小さい頃から体が弱くて
病院にいることが多かった
友達も出来なくて
生きててつまらなかった
そんな私でも
今は大きな夢を
これでもかってくらい
頑張って追い掛けてる
私をそうさせたのは
不思議な魔法使いさんのせい
―――――――――
『みんなー! 来てくれてありがとー!』
『あたしたちのこのライブは次の曲でホントに最後だけど!』
『またライブやイベントで会えるの待ってるから!』
ワァァァァァッ!
『『『鮮やかな色纏う波紋は〜♪』』』
ワァァァァァッ!!!!
―――――――――
「お疲れ、加蓮。肩貸すよ」
「ありがと、凛」
「ほら、しっかり掴まれ」
「奈緒もありがとね」
私はこの二人と組むユニット"Triad Primus"で単独のドームライブを成功させた。
前の私ならこんなのすぐにへばってただろうけど、私もこの二人と成長してきたし、今回はアンコールにも応えることが出来た。
流石にもうガス欠。二人の肩に支えられてないと歩けないや。
でも―――
「三人ともお疲れさん。加蓮は俺が運ぶよ」
―――こういう時は必ず私専属の大好きなプロデューサーさんが駆け付けてくれるの♡
「プロデューサーさん……ありがと♡」
「おぉ、よく頑張ったな」
プロデューサーさんはニカッて感じに笑ってそう言うと、私をお姫様抱っこして控室まで運んでくれた。
―――
言い方が悪いかもしれないけど、私をアイドルにした大バカ者がこのプロデューサーさん。
これまで何をやっても最後まで出来なくて、その現状に甘んじてた私。
そんな私を本気でアイドルにしようと努力して、私を焚き付けた人。
でも今はとても感謝してるし、本当に大好きな人。
だからこの大きなライブの2日前に告白して、オーケーもらって、最高の気分でライブ出来たし、最高の気分でプロデューサーに身を委ねてる。
まあアイドルとプロデューサーだからさ、公には出来ないんだ。でも凛や奈緒、他にもアイドル仲間の子たちには味方になってもらってる。
「プロデューサーさん……」
「ん、どうした?」
「コーラ飲みたい」
「控室に着いたらな」
「ポテトもある?」
「デリバリーしてもらってたからあるぞ」
「えへへ、やった♪」
いつもならジャンクフードは止せって注意してくるのに、こういう時は甘やかしてくれる。プロデューサーさん的には頑張った私へのご褒美ってことなんだろうけど、今の私は余計に浮かれちゃう。
だって恋人同士になったばっかだもん。彼氏からのご褒美ってことじゃん? そんなの嬉しくて、幸せで……最高じゃん♡
―――――――――
「ほら」
「あ〜……んっ♡」
ん〜、このライブ後に食べるポテトって最高♪ しかもプロデューサーさんが甲斐甲斐しく食べさせてくれるから、更に美味しい♡
普通ならこんなこと出来ないし、してくれないけど、今は特別だもんね♪
「なんか壁殴りたくなってきた……」
「私は加蓮が幸せならいいと思うけど?」
奈緒の顔が引きつってる気がするけど、なんでだろう? というかシャドーボクシング?みたいなことしてるし、やっぱ奈緒は体力あるんだなぁ。
「プロデューサーさん、あ〜♡」
「ほいほい」
「あむあむ♡」
「うにゃらうにゃ〜!」
「奈緒、落ち着きなよ」
なんか奈緒、すっごい叫んでる。ライブ終わったあとでまだ興奮気味みたい。
てか、凛は珍しくブラックコーヒー飲んでるし。
やっぱ大きなライブを成功させたからかな?
「あ〜♡」
「ほいほい」
「あむあむ♡」
「なぁ、お前らさ〜」
奈緒に声をかけられた私とプロデューサーさん。
なんか怒ってる?
「どうしたの、奈緒?」
「どうしたのじゃねぇよ! なんなんだよ! 控室に入って先ずすることが『あ〜ん』って! ここあたしと凛もいるんだからな! 二人の世界じゃないからな!」
「え、だってポテト食べたいもん」
「一人で食えるだろ!」
「腕上がんなくて……」
「だからって食わせてもらうな! 見てるこっちが場違いみたいになるじゃんか!」
「何言ってるの、ここ私たちの控室だよ?」
「んなの知ってるんだよぉぉぉぉぉっ!」
変な奈緒。いつもは優しいのに、テンションがおかしい。
「奈緒、今の加蓮に何を言っても無駄だよ。幸せの絶頂にいるんだから」
「ぐぬぬ……」
すると控室のドアがノックされて、凛と奈緒のプロデューサーさんたちが入ってきた。
本当なら私とプロデューサーさんも行かなきゃいけないんだけど、私が動けないから四人でスタッフさんたちやスポンサーの人たちのところに挨拶しに行ってくれた。
「どうだ、体の具合は?」
「うん、ちょっとは楽になったよ」
「でもまだ顔が赤いな」
プロデューサーさんは心配そうに私の額に手をあてる。ライブで体が火照ったせいなのか、具合が悪いからなのかは分からないけど、プロデューサーさんの手はひんやりしてて気持ちいい。
「プロデューサーさんの手……冷たくていい感じ♪」
「恋人がこの調子だからな。こっちは血の気が引いてるんだ」
「あはは、相変わらず心配症だね」
「なんとでも言え」
「でも心配してくれて嬉しいよ……ありがと♡」
「ふんっ」
―――――――――
――――――
―――
プロデューサーさんは私より12歳年上の人。
だからいつも私なんかより冷静だし、頼りになる人。
でもプロデューサーさんは小さい頃に母親を難病で亡くしてる経験があるの。
そのせいなのか、私が初めて倒れた時は必死に看病してくれたし、迅速に救急車も呼んで自分に出来る処置も施してくれた。
結果すぐに退院出来たんだけど、その時に言われた言葉は今でも鮮明に覚えてる―――
『大切な人が亡くなる経験なんて、出来ることならもうしたくない。加蓮には長生きしてもらわないと嫌だ』
―――って。
多分、そのせいで私は「あぁ、この人を悲しませたくないなぁ」って思って、何事にも無理せずにひたむきに取り組むことが出来たんだと思う。私って意地っ張りだし♪
だからなんだと思う。私がここまでプロデューサーさんと歩めて来れたのは。
―――
――――――
―――――――――
「プロデューサーさ〜ん、私、帰りたくない〜」
「何わがまま言ってんだ。早く帰って休むんだよ」
「それが嫌だから言ってるの〜!」
私が自分の脚で立てるくらいになってから、メイク落としとか済ませて現地解散して、今はプロデューサーさんに家まで車で送ってもらってるとこ。
あ、もちろん私たちの分まで挨拶してくれたみんなにはお礼言ったし、凛と奈緒には今度ポテト奢る約束したよ。
でも私はもう回復しちゃったからさ、このまま帰るのは嫌だなぁってなってるの。
まあ、私の体のことを心配してくれてるプロデューサーさんの気持ちも嬉しいんだけどね。
「私〜、今、気分がいいの〜。だからもっとプロデューサーさんと一緒にいたいの〜」
「それはダメって言ってんの。今は回復したからそうなってるだけで、少ししたらまた疲れが出る」
「だ〜か〜ら〜、その疲れをプロデューサーさんが癒やして♡」
「ポテト食わせてやったろ」
「い〜や〜! ちゃんと甘えたい〜!」
だってプロデューサーさんは私の恋人なんだよ? だったら疲れてる彼女を癒やすのって当然じゃん。
「ったく……人の気持ちも知らないで」
「ちゃんと知ってるもん。プロデューサーさんが私のこと大大だ〜い好きだって」
「んな小っ恥ずかしいこと言うな。それとこれとは今は違うんだよ」
「むぅ……プロデューサーさんの意地悪」
「意地悪で結構。こっちは彼女の体を心配してるだけだからな」
「む、むぅ……♡」
なんか負けた気がする。不覚にもドキッとした。
でもさ、本当にこのまま帰るのは嫌なの。
せっかくドームでのライブが成功したのに、プロデューサーさんのために頑張ったのに……。
「…………はぁ、ちょっと寄り道する」
「え?」
「すぐそこのワクドナルドにドライブスルーあるから、そこでポテトと飲み物買うって言ってんの」
「ホントっ!?」
「ただし車の中で食えよ?」
「うんっ♡ プロデューサーさん、大好き!♡」
「ふんっ」
―――――――――
商品を受け取ったあと、プロデューサーさんは近くのデパートの地下駐車場に移動して、そこで車を停めた。
ここのデパートの地下駐車場はただ停めるだけでも安く済むんだって。
「ほい」
「あむあむ♡」
「本当、美味そうに食うな」
「んぅ?♡」
「っ……ポテトだよポテト」
(上目遣いすんなよ……ドキッとすんだろ)
「ごくん……だって好きだもん♪ それにプロデューサーさんが食べさせてくれるし、恋人らしいから♡」
「もう30目前のオッサンには、こういう甘酸っぱいのキツイんだよ……」
「大丈夫だよ♪ プロデューサーさん若く見えるから♪」
「そういう問題じゃなくてよ……」
「そういう問題なの。それに私が好きでプロデューサーさんの彼女にしてもらったんだからいいじゃん♡」
「うぐっ」
(恋人が眩しい……)
プロデューサーさんは変なとこ気にするよね。私には『変なとこ気にすんな。気にしたら身体に毒だ』っていつも言うくせに。
それとも私が彼女だから気にしてるのかなぁ。だったらショックかも……。
「加蓮はさ」
「?」
「本当に俺にはもったいないくらい、可愛い彼女なんだよ。眩しいくらい輝いてて、いつもキラキラした笑顔を俺に向けくれてて」
「だってプロデューサーさんのこと大好きだもん……」
「それ、そういうストレートなのがさ……なんつうか、むず痒いんだよ」
「嫌?」
「嫌とかじゃなくて……あ〜、だからさ! 年甲斐もなくドキドキしてる自分がアホみたいに思えるんだよっ!」
? それの何がいけないの? 私はプロデューサーさんが私でドキドキしてくれてるの嬉しいんだけど?
「アホでいいじゃん。私しかそんなアホなプロデューサーさん知らないんだもん」
「っ!?」
「みんなが知らないプロデューサーさんのこと、私しか知らないって特別ってことでしょ? そんなの嬉しいだけじゃん♡」
私が感じてるままを言葉にすると、突然プロデューサーさんに抱き締められちゃった。初めてこんなに力強くギュッてされちゃった♡ 嬉しくて、心臓の音が煩くて、プロデューサーさんに聞かれるかもって思うとなんか照れちゃうな♡
「どうしたの、プロデューサーさん?♡」
「……るせぇ」
「プロデューサーさんなりの大好きって表現?♡」
「うるせぇって」
「私もプロデューサーさんのこと―――」
―――大好きって言いたかったのに、プロデューサーさんが言わせてくれなかった。
だって、
「―――ん、ふぅ……ちゅっ、ん……ちゅぷ、ふ、ぁ……♡」
プロデューサーさんにキスで口封じされちゃっから。
「……プロデューサーさん♡」
目と目が合うと、なんだか言葉以上の何かが伝わった気がして、私は体中にビリビリと甘い衝撃が走った。
「少し黙れ」
「や♡」
「黙れって」
「ん、ふぅ……ちゅっ、ちゅぅ……やらぁ♡」
「はむっ……ん、ちゅっ……だはれお」
「んむぅっ!♡ ん、ちゅぷ……やらぁ、もっと……むふぅっ、ちゅっ、ぢゅるる……、してぇ♡」
黙りたくない。だってそうすればプロデューサーさんはキスしてくれるんだもん。絶対に黙ってなんかあげない。
「調子乗んな」
「ぁ……むぅ」
「これ以上はまた今度な」
「それっていつ?」
「いつか」
「五日は来月なんだけど?」
「ならそう思ってろ」
「じゃあそれまで期待してるぅ♡」
今回はこれで終わりだった。残念だけど、車の中だしね。やっぱ初めてはちゃんとした場所かプロデューサーさんのお部屋とかがいいし♡
でも来月の五日までただ大人しくしてないよ、私は。
だってプロデューサーさんのこと大好きだもん♡―――
北条加蓮♢完
北条加蓮編終わりです!
私の中で加蓮ちゃんは上位に入るアイドルなので、たくさん妄想を垂れ流しました!
お粗末様でした☆