鉄血×AC カルタ・イシューを王に据える話   作:蒼天伍号

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溜め回


孤島決戦・前夜

「宇宙での戦い、お疲れ様でした」

 

「うむ」

 

 地球に降り立つなり、俺は地上に待機させていた正規軍と合流していた。

 ガルムの地球班、すなわち『地球圏独立警備隊』の面々である。

 

 宇宙のごたごたはガルム本隊が担当となるが、地上におけるイズナリオへの牽制として以前より少数ながら兵を配置していた。それがこの警備隊である。

 

 規模は強襲揚陸艦一隻とMSが九機という小ささではあるが、その分兵は選り好みした精鋭である。

 

「宇宙に上がって、すぐに降りてくるなんて。なんだか忙しないですね」

 

「まあな。だが、その方が信憑性が増すだろうさ」

 

「ごもっともです」

 

 地上には側近の一人たるマグニも配置してある。

 普段は地上の隠密とロヴンを通して連絡を取り合いその指揮を一任している。

 とは言っても、報告を聞く限りイズナリオにイレギュラーはない。全て想定内の動きをしてくれている。

 

 

 彼の今後の動きは、アーヴラウの協力者たるアンリ・フリュー議員をアーヴラウ代表の座に付けることだと俺は知っている。

 となれば、自ずと彼が取る行動というのは予想がつくわけで、数パターンの行動予測をもとにして監視を続けていた。

 

 その上で、実に思惑通りに動いてくれている。

 

 少々、反則的な行いではあるが知っている以上は仕方ない。むざむざとそれを逃す手は無い。

 

 

 

「……そういや、モージとやり合ったそうで」

 

「気になるか?」

 

「いえ……いや、本音を言えば気になりますけどね。それよりもトール様にご迷惑かけてないかが心配で」

 

 そうは言うものの、マグニの顔にははっきりと肉親を心配する兄としての憂いが現れていた。

 なんだかんだでこの兄弟は似ている。

 女好きなところとかな。

 

「……ちょっと、割と心外なこと言われた気がするんですけど」

 

「気の所為だ。

 それよりも『例の機体』はどうなっている?」

 

 警備隊唯一の艦艇たる揚陸艦の廊下を進みながら訊ねる。

 

「調整は万全です。『メギンギョルズ』の出力は抑え目でいいんですよね?」

 

「ああ。間違えて殺してしまっては台無しだからな。

『ヤールングレイプル』の方は?」

 

「一応、修繕は終わってますが。あんまり無茶な使い方をしたらまたぶっ壊れますよ」

 

 それはこの前の『海賊』との戦闘のことだな。

 頭の痛いことだ。

 

「善処する。もともと民衆受けを考えて作った無茶な機体だ。使い潰すつもりでやっている」

 

「うわ……それ、ぜったい『あいつら』に言わないでくださいよ。ストライキ起こしかねませんからね」

 

 それも分かっている。無茶なコンセプトの機体を作らせといて、毎度ぶっ壊す上に、そもそも壊すつもりで乗ってるとか。

 整備士たちに知られれば暴動が起きかねん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くそ」

 

 通信を終えたガエリオは、悔しそうに顔を歪めながら壁に拳を打ち付けた。

 

 アクアビット社のグローイを名乗る人物の要件とはずばり、アインの蘇生に関することだった。

 どこからその情報を得たのか、ガエリオは自らの周りに情報を流した人物がいたことに怒りを感じながらも、アインの蘇生という彼の望んでやまない手段の話題ということもあり一応、話を聞いてみることにした。

 

 

 しかし、やはりというかアインの蘇生には機械化が必須であるということを告げられた。

 

 医者やマグギリス、トールにまでその方法を告げられていたガエリオは、もはやそれしか手段はないと考えていた。

 その上で、トールの語った『責任』とやらを今一度自分の中で整理し、そして、自らの中でその手段を選ぶことを決めていた。

 

 ただ、グローイが語ったのは阿頼耶識による復活ではなかった。

 

 ガエリオは先の通信を今一度脳内に思い浮かべた。

 

 

 

 

『AMS?』

 

 聞き慣れない単語にガエリオは眉を顰める。

 

『はい。

 現在一般……もとい賊どもに流出している阿頼耶識システムは成長期の青少年の脊髄へナノマシンを注入しコクピットのプラグと接続するタイプ。

 これは、正規の阿頼耶識システムとは言い難く、その成功率も低いとされ失敗すれば悲惨な末路が待っているとも言われています。この手段はさすがに論外、ダルトン氏も成人を迎えていますしね。

 

 次に、ギャラルホルン内部で密かに研究されていた阿頼耶識。

 こちらは厄災戦当時の性能に限りなく近い段階まで進んでいましたが近年はその動きも無くなりつつあり、今から急造するとなると実験段階の試作品となるのは明白。

 あまり合理的とは言えません』

 

 ベラベラとよく回る口だとガエリオは思った。

 

『……そして、我が社の誇るAMS。

 こちらは従来の有機デバイスシステムとは比べ物になりません。

 

 まず、施術に『青少年』という条件はなく、常に成功率100%。加えて研究は実装段階まで完了しており安全性は保障されています。

 ……また、何よりも性能。

 阿頼耶識システムのそれを遥かに上回る精度と速度で情報伝達を可能とし、それに合わせた機体開発の技術も我々は持っています。

 これを活用すれば、阿頼耶識搭載機など物の数ではなくその何十倍もの反応速度で思った通りの動作が可能となります。

 

 まさに夢の技術!!

 人機一体!

 

 もちろんアフターケアは万全です。我々はこの技術を熟知し、『商品』として自信を持って提供できる段階にあるのです。

 

 

 ……いかがです?

 ダルトン氏の蘇生、そして氏の望む『正当なる復讐』。その双方を確実に叶える手段、我々にご一任してはいただけませんでしょうか?』

 

 

 流れるようなプレゼン。

 しかし、AMSという技術は初耳だ。聞く限りでは阿頼耶識システムの完全なる上位互換。任せる他に選択肢はない。

 

 ……この時、すでにガエリオに迷いというものは無くなっていた。どんな手を尽くしてもアインを復活させ復讐を完遂させる。

 そのためならば、この得体の知れない企業の誘いにも乗ってやる。

 

 そもそも、仲介を行なった男は信頼のおける人物であり自分を案じてこの件を寄越してきた可能性もあるとガエリオは考えた。

 また、彼の紹介ならばこのアクアビットとやらも一応、信頼のある企業であるとも。

 

『……わかった。そちらに任せよう。報酬は言い値で構わん』

 

『いえいえ、今回は初回サービス。今後ともご贔屓願うためにも適正価格の半額でお引き受けいたしましょう』

 

『……何を企む?』

 

『企む? まさか!

 ……商売において信頼は重要視されるもの。まして、私どもの業界においては“お得意様”の存在は非常に重要。

 

 ガエリオ様には今後とも我が社をご贔屓願いたく』

 

『ふん……まあいい。

 だが、確実に成功させろ。先の言葉、俺は忘れんからな』

 

『勿論ですとも。

 我がアクアビット・()()()()()()の総力でもって必ずご要望にお応えいたします』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鉄華団はやはり蒔苗と共にオセアニアの孤島にいるか」

 

「はい。大気圏突入時の情報からすでに大方の予測はついていましたが監視衛星で捉えたことで確実視いたしました」

 

 格納庫の中でトールとマグニは情報の交換を行っていた。

 周りでは整備班が忙しなく動き回り、大声で指示を飛ばしている。

 

「ふむ。カルタからの連絡は?」

 

「すでに勧告は再三にわたって行っていると。……まあ、標的はガン無視っぽいですけどね」

 

 当たり前だ。そうでなければ今まで何のために戦ってきたのか分からなくなってしまうだろう。

 

「……それと、モージがなにやら不穏な動きをしていると」

 

「不穏?」

 

 思わず聞き返す。他ならぬモージの兄たるマグニがそのような表現を用いることに驚いたからだ。

 

「カラードに対して交渉、もとい要請をしてきたんですよ。

 “火星にある鉄華団本部への護衛を寄越せ”とね」

 

 それはなんとまあ、無茶を言う。

 そんな金がどこにあるというのか。

 

 山猫一匹雇うのにいったい幾らの金が動くか知っているだろうに。

 

「……いや、クーデリアか?」

 

「そのようですね。蒔苗も一枚噛んでいるとも考えられますが」

 

 どちらにせよ、そういうことなら山猫を雇うことも可能か。

 

「それで、レディは誰をご所望だ? 人数は?」

 

「No.38フランソワ・ネリス、No.12ザンニの二名です」

 

 フランソワはまだしも、ザンニとは。また大きく出たな。

 あいつはカラードでも上位の実力者。報酬のレートも高額なはずなのだが。

 

「今度はノブリスの白豚が絡んでいるか」

 

「仰る通りです。あの豚が何を考えてるのか分かりませんが、大方、テイワズのギャンブル中毒の影響かと思われます」

 

 あのギャンブル中毒者め、余計なことを。

 ああいう手合いはいきなり方向転換するから苦手だ。

 率直に言えば嫌いだ。

 

「……とはいえ、依頼内容は比較的ハードルの低いものですからね。それだけ手を回せば払える額だと思いますよ」

 

「確かに、アリアンロッド艦隊を単騎で撃滅しろ、とか無茶な依頼だったら一国買えるくらいの額になろうが」

 

「そんな依頼、誰が出すんです?」

 

「分からんぞ。世の中ぶっ飛んだ奴らなんてそこら中にいるからな」

 

 アクアビットとかアクアビットとか。

 ついでにアスピナの馬鹿野郎どもとかな。

 もしくは俺とか。

 

「まあいい。きっちりお支払いいただけるなら承認してやれ。あの二人も暇を持て余していることだろうからな」

 

 ザンニ以上のランクのやつに至ってはもはや強過ぎて一方的な虐殺になるくらいだからな。AMSとアクチュエータ複雑系の力は凄まじい。

 これに『アレ』を搭載した日には目も当てられない有様になるだろう。

 自重せねば。

 

 

 

「ついでと言っちゃなんですが、もう一つご報告が」

 

「いい、話せ。聞ける時に全て聞いておく」

 

 今後も忙しくなるだろうしな。

 

「では……

 

 先日のアーヴラウ領モスクワでの密談なんですがね、どうやらインテリオルグループが裏で手を回していたみたいです」

 

 蒔苗のいないこの時期に行われた、アーヴラウモスクワ代表とアフリカンユニオンの重鎮との密談のことだ。

 奴のいない時期を見計らったかのように行われた会談。明らかに怪しいので探らせていたのだが。

 

 どうやら欧州の百合の園が絡んでいたらしい。

 

「何を考えているのか知らんが……引き続き調査を続行しろ。ああ、なるべく無茶はし過ぎないようにな。あのグループは侮れん」

 

 どこぞの世界では素知らぬ顔で偽りの依頼をぶっ込んでくるほど面の皮の厚い連中だ。腹黒とも言う。

 

 欧州はなにかと魔境だ。

 レオーネメカニカとメリエスという二柱が支えるインテリオルグループと、欧州最大の勢力たるBFF社。さらには変態企業の本社まで居を構えさながら戦国時代と化している。

 さらに言うならアフリカンユニオン自体がカオスの只中だ。

 

 西にインテリオルとBFF。東にあのオーメル、イクバールだ。

 実質、あそこは三つ四つの勢力に分かれていると見た方がいい。

 

 反面、アーヴラウの有力企業はテクノクラートのみ。オセアニア連邦に至っては領内の( ´神`)企業がSAU寄りの態度を見せている有様。

 

 アフリカンユニオン全体と張り合えるのはGAを抱えるSAUのみである。

 

 

「……なるほど。モスクワの代表はなかなか聡い。これを機に欧州勢力と手を結び、ユーラシアをアーヴラウから切り離して代わりに欧州と融合する気か」

 

 それならばアフリカンユニオンとアーヴラウの双方から力を削げるし、欧州企業を身内に入れれば他経済圏に十分対抗できる力を手に入れられる。

 

「さすがに飛躍し過ぎでは?

 いくら欧州が独自路線を走っているとはいえオーメルと正面切って争うほど愚かでは無いでしょう。

 それに、モスクワにしたってテクノクラートが黙ってませんよ」

 

「テクノクラートはイクバール寄りだからな」

 

 あんだけ離れているのに律儀な企業である。

 

「アーヴラウにしたってテクノクラート以外にも有力な企業は多い。オセアニアには人革連だってありますからね」

 

 要するに、地球圏も水面下で日夜暗闘が繰り広げられている魔境ということだ。

 

 実に頭の痛い話である。

 

 

 

 

「まあ、俺の基準は『AC計画』の情報を入手しているかどうかなのだがーー」

 

「トール様、『アーサソール』の整備終わりましたよ!」

 

 梯子を登りながら整備主任の男性が声をかけてきた。

 

「ご苦労。では作戦開始時刻までは休息時間とする。各自、万全の体調に整えておけ」

 

「イエッサー!」

 

 元気に返事をしながら男は立ち去り、片付け作業などを行なっている整備士たちに声をかけて回っていた。

 

 それを尻目にトールは調整を終えた自機に視線を移す。

 

 

 相変わらず真っ黒なカラーリングに、頭部はカルタの艦隊で使用されているグレイズ・リッター。ここまではいい。

 しかし、その胴体、脚部、右腕は全くの別物に変貌しており特に右腕は左腕との対比で実に二倍以上の大きさに肥大化している。

 

 騎士(リッター)と呼ぶにはあまりに歪で無骨な見た目。

 右腕と胴体、脚部を覆う重装甲が主な原因ではあるが、右腕のそれはよく見れば何本かの太いチューブが絡みついておりその先は腰に備えられた大きなバッテリーのようなものに接続されている。

 

 加えて機体の横に置かれた巨大な戦槌(ウォーハンマー)。機体と同サイズに近い大きさのそれの打撃部分には、四隅に窪みが存在し、微かに噴射口のようなものが見て取れた。

 

 

 

()()()()()。重力下でこそ真価を発揮できる機体だ」

 

 もう一つの愛機を眺めながらトールは満足げに笑みを浮かべた。獰猛な獣のような笑みを。

 

 

 

 

 

 

 

 




【おまけ】

『アーサソール』

トールが激しい戦闘を行う際に使用する機体。
アーサソールというのは通称で、本来の機体名は『グレイズ・クルーガー重装甲型戦槌仕様』である。または『トール専用グレイズ・クルーガー』。

グレイズ・クルーガーというのは、AC計画の反省からグレイズフレーム主義に立ち戻ったギャラルホルン軍部が開発を行っていたグレイズの派生機の一つである。
クルーガーの名の通り、攻撃特化型として開発が進められていた本機だが、本来のグレイズの汎用性からまたも正式採用とはならず実験段階のままで放置されていた。
それをトールが発見、回収し、『民衆受け』を前提として改修が繰り返された結果、現在の姿となった。
そのため、本来のグレイズ・クルーガーとしての面影は頭部にしか存在せず全く別物になっている。

主な武装・機能
“ブーストハンマー”『ミョルニル』
専用大型バッテリー『メギンギョルズ』
ミョルニル専用大型腕部『ヤールングレイプル』



※武装や機能の詳細は次回に。併せて各パーツの正式名称も記載します。

今後の展開について参考程度に(2回目

  • 光堕ちトールくん
  • 闇堕ちトールくん
  • ド外道トールくん
  • 世にコジマのあらんことを
  • おい、ガンダムしろよ
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