鉄血×AC カルタ・イシューを王に据える話   作:蒼天伍号

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続きを書いてみました。



地球外縁軌道(以下略

「火星支局の猛攻を抜け、タービンズと交戦。のちにタービンズと和解し名瀬の計らいによってマクマード・バリストンに取り次いでもらいテイワズ傘下となる」

 

「おまけに、先日のドルトコロニーでのデモ騒ぎにも関わり、その場に居合わせた報道陣を利用してギャラルホルンの艦隊を正面から抜けた、か」

 

 

 椅子に腰掛けながらトールは、隠密部隊からの報告を思い返していた。その報告とは言わずもがなこの世界における『変革の中核』、鉄血のオルフェンズという作品においては主人公陣営として物語の中心に据えられていた組織。

 少年兵たちで構成される『鉄華団』の動向についてのものである。

 この組織には、『例の組織』を介して一年以上も前にクーデリアの元へと送り込んだモージという部下が潜り込んでいる。

 

「まあ、モージもドルトコロニーの騒動でノブリスの飼い犬共々消息不明となってしまったが」

 

 その声音には些かの落胆も悲嘆もない。仮にも部下がMIAとなったというのに薄情な反応にも見える。しかし、それに対して嫌悪を示す部下はこの場に一人としていない。

 

 

 

 

 

 

 現在トールは、自身の指揮下にある艦隊を率いて宇宙へと上がっていた。

 十年以上も前に始めた『海賊狩り』の功績と、『世界各地の勢力への根回し』による圧倒的な支持率で地道に規模を拡大してきたトール直属の艦隊。

 

 名を独立機動艦隊『冥府の猟犬(ガルム)』。

 最初は、側近であるミミルとマグニ、そしてトールのたった三人から始まったこの部隊は、数々の功績と支持によって徐々に規模を広げ、今では十五隻のハーフビーク級を束ねる艦隊へと成長した。

 また、その活動領域も圏外圏にまで及び火星近くの海賊の討伐や各コロニー群にまで足を運ぶ忙しなさ。更にはイシュー家当主代行の後見人となったことで一応、地球圏における活動権まで得ているのだからその影響力は絶大である。

 まあ、地球での活動権はイズナリオの影響で正しく機能しているとは言い難いが。

 

 ともかく、この艦隊の影響力は強い。それは地球圏の『主要企業』との『繋がり』によるもの。

 次に、豊富な実戦経験に基づく高い練度。艦隊の平均としてはアリアンロッドの精鋭と比較しても負けず劣らずであり、上記の『広い活動領域』という説明の通り、当然アリアンロッドの管轄にも土足で足を踏み入れることも多々。

 そのせいでラスタルを除き、アリアンロッド艦隊からの評判はあまり良くない。

 しかし、あくまでラスタルの思惑は功績重視に寄っているわけでは無いので彼から目の敵にされることはない。というよりもトール自身がそれを極力避けるように彼への礼儀は尽くしてきた。

 

 それ故に今日までこの自由過ぎる艦隊は存続してこれたのだ。

 

 

 

 

 

 旗艦たるハーフビーク級戦艦『ナグルファル』のブリッジにてトールは指揮官席に堂々と腰掛けている。

 艦の装甲は漆黒に塗装され、側面には“真っ赤な円球の正面に血塗れの狼”というシンボルマークまで塗られている。

 それは艦に積載されるMS・グレイズにも反映され、漆黒の塗料を塗られた機体がずらりと整列していた。

 

 ちなみにナノラミネート装甲に使われる塗料の中で、黒や紫という視認性の低い暗色は一番値段が高く、これを艦隊のカラーとして使用するということは即ちトール・イブン・ファルクの財力の誇示にも繋がっているのは完全なる余談である。

 

「……(それにしても、アフリカンユニオンとは……十中八九、()()()()の思惑であろうが)」

 

「トール様、まもなく『地球外縁軌道統制統合艦隊』の本隊と合流します」

 

 通信士からの報告にトールは「うむ」と一言返し、続けて指示を飛ばす。

 

「シュヴァルべ・グレイズの出撃準備を整えておけ」

 

「まさか、お一人で向かわれるので?」

 

 少し不安げな眼差しを向ける艦長に、トールは「フン」と鼻を鳴らす。

 

「アレの出力ならばそう時間はかからん、この距離ならばMSで十分に届く。

 ……それに、()()()()()()()()()()()

 

 威圧感すら感じる力強い眼光に、しかし艦長は尊敬の眼差しで答える。

 

「常勝不敗、『冥府の番人』にして『雷神』と謳われる我らが誉れ高きトール・イブン・ファルク司令官であります」

 

 熟練の軍人としての風格を感じさせる壮年男性が、半分ほどの年齢の若造に羨望の眼差しを向けるなどそうあるものではない。周りを見れば誰もがトールに信頼の目を向けていることが見て取れる。

 それだけ、トールは部下から厚い信頼を寄せられていた。

 

 その信頼を正面から受け止め、頷きでもって返したトールは席を立つ。

 

「……私が出撃し次第、艦隊は予定通り指定宙域へと向かい賊の掃討作戦を行え。後の指揮はミミルが引き継ぐ」

 

「ハッ! ご武運を、閣下」

 

 艦長の心からの言葉を背に受け、ギャラルホルンの雷神はMSデッキへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我ら地球外縁軌道統制統合艦隊!」

 

「「面壁九年、堅牢堅固!!」」

 

「んん〜、完璧……!」

 

 地球外縁軌道統制統合艦隊。

 その名の通り地球の軌道上の守備を使命とする艦隊の旗艦、そのブリッジにてカルタ・イシューは満足げに呟いていた。

 

 彼女の前には青年士官たちが左右にズラリと立ち並び、一様に右手を胸に当てている。

 その姿からよく訓練され統制の取れた部隊としてのあり様が窺える。

 

 

 

「で、本当に来るのね? そのなんちゃらリアって女は」

 

「クーデリア・藍那・バーンスタインです」

 

 興味の無さからターゲットの名前すら忘却しているカルタに、部下がすかさず助言する。

 

「ボードウィン特務三佐からの報告では間違いないかと」

 

「そうでなければ困る。セブンスターズの爺様たちにも『あの男』にも我々の力を見せつけるよい機会だ」

 

 カルタは、月外縁軌道統制艦隊の活躍により自らの地球外縁(ry ……がお飾りの艦隊として実戦にも恵まれず、専ら式典参加やアクロバット演出などの見世物扱いが常態化している実情を気にしていた。

 統制局からも『お飾り』と半ば公言されているほどの閑職というのがこの地球(ry という艦隊なのである。

 

 その屈辱をようやく晴らせる機会が巡ってきたのだ。喜ばずにはいられないというものだろう。

 

 

「特務三佐は戦線への参加を希望しておられましたが」

 

「ガエリオ坊やはどうでもいい。あの万年ミソッカスに手柄を取られる心配はない」

 

 もっとも、この絶好のチャンスとなる情報を持ってきたのはそのガエリオ特務三佐であるのだが、カルタはガエリオに対する興味が極端に無いらしくそのことに言及することはない。

 

 

「……それと、本作戦には“あの”トール一佐も参加されると伺いましたが」

 

「む……まあ、今回は『あの男』の出る幕はない。その前に我らでなんちゃらという小娘を捻り潰してあげましょう!」

 

「クーデリアです、カルタ様」

 

 そんな部下の補足が耳に入ることもなくカルタは上機嫌でポーズを決めている。

 その様を部下たちは特に疑問に思うことなく静かに整列している。

 

 これが地(ry という艦隊の日常である。

 

 

 

 

 

 

 ……そんな平穏を平然とぶち壊すように『あの男』は威風堂々と旗艦たるハーフビーク級へと機体を搬入する。

 

「カルタ様、トール様がご到着されたと報告が」

 

 部下の言葉にカルタは一瞬にして気を引き締め真剣な表情で拳を握る。

 

「来たわね。……()()()()私たちの力、特別に特等席で観覧させてあげるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トール様、ご足労いただき感謝致します!」

 

 MSから降りたトールに、カルタ配下の士官が元気よく声をかけた。

 

「トール様、お久しぶりです! トール様に鍛えていただいた我ら、より強固な盾として必ずや宇宙ネズミ共の地球降下を阻止してみせます!」

 

「トール様!!」

 

「おお、トール様!」

 

 会う面々全員に歓声と共に出迎えられるトール。

 

 というのも、彼がこの艦隊の教本通りの生真面目すぎる訓練を見兼ねてしばらくスパルタ訓練を施したのが原因だったりする。

 

 トールとしてはカルタには安全な場所として、原作通りにこのお飾り艦隊に所属してもらい鉄華団を通してもらい、適当な理由をつけて地球への追撃を譲ってもらうつもりだったのだ、当初は。

 

 しかし、式典や度々見学に訪れた際に彼らの訓練を拝見。そのあまりにも真面目なお手本通りの姿に危機感を覚え、急遽として彼らの練度上昇を図ったのであった。

 また、地球降下の際にバルバトスによってカルタの部下が一人、大気圏降下用の耐熱板代わりにされてしまうことも唐突に思い出し、それならばもう少し出来る奴らに仕上げてやろうと考えたのである。

 

 

 結果としてカルタの部下からの厚い信頼を得ると共にカルタから少し嫉妬されることになったのはトールとしては内心嬉しく無い誤算ではあったが。

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりね、トール」

 

「ああ、会議の時以来か。……また一段と美しくなったな」

 

 ブリッジまで通されたトールは、カルタに会うなりまるで当たり前かのようにさらりと、自然に歯の浮くような台詞を垂れ流した。

 

「そ、そんなこと言ったって貴方に手柄を譲ったりはしないんですからね!」

 

 ストレート過ぎる口説きに動揺を隠し切れないながらもカルタは吠える。

 その姿にすらトールは癒やしを感じ、“笑顔”を見せた。

 

「分かっている。此度の作戦は全てお前に任せる、見事賊を討ち取ってみせろ」

 

 本当に討ち取られては困るのだが。という言葉をトールは飲み込む。

 

「ふん、言われるまでも無いわ。あとで吠え面かかないように、心構えだけはしておきなさい」

 

「これはまた、今日はえらく強気だな。わかったよ、今から戦勝祝いの準備をしておくことにしよう」

 

 まあ、いつも強気なのが彼女だが。という言葉もトールは口には出さない。

 口に出す必要性がない。彼女は彼女だからこそ美しい。

 そう彼は、カルタに対する意識を完結させていた。

 

 

 

「とはいえ。危なくなったら俺が出る、それだけは約束してくれ」

 

「む。貴方も、私たちの艦隊を信頼していないのね?」

 

 幼い時分より共に過ごし、自分を支えてくれた彼ですら自らの艦隊を『お飾り』と認識しているのか。そう、受け取ったカルタは不満そうに口を尖らせる。

 

「そうでは無い。

 戦場というのは全て教本通りに進むとは限らん。誰も教えてくれない予想外などは日常茶飯事だ。

 

 ……保険をかけておくのはごく当たり前のことだぞ」

 

 戦闘経験においてはカルタの数十倍はあるトールの言葉にカルタは「ぐぬぬ」と唸りながらも、渋々了承した。

 

 先達というのもあるが、なによりもトールはカルタの後見人なのだ。幼馴染として気軽に会話をしてはいるが立場はトールの方が圧倒的に上なのである。

 伊達に十代でファルク家の当主の座に着いたわけではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリアドネに反応! エイハブ・ウェーブ確認。報告にあった船と一致しました!」

 

 それからしばらく、カルタにとっては待ちに待った客がやって来た。

 自然と口角も上がる。

 

「ふふふふ、ようやく来たわね、待ちわびたわ!」

 

 上機嫌で大仰に右手を掲げる姿を、トールは微笑ましそうに眺める。その眼差しはどことなく生暖かい。

 

 そんなほんわかした雰囲気のブリッジにガエリオからの通信が届く。

 繋がれた通信は、前面のメインモニターに映像を映し出した。

 

『カルタ……司令。奴らの反応を捉えたと聞きましたが……って、なんでそこにトールがいる!?』

 

「あら、ガエリオ坊や。そういえば貴方、戦線への参加を希望していたわね、良くってよ。参加を許可するわ。

 ……まあ、貴方の出る幕なんか無いでしょうけど」

 

『いや、その物言いには色々と言いたいことがあるが……それよりもトールだ! 現在のセブンスターズにおける二大勢力の頭目の片割れがなぜこのような場所に』

 

「ふむ、説明ご苦労ガエリオ特務三佐。偶然にも行軍中に本作戦の話を聞いてな、急遽参加することになった。

 尤も、私は観客に徹するつもりではあるがな」

 

 ……結局、出る羽目にはなるのだろうが。

 

『参加って……まさかMSで出るのか? いくら腕が立つとはいえお前のような影響力ある人間が前線に出向くなど……』

 

「ガエリオ、トール独立機動艦隊司令官に対してその態度は失礼なのではなくて?」

 

『む、確かに階級は二つ上だが、しかしだな」

 

「ああ、もういいわ。とにかく、戦線に出たいというのならそれなりの戦果を持って来なさい。出なければ折檻ですからね」

 

『折檻!? いや待て、なんで今の流れで折k』

 

 ガエリオの抗議の声も半ばに通信は無情にも打ち切られた。

 

「さあ、ネズミども。どこからでもかかって来なさい。

 

 このカルタ・イシュー様が相手よ!!」

 

 

 

 

 原作よりもテンションが二倍くらい高くなったカルタと鉄華団の戦いが、今始まる。

 

 




改めてカルタさんの面白さを実感しました。
いや再現難しいな……

今後の展開について参考程度に

  • クーデリアとイチャイチャモージ君編
  • トール視点の本編(ダイジェスト版
  • がっつり説明会込み込みフロム脳風味
  • いっそ二、三話で纏めてみる
  • 原作?知らんな……的なコジマ汚染末期の緑色展開(ギャラルホルンないつの間にか滅ん
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