鉄血×AC カルタ・イシューを王に据える話   作:蒼天伍号

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エピローグってのは第一期の終わりってことです。
そして、また新たなキャラが増えます。


エピローグ

エドモントンにおいて開かれた『ファリド派とファルク派の抗争』は電撃戦の末に決着を見た。

その戦いの最中で活躍したバルバトスの姿は話題となり、鉄華団は正史と同様に勇名を轟かせた。

また、『革命の乙女』を地球まで守り抜いた功績はそれなりに評価され、終戦から二日後には鉄華団本部に多くの問い合わせがかかることになる。

 

 

 

そして、一連の騒動において『諸悪の根源』とされたイズナリオ・ファリドはマクギリスの手引きにより『亡命』。表舞台から姿を消すことになる。

 

また、戦いに使用された『謎の巨大兵器』の脅威は市民の心にトラウマを植え付け、ファリド派ないしギャラルホルンへの不信感が世界規模で拡散することとなる。

さらに、巨大兵器に関係すると『噂される』エドモントン近郊の『特別汚染区域』の存在もその流れを後押ししていた。

 

結果、本件に関わりないセブンスターズ各家や関連組織の評判は低迷し、逆に『汚職に塗れたファリドと戦った』ファルク家の評判が高まるという奇妙な事態を引き起こしていた。

 

 

 

が。

世論の大半は『ギャラルホルン全体への懐疑心』に集約されており、ファルクもその余波を受けているのは確かだった。

 

 

というのも、現当主であるトール・イブン・ファルクが()()()()()()()()()()()()()()()()()からである。

 

大事件の首謀者の一人でありながら、事件の収束後一向に姿を見せない事実は少なからず民衆の不信感を煽る結果となる。

 

 

 

 

そして、ちょうど十日を過ぎたところで件の『反逆者』はようやく意識を取り戻すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いかん」

 

ああ、非常に遺憾である。

 

アクアビットマンと死闘を演じて、気がついたら十日が過ぎていた。とんでもない寝坊である。

全ての予定が狂ってしまった。

 

「くそっ……」

 

ニュース画面を開いていたタブレット端末を投げ捨て、ベッドから身を起こす。

辺りを見る限りはどうやらファルクの管轄下にある施設のようだ。

 

とりあえず、状況確認をするべくベッド脇に備え付けられた呼び出しボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やってきたのは俺も良く知る『身内の研究者』だった。

彼に確認したところ、やはりここは『我がファルクが秘密裏に運営する施設』であった。

 

エイハブ・リアクター及びリアクター搭載兵器、実用燃料電池の管理・研究、そして()()()()()に関する研究を担当する研究所である。

アーヴラウは北部、レイレナード本社に程近いグレート・スレーブ湖東岸に位置する。

 

その配置上、レイレナードから派遣された研究者も多く、『機動兵器開発』に長ける同社の特性を存分に発揮し、我がファルクの研究者と共に『コジマ』及び『AC』の開発に貢献してもらっている。

 

そんな彼らの施設には、仕事の関係上コジマ汚染を『治療』する設備も置かれている。

俺は今、その設備が配置されたエリアに入居させられているようだ。

 

 

 

「汚染レベルは()()できる範囲です。ですが、機体の状態はとても修理に回せるものではなく……」

 

申し訳なさそうに告げる研究者を手で制す。

 

「良い、元々処理に困っていた機体だ。あの戦闘で使い潰せたのならば満足できる結果と言える」

 

腐敗したギャラルホルンの手先との死闘の末に大破、劇的な幕引きを演出することができたと思う。

 

これで俺自身が奇跡の生還を早々に見せることが出来ていれば計画は順調に進められた。

世の中、上手くいかないものだ。

 

「ですが、コジマ汚染に関しては少々妙な反応が見受けられまして」

 

「妙?」

 

「こちらがデータになります」

 

そう言って彼が手渡して来たのは数枚の資料の束。

中を拝見していくと、彼が何を言いたいのかを理解した。

 

「確かに……妙だな」

 

「ええ、()()()()()()()です。が、コジマ粒子に関しては我々の研究も途上に過ぎません。これも貴重なデータとして今後の研究に活用させてもらいます」

 

「そうしてくれ」

 

資料を返しつつ応える。

『奇妙なデータ』は気になるものの、今考えるべきではないと頭の片隅に追いやる。

 

 

 

その後、簡単な検査を済ませた俺はいつもの黒コートを羽織り治療区画を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渡り廊下を越えると、見慣れた研究施設の光景が視界に入る。この施設はその用途ごとに細かく区画整理されておりここは俺も度々訪れている『コジマ研究』を担当する区画である。それら用途分けと多岐に渡る研究内容故に必然、施設は巨大なものとなり広大な土地を占有する費用、施設維持、研究資金諸々を合わせた経費は莫大なものとなる。

が、我がファルクの財力をもってすればそれを賄うのは造作もない。加えて、『カラードに属する企業との提携』によって何割かの費用は削減されている。

 

 

しばらく歩くと無機質な白壁が続く廊下から、唐突に全面ガラスが片面に現れる。

 

ガラスの外には、一階層下まで突き抜けた広い空間が広がりそこには数多の機材と複数の『機動兵器』が置かれている。

それらに群がる研究者たちは皆一様に『特殊な防護服』に身を包んでいた。

 

 

 

俺もそのエリアに立ち寄るべく入り口に向かうと、門番のように自動扉の両脇に立つ二人の警備員に声をかけられる。

 

「これはファルク公、お元気そうで何よりです」

 

「お身体は大丈夫なのですか?」

 

厳格そうな見た目の割に心底心配したような声音で語りかけてくる。

 

「問題ない。そも、このような区画に寿司詰めとなっている貴殿らほどではないさ」

 

「ご最もで。まあ、我らも少ない余生を持て余した身、今更な話です」

 

笑って応える警備員の言う通り、この区画を警備する人員は過酷な圏外圏で傭兵やら有害物質を取り扱う工場に勤めていた人間ばかりである。既に肉体の限界を悟っている連中ゆえにこのコジマ汚染エリアで働くことを承諾してくれた。

 

「世話をかけるな」

 

そんな警備員たちの肩を優しく叩きつつ俺は扉を抜ける。

その先にはまた自動扉。それと壁にかけられた防護服が見える。

 

手短に防護服を纏った俺は扉を抜けていよいよコジマ研究区画へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

研究エリア内では皆、一心不乱に作業に打ち込んでいる。そもそもコジマなどという鬼畜な物質に興味を示す『狂人』たちだ。汚染など全く気にしていないのだろう。

 

そうしてしばらくエリアを見て回っていると、一人の研究員が声をかけてきた。

 

「閣下!!」

 

が、研究員と思った防護服の男性は、俺を見つけるなり聞き慣れた声を発して駆け寄ってくる。

どうやらマグニのようだ。

 

「十日ぶりだなマグニ」

 

「……その様子なら、全然平気そうですね。なんか、心配して損した気分です」

 

失礼なやつだ。

が、まあそんなことはいい。

 

「マグニ、十日の間に起こったことを手短に説明してくれ」

 

「はい」

 

 

奴が話したのはすでにタブレットで検索して知ったことが大半だった。

鉄華団はとっくのとうに火星への帰路につき。

クーデリアも蒔苗との交渉を終えていた。

 

「……ただ、モージの野郎があのお嬢さんに付いていくつもりらしいんですよ」

 

まあ、そうなるだろうな。孤島でのやりとりを見ていれば予想がつく。

 

「いいんじゃないか?」

 

「ちょ、そんなテキトーな……」

 

マグニはどうやら『好き勝手』しているモージに我慢ならないようだが、そもそもそう命じたのは俺だ。

計画に支障が出ないから許している。

 

「問題ない。それに、クーデリアの護衛を自ら引き受けてくれるなら万々歳だ。鉄華団の方はもう護衛の必要はないだろう」

 

ようやっとワンクールが終わった。同時に鉄華団の方もだいぶ逞しくなったしもはや武力面の手助けは不要だろう。あとは勝手にこちらの計画に沿って動いてくれるはずだ。

彼らならば十分、『エインヘルヤル』としての役割を任せられるだろうしな。

 

そこまで考えて、ふと思い出す。

 

「そうだ、鉄華団の方にはまだ少し用があったのだった」

 

「用、ですか?」

 

此度の戦闘において彼らと俺との同盟は終わりとなった。それは初めから取り決めてあったことだ。あくまでテイワズ傘下の組織たる彼らがいつまでもセブンスターズと同盟を結ぶのは危険だと俺の方で判断した結果である。

だが、それだけではいずれ彼らはテイワズ内のゴタゴタに巻き込まれて不本意な出血を強いられることになるだろう。俺としても彼らに『エインヘルヤル』の役目を受けてもらう前に疲弊してもらっては困る。

 

なので、もう少し手助けをしてやろうというわけだ。

 

 

「マグニ、奴らの本部への連絡手段はあるな?」

 

「ええ、といっても公式の回線になりますが」

 

「構わん。……まあ、まだ彼らも帰投してはいないはずだ、必要な時に改めて指示を出す」

 

「了解です」

 

あとは……そうだ、テイワズ関連でまだやることがあった。

 

「JPTトラストの動向はどうなっている?」

 

「異常なし、いつも通りです。潜り込ませてある『諜報員』の方も無事に溶け込めているようで」

 

なら、いい。

彼らにはマクマード『排除』のために道化を演じてもらう必要がある。その上でテイワズ内の不安材料を一気に炙り出し一掃する。

 

一時的に勢力は衰退するだろうが、その頃には『海賊』たちの方も『静か』になっている計画だ。問題はないだろう。

そも、圏外圏の混乱具合は末期でありいくらテイワズとはいえ、一時的な衰退ごときでどうにかなるものでもない。

 

ただ、唯一警戒すべきは『リリアナ』か。

 

 

当然、『ファンタズマ騒動』の首謀者への対処も考えねばならないし、当初計画していた『エドモントン後のゴタゴタの処理』に関しても動かねばならない。

おそらくはここが正念場だ、気を引き締めてあたるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マグニへと諸々の指示を与えた俺は、次に『生物研究区画』へと足を運んだ。

このエリアは主に『機動兵器による人体への影響』や『肉体の強化』、『人造生命』に関する研究を担当している。

最も、大元となる研究所は別にあるためここは機動兵器との相性を主に研究している場所なわけだが。

 

 

「くぎゅっ!?」

 

エリアに入るなり、突然、白衣姿の小柄な女性が俺に抱きついてきた。思わず変な声が出てしまった気がするが気にしたら負けだ。

 

「ダーリン! 会いたかったわ!! 意識がないって聞いて心配してたのよ!?」

 

捲し立てるように声をかけてくる彼女。癖っ毛の赤髪に金の瞳を持つ女性。このエリアの重要な研究員であり、主に宇宙物理学に精通しながら他の分野にも優れた才覚を発揮する才女。

俺がスカウトした天才の一人、『ミーナ・カーマイン』である。

 

「ミーナ、公共の場でやめてくれないか。皆も困っている」

 

ちらりと彼女の後方に目を向ければ、彼女の部下と思しき研究員たちが軒並み気まずそうな顔をしている。

 

「あら、そんなの気にしなくていいのよ、貴方は。……うふふ、実は今夜の予定は空けてあるの。もちろん、貴方が意識を取り戻したって聞いたからよ?

今夜は寝かさないわ」

 

早い、気が早すぎる。

妖艶な表情で舌舐めずりする彼女に、思わず溜息が漏れた。

 

当然、そんなことをする余裕はないので却下する。

 

「もっといい男が、探せばいくらでもいるだろう。それよりも『被験体』の状態が知りたい」

 

「むぅ……」

 

俺の素っ気ない返事に、しばらく口を尖らせていた彼女だったが。観念したのか不機嫌そうに経過報告を開始した。

 

「被検体01の経過は至って良好よ。精神的にも肉体的にもね。機動兵器への適性も合格点。AMS適性まで高い数値を叩き出したわ。貴方の言った通り、『あの遺伝子』は神様に愛されてるみたいね」

 

それはそうだろう。なにせ『デウス・エクス・マキナ』である。

無論、科学的根拠は皆無だが、これまでの経歴からして『この世界の舞台装置』としての強力な運命力を持つ存在というものは『居る』と俺は見ている。

その一つへの対抗策として01を造ったのだ。

 

あともう一つに関しては『あらゆる手を尽くして』葬るつもりでいる。

 

 

 

「01の方はよくわかった。で、03の方は?」

 

俺の問いかけに、ミーナは少し言葉に詰まりながら話し始める。

 

「うーん……まあ、問題はない、わね。

ただ、なんか私のこと『お母さん』として認識してるみたい」

 

それもそうだろう。なにせ、『彼女の遺伝子を基に造り出した』のだから。或いは『同族嫌悪』に陥るかとも思ったがその様子なら問題なさそうだ。

 

「それはよかった」

 

「良くないわよ! これじゃあまるで子持ちみたいじゃない!

他所のエリアの研究員にも『ミーナさんって子持ち?』って噂になってるんだから!

私はまだ未婚だし二十前半なのよ!?」

 

顔を赤くしながら怒鳴る。

 

「でも、悪い気はしないのだろう?」

 

「……まあ、あの子に罪は無いし、面倒見るのもやぶさかではないというか、なんというか」

 

もじもじしながら一転して覇気の無い声で応えた。なんだ、満更でもないんじゃないか。

 

その後もぶつぶつと独り言を呟きながら「ハッ、これってもしかしてダーリンとの愛の結晶そのもの!?」とすっかり自分の世界に入ってしまった彼女を放置し、俺は研究員の案内に従って01の元へと向かった。

 

 

 

 

途中、除菌エリアを幾つも通り、すっかり綺麗になった俺は研究員を連れて生物研究区画の最奥、『被検体管理エリア』へと足を踏み入れた。

 

研究によって生み出された『人造生命』や『遺伝子操作個体』を『管理』するためのエリア。当然、被検体の健康状態を鑑みてあらゆる殺菌処理と空調が行き届いているためにエリア内は快適な空間となっている。

 

そのエリアの一室、扉横のプレートに『被検体01』と銘打たれた部屋へと入室する。

と、その前に軽くノック。

 

「いるか?」

 

『あ! は、はい! 被検体01、ここに待機しております!!』

 

声をかけると慌てた様子で妙な言葉遣いの少女の声が聞こえてきた。それを確認した俺は、案内してくれた研究員にお礼を言いつつ部屋へと入る。

 

そこには、『前世で見覚えのある見た目』をしつつも、銀髪と赤眼、透き通るような白い肌を持つ小柄な少女が、白い患者衣のようなものを羽織って立っていた。

右手でピシッと敬礼をしながら背筋をピンと伸ばしている姿は、こちらへの敬意を感じられ自然と頬が緩んだ。

 

「お久しぶりであります、トール閣下!」

 

「お前も元気そうだな、()()()()()()

 

名前を呼ばれて彼女は一瞬で笑顔になった。そして俺の他に入室した者がいないのを確認すると、すぐに俺の胸に飛び込んでくる。

 

「トール様!!」

 

まだ百五十にも満たないだろう背丈の彼女が無邪気に抱きついてくることに喜びを感じる。なんというか、『父性』のようなものを刺激される。

或いは母性か。

いずれにしても俺は彼女に『親』のような感情を抱いているのは確かだ。それは記念すべき『人造個体第一号』というものへの愛着であると俺は推測する。

 

「今日はもう予定はないのか?」

 

「はい! 日々の検査も訓練も全て終わらせてました!」

 

「うむ、良い子だ」

 

抱きついたままの彼女の頭を優しく撫でてやる。それだけで彼女の頬はすっかり緩んで動物のように俺の胸に擦り寄ってくる。

 

 

名前から察してもらえると思うが、彼女は『とある人間』の遺伝子を基に生み出された『クローン人間』である。

 

目的は言わずもがな。オリジナルの人間の抹殺である。

 

そのために日々、機動兵器操縦訓練と白兵戦の鍛錬、健康状態チェックやその他『戦闘』に関する調整を行わせている。

それもこれも『たったひとつの目的を果たすためだけ』に。

 

本来、愛情など持つべきではないのだろうが。俺は、どうにも彼女に対して『愛着』を持ってしまったらしい。

自分なりに理由を推察するなら、先述の理由に加えて『俺に無邪気に懐いてくる』というものが考えられる。人間、自分へ愛を向けてくれる相手に対しては自ずと好意を抱くものだ。

さらに、自分が生み出した存在ともなればこうまで彼女を愛おしく感じてしまうのも仕方ないことと言えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーそれでですね、今日はなんと『リンクスデータ』をコンプリートしてしまったのです!」

 

「ほう、それはすごいな。よく頑張ったぞ、ジュリアンヌ」

 

両手を上げて大仰に語る彼女の頭を撫でる。

 

「えへへ……」

 

すると、やはり大人しく頭を撫でられながら、むしろ頭を撫でる手に押し付けるようにみじろぎしてくる。

 

彼女の言うリンクスデータというのは、俺が『別名義』で管理運営する『カラード』に所属するリンクスたちを模した戦闘データを使用したシミュレーションプログラムのことである。

 

無論、所詮はデータなので本人とは比べるべくもないが再現度は高く、それを負かした彼女の戦闘センスはやはり高いのだろうと思う。

 

その後も彼女は矢継ぎ早にこれまでの出来事を、それは楽しそうに語って聞かせてくれた。

内容よりも楽しげに語ってくれる彼女が微笑ましくて、俺もついついその頭を撫でる手を止められない。

 

そうしているうちにそれなりの時間が経過してしまった。

 

「ふむ、もう時間か」

 

腕時計を眺めて時刻を確認する。すると、実に数時間の間彼女と話し込んでしまった事実に気がついた。

 

俺の言葉に、先ほどまで笑顔を見せていたジュリアンヌは、一転曇り顔でこちらに上目遣いをしてきた。

 

「……もう行ってしまうのですか?」

 

捨てられる仔犬のような、庇護欲を刺激する仕草に俺の精神も僅かに揺らいだ。

 

「またすぐに来る」

 

「トール様のすぐって、何ヶ月もあるからなぁ」

 

「ぐっ……」

 

拗ねたようにボソリと呟く彼女の言う通り、俺は数ヶ月に一度くらいの頻度でしか彼女に会いに行けていない。

というのも、十数年前に『決意』を固めてから俺に『猶予』などなくあちこちを駆けずり回って必死に計画を進めてきたからだ。

特に最近は忙しくて彼女に会いに行く機会も自然と減っていた。

 

それを考えて、俺はある事実を告げようか告げまいか迷う。

数秒の葛藤の末に、彼女に真実を告げることにした。

 

「時に、お前はいくつになる? いや、生まれてからの年数ではなく『肉体的な成長』だ」

 

「? 担当の先生の話では『十五』だと」

 

なるほど。

 

「そうか……なら、あと『二年』ほどが過ぎればお前も『ガルム』に入れることができるな」

 

「えっ!?」

 

俺の言葉に彼女は心底驚いたように目を見開いた。そしてだんだんとその顔が喜色に染まっていく。

 

「トール様の部下に、していただけるのですか!?」

 

「もちろんだ。そのためにお前を育てているのだぞ?」

 

「はい、存じております!

()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

誇らしげに胸を張った彼女の言葉に、ズキリと胸が痛んだ。

……なんだ、今更躊躇しているのか俺は?

これまでも汚いことを繰り返してきたというのに。今更『命を弄んだ程度』で心を乱されるとは。

 

そもそも、『人造生命』に手を出した時点で俺に引き返す手段は無くなった。彼女の完成までに数多散って行った命のためにもせめてこの『罪悪感』を抱いたまま地獄に堕ちるべきなのだろう。

 

 

「……ああ、そうだな。

 

だが、()()()()()お前には活躍してもらいたい。だから俺が次来る時までにちゃんと先生の言うことを聞いて良い子にしているんだぞ?」

 

胸中に渦巻く黒い感情を押し込めて、いつものように振る舞う。

たとえその言葉が何の根拠もない空想であろうと、彼女に要らない不安を抱かせないために。

俺は嘘をつく。

 

「っ!! はい、精一杯頑張ります!!

……え、と。だから、次は……もう少し早く来てくれると『ジュリア』は嬉しいです」

 

良い返事をしてから、少し遠慮気味に彼女は訴えてきた。

甘えるような視線に、俺の決意も揺らぐ。

 

「……そう、だな。次はもっと早めに行けるよう予定を調整してみる。期待して待っていてくれ」

 

そう言って笑顔のまま彼女の頭を撫でる。

 

「はい!! 待ってますね、トール様!」

 

満面の笑みを浮かべた彼女に別れを告げて部屋を後にする。

 

「約束ですよー!」

 

ブンブン手を振る彼女に、つい笑顔で手を振り返し俺は今度こそ部屋を出た。

 

そしてすぐにタブレットを開き予定表に修正を加える。

……俺も、存外甘い男だ。

 

 




次からは前に書いた通り二期までの話をしばらくやります。
ガエリオとかカラードとかジュリアとか『たわけ様』についてもその中でやりたいと思います。
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