弾し、大きな爆炎と衝撃をまき散らした。

 

『終わりだ!!』

 

駄目押しとばかりに、今度は機体下部の大砲を発射。

着弾地点は爆煙に包まれた。

 

「三日月ィィ!?」

 

過剰な攻撃に注意を逸らしてしまった流星号、それをアインは見逃さず。しかしその機体を見た彼はさらなる怒りに打ち震えた。

 

『クランク二尉の機体をそのような……おのれぇぇぇ!!』

 

流星号へと狙いを定めたファンタズマは、接近と同時にその両腕を手刀にて斬り落とす。そのまま、腕を無くした流星号の胴体を巨大なマニピュレーターで鷲掴みにした。

 

『やった、やりましたよクランク二尉! 遂に貴方の機体を取り戻しました!!』

 

ぎゅっ、と握りしめながら流星号を天高く掲げる。

そのコクピットは大破し、パイロットたるシノも虫の息となっていた。

しかし、正気を失ったアインにとっては全てどうでもいいことだ。

 

「っの野郎!!」

 

残ったグシオンはライフルをファンタズマ目掛けて撃ち尽くし、腰のバトルアックスを装備し、突撃した。

 

銃撃を避けながら、グシオンの接近に気づいたアインは、流星号を掴んだままもう片方のマニピュレーターを回転させる。

 

突撃するグシオンの肩へとドリルを打ち出す。

 

「かっ!?」

 

一般パイロットは言わずもがな、広く普及する阿頼耶識システムでも捉えられない高速の一撃は、グシオン左肩部から胸部にかけてを刺し貫いた。

その衝撃はコクピット内にも届き、破損した機材によって昭弘も重傷を負った。

 

『見える。奴らが何をしようとしているのか、どう動けばいいのか。考えるまでもない。ただ、“反応”するだけで事足りる』

 

アインが優越感たっぷりに語るように、彼に施された『リンクス処置』は特殊なものだった。

 

まず、使い物にならない下半身を切除。AMS統合制御体との完全リンクに邪魔な両腕を切断。コクピット内に固定し、文字通り全身を機体と直接繋ぐことにより、本来のAMS適性を遥かに超えた反応速度を実現させたのだ。

奇しくもそれは正史においてアインが施された阿頼耶識手術と酷似したものであり、『機体と完全融合』という事実はもとより、結果として反応速度はグレイズアインに搭乗した場合とさして変わらないものとなった。

 

ただ、異なるのは機体性能である。

 

ハイスペックながら急造品であるグレイズアインと比較し、アクアビット・モスクワ支社が極秘で開発していた機体であるファンタズマは当初から『機体とパイロットの同一化』をコンセプトに含んでおり、『機体との合一』という処置においては、このファンタズマの方が圧倒的に相性が良かったのである。

 

加えて、AMSという技術そのものがマン・マシン・インターフェースというカテゴリにおいて限りなく完成形に近いこともあり、ここに『恐るべき悪魔』が誕生してしまったのだ。

 

 

『ははは……感じたことのない高揚感だ。力が、やる気が満ち溢れてくる。

これが、“ファンタズマ”か』

 

アインは『思い通り、以上の速さで動く』ファンタズマの性能に酔いしれていた。

ーーこの正気を無くした様子から分かる通り、この技術には未だ欠点が多く、先のガエリオとの通信でグローイが語った『実戦段階』というのは厳密には『嘘』である。

例として、機体と()()()()()()()することにより()()()()()()()が発生し、正常な状況判断が下せなくなるというものがある。それが今のアインであり、要するに『脳みそがぐちゃぐちゃになって、意識がめちゃくちゃになったまま考えがまとまらない』状態なのである。

 

「ぞ、増援か?」

 

「何にせよ、助かった。礼をーー」

 

戦いがひと段落したことで、戦場の隅っこで縮こまっていたギャラルホルン残存部隊がポツリポツリとファンタズマの方へと集まってきた。

 

その周囲にはこれまで猛威を振るっていた鉄華団の機体が無惨な姿で転がっている。

それらを見ながらギャラルホルン兵はほくそ笑んだ。

 

 

 

 

だが、次の瞬間。巨大な砲塔が自らへと向けられたことでピシリとその顔が固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ガエリオ特務三佐、見てください。宇宙ネズミどもが……クク、ゴミのようだ。

クランク二尉、お喜びください。貴方の機体は確かに取り戻しましたよ。すぐにあの不粋な落書きを拭き取ってあげますね。

 

ああ、私はアナタのイシを継ぎ、ツギ……ギギギギギギギギギギ』

 

支離滅裂な言動と共に時折機体を震わせるアイン、その近くにはバラバラになったグレイズが散らばっており、それに紛れるようにして鉄華団の機体が転がる。

地面は抉れ、硝煙と鉄の匂い中でただ一人佇むその光景はまさしく地獄そのものであった。

 

 

 

 

 

 




補足

【プロト・ファンタズマ】
〔スペック〕
カテゴリ:次世代戦闘リグ試作機
全長:約40m
本体重量:?
動力:エイハブ・リアクター[T(タウ)
装甲材質:ナノラミネートアーマー
開発組織:アクアビット社モスクワ支社
所属:ギャラルホルン?
パイロット:アイン・ダルトン

〔装備〕
『大型榴弾砲バーデンヴァイラー』
機体下部に取り付けられた大型砲台。着弾と同時に広範囲に爆発と爆風を撒き散らす。
要するにガチタンのグレ。

『大型垂直ミサイル』
アクアビット社が頑張って開発してみた初の実弾ミサイル兵器。「垂直コジマと同じ要領なのだろう?」とは開発者の言。ただし飛行速度は遅い。

『高硬度特殊合金製マニピュレーター』
鉤爪状の五指マニピュレーター。刃の向きを揃えて手刀にすることもできる。でもナノラミネートアーマーは容易に切り裂けないので実際は力づくで引き千切っている。

『KWB-SBR44:P』
両腕部に常備された射突ブレード。パイルバンカー。
旧時代の遺跡から発掘されたオリジナルを基に復元されたレプリカ。

『高出力ブースター』
浮上用大型ブースター、後部ブースターのほか機体各所に小型ブースターが備え付けられている。

【備考】
ぼくのかんがえたさいきょうのアインくんせんようファンタズマ。
外見は基本、プロトファンタズマ。分からなかったら『ファンタズマ ac』でググると出てくる黄色いヤツのこと。
全部考えてから格闘戦のことを思い出した。

異常にデカイのは中身のせい。

アイン「これで勝つる」


なお、脳みそ云々はACPPでも詳しく話してくれなかった(いつものフロム)のでグレイズアイン製に。
安心安全の生体ユニット仕様です。

ガエリオの今後の展開について参考程度に

  • 歴史は変えられない、二代目謎仮面爆誕!
  • 謎の仮面騎士として随所で活躍
  • ヒミツ
  • 死亡。慈悲はない。
  • お好きに。
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