デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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池袋晶葉編

 

 私はずっと一人だった

 

 家庭でも

 

 学校でも

 

 外にいても

 

 しかし天才というのは孤独なものだ

 

 だからそれでいいと思ってた

 

 なのに

 

 私に人の温もりを与えてくれる人が現れた

 

 ―――――――――

 

「はい、じゃあ今回のゲストは理系アイドルの池袋晶葉ちゃんでした! また来週〜!」

「ありがとうございました」

 

 今日の私は仕事でバラエティ番組の収録に臨んだ。

 今回のテーマはロボットだということで、専属プロデューサーが私にピッタリだとこの仕事を貰ってきてくれたのだ。

 アイドルというのは未だに慣れないところもあるが、自分でもそこそこ上手く出来るようになってきたと思っている。

 

 出演者たちやスタッフたちに挨拶をして回り、私はやっと自分の控室へ戻った。

 

「ふぅ……ライブとかラジオなら慣れてきたが、やはりテレビの仕事となると流石に緊張するな」

 

 小さく今回のことをぼやきながら控室へ入った私。

 すると、

 

「でもだいぶ自分から話せてたし、いい表情をしてたぞ?」

 

 中には待っていてくれたプロデューサーが私のことを褒めてくれた。

 

 プロデューサーは半年くらい前から私専属のプロデューサーに変わり、ここまでずっと私を支えてきてくれた人だ。

 そして私に人との繋がりの温かさを改めて教えてくれた人でもある。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 私は幼かった時から、父の影響もあってロボットが好きだった。

 アニメではなく、自分の手で作ったロボットが。

 

 だから同級生や歳の近い奴らとは話が合わなかった。

 話をしたとしても向こうがついて来れず、私もあまり人に進んでロボットの話なんてしないで、家で自室に籠もってロボット製作に没頭していた。

 

 そんな私に両親は何も言わなかった。

 よく言えば私のしたいようにさせてくれていたのだろう。

 ロボット製作において色々と勉強もしていたから、学校の成績も悪くはなかったしな。

 それに私の父親も技術者で家に何日も帰ってこないなんて当たり前だから、母親も父親のせいで慣れていたのもあって、私が部屋に籠もっていてもとやかく言わなかったし、会えば普通に親子での会話もしていた。

 

 私もそれはそれでありがたかった。

 好きなことをしていても誰にも邪魔されなかったから。

 

 でも……心の何処かでこの気持ちを共有出来る仲間が欲しかったんだ。

 そんな時は気晴らしに家から少し離れた場所にある公園で自作ロボットの試運転をしていた。

 そうしていると自分もこの世界の一員になれた気がしたから。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 そこに当時スカウトで外回りをしていたプロデューサーが私へ声をかけてきて、その日から私とプロデューサーの関係が始まったんだ。

 

 今ではアイドルとプロデューサー、技術者と助手……そして彼氏彼女という関係になっている。

 自分でもどうしてこうなったのか不思議でたまらないが、私も根っこはただの女の子だったということだ。

 それに誰もが私を無視していたのに、そこへ私を一人の女の子として見てくれるプロデューサーに出会えば、錯覚とはいえ求めてしまうものだ。

 

「プロデューサーがそう言ってくれるなら、今日の仕事はいい出来になっただろうな♡」

「あぁ、夢中でロボットの話をする晶葉はとても可愛かったぞ」

「め、面と向かって可愛いとか言うな……バカ」

 

 未だに可愛いなんて言われるのは慣れない。

 というか好きな人に可愛いなんて言われても、どう返せばいいか分からないんだよ。

 

「バカは酷いなぁ。ファンを除いて俺くらいだぞ、こんなに晶葉大好き人間は?」

「はいはい分かった分かった。分かったからメイクさんたちを呼んできてくれないか? もう仕事は終わりなんだろ?」

「おう、今日はこれでお終い。今呼んでくるから、晶葉は休んでてくれ」

 

 プロデューサーはそう言うと控室を去っていく。

 まだ心臓がドキドキしてる……ぐぬぬ、プロデューサーと彼氏彼女の関係になれたのは嬉しいが、こちらの気持ちをいつも掻き乱してくるから困りものだ。

 やはり12歳も歳が違うと恋愛の仕方にも余裕が出るものなのだろうか。大人になるというのは本当に難しいことだな。

 

 ―――――――――

 

 私たちがテレビ局から出ると、辺りはもう真っ暗だった。

 

「もう夜の8時過ぎか……晶葉、今日は晩飯どうする?」

「…………実はな、プロデューサー」

「?」

「父親がアメリカの大学に技術者の一人として呼ばれてね、母親も心配で一緒に渡米したんだ」

「へぇ、お父さんすごいじゃないか」

「あ、あぁ、あんな父親でもやはり技術者としては立派な人間だからな」

「それじゃあ今夜は一人でお留守番な訳だ。偉いな晶葉♪」

 

 プロデューサーはそう言うと私の頭を子どもの頭でも撫でるかのように撫でてくる。

 撫でられるのは嬉しいが、やはり子ども扱いされるのはちょっと心外だ。

 私だって女の子で……今はプロデューサーの彼女なんだからな。

 

「……今夜だけじゃない」

「ん、そうなのか? まあでも晶葉くらいの歳なら親が旅行とかで留守の時はテンション上がるじゃん? 明日と明後日は仕事もレッスンもないし、好きなことやって過ごせよ」

「…………」

「……晶葉?」

 

 テレビ局の玄関前ではあれなので、私はプロデューサーの袖を引っ張って駐車場へ向かった。

 

 ―――――――――

 

「なんだよ、何か話し難いことでもあるのか?」

 

 車に乗り込むと、プロデューサーは私にそう問い掛け、顔を覗き込んでくる。

 まあ当然の反応といえばそうなんだが……私にとってはかなり勇気がいることなんだ。

 

「なんでも言えよ。俺は晶葉のためならなんだってするぞ!」

 

 そんなの知ってる……だからこそ私はアイドルになれて、未熟ながらも仕事が出来てるんだからな。

 

「…………えっと、ね?」

「うん」

「両親が帰ってくるのは2週間後なんだ」

「うんうん」

「だからその……それまでプロデューサーのマンションに泊まっちゃ、ダメ?」

「うんうん……って、えぇ!?」

 

 ナイスリアクションだな。流石は私のプロデューサー。

 でも私だって本気なんだ。そう簡単には引き下がらないぞ。

 

「う〜ん……」

「あの家は私ひとりでは広過ぎる……」

 

 それに―――

 

「プロデューサーはさっき私のためならなんでもしてくれるって言ったよね?」

 

 ―――男に二言はないはずだ。

 

「週刊誌沙汰にならないようにカモフラ出来るか?」

「当たり前だ! それに週刊誌だって私を追うほど暇じゃないだろ!?」

「万が一ということもある」

「だから大丈夫だ! 髪型も変えるし、眼鏡も外すし、ロボットも持ち込まない!」

「晶葉がロボットを持ち込まないだと!? 風邪でも引いたんじゃ――」

「――私はプロデューサーに夢中なんだ!」

 

 ロボットも確かに好きだ。

 でも今は……プロデューサーと一緒の時間を過ごしたいんだ。

 ロボットは家に帰ればいつでも造れるし、触れる。

 でもプロデューサーとの時間はいつでもある訳じゃないんだよ……分かってよ……。

 

「…………分かった」

「プロデューサー……♡」

「んじゃ、とりあえず晶葉の実家に行くぞ。着替えとか普段使ってる日用品取ってこい」

「分かった♡」

 

 こうして私はプロデューサーの運転で家に行き、家からお泊まり用具セットを持ってきてマンションに上がり込んだ。

 

 ―――――――――

 

「それじゃ、暫くお世話になるぞ、プロデューサー♡」

「ん、いらっしゃい。それとこれ……合鍵。もう返さなくてもいいから」

「っ……わ、分かってるじゃないか♡」

 

 ドラマとかではよくあるシチュエーションだが、いざ自分が当事者になると案外嬉しいものだな♡

 

「というか、端から泊まる気でいたとは思わなかったよ」

「こうなると踏んで予め用意しておいたからな♡」

 

 私をなめるなよプロデューサー♡

 

「んじゃ、とりあえず飯にするか。もう遅いし、ピザでも頼むか?」

「いいな! 大賛成だ!」

「ならここにメニュー表があるから、どこのピザがいいとかどのピザがいいとか決めといてくれ。俺は着替えてくるから」

「分かった!」

 

 私が返事をすると、プロデューサーは着替えに向かった。

 しかし大変だ。こんなにもドキドキワクワクする展開になるとは思ってもみなかった。

 そもそも私はクラスの女子が話してたのをたまたま聞いたくらいで得た知識しか男女の恋愛を知らない。

 勢いで押し掛けたのはいいが、このあとどうしたらいいんだろう?

 

 クラスの男子が先生に隠れて読んでるえっちな本みたいなことする……のか?

 

 ドクン

 

 うわぁ……私、プロデューサー色に開発されちゃうのか?♡

 

「お待たせー」

 

 ビクッ

 

「お、おお、おかおかおかえりりりり……」

「なんだその壊れたロボットみたいな喋り方は?」

「な、なななんでもないっ」

 

 ファーッ!♡

 プロデューサーの私服姿ーっ!♡

 ただの普段着なのに新鮮だーっ!♡

 

「そっか……お、このたらこマヨソースのピザ美味そうだな♪ 晶葉はどれがいいんだ?」

「ま、まだ決めてない……」

「そうなのか。まあそんなに慌てる必要もないか。あ、ハーフ&ハーフにするか?」

「う、うん……♡」

 

 いいなぁ、こういうの♡

 何するのかさっぱりだけど、好きな人と一緒に過ごせる時間はやはり素晴らしい♡

 

 ―――――――――

 

 遅めの夕飯を終えた私たち。

 それから先に私がお風呂に入って、今はプロデューサーがお風呂に入ってるところ。

 私はプロデューサーになら何をされても怖くない。

 だから最初は動揺しっ放しだったが、今は落ち着いてソファーで寛いでる。

 

(よし、母親にもメールはしたし、あとは……)

 

 プロデューサー待ちだ♡

 

 今思えば、何度かプロデューサーの部屋には来たことはあったが、こうしてゆっくりしたことなんて無かった。

 あ、私のポスター飾ってある……ちょっと恥ずかしい♡

 

 自分でもどうしてアイドルをやろうと思ったのか未だに分からない。

 でもきっとプロデューサーと……この優しい人と何かしら繋がっていたかったんだと思う。

 

「上がったぞー。洗濯物とかちゃんと洗濯機に入れたか?」

「あぁ、問題ない」

「んじゃ、歯磨きして寝るか。今日は収録もあったし、晶葉も疲れてるだろ? 俺のベッド使えよ」

「一緒に寝てくれないの?」

「…………俺が逮捕される」

「逮捕されるようなことするの?」

「…………分からない」

「ヘタレ」

「なんとでも言え」

「…………私からすれば犯罪じゃない?♡」

「へ」

「私だって女の子なんだぞ……覚悟して来てるのに……♡」

「あ、あぁ……」

「ベッドに連れって?♡」

「晶葉ーっ!」

 

 そのあとのことはあまり覚えてない。

 でも、思いの外痛かったことと……もっと深い関係になれた喜びは鮮明に覚えてる♡―――

 

 池袋晶葉*完




池袋晶葉編終わりです!

晶葉ちゃんって案外デレると破壊力あるんですよね(モバマスでの経験上)。
だからこんな感じにしました♪

お粗末様でした☆

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