デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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速水奏編

 

 日常が退屈だと思ってた

 

 でもそれに甘んじてた

 

 刺激を求めても

 

 私に刺激を与えてくれる人は

 

 現れなかったから

 

 だからかな

 

 その存在を見つけた時

 

 それまで見てきた世界が

 

 ガラリと変わったの

 

 ―――――――――

 

「あら、奏さん? 今日はオフのはずでは?」

 

 今日はオフで事務所にいないはずの私に声をかけてきたのは、ちひろさんだった。

 

「ええ、オフね。でも大切な用事があるの」

 

 それだけ言うと、ちひろさんは察してくれたのかニコッと笑って「ごゆっくり〜♪」と手を振って去っていく。

 

 ちひろさんが察してくれたのは、私がこれから自分の専属プロデューサーさんとデートに行くってこと。なんの茶化しも無しに、男女の関係としてね。

 事務所のお偉いさんたちには内緒だけど、ちひろさんやアイドル仲間のみんなには色々とフォローしてもらって、私たちは今の関係を維持してる。

 アイドルとそのプロデューサーがこんな関係になっていいのか、なんて言われてしまうだろうけど、これは私が望んだ関係なの。

 

 私のプロデューサーさん……私より9歳年上の恋人は私の初めてを全て奪って行く、そんな人。

 見た目は草食系なのに、目標を定めれば確実に周りから埋めていって確実に仕留める……そんな狡猾な人なの。

 私は大人っぽく見られがちだけど、あの人の前だとただの何も知らない少女になる。だから、あの人にスカウトされたから、私はアイドルになったんだと思ってる。

 そして今の関係も大声には出来ないけど、幸せだとハッキリ言えるわ。

 

「〇〇さん……♡」

 

 彼の名を呼び、彼がこの事務所で使う小さなオフィスのドアを開ければ―――

 

「奏……待ってたよ」

 

 ―――大好きな彼が私にしか見せない表情で出迎えてくれる。

 

 プロデューサーさんは職業病なのか、営業スマイルを絶やさない。でも彼は私の前だけでは、その仮面を外してくれる。だから私はこの上ない幸せを感じる。

 

 この人に愛される度

 この人の大切な人である実感

 この人から向けられる優しさ

 

 全てが私に幸せを運んでくるの。

 

「そんなに待ってたなら、貴方のマンションの部屋で待ち合わせても良かったのよ?♡」

「それはまだ早いかな。奏が心からそう望むなら、合鍵渡すよ」

「もう、いじわる♡」

 

 プロデューサーさんは私の心を読んでるみたいに言葉を返してくる。さっきの言葉も私がまだそれを望んでないって分かっての言葉だもの。

 

 私は彼のことが無条件で好き。私が結婚出来るようになれば、すぐにでも結婚したいくらい好き。

 でも逆に好きって想いが募れば募るほど、嫌われたくないと思って二の足を踏む。彼は私のそんな面倒くさい気持ちを察してくれて、私の気持ちが固まるのを待ってくれる。

 かと言って、強引に私を奪って行く豪胆さもある。

 

 つい先日も、

 

『奏をもっと幸せにしたいから、今日こそ抱くね』

 

 なんて言われて、ホテルに連れかれちゃった♡

 私がいつまでも焦れったくしてると、彼はそれを察してくれる。

 それは万が一、何か不都合なことがあった際に『俺のせいに出来るから』と私を守ってくれてるの。

 

 彼は絶対に私を"悪"にならないように行動してくれる。

 それをちゃんと私は分かってる。だからこそ、これからも彼の特別でいたいと強く願ってる。

 

 まあ、流石に初めての時は痛かったけど……彼のモノになったという事実は涙が出るほど嬉しかった♡

 

「それで、何処かリクエストはあるかな?」

「それが何も浮かばないのよね」

「それは参ったね」

「ええ……私にとって〇〇さんの側が一番特別な場所だから、このままでも楽園にいるみたいなのよね♡」

 

 感じているままを彼にぶつけると、彼は嬉しそうに微笑んで、私の頬に手を伸ばしてくる。そしてその大きな手で、私の頬をそっとなぞるように撫でてくれる。

 

「なら今日はずっと俺の側にいてね」

「今日だけなの?♡」

「毎日だと俺も奏も仕事出来なくなるからね」

「それもそうよね♡」

 

 二人で小さく笑う。そして今だけはそっと互いの唇同士を重ね合わせるだけに留める。

 

「……好きよ、〇〇さん♡」

「俺も奏のことが好きだよ」

 

 ―――――――――

 

 待ち合わせの事務所をあとにした私たち。そして向かった先は私の買い物に付き合うという名目のデート。

 でも買い物なんてしない。私が欲しいものはプロデューサーさんからいつも貰ってるし、用意してくれてるから。

 

「どうぞ」

「お邪魔します♡」

 

 だから私たちは真っ直ぐにプロデューサーさんのマンションにやってきた。

 何度も泊まったことのある見慣れた部屋。家具も少なくて殺風景だけど、私は割りと好き。多分、プロデューサーさん効果なんでしょうけどね♡

 

「何か飲む?」

「いらない……それより♡」

「あはは、はいはい」

「あむっ♡」

 

 飲み物なんて今の私に必要ない。今はただ、私は貴方とのキスがしたい。

 

 まだ靴も脱いでない。なのに私の願いを彼は叶えてくれる。嬉しい……幸せ……好き……色んな感情が募って、気がつけば私は彼の唇や舌をはしたなく貪るように啄んでた。

 

 カチカチと時たま私は歯を当ててしまう。どれだけ必死なのって思ってる中の私。でも止められない本質の私。

 そしてそんな私を愛おしげに抱き寄せたまま、何も言わず包み込んでくれる愛しいプロデューサーさん。

 

 好き……大好き……♡

 

「っはぁ……はぁはぁ、〇〇さん♡」

「はぁはぁ……何かな?」

「はぁはぁ、大好き……♡」

「俺も、大好きだよ」

 

 それだけ言うと、私はまた彼とのキスを求め、彼もそれに応えてくれた。

 今も前もキスしましょ、なんて自分で何度も何度もこの人に誘ってたのに、今は誘うどころか吸い込まれるようにキスしてしまう。

 仕事中なんてプロデューサーさんのこと考えてばっかなのよね。でもそれくらい好きなのよ、本当に。

 

「〇〇さん、ベッドへ連れて行って♡」

「うん、もちろん」

 

 私の願いを聞いてくれた彼は、容易く私を持ち上げる。お姫様抱っこなんて純白なイメージで苦手だったけど、プロデューサーさんのせいで癖になっちゃったの♡

 それにこのままだとキスもしていられるから、余計に気に入ってしまっているのかもしれない♡

 

 ―――――――――

 

 キスしたまま、彼の狭いベッドに降ろされた私。でも私は絶対に彼の肩に回した両手を解かない。だから彼も私に覆い被さるような形のまま。

 

「はぁはぁ、はぁはぁ……奏」

「んっ、何?♡」

「そろそろ腰がしんどい」

「ふふ、なら許してあげる♡」

 

 私がそう言うと、彼は一旦私から体を離し、そしてすぐ隣に寝そべった。そして私はというと、早速寝そべった彼の体に覆い被さる。

 

「マウントポジションゲット〜♡」

「うわ〜、やられる〜」

 

 棒読みにもほどがあるけれど、プロデューサーさんの目はとても嬉しそうに笑ってる。だから私は彼の体を自分の好きにさせてもらうの♡

 首筋や耳に軽く噛み付いたり、ネクタイを解いてワイシャツのボタンを2つくらい外してたら見える素肌にキスマークを作ったり……これでもかと私のわがままをさせてもらう♡

 

「そろそろダブルベッド買おうかな〜」

 

 私がプロデューサーさんの胸元にキスマークを付けてる最中、彼はふと思い出したかのようにつぶやいてくる。

 だから私は作業しながら彼に『どうして?』と視線を向けた。

 

「このままでもいいんだけど、奏ともっと色んなことしたいって思うからね」

 

 その何気ない言葉に私の胸はドキッと悲鳴をあげる。

 "色んなこと"なんてこれ以上何をしてくれるの?♡と期待してる私がいた。

 

「っはぁ、これ以上私を幸せにしてどうするつもりなの?♡」

「どうもしないよ」

「うそつき♡」

「酷いな〜」

「ホントのことじゃない♡ 私、もう〇〇さん以外、眼中にないのよ?♡」

「ならもっとそうなってくれるようにもっと幸せにしなきゃ」

「…………ばか♡」

 

 私が更にプロデューサーさん無しでは生きていけない女になるじゃない。しっかりと責任とってよね。言わなくてもプロデューサーさんは端からそのつもりなんでしょうけど♡

 

「奏」

「なぁに?♡」

「しばらく派手目の衣装を着る仕事ないよね?」

「それはプロデューサーさん次第じゃない?」

「そうだね。ならしばらく派手目の衣装着ない仕事になるから」

「それはどういう――」

 

 意味なの?と私が訊ねようとしたけど、その前に私はプロデューサーさんに胸元を吸われてた。

 

「あっ、んんっ♡」

 

 ちょっと痛い……でもその痛みはプロデューサーさんが私に与えてくれる幸せ。だから私は自分でも意識してない内に、声がもれる。

 

「あぁっ、〇〇、さんっ……んぁっ♡」

 

 キスマークを付けられる側になるのは慣れてない。でも今日はプロデューサーさんがやる気になってる……嬉しい♡

 でもされてみて毎回思うけれど、よくプロデューサーさんは声を我慢出来てるわね。私には我慢なんて、無理。

 

「あんっ、んぅっ、だめぇっ♡」

「次、背中にいいかな?」

「はぁはぁ……っ♡」

 

 私がいいって言う前に、プロデューサーは私をベッドにうつ伏せに寝かせる。そしてそっと私の上着をずらすと、そこが熱くなっていく。

 

「ん〜っ、んんっ、んぅ〜っ♡」

 

 だめ、声我慢出来ない。プロデューサーさんの枕に顔を埋めてないと、大声を出してしまってる。

 あぁ、だめっ……イッ♡

 

「っはぁ……奏? 凄い脚がピーンとなってるけど、大丈夫?」

「…………ばかぁ♡」

 

 プロデューサーさんが凄いことするから、私の下着とかスカートとか、ベッドのシーツとか大変なことになっちゃったじゃない。

 

「着替えは置いてあるのがあるから大丈夫だよ」

「うぅ〜♡」

「シーツも別の出せばいいだけだしね」

「うん……♡」

「一緒にシャワー浴びる?」

 

 彼の問いに私は何も言わず、首を横に振る。

 

「じゃあ、この続きする?」

「……する♡」

 

 すると彼は私の肩を掴んで、仰向けにさせた。

 私を見下ろす彼の視線とぶつかると、私は悦びで背中にゾクゾクとした電気が走る。

 

「こんな可愛い奏、誰にも見せたくないよ」

「そう♡」

「でも逆に見せびらかしたくなる。俺の彼女可愛いだろって」

「もう♡」

 

 わがままなんだから♡

 

「奏、好きだよ。もっともっと君を幸せにする」

「して……私は〇〇さんに幸せにしてもらいたい♡」

「愛してる」

「私も……私も愛してるわ♡」

 

 それから私たちは何度も何度もキスをして、言葉以上の愛を伝え合った。

 でもその代償に、私は今まで以上にキスされないと壊れてしまう体になったわ。

 責任とってもらわなきゃ♡―――

 

 速水奏♢完




速水奏編終わりです!

受けに回る奏ちゃんってのもありかなと思ってこうしました!

お粗末様でした☆

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