リーファの実兄はキリトの双子の兄 作:ダブルセイバー
2022年11月
埼玉県にあるとある家。
その家にある道場にてある音が響いている。
それは竹刀と竹刀がぶつかり合う音だ。
そして、道場の中には二人の男が、防具をつけて試合をしていた。
これだけ見れば、ただの剣道の試合に見える。
だが、二人の戦いは何かがおかしかった。
「せりゃ!」
「おっと!」
背が若干低い方の男が、胴に目掛け一閃しようとすると、もう片方の背の高い男が、後ろにバク転しながら下がった。
この時点で、既に剣道でないのは明らかだった。
「これでどうだ!」
すると、背の低い男がジャンプし、そのまま着地したての男に向かって、飛び掛かった。
振り下ろされる竹刀。
すると、男は竹刀を上空に投げ、相手の竹刀を白羽取りする。
「なっ!?」
「甘い!」
竹刀を横に投げるように払うと、落下してきた竹刀をキャッチし、そのまま面を打つ。
「おっしゃ!俺の勝ち!」
「くそっ!負けた!」
買ったことに大喜びして男は面を取り、もう一人も悔しがりながら面を取る。
勝った男の名は、桐ヶ谷時雨。
そして、負けた男は桐ヶ谷和人。
「いや、二人とも、今のどう見ても剣道じゃないからね」
そんな二人に呆れたように言う女は、桐ヶ谷直葉。
苗字の通り、三人は兄妹だ。
「勝てばよかろう」
「普通の試合なら、時雨兄、反則しまくりで退場どころか出禁になるよ」
「なら、この試合は俺の勝ちで!」
「ちなみに和人兄も反則しまくりだから。後、反則回数も時雨兄より多いから」
「うぐっ……!」
妹の一言に和人は何も言えなくなり、項垂れる。
「それよりスグ!例のモノくれよ!」
「はいはい。どうぞ」
そう言って、スグは一枚の紙を渡す。
「へへーん!コードゲット!」
時雨が受け取った紙には、12桁の英数字が書かれていた。
それはプロダクトコードだ。
それはSAOと言うVRゲームで使える物で、抽選で数名にしか手に入らない。
VRゲームが趣味の和人や、SAOに興味があった時雨はそのコードが欲しかったため、二人で応募をしたが、二人とも落選した。
そんな中、なんとなく一緒に応募していた直葉が当たり、プロダクトコードをゲットした。
二人はなんとしてもそのコードが欲しかったため、こうして剣道の試合をして、勝った者がそのコードを手に入れることにした。
「それにしてもゲームの何がいいんだが……」
「おいおい、SAOをただのゲームと思うなよ。なんせ、あの天才、茅場昌彦自身が作った奴だぞ。今までのゲームとは違うぜ!」
「その通りだ!俺はβテスターとしてプレイしたけど、あれは凄かった!もう今から待ちきれないぜ!」
「はいはい、わかったよ。あ、もうこんな時間!私、部活に行くから!時雨兄も和人兄も、程々にしてよね!」
そう言い残し、直葉は剣道の用具を持ち、道場を後にする。
「スグがもう出るってことは、サービス開始時間も、もうそろそろだな」
「よし、行くか。時雨、向こうについたら、その場で動くなよ。俺が行くまで絶対だぞ」
「それは振りととってもいいのか?」
「言い分けないだろ!」
和人と言い合いをしながら、時雨は自室のベッドに転がる。
購入したばっかの頭にかぶって使うゲームハード、ナーヴギアを被り、SAOのソフトをスロットに入れる。
「よし、もうすぐ4:00か」
ナーヴギアのディスプレイに映る時間が3:59から4:00になったその瞬間―――――
「リンクスタート!」
時雨はそう唱えた。
暗闇の世界に飛ぶと、目の前に『抽選限定プロダクトコードを使用しますか?』と出てきて、時雨は『YES』を選択する。
そして、暗記しておいたコードを入力する。
『コード確認しました』
確認画面が現れ、そして、次の瞬間、虹色のリングをくぐり、時雨は地面に立っている感覚に襲われる。
ゆっくり目を開けると、そこはPVで見た、SAOの世界だった。
「ここがSAOか……」
「おい、ちょっと!」
辺りをぐるぐる見渡していると、背後から声を掛けられる振り向く。
そこには見知らぬ男が立っていた。
「時雨か?」
「あ、まさか、和人か?」
「なんだよ、その見た目。好青年か?全然似合ってないぞ」
「そう言うお前こそ、全然似合ってないぞ、和人」
「別にゲームの中でぐらいいいだろ?それと、ここでは俺の名前はキリトだから、そう呼んでくれ」
「わかったよ。俺はシグだ。それで、まずは何をするんだ、先輩?」
「先輩はやめろ。まずは武器だな。初期装備じゃ、心もとないし、この先に安い武器屋があって、最初の所持金額でも買えるから、そこに行くぞ」
キリトの後に続き、走っていると、また声を掛けられた。
「お~い、そこの兄ちゃんたち!」
振り向くと、そこにはまた好青年な男がいた。
「あんたらβテスターじゃないか?」
「俺は違うが、こっちはそうだぞ?」
「やっぱりな!迷いのない動きでそうじゃないかって思ったんだよ!それで、ちょっと頼みがあるんだが、俺に戦い方をレクチャーしてくんねぇーかな?」
男の頼みに、キリトは驚く。
「頼む!この通りだ!」
手を合わせて頼んでくる男に、キリトは笑った。
「ああ、いいぜ」
「本当か!?助かるぜ!俺はクライン!よろしくな!」
「キリトだ。そして、こっちが」
「シグだ。こちらこそ、よろしくな」
「うおおおおおおおっ!!?」
武器屋で武器を購入すると、三人は町を出てすぐのフィールドに向かった。
クラインはフレンジ―・ボアと言う、雑魚モンスターに突進され、仰向けに倒れる。
「ま……股座が………!」
股間を抑え、蹲るクラインにキリトは呆れたように笑う。
「痛みはないはすだぞ」
「………あ、そっか」
立ち上がったクラインは、キリトにどう戦えば良いのかと尋ねる。
「大事なのはモーション。モーションを起こしてソードスキルを発動、後はシステムが命中させてくれるって」
そう言うとキリトは、早くも手に入れた《投擲》スキルを使い、足元の小石をフレンジ―・ボアにぶつける。
すると、フレンジ―・ボアはキリトに狙いを定め、突進してくる。
孫攻撃をキリトは片手剣で受け止めつつ、躱す。
「モーションか………」
「そうだな……グッと力を込めて、そのあとスパンッて打ち込む感じだ!」
そう言い、フレンジ―・ボアを蹴って、クラインの方に向かわせる。
クラインは言われたことをつぶやきながら、曲刀を抜き、構えを取ると、システムがスキルを認証し、ソードスキルが発動する。
《曲刀》スキルの《リーバー》がフレンジー・ボアの身体を切り裂き、HPを大幅に削る。
「おっ!やった!」
「気を抜くなよ!奴はまだ健在だ!」
隙だらけになったクラインの背中に、フレンジー・ボアが突進をしようとする。
すると、その間に割ってシグが立つ。
キリトと同じ片手剣を構え、そして、一気に降る。
《片手剣》スキルの《スラント》が発動し、フレンジー・ボアの残りのHPを吹き飛ばす。
三人に経験値とコル(SAO内での通貨)、そして、今の戦闘で手に入れたアイテムが目の前に現れたウィンドウに表示される。
「悪いな、クライン。美味しい所はもらったぜ」
「ちぇ、ズリィぞ、シグ」
「隙だらけなお前が悪い」
「ま、シグが汚いのは何時ものことだから。それより、クラインも、フレンジー・ボア程度に苦戦してたらこの先やっていけないぞ。アレ、RPGで言うと、スライムクラスのモンスターだからな」
「す、スライムクラス!?俺はてっきり中ボスぐらいかと……」
「どこの世界に、中ボスを序盤の街を出た所に配置すんだよ」
三人で笑いながら、クラインの「誰が一番多くモンスターを狩れるか勝負と行こうぜ!」の発言に乗り、三人は狩りを始めた。
その後、夕方になるまで三人はモンスターを狩りまくり、気が付けば、時刻は17時13分になっていた。
「しっかし、信じらんねぇよな。ここがゲームの世界だなんてよ」
クラインが夕焼けの空を見て言う。
「マジこの時代に生まれて良かったよ」
「大げさな奴だな」
「だって初のフルダイブ体験だぜ!」
「てことは、ナーヴギア用のゲームもSAOが初めてなのか?」
「どっちかって言うと、SAOの為にナーヴギアも揃えたって感じかな。一万人限定の初回ロットを手に入れれたのは、我ながらにラッキーだった。ま、そんな中でも、βテストに当選したキリトはその十倍ラッキーだけどな。そう言えば、シグも抽選で数名にしか当たらないプロダクトコードが当ったんだよな。お前も中々にラッキーだな」
「妹が当てたんだよ。ま、経緯はどうあれ手に入れれたのはラッキーだった」
「そうだ、キリト。βテストの時はどこまで行けたんだ?」
クラインの質問に、キリトは上空、もといアインクラッド城を見上げて言う。
「二ヶ月で八層。でも、今度は一ヶ月も掛けない。一週間で第一層をクリアしてやるさ」
キリトはそう言って、笑う。
「テメー……相当ハマってんな」
「正直、βテスト期間は、寝ても覚めてもSAOのことばかり考えてた。この世界は仮想だけど、現実よりもずっと生きてるって感じがある。この剣一本でどこまで行けるような気がしてな………さて、狩りを続けるか?」
「おうよ!……って言いたいところだけど、腹が減ってな………一度落ちるわ。実は、17時30分にピザの配達予約してんだ。じゃ、また後でな」
クラインはそう言って立ち上がる。
「そうだ!この後、別のゲームで知り合った奴等と会う約束してんだけど、よかったら会わないか?」
クラインがそう言うと、キリトは少し暗い表情をする。
「あ……いや、別に無理にとは言わねぇよ。その内、紹介する機会もあるだろうしさ」
「ああ……すまない」
「謝ることはねぇって!レクチャーしてくれたありがとよ!このお礼は、いつか精神的にな」
キリトの肩を叩き、クラインは手を差し出す。
「これからもよろしくな」
「……ああ」
「シグもな!また勝負しようぜ!」
「いいぜ!次も負けねぇがな!」
拳を軽くぶつけ合い、クラインは右腕を振り、ログアウトをしようとする。
「あれ?」
「ん?どうした?」
「いや……ログアウトボタンがねぇーんだよ」
「は?何言ってんだ?ちゃんと底の方に………」
キリトもウィンドウを操作し、確認するが、その手を止める。
シグもまさかと思い、調べるが、確かにメニューの中に《ログアウト》のボタンがなかった。
「バグか?いや、ログアウトが出来ないなんて、今後の運営に関わるぞ……クライン、GMコールしてみてくれ」
「もうしてるって!だけど、全然反応がねぇんだよ。他にログアウトできる方法ってあったっけ?」
「…………いや、ない。プレイヤーがログアウトするには、メニューを操作する以外には」
「そうだ!ナーヴギアを頭から外しちまえば!」
「無理だ。俺達は現実の体は動かせない。ナーヴギアが、身体を動かす信号を全て、遮断してる。外に居る誰かが、外さない限りは………」
「そんな!俺一人暮らしだぜ!誰もいねぇよ!」
「俺たちは、母さんと妹がいるから、晩飯の時には気付いてもらえるだろうけど………おかしいと思わないか?」
「変って、そりゃバグなんだし、変に決まってるだろ?」
「いや、バグにしたって、これは異常だ。こんなの、今後の運営に支障を来たすぞ」
「…言われてみりゃ確かに」
「普通ならサーバーを一時停止して、プライヤーを全員ログアウトさせるはずなのに………運営からのアナウンス一つ無いなんて」
キリトがそう言った瞬間、突然鐘のような音が鳴り響いた。
突然のことに驚いていると、体が鮮やかなブルーの光に包まれた。
光が収まると、三人は《始まりの町》にいた。
他にも、たくさんのプレイヤーたちが集まっていた。
もしかしたら、全プレイヤーが集まっているかもしれない。
数秒経ち、周りがざわつき始めた。
徐々にそれが苛立ち変わり始めた頃、空に【System Announcement】の文字が浮かびあがった。
ようやく、運営側からのアナウンスが始まる。
全員がほっとし、肩の力を抜いた。
しかし、夕焼けに染まった空の一部がどろりと垂れ下がり、空中でとどまった。
そして、そのどろりとした塊が形を変え20メートルはある人間の形になった。
形はSAOに出てくるGMの恰好をしている。
だか、そのGMのローブの中に顏は無く、袖の中には腕も無い。
肉体自体がない。
とりあえずGMのアバターの恰好だけを用意しただけみたいだ。
GMの両手がゆっくりと揚がり言葉が放たれた。
『プレイヤーの諸君。私の世界へようこそ』
『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』