鉄血×AC カルタ・イシューを王に据える話   作:蒼天伍号

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すでに息切れしそう…


茶番なりし孤島決戦

「警備隊各機へ」

 

 アーサソールのコックピット内にて、トールは出撃を持つ部下たちへと通信を繋げていた。

 

「我々の目的はクーデリアの確保ならびに火星圏より訪れた招かれざる客『鉄華団』の撃滅である……表向きは」

 

 その言葉にも部下からさして反応はない。皆すでに本作戦の本当の目的を伝えられていたためだ。

 

「あの小娘を捕らえて一番得するのはイズナリオだ。次点でエリオン。どちらも汚職の権化だ。

 まあ、ギャラルホルン全体として見てもクーデリアの言動はマイナスに働くのは間違いない。

 

 

 しかし。

 たとえクーデリアを排除したとして、後に待つのはさらなる腐敗だ。すでに腐敗の温床と成り果てた統制局にこれ以上の腐敗を招けば、遠からぬうちにギャラルホルンという大樹の崩壊、秩序の崩壊に繋がるのは確実である。

 

 なればこそ、これはデモンストレーションに過ぎない。

 が、この先に待つ真なる戦い、『聖戦』に至るための重要な局面が今であるということをまず念頭に置いて行動してもらいたい。

 

 ……では、これより作戦を開始する」

 

 トールの言葉に隊員たちは揃って「了解」と応えたのち、揚陸艦のMSデッキから順に機体を発進させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ! 反応を感知! 来ます!!」

 

 先行した三機編成のグレイズ小隊の一機が告げる。

 それを聞いた隊長が短く指示を出し、小隊は三方向に別れて進む。

 

 それらの見据える先には、厄災戦の英雄・ガンダムフレームの一機たるガンダムバルバトス。

 損傷したフライトユニットを排除し、重力下での機動性を向上させる調整が為されている。

 

 その初動は凄まじく、敵機襲来の連絡が届いてから一番早く出撃したのがこの機体であったのはパイロットの要因ながら、海岸付近で迎え撃つに至ったのはひとえに機動性ゆえであろう。

 

「来い!!」

 

 急速接近してくるバルバトスに合わせ、隊長機が後腰から刀を抜き放ち逆手に構える。

 

 まずは勢いを止めようと盾役を買って出たのだが、予想に反してバルバトスは手にした無骨な武器を二又に分かれさせ、レンチのように挟んできた。

 

「ぬぅ!?」

 

 咄嗟にバックブーストで後方に下がったものの、得物たる刀はガッチリと挟まれ一瞬にしてへし折られてしまった。

 

「あーーーー!!!!」

 

 その光景に隊長は思わず悲鳴にも似た叫び声をあげる。

 余談ながらこの刀は、隊長が司令官に憧れて必死で武功を重ねて資材班に頼み込んでようやく貰えた装備だった。

 今は見るも無残な有様だが。

 

『隊長、うるさいですよ』

 

 言いつつ、部下の一人がバルバトスの横から剣を突き立てる。

 しかし、三日月・オーガスの乗るバルバトスがその程度の攻撃を食らうはずもなく、軽く後ろに仰け反ることで躱されてしまう。

 

「っ!!」

 

 しかし、その背後にはもう一機のグレイズがすでに迫っており、僅かな隙をついてバトルアックスを打ち付ける。

 そのコンビネーションの前に、さすがのバルバトスも一撃もらってしまう。

 とはいえ、MSの堅牢さゆえに致命傷には至らず、一撃貰ってしまった苛立ちからか刀を挟んでいたレンチメイスを高速で振るう。

 

『のわっ!』

 

『ぎゃっ!』

 

 阿頼耶識システムの反応速度、バルバトスの機動性から放たれる一撃は容易に回避できるものではなく、二機は盛大に吹っ飛ばされる。

 それだけで装甲に亀裂が入るが戦闘継続には支障ない。

 

「くっ、こいつは俺が抑える。お前らは後方からの支援に回れ!」

 

 隊長は予備兵装として持ち込んでいたバトルアックスを抜き、バルバトス一点にのみ注視する。

 

 隊長の階級は少尉。とはいえ選りすぐりたる警備隊に配属された実力は伊達ではなく、武功だけで新兵装を見繕ってもらえるくらいには強い。

 

 対するバルバトスも、宇宙で散々に死線を潜り抜けてきた猛者であり阿頼耶識システムを三度に渡って受けて生還したツワモノ。

 

 構えては見たものの、その実力差を感じ取った隊長は冷や汗を流していた。

 その時ーー

 

『ヒャッハーーー!!』

 

 機体の後方から、無数の弾丸がバルバトスへと到来した。

 遥か後方からの銃撃は止むことはなく、それがガトリングガンによるものだと視認できる距離まで迫ったところで隊長は、ようやく他の機体が到着したことを悟った。

 

「し、死ぬかと思った」

 

 安堵の息を零した彼は、部下二人に指示を出しつつ、追い付いた他の部隊のいる位置まで後退した。

 

 

 

 

 

 

 

「一隻?」

 

「ああ、確認できる範囲だと艦艇はそれだけしか見当たらない」

 

 一方、警備隊の奇襲にてんやわんやしていた鉄華団司令部ではオルガとビスケットが戦況の把握に努めていた。

 

「軌道上で戦った奴らじゃない……?」

 

「交戦中の敵MSの特徴からして……おそらくは、三日月とモージさんが戦っていたトール・イブン・ファルクの部隊である可能性が高い」

 

「確か、独立機動艦隊だったか? だが、その艦隊は今、圏外圏の海賊退治に出ていると……」

 

 先日の大気圏突入時の混戦にて、鉄華団はトールと名乗った黒いグレイズの力を脅威に感じていた。

 そのため、地上に降りてすぐにトールのことについて調べていた。

 

 結果、独立機動艦隊を率い、セブンスターズの第一席イシュー家の一人娘の後見人をも務める権力者であるところまでは掴んでいた。

 そして、その艦隊が鉄華団と入れ違いになる形で圏外圏に向かったことも。

 

 となれば、トールとの再戦はもはや無いものと安堵していたのだが。

 今日になってその認識が誤りであることを彼らは悟った。

 

「まさか、この前の戦闘で因縁付けられたわけじゃねぇよな」

 

「どうだろう。あれだけの権力者で腕も立つとなると、案外、プライドが高い人物かもしれない。結果として僕たちは地上に逃げることに成功してしまったからね」

 

「くそ、迂闊だったか……!」

 

 勧告をして来たのがカルタであったことも油断を後押ししていた。彼らはてっきりカルタの部隊が追撃してくるものだと思っていたのだ。

 

「奇襲をかけてきたのを見るに……いつものギャラルホルンみたいな妙な礼儀正しさとかは期待できない。

 彼らは本物の軍人たちだろう」

 

「っ、海岸の方にはアジーさんたちにも出てもらってる。こっちは昭弘とシノで頑張ってもらうしかねぇ」

 

「でも、肝心のトール本人が未だ現れていないのが気掛かりだ。

 あの手の人物が後方で待機しているとは思えない」

 

「そうだな。屋敷の方は作戦通りライドたちに見てもらってる。来るとしたらこっちしかない、か」

 

 未だ戦場に姿を見せない最大の脅威に警戒したオルガたちは、海岸で戦闘を続けるバルバトスに、一旦こちらまで退がるように指示を出した。

 

 

 結論としてその判断は正しく、しばらくしてビスケットの懸念通り、沖合から超高速で接近するエイハブ・ウェーブの反応が確認された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この反応! ラフタ、例のヤツが来た!!」

 

 敵MS六機と戦闘を続けるアジーが、沖合から急速接近する反応に気づく。それは、先日と同じように凄まじい速さで迫っており、これまでの情報から十中八九トールが乗った機体であると判断した。

 

 遅れて、ラフタもカメラにその姿を捉え即座に射撃を行う。

 だがーー

 

「ウッソ!? ビクともしないんだけど!?」

 

 いくら牽制用の武器とはいえノックバックもバランスを崩したりもせずそのまま突っ込んでくるMSに驚愕を顕にした。

 

「ラフタ!」

 

「きゃっ!」

 

 そして、凄まじいスピードのままに通り過ぎる黒い機体。

 至近距離ですれ違ったラフタの漏影はバランスを崩して転倒する。

 

 戦場においてそんな間抜けな格好でいることなど自殺行為に等しく、慌てて機体を起こした彼女はすれ違いざまに見た機体の異様さに呟きを漏らした。

 

「めっちゃゴツくなってない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ。とりあえず実験は成功か」

 

 背中のユニットをパージしたトールは、重力に従って地上へと機体を降ろす。

 

 トールが語ったのは今まさにパージしたモノ。

 簡易追加ロケットとでも言うべきそれは、トールが開発したVOBという巨大ブースターの文字どおり簡易版であった。

 本来、長距離移動を高速で行うための手段であるVOBであったが、その汎用性を狙ったトールは、VOBと同じく戦線を強引に突破する手段として、またVOBよりもコストを抑えた量産品としてミニVOBの研究を行っていた。

 此度の戦闘がその実験に相応しいとして、並行して実験データの収集もトールは行わせていたのだ。

 

「途中で火を吹いたり爆散されたら困るからな」

 

 自分で作らせておいてVOBには厳しい目を向けるトールは、今回の実験結果に一応、満足していた。

 当たり前だが、ロケットブースターが途中で爆散するなど明らかに整備不良が原因であり、普通は実践段階まで進んだモノは爆散しない。

 トールの妙な心配に付き合わされる開発陣の苦労が垣間見得た瞬間であった。

 

「さて……」

 

 一言つぶやいたトールは、モニターに映る敵MSへと注意を向けた。

 

 

 ふざけているようにも見えるペイントが施されたピンク色のグレイズ。

 どっしりとした構えを見せるガンダムグシオン。

 

 そして、レンチメイスを片手に佇むバルバトス。

 

 

 容赦ないバルバトスを警戒して少し手前で着地したトールであったが、結果としてその判断は正しかったと言える。

 

 手前でミニVOBをパージした瞬間に、三日月が小さく舌打ちをしていたのだから。

 叩き落とす気満々であったと言わざるを得ない。

 

 

 例のごとく通信を繋いだトールは三日月、昭弘、シノ。そして後方に控えるオルガへと声をかける。

 

「初見となる。こちらトール・イブン・ファルクだ」

 

 語りながら、手に持つウォーハンマーを肩にかける。

 

「諸君らには多くの罪状が出ている。しかし、それらの多くはクーデリア嬢の身柄を確保することで解決できる問題だ。

 率直に問おう、クーデリア嬢の身柄を引き渡したまえ」

 

『ハッ、何を言うかと思えば。いい加減、その台詞も聞き飽きたぜ。

 ……生憎だが、こちらも仕事でね。大人しくお引き取り願おう』

 

「ふむ」

 

 良い返事だ。とトールは思った。

 指揮官としてはともかく、鉄華団という少年たちを纏める団長という立場に限定して見れば、好感を抱ける部類の人間だとも思った。

 

「了解した。

 ……ならば、こちらも全力でお相手させていただく!!」

 

 その声と共にトールは機体を急発進させる。

 

『来たぞ!!』

 

 シノの叫びよりも早く、三日月はバルバトスを発進させ、手にしたレンチメイスを振るった。

 応じて振るわれたトールのウォーハンマーはーー

 

『加速!?』

 

 打撃部の四隅に付けられたブースターを噴かしながらバルバトスのレンチメイスを弾いた。

 

 驚愕に動きを止めた面々の隙をついて集団の中央へと移動したトールは、そのままウォーハンマー・ミョルニルをぐるりと振り回す。

 

 鈍い音と共にグシオンと流星号が弾き飛ばされる。

 グシオンはともかく、流星号の装甲には大きな亀裂が幾重にも入り、その威力の高さを物語る。

 

 遅れて、メイスを持ち直したバルバトスが突撃しメイスを振り下ろす。

 

 トールも回転を止め、ブースターで加速させたミョルニルをぶち当てる。

 

『っ!!』

 

 単純な威力の差でまたもメイスを押し返したトールは続けて、振り抜いたハンマーをブースターによって反対方向へと急速に加速させる。

 

 アーサソールの主兵装たるミョルニルは全長においてグレイズとほぼ同じという超巨大ハンマーである。

 また、打撃部両面の四隅にある窪みにはブースターが仕込まれておりそれらを噴かすことで、急激な加速、反対方向への加速を可能としている。

 当然、これを扱うには専用に調整された腕部を必要とし、なおも無理な動きをすれば右腕ごとぶん取れる危うい武装である。

 

『……!!』

 

 だが、これを自在に扱えるからこそトールはこの機体に乗り続けこうしてガンダムフレームを圧倒するまでの立ち回りを見せている。

 

『っのやろう!!』

 

 バルバトスをハンマーで追いかけ回すトールに、立ち直った流星号が射撃を行う。

 

 しかし、グレイズのライフル程度ではビクともせず装甲部分に弾かれるだけであった。

 

『俺がやる!』

 

 次いで、昭弘のグシオンがロングレンジライフル二丁で狙撃する。

 

「むっ!」

 

 今度は着弾の衝撃によってアーサソールがたたらを踏む。

 

「バスターライフル……いちおう潰しておくべきか」

 

 装甲はなおも抜かれていないものの、その威力を脅威と判断したトールはグシオンへと機体を走らせる。

 

 と。

 

「っ!!」

 

 流星号、グシオン共になぜか後方へと退がる。

 そのことに違和感を覚えたトールは、急停止して地面へとミョルニルを振り下ろした。

 

『? なにしてんだ?』

 

 誰もいない場所にハンマーを下ろしたトールに一同が訝しみながらも、これを好機と流星号が攻勢をかけた。

 

『だめだシノ、退がれ!!』

 

 そこへ、何かに気付いた三日月が声を張り上げた。

 その瞬間ーー

 

『うおっ!?』

 

 ミョルニルを中心として、凄まじい電撃が発生した。

 それは稲妻のように可視化されるほどで、トールの感覚からすれば某携帯獣の必殺技のようにも見えた。

 

 超高電圧のそれは広範囲に渡って広がり、範囲内に収まった地雷が一斉に爆発する。

 

「やはりか」

 

 シノたちの不可解な後退から、もしやと思ったが予想どおりだった。とトールはミョルニルを振り上げて肩に担ぐ。

 

 ミョルニルのもう一つの機能。それは、腰の巨大バッテリーから送られる電力を右腕のチューブを通してミョルニル内部にある機構へと流し込み打撃部から放電するというもの。

 

 バッテリー、専用腕部、ハンマー。どれもが北欧神話の雷神トールを意識して作製された機能であり、アーサソールが『民衆受け』に特化した機体であることを示すものである。

 これを操るトールの姿はまさに神話の神の如しであり、海賊から救われた人々がトールを雷神と同一視したのは正に目論見通りと言えた。

 

「これで終わりか? 鉄華団」

 

『ぐっ!』

 

 ネタ武器と言えど、扱う者が手練れであればそれは十分な脅威となる。それがAMS機構を限界以上に使いこなす輩であれば尚更。

 

 その圧倒的な戦闘能力に怯むのは当然の結果であった。

 ただ一人、敵対者を屠ることに特化した三日月・オーガスを除いては。

 

「っ!」

 

 間合いを測る流星号とグシオンに気を取られた一瞬、背後上方から猛スピードで振るわれるメイスに気付く。

 

 慌ててミョルニルを振り上げるも、ブースターが間に合わずその重量ゆえに押し負ける。

 

「くっ!!」

 

 続けて隙なくメイスが振るわれる。

 仕方なくトールはミョルニルを持つ右腕を軸にして、機体各所に備え付けられた大出力ブースターを噴かし身体を回転させることによってそれを避け、ブースターで加速させたミョルニルでメイスを弾く。

 空中の不利を悟ったバルバトスが即座に距離を取る。

 

 三機のMSに囲まれながらもトールは寧ろそれらを圧倒していた。

 

「さて、次はどう出る?」

 

 戦場の昂り、AMSの負荷によって若干歪みを見せたトールの精神は、狂気の笑みを顔に表出させる。

 

 堪え難い破壊欲求に抗いながらも、トールは冷静な思考と興奮を器用に両立させる。

 常人にはとても耐えられない精神負荷を乗り越えた境地にある彼の精神は異常であり、すでに歪んでいる。

 

 ただし、当の本人は心の底から楽しげであった。

 

 

 

 そんな彼の至福の時を無情にも終わらせる通信が届く。

 

「む。この反応は……」

 

 突如、こちらに接近しながら通信を繋げてきたのはつい先日も感動の再会を果たした親愛なる部下。

 

 武装を全て取り外したストレイドを駆って、モージは告げる。

 この戦闘の終わりを。今後の歴史を大きく歪める交渉を。

 

『独立機動艦隊モージ准尉として、トール一佐にお伝えしたいことがございます』

 

 

 




そろそろ一期が終わりそうです。
あと十話以内と思われ。

そこを区切りとして余裕あればモージくん外伝を書いてみたい欲求に駆られてます。

今後の展開について参考程度に(2回目

  • 光堕ちトールくん
  • 闇堕ちトールくん
  • ド外道トールくん
  • 世にコジマのあらんことを
  • おい、ガンダムしろよ
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