デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


藤原肇編

 

 どの道も極めるのは難しい

 

 何もかもが中途半端だった

 

 自分だからこそ分かる

 

 でもそんな自分が嫌い

 

 だからアイドルを目指した

 

 前から憧れてた

 

 きらびやかで華やかな存在

 

 自分に一番足りない

 

 全部が詰まってる作品になりたい

 

 その道は少しずつではありますが

 

 魔法使いさんと共に

 

 大切に前へと進んでいます

 

 ―――――――――

 

「ん〜、いい天気。晴れて良かったですね、プロデューサーさん♪」

「そうだなぁ。絶好の釣り日和だな……パラソルも借りたし、熱中症に気をつけて楽しもう!」

「はいっ」

 

 今日の私は専属プロデューサーさんと一緒に、オフを利用して都内にある釣り堀に来てます。もちろん、アイドルであるとバレないように帽子と眼鏡をしてます。

 ここの釣り堀はレンタルも充実してるので手ぶらでも大丈夫なんです。私はおじいちゃんから譲り受けた物を使いますけどね♪

 

 本当なら同じ事務所のアイドル仲間の皆さんと行く予定だったんですが、皆さんに気を遣われてしまったらしく、こうしてプロデューサーさんと二人きりなんです。

 

 何故皆さんが私たちに気を遣うのか……それは私とプロデューサーさんが事務所には内緒でお付き合いをしているからです。

 

 私がプロデューサーさんを異性として意識し始めたのは、私がアイドルとしてデビューする前のこと。

 何もかもが初めてで上手く行かない私を、プロデューサーさんはいつも優しく支えてくれました。

 

 アイドルデビューしてからの私は、プロデューサーさんの手腕で知名度を少しずつですが着実に高め、忙しくも楽しい日々を過ごしてました。

 それと共にプロデューサーさんへの想いも大きく膨らみ、今から半年前に私から告白したんですがその時は断られてしまい……落ち込みました。

 でも断った直後にプロデューサーさんから告白をされたんです。

 なんでも告白は男からというのがプロデューサーさんのポリシーらしく、こうして私たちは公には出来ないながらもお付き合いを始め、今ではアイドル仲間の皆さんという強い味方もいるという……幸せな状態です。

 

 事務所には内緒と言いましたが、実は私の家族には既にご報告しています。恋にうつつを抜かして……と、怒られるかと思っていたら、家族揃って許してくれました。

 私がずっとそういう色恋に無縁だったので、かなり心配していたみたいです。おじいちゃんなんて私の相手が10歳離れたプロデューサーさんだって知ったら、掴んで離すなって力説して……そのせいでまた血圧が上がってしまいました。

 

 とまあ、こんな具合で私はアイドルになってからプロデューサーさんのお陰で充実した日々を過ごしています♪

 

「そういや俺は釣り堀って初めてなんだが、釣った魚はどうするんだ?」

「場所にもよりますけど、ここの釣り堀はどの魚も食べられる魚なので、釣った魚をあそこにある休憩所に持っていくと料理人の方がその魚に合った調理法で料理してくれますよ♪」

「へぇ〜、至れり尽くせりなんだなぁ」

「はい♪」

 

 皆さんと釣り堀に行くのも楽しいですが、このように釣り堀デートというのもいいものですね。戦果が良ければ皆さんにもお土産に持って帰ることにしましょう!

 

 ―――――――――

 

「よっ……と♪」

「おぉ、肇はすごいなぁ」

「ふふふっ、今日はいいみたいです♪」

 

 釣りを開始して1時間。既に私はニジマスを4尾釣り上げました。釣り堀ならではなのか、普通の川釣りより忙しいです。でもプロデューサーさんと一緒なので、時間なんてあっと言う間に過ぎてしまいます。

 

「俺のとこは全然だなぁ」

「その内来ますよ。慌てない慌てない」

「それもそうだな。来ないなら来ないでいいし」

「あの、今更ですけど退屈だったりしませんか?」

「本当に今更だな……退屈なんてしてないから安心してくれ」

「そうですか?」

「うん。肇の反応見てるの飽きないし」

「どういう意味ですか?」

 

 ニコニコ……いや、これはニヤニヤと言いますね。プロデューサーさんのニヤつきに私がそう返すと、

 

「だって反応がいちいち可愛いんだもん」

 

 なんて言われてしまいました。照れるというか、恥ずかしいです。はしゃいでるのを可愛いと言われても、私は困ります。

 

「…………むぅ」

「むくれるなよ〜。素直な感想返しただけなのに」

「恥ずかしいんですぅ」

「なら、もう言わないよ」

「それはそれで寂しい、です」

「あはは、肇はワガママなのに素直だよな♪」

「むぅ〜!」

 

 プロデューサーさんの意地悪っ! 私だって面倒臭い性格だなって自覚してますもん!

 

「よしよし……むくれないむくれない♪」

「あうあうあう〜♡」

 

 膨れっ面の私をプロデューサーさんは子どもでもあやすみたいに、ほっぺをコネコネしてきます。私はそれがなんだか嬉しくて、いつの間にかニコニコしちゃってました♡

 

「肇のほっぺって柔らかいよな」

 

 ぐに〜

 

「ほ、ほうてふか?」

訳:そ、そうですか?

 

「うん。いつまででもいじってられる」

 

 むにむに

 

「や、やめれくらはい〜」

訳:や、やめてください〜

 

「俺釣れないんだもん。構ってよ〜」

 

 むにむにぐ〜、むにむにぐ〜

 

「らからっれ、わらひれはしょわらいれくらはい〜」

訳:だからって、私で遊ばないでください〜

 

「あと丸書いてちょん♪」

「きゃぅ……もう、いたずらっ子なんですからぁ」

「そんな俺が好きなんだろ?」

「ず、ずるい……♡」

「ふははは♪」

 

 プロデューサーさんには勝てませんね……本当に好きだからこそ、余計にです♡ それくらい私はプロデューサーさんにメロメロなんですから♡

 

「あ、肇の竿、浮きが沈んでるぞ」

「来てますっ! 網の準備お願いしますっ!」

「ほいほい」

 

 こんな具合で私は釣りをしつつ、プロデューサーさんにほっぺをいじられながら釣り堀デートを楽しみました。

 

 ―――――――――

 

 楽しい時間というのは本当にあっと言う間に過ぎてしまいます。

 朝から釣り堀に来たのに気がつけば夕方で、私はプロデューサーさんのマンションのお部屋に場所を移しました。

 

 私の戦果はというと、ニジマス10尾です。1人10尾までと決められていましたので。

 私は早々に10尾に達してしまったので、そのあとはプロデューサーさんとのんびりしてたんですが、プロデューサーさんは3尾釣りました。

 10尾は捌いてクーラーボックスに保存し、プロデューサーさんが釣った3尾はこれからプロデューサーさんのお部屋で頂きます。

 

「焼けたぞ〜」

「ありがとうございます♪」

 

 焼くだけなら私がやりますと言ったんですが、プロデューサーさんが「俺が釣ったから俺が焼く」と言って焼いてくれました。

 

「火傷するなよ?」

「は〜い……頂きます。ふーっ、ふーっ……はぐっ」

「どうだ、塩加減は?」

「ごくん……バッチリですっ!」

「なら良かった……頂きます、はむっ」

 

 なんかこういうのもいいですね。同じ物を一緒に食べるってだけなのに、普段より幸せな感じがします♡

 

「うんっ、自分で釣った魚だと余計に美味く感じる!」

「のんびり待った甲斐がありましたね」

「周りからは妙に見られてたけどな」

「それはプロデューサーさんのせいです」

「なにゆえ?」

「すぐ私にちょっかいを掛けてきてたからです!」

 

 魚が釣れなくて暇だからって私をからかって遊んで……笑っていましたが、恥ずかしかったんですからね?

 

「肇だって嬉しそうにしてたじゃん」

「そ、そんなことないですっ」

「そうかぁ? あんなにニコニコしてたのにぃ?」

「人がいる前で怒れないじゃないないですか」

「でも嫌がってなかったじゃん」

「そ、それは……♡」

 

 大好きなプロデューサーさんに構ってもらえてるんですから、嫌がるはずないじゃないですか……もう♡

 でも恥ずかしかったのは事実です。普段から人前で何の意味もなく手を繋いだり、見つめ合ったりするなんてしないんですから。

 

「肇はいじり甲斐があるよな」

「意地悪ぅ」

「可愛いとついな」

「可愛いと言えば許してもらえると思ってませんか?」

「思ってないよ。でも可愛いとついなんかしたくならない? 犬とか猫とか、可愛いと無駄にもふもふしたくなるじゃん?」

「私、もふもふしてませんけど?」

「いや、結構もふもふしてるぞ? 髪とかふわふわじゃん」

 

 もふもふ

 

「うぅ、でも人前では恥ずかしいですぅ……♡」

「なら今は俺だけだからいいってことだよね?」

 

 もふもふ、もふもふ

 

「きゃんっ、くすぐったい♡」

「声弾んでる」

「プロデューサーさんだからですぅ!♡」

 

 もう、本当に困った恋人さんなんですからぁ♡

 

「えいっ♡」

 

 だから今度はお返しタイムです♡

 

「お、肇に押し倒された」

「私だっていつまでもやられっ放しじゃないんですかはね?♡」

 

 私はそう言うと、プロデューサーさんの胸元に軽く噛みつきました。どうしてこうするのか自分でも不思議なんですが、大好きな人の身体に私の跡がつくとなんかこう……ゾクゾクするんです♡

 

「誘ってるのかな?」

「ん〜♡」

「誘ってると判断する」

「んぁっ♡」

 

 押し返せされちゃいました♡

 

「何するんですか?♡」

「イチャイチャ?」

「ふふふっ、それならいいですよ♡」

「肇可愛い、好きだ」

「もっと私の名前を呼んでください♡」

 

 プロデューサーさんに下の名前で呼ばれるの、私大好きなんです♡ 呼ばれる度に好きって気持ちが募っていくんです♡

 

「肇……」

「プロデューサーさん♡」

「肇は俺の名前呼んでくれないの?」

「あう……〇〇さん♡」

「嬉しいよ、肇」

「あぁ、〇〇さん……好きぃ♡ 大好きですぅ♡」

 

 私は堪らず、プロデューサーさんの首に両手を回して自分の方に引き寄せました。おまけに両脚もプロデューサーさんの腰に絡みつけてしまいます♡ こうするととても気持ちいいんです♡

 

「なんかこの格好、エロいよね」

「ムード壊さないでくださいよぅ」

「いやぁ、可愛い彼女からだいしゅきホールドされるとねぇ」

「恥ずかしいこと言わないでくださいっ」

「恥ずかしいことやってるのは肇だけどね」

「むぅ〜、意地悪さんなんですからぁ♡」

「肇が可愛いからね。このまま、いい?」

「……はい♡」

「優しくする」

「ふふっ、〇〇さんはこういう時は優しいんですね♡」

「一言余計だぞ」

「はぁい♡」

 

 それから私は寮の門限ギリギリまでプロデューサーさんと過ごしました。でもやはりこの時間もあっと言う間で……次はご迷惑でなければお泊まりしちゃおうかなって思ってます♡―――

 

 藤原肇♢完




藤原肇編終わりです!

肇ちゃんと言えば陶芸なんですが、彼女のもう一つの趣味である釣りを取り入れたお話にしました!

お粗末様でした☆

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