アイドルになろうと思ったのは
姉とセットじゃなくて
自分ひとりを見てほしかったから
別に姉と一緒にいるのは苦じゃないけど
そこに自分ひとりを見てる人って
いるのかなって前から思ってた
でも不思議なもんでさ
世の中ってほんっとに広いの!
だって
私だけを見ててくれる魔法使いが
目の前にちゃんと現れたんだもん!
―――――――――
私の名前は久川颯。14歳だけどアイドルやってる!
まあ相変わらず双子の姉である"なー"とユニットも組んでるんだけど、私のファンも増えてるし、私だけのお仕事もいくつか来てるし、順調そのもの!
でもアイドルである前に、私中学生だからさ〜。今はアイドルじゃなくて、中学生の久川颯だよ〜。
「ぅあ〜、彼氏欲しい〜……」
んで、今お昼休みなんだけど、いつも集まってるクラスの仲良しグループの一人がいつものように彼氏ほしーアピールしてきた。
「あんたまたそんなこと言ってんの?」
「流石に飽きた〜」
「そういうのはなるようになるしかないと思うよ」
もう一人の友達と私、それとなーで適当な返事をすると、彼氏ほしー友達は「中学生なんだから彼氏くらい欲しいの〜」って余計にひねくれた。
「あたしは別にいらないな〜。恋とか愛とかついこの前まで小学生だったガキに分かる訳ないし〜」
んで、もう一人の友達は妙に冷めた返しをする。そんなこと言える時点でガキじゃないと私は思うけどね。
「あーあー、きーこーえーなーいー」
「わーお。聞こえないと言いながら、耳を塞ぐという謎行為。聞こえないなら耳を塞ぐ必要はないのでは」
「なーは鋭くツッコミ過ぎ……」
なーはなーでいつも通りだなぁ。
というか、こうしてると姉妹でアイドル活動してるとか忘れそうになるわ。当たり前の日常過ぎて。
「もうこのメンバーだと恋バナとか出来な〜い!」
「出来るメンツの時にすればいいでしょ〜? あたしはともかく、凪も颯もアイドルで恋愛なんてしてらんないんだからさ〜」
「だよね〜、まあ二人はやりたくてアイドルやってるんだからいいけど、恋愛出来ないってホント不便だよね〜」
「ま、まあね……」
「はーちゃんはともかく、なーは恋より応援する側が好きなので」
ちょ、なー!? そんな風に言うと勘付かれちゃうじゃん!
「凪は確かに恋愛とか連想出来ないね〜。どっちかと言えば颯の方が陰で付き合ってそ〜」
「べ、別にそんな人いないよ!」
「そんなに強く否定しなくても分かってるって〜」
はぁぁぁぁっ、焦ったぁぁぁぁぁっ!
もうなーのやつ! 私とPちゃんの関係がバレちゃったらどうしてくれんのさ!
そう、私は事務所に内緒で私専属のプロデューサーと彼氏彼女ってことで付き合ってる。
理由はPちゃんだけが、私のことを私だけで見ててくれたから。
小さい頃から何をするにもなーと一緒で、なーは何をやっても卒なくこなしてきた。
まあ私の方が得意なものもあるし、私たちは私たちでお互いのことを理解してるから仲良しだけどね。
でも私個人を好きになって欲しくてアイドルオーディションに応募したの。
そこで私のことを一番に好きになってくれたのがPちゃん。
今でこそなーとユニット組んでるけど、私の個性もちゃんと見ててくれたのがPちゃん。そんな人だもん、好きになるに決まってる。
だからいっぱいいっぱい好き好きアピールしたし、なーに相談して色々と頑張って、半年前から交際をスタートさせたんだから。
Pちゃんは33歳の大人で優しいし、落ち着いてるし、一緒にいて安心する。だから私が結婚出来るようになるまで、飽きられないように頑張るの!
―――――――――
「ってな具合でさ〜! ほんっとに焦った〜!」
「はは、そりゃ大変だったな」
「も〜、他人事じゃないよ〜? はーとPちゃんの関係が終わるところだったんだからね!」
「そうならないから凪ちゃんもそんなこと言ったんだろ?」
「そーだけどー! もっとPちゃんも焦ってよー!」
学校も終わって、私はなーと一緒にいつものように事務所にやってきた。
なーは相変わらず自分の担当Pとスタミナ作りのためにランニングに行ったんだけど、私は次のお仕事のことで別行動。
でも私は大好きなPちゃんと二人きりだから、Pちゃんの膝の上に乗って愚痴を聞いてもらってるの。Pちゃん背が高いし、体格もがっしりしてるから背中預けると気持ちいいんだ♪ それに今はPちゃん専用オフィスだから邪魔者もすぐには入って来ないもん♪
「焦ったところでどうしようもないだろ? 逆にどっしり構えてる方がいいって」
「Pちゃんは大人だからそんなこと言えるの。はーはそんなこと思えないもん。Pちゃんと別れなきゃいけなくなったら嫌だもん」
「颯……」
「絶対に嫌だもん」
そう言って私は余計にPちゃんへ体重をかけてイヤイヤアピールをする。
だってホントにそれくらい嫌なんだもん。こんなにこんなに大好きなのに、私たちの関係が仕事だけになるなんて……。
「大丈夫だって」
「なんで?」
「もしそうなっても、俺はどんなに敵を作ってでも颯と別れないから」
「Pちゃん……」
「それくらい付き合うって決めた時から決心してるよ。どうなるかなんて分からないけど、俺たちは互いに望んで今の関係になってる。ならそれを終わらせるのは周りじゃない。俺たちだ」
「…………」
「俺は颯のことが好きだ。ずっと一緒にいたいと思ってる。颯もそうだろう?」
「うん」
「なら大丈夫じゃないか。バレたって世間では俺が悪く言われるだけだ」
「それはそれで嫌。Pちゃんが……大好きな人が悪く言われるなんてヤダ」
「でも別れないだろ?」
「そーだけどー!」
もう、Pちゃんのそういうとこずるい。でも大好きっ。そんなPちゃんだから、私は離れたくないって思うんだよ?
いつも私のこと優先で、自分のことはあと回しで……私のことを甘やかす天才なんだから。
Pちゃん本人には言わないけど、家でなーにPちゃんは「ダメはーちゃん製造機」なんて言われてるんだからね。まあそれも私がPちゃんとメールしてるだけでふにゃふにゃになってるからなんだけどさ……。
「それよりも、仕事の話に移りたいんだが?」
「あ、ごめん。いいよ」
お膝からは退かないけどね。
「じゃあ改めて……颯に届いた仕事なんだが、下着メーカーからのオファーなんだ」
「下着?」
「そ。ほら近頃は小学生からでも可愛い下着とか自分で探すだろ? そういうのもあるから、同じ年代のアイドルの子をモデルにしたいんだと。颯は凪と違ってバストがあるし、スタイルも中学生からすればずば抜けてるからな」
「なるほどー」
「仕事内容が内容なだけに断れることも出来るが、俺としては女性ファンを獲得出来るいいチャンスだと思ってる」
「ほうほう」
「それに中学生相手にメーカーも過激な下着なんて着けさせないからね。仕事を受ける場合は事前に着せるサンプル送ってくるらしいし」
「つまり、Pちゃんはその私の下着姿が見たいと……そういうこと?」
「んな下心持ってないよ。見たい時は自分からこれ着てって言うし」
「それはそれでどうなのさ……」
まあ嬉しいし、Pちゃんのためならどんなえっちぃ下着も着てあげるけれども……。
でもやっぱりPちゃんは大人だなぁ。下着云々で動じないもんなぁ。
「で、どうする?」
「やるー!」
「ん、了解。じゃあそういうことで進めるな」
「因みにPちゃんは何色の下着がお好み?」
「色なら青系。デザインはあまり気にしてない。今の颯みたいに黒ベースの白い縦縞パンツとブラでも、それはそれでいい」
「なんで知ってるの!?」
「凪ちゃんから体育の授業の着替えシーンの写メが届いたから」
い、いつの間に撮ったのなー! ていうか、なんでPちゃんに送ってるのー!
「も、もしかして今までも?」
「いや」
「ほっ」
「送られてくるようになったのは、付き合った頃からだよ」
「今までじゃーん!」
「俺は大いに感謝してるよ」
「えっち!」
「下着の中まで見てないから断じてえっちではない。寧ろスタイルの確認が出来てプロデューサー視点の俺としては助かってる」
「見られた本人がえっちだって言えばえっちなの!」
「じゃあ、見せてって言えばいいのかな?」
「〜〜……か、可愛いの着けてる時なら……いいけど」
「じゃあ毎日可愛いの着けてね」
「えっちぃ!」
男の人ってみんなこうなのかな? まあ、Pちゃんだからいいんだけどさ。今度なーと下着買いに行こ。
※因みにそうなったらなったで凪からPのところへ『今からはーちゃんがPちゃんのために下着買いに行くので、責任を持って見てやってつかあさい』とメールが届くことになるのを颯は知る由もない。
―――
仕事の話が終われば私のやることもなくなったんだけど、なーもまだ帰って来てないし、Pちゃんとまだイチャイチャしたいから、私はまたPちゃんの膝の上にきた。
それに仕事の話が終わったならあとは恋人らしくしててもPちゃんは何も言わないもんねー♪
だから―――
「PちゃんPちゃん♡」
「んー?」
「私のこと好きぃ?♡」
「好きだよ」
―――なーが帰ってくるまで私はPちゃんとイチャイチャするの!
「どれくらい好きぃ?♡」
「いっぱい」
「100回好きって言うまで帰ってあげない♡」
「なら一生このままでいい」
「えー、そんなのダメェ♡ 100回好きって言ってぇ♡」
「言われたいだけかい」
「そんなの決まってるじゃん♡ はーちゃんPちゃんに好き〜って言ってもらうの嬉しいもん♡」
「若いってすごいね」
むぅ、子ども扱いされた気がするぅ。恋人に愛を注ぐのは大切なんだからなぁ。
するとPちゃんがそっと私の耳元に近寄ってきた。
そして―――
「……好きだよ、颯」
―――耳元で愛を囁いてきた!
これ恥ずかしいけど、すっごくゾクゾクして、すっごく気持ちいい!
「ふへへ♡ もっとぉ♡」
「好きだ、颯」
「ふにゃあ♡」
「はい終わり」
「えー!」
「この前みたいに粗相されちゃうと困るからね」
「あ、あれはっ……」
あれは本当に不幸な事故だったの! Pちゃんの低音激甘ボイスで悩殺されて、色々と緩んじゃっただけなの!
「正直、もうブルッときてるでしょ?」
「…………はい♡」
「ほらね。颯は耳弱いから。この前耳掻きした時も足ピーンってなってたし」
「はぅ、それはぁ……Pちゃんが優しくするからぁ♡」
「デリケートなところなんだから丁寧にやるでしょ」
「でも、自分でするのとは全然違ったもん!♡」
「こら、誤解を招くような言い方をしない」
「だってホントだも〜ん!♡」
Pちゃんのテクに私メロメロにされちゃったんだから!
「まあとにかくだ、もう終わりだよ。ほら、凪ちゃん帰ってきた」
そう言うPちゃんが窓の外を指差すと、確かに事務所の前になーたちが戻ってた。なーは相変わらず辛そうにしてて、自分のPにおんぶさせようとしてる。
「もう、なーは相変わらずだなぁ」
「俺からすると颯も相変わらずだと思うけどね」
「?」
「俺の前では人一倍甘えん坊になるとこ」
「うぅ……それは大好きなPちゃんにだけだもんっ♡」
「はは、嬉しい限りだね。ほらほら、凪ちゃんの迎えに行ってあげな」
「はーいっ! 帰りは送ってってね! あとまたねのちゅうも!♡」
「はいよー」
えへへ、これからもPちゃんといっぱいラブラブして、なーとアイドル頑張ろ!―――
久川颯♢完
久川颯編終わりです!
元気っ子だけど実は内心不安を持ってる。そんなはーちゃんは恋愛すればこうなるかなと!
お粗末様でした☆