デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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五十嵐響子編

 

 私の取り柄は家事

 

 お掃除すると家がピカピカになって

 

 家族のみんなが笑顔になる

 

 お料理もお洗濯も

 

 家族のみんなが喜んでくれるから好き

 

 でも家事と同じくくらい

 

 好きなことが出来ました

 

 ―――――――――

 

「みんなー! 私たちのライブ楽しんでくれましたかー!?」

 

 イェェェェェイッ!

 

「また私たちのライブに来てくれますかー!?」

 

 イェェェェェイッ!

 

「私たちもまた皆さんに会えるのを楽しみにしてまーす!」

 

 ワァァァァッ!!!!

 

 今日、私は朝から新幹線に乗って東京に来ました。

 そして夕方からとあるドーム会場で"ピンクチェックスクール《P.C.S》"のスペシャルライブをして、こうして無事に終えることが出来ました。

 普段の私は主に鳥取を中心に活動しているんですけど、ファンの皆さんのお陰でこのユニットは全国各地で活動する大人気なユニットなので最近では色んな場所に出掛けてます。

 ファンの皆さんには本当に感謝してますが、私をここまで育ててくれたプロデューサーさんには特別な感謝をしています。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 私が初めてプロデューサーさんに出会ったのは、本当に偶然。

 私の住む実家の近所にはアパートがあって、そのアパートに新しく入居したのがプロデューサーさんでした。

 

 毎朝私が挨拶するとプロデューサーさんも返してくれて、その反応や声とかを見聞きしたら『あ、この人は優しい人だ』って直感的に思ったんです。

 案の定、プロデューサーさんは本当に優しい方で、顔見知りだったくらいの私がゴミ出しで大変そうにしているところを手伝ってくれたんですよ。

 

 それからプロデューサーさんは私をアイドルにってスカウトしてくれて、この人とならって私もアイドルになることを決めました。

 アイドルは可愛い服を着て、ステージでキラキラ輝いてて、みんなの憧れの存在。

 でもその裏ではとてつもない努力をしなくちゃいけなくて……驚いたと同時にとてもやる気があふれてきました。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 プロデューサーさんもそんな私のことを優しく応援してくれて、だから私はここまで来れたんです。

 

「プロデューサーさん!♡」

 

 控室に戻った私はプロデューサーさんの胸に飛び込みました。

 事務所の人たちやファンの皆さんには内緒で、私はプロデューサーさんとお付き合いしているんです。

 ユニットを組んでたりするアイドル仲間の子たちには知られちゃってますけど……。

 

 でもでも、私のプロデューサーさんへの気持ちは本気です!

 それにプロデューサーさんだって『大切にする』って言ってくれましたもん♡

 

 だけど、

 

「あぁ、お疲れ様、響子。抱きつくのはあとにして、メイクを落として着替えるのが先だ」

 

 プロデューサーさんってお仕事の時はとってもドライなんですよね。

 それだけ真面目にお仕事に取り組んでる証拠なんでしょうけど、もうちょっと二人きりの時みたいな甘い一面を見せてくれてもいいと思うんです。

 

「むぅ……」

「何をむくれてるのか理解出来ないが、むくれる前にメイクを落とせ」

「は〜い〜」

 

 私がプロデューサーさんから離れると、プロデューサーさんは控室から出ていってメイクさんと衣装さんを呼びに行きました。

 

「ざ、残念だったね、響子ちゃん……」

「でもまだお仕事中だから仕方ないよ、響子ちゃん」

 

 卯月ちゃんも美穂ちゃんもフォローしてくれるけど、やっぱり私の気持ちは収まらない。

 こんなにこんなに大好きなのに……私ばっかりプロデューサーさんを好きみたいで切ないんだもん。

 

「プロデューサーさん、私のこと本当は嫌いなのかな……家事くらいしか取り柄がないから」

 

 だから私はつい心にもないことをこぼしちゃいました。

 卯月ちゃんも美穂ちゃんも私の親友だから、二人の前だとちょっと弱音を吐いちゃうんです。

 

「そ、そんなことないよ! ね、美穂ちゃん!?」

「うんうん! 響子ちゃんの考え過ぎだよ!」

「そうなのかなぁ?」

 

「そうだよ! だって今回のライブは響子ちゃんのプロデューサーさんがプロデュースしたライブなんだよ?」

「響子ちゃんが一番輝けるライブだって、セットリストやダンスを見れば分かるでしょう? 全部響子ちゃんのプロデューサーさんがイチから考えたんだよ?」

 

 確かに卯月ちゃんたちが言うように、今回のライブは私たちのユニットの単独ライブだったけど、ダンスでは私が一番センターになることが多かった。

 ライブの内容も―――

 

 ススメ☆オトメ〜jewel parade〜

 Little Match Girl*P.C.S ver

 With Love*P.C.S ver

 七彩ボタン*P.C.S ver

 S(mile)ING!

 Naked Romance

 恋のHamburg♪

 

 トーク

 

 明日また会えるよね*P.C.S ver

 恋のHamburg♪*島村卯月ver

 S(mile)ING!*小日向美穂ver

 Naked Romance*五十嵐響子ver

 桜の風*P.C.S ver

 ラブレター

 

 ―――でした。

 

 アンコールでも3曲歌って、本当にやってる私たちも楽しんで出来たライブ……それを考えてくれたのが私のプロデューサーさんだもん。

 私は二人のお陰で少し頭を冷やすことが出来ました。

 

 ―――――――――

 

 ライブ後は現地解散で私はプロデューサーさんの運転で今夜泊まるホテルに戻ってます。

 私はレッスンで東京に来る度にお世話になってるビジネスホテルですけど、実は恋人になって初めてプロデューサーさんと同じお部屋にお泊まりするので、内心ドキドキだったりします♡

 

 明日は午後からライブの打ち上げが予定されてて、それが終わってから私たちは鳥取に帰るんですけど、それまでプロデューサーさんと二人きりでいられるから嬉しい♡

 

「ホテルに戻る前にちょっと寄り道していいか?」

「? はい、いいですよ? コンビニとかですか?」

「いや、そんなんじゃない」

 

 プロデューサーさんはそれだけ言うと、あとは何も話さずに車を走らせました。

 

 ―――――――――

 

「ここって……?」

 

 そしてプロデューサーさんが寄ったのは、東京湾の近くに最近出来た大きな公園。

 プロデューサーさん、海が見たかったのかな?

 

 プロデューサーさんに促されて私も車から降り、海が見える遊歩道を歩きました。

 その際、プロデューサーさんはさり気なく手を恋人繋ぎで繋いでくれたので、これはデートに誘ってくれたんだって思いました。

 私たちのデートの合図は恋人繋ぎすることだからです♡

 

「ライブ、大成功で良かったな。とても輝いてて、可愛かった……」

「えへへ、そう言ってもらえて嬉しいです♡」

 

 二人きりになるとプロデューサーさんはとても私を甘やかしてくれるから、この瞬間が一番好き♡

 さっきまでは少し拗ねちゃってましたけど……てへへ。

 

「でもあの輝いてるアイドルが自分の恋人だと思うと、ついファンに嫉妬してしまうよ。まあ、ファンからすれば俺はもっと嫉妬される対象になるんだがな……」

 

 嫉妬しながら苦笑いするプロデューサーさんは、いつもと違って可愛らしくて私は好き♡

 だってプロデューサーさんの本当の素顔だから♡

 

「私をアイドルにしたのはプロデューサーさんですよ? そしてそんな私を惚れさせたのもプロデューサーさんです♡ 私はちゃんと責任を取りますから、プロデューサーさんも責任、取ってくださいね?♡」

 

 そうじゃなかったら怒っちゃいますからね?

 

「あぁ、勿論だ。大切にするよ」

「大切にし過ぎてもダメですよ? たまには強引なくらいがいいってお母さんがお父さんに言ってましたもん」

「それは人それぞれだろ」

「でも、プロデューサーさんって自分のことそっちのけで、私第一なんですもん。嬉しいですけど、もっとプロデューサーさんからも私に甘えてほしいです」

「十分甘えてるんだけどな、これでも」

「そうですか〜?」

 

 普段からあんまり甘えて来ないくせに……。

 なのに私のことは甘やかしてくれる……なんかそれだとフェアじゃない気がして、私はプロデューサーさんから頼りにされてない気がして不安になっちゃうんですからね?

 

「そうとも。朝昼晩と料理してもらってるし、身だしなみもチェックしてもらってるし、ワイシャツとかもアイロンかけてもらってるし……たまに自分が情けなくなるくらいさ」

「私はもっともっと甘やかしたいです……」

「あれ以上やられたら俺はダメ男になる」

「それもいいですね♡ 私がいないと生きていけないみたいで♡」

「可愛い顔してなんてこと言ってるんだ……」

「だってそうすればプロデューサーさんは私から離れないじゃないですか♡」

「そうしなくても離れる気はないよ、俺は。昔は同期の奴らとか同級生の奴らが結婚するって聞くと祝福する反面、焦りみたいなのがあったが……俺がこれまで独身だったのは響子と出会うためだったんだと思うようになった」

 

 そんな優しい声色で耳元で囁くの……ズルいです。

 胸の奥がドキドキして……苦しいのに、心地いい♡

 大好きな人がそんな風に自分とのことを思ってくれてるなんて、幸せ過ぎてどうにかなっちゃいそう♡

 

「プ、プロデューサーさん……♡」

「俺は世間一般からすれば道を外してる人間になるのかもしれない……でも響子のことは本当に好きなんだ。だからこれからも大切に大切にこの恋を響子と共に育みたい」

「……私も、です♡ プロデューサーさんとずっと一緒にいたいです♡」

 

 キレイな夜景の見える場所で……こんな素敵な場所で、まるでプロポーズされてそれにお応えしたみたいになっちゃってます。

 でも嬉しくて、幸せ♡

 

「それじゃあ、そろそろホテルに戻るか。ごめんな、付き合わせて」

「いえいえ、幸せでしかありませんでしたから♡」

「そう思ってもらえて良かったよ」

「えへへ、ホテルに戻ったらお弁当食べましょうね♡ ちゃんと今回も作ってきてますから♡」

「お、それは楽しみだな」

「ちゃんとプロデューサーさんが大好きなハンバーグ作ってありますからね?♡」

「最高だな響子は」

「プロデューサーさんの喜ぶ顔が見たいですから♡」

 

 こうして私たちはホテルに戻り、一晩同じお部屋で過ごしました♡

 プロデューサーさんは私の作ったお料理を素敵な笑顔を浮かべてたくさん食べてくれて、私はまたプロデューサーさんへ私の愛がたくさん入ったお料理をご馳走したいって思いました♡

 

 あ、同じお部屋でしたけど、え……えっちなことはしてませんからね?

 同じベッドで……プロデューサーさんに優しく抱きしめてもらいながら一緒にお休みしただけですからね!?―――

 

 五十嵐響子*完




五十嵐響子編終わりです!

私の中でお気に入りアイドルトップ10に入る響子ちゃんなので、頑張って書きました!
ヤンデレ系にしようとも思ったんですが、やはり響子ちゃんは真っ直ぐな愛情をくれると思ったのでこのようにしました!

お粗末様でした☆

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