デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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松尾千鶴編

 

 自分に可愛いは無理

 

 ずっとそう思ってた

 

 事が過ぎたあとで

 

 こうすればよかった

 

 ああしてれば

 

 なんて思うのが多く

 

 "たら"や"れば"ばっかり

 

 でもそんな私に

 

 一人の魔法使いが現れ

 

 可愛くなる魔法を

 

 掛けてくれたんです

 

 ―――――――――

 

 こんにちは。アイドルをしています、松尾千鶴です。

 こんな私でもアイドルとしてデビューをし、多くのアイドル仲間の皆さんとユニットを組ませてもらい、アイドル生活を満喫しています。

 

 今日のお仕事は私一人での小さなライブイベントを行い―――

 

「プロデューサー、早くしてください。時間は限られているんですから」

「分かった分かった。でもライブのあとなんだから、少しはゆっくり行こうよ」

 

 ―――これから専属プロデューサーと一緒に自由時間を過ごします。

 実は前からプロデューサーと一緒に行きたい場所があったんです。

 

 それは―――

 

「ファンシーな店だなぁ」

「メルヘンなカフェですから♪」

 

 ―――私のクラスのお友達たちがいつも話題にするカフェ。

 前から興味があったんですが、初めての場所はやはりプロデューサーと一緒が良くてタイミングを待ってました。

 

 どうしてプロデューサーと一緒がいいのか……それは、プロデューサーが私の恋人だから。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 アイドルとプロデューサー。それが恋人関係になってはいけない……でも私はプロデューサーから"アイドルに型なんてない"と教わってここまで来たので、自分の恋を諦めるなんてしませんでした。

 プロデューサーはなんの取り柄も武器もない私を本気で1からアイドルにしてくれた……私の尊敬する人。

 最初はただの憧れだと思ってた。でも接すれば接するほど、プロデューサーのことを目で追うようになってて……褒められただけで先生とかから褒められるより何倍も嬉しくて、この人とずっと一緒にいたいと願うようになってたんです。

 

 だから仲良しのアイドルに仲間である、あやめちゃんや葵ちゃんに相談したり、時には留美さんや優さんといった大人の女性にも電話で相談に乗ってもらいました。

 結果、皆さん私の恋を応援してくれて……そのお陰で私も前を向いてプロデューサーにアタック出来たんだと思います。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 アイドルになって、しかも大人の恋人(プロデューサーは7つ年上)も出来て……少し昔前の私なら卒倒してると思いますね。

 アイドルや恋愛なんて私には無理だろうと……そう思ってましたから。

 

 でも無理だと決めつけていただけでした。

 プロデューサーに出会ってから、プロデューサーは私が夢見てたことを次々と叶えてくれてるんですから。

 

「中もパステルカラーで凄いなぁ」

「そ、そうですね……」

 

 中に入ってみたものの、内装も可愛過ぎて別世界みたいです。

 

「いらっしゃいませ……2名様……っ!」

 

 店員さんが私たちを見るなり顔色を変え、急いで奥へ行ってしまいました。

 

「ど、どうしたんでしょうか?」

「そうだな……アイドルが店に来たからじゃないか?」

「そ、そんなこと……」

 

 確かに私はアイドルですが、そこまで名前は売れてないはず……でもアイドルだって分かってもらえてたら、うれし……ハッ! ダメダメ、甘い考えは捨てるのよ千鶴! きっと何か他に―――

 

「い、いらっしゃいませ! アイドルの松尾千鶴さんですよね!? 当店にご来店頂きまして、誠にありがとうございます!」

 

 ―――やった〜! アイドルだって分かってもらえた〜!

 

「……千鶴、挨拶」

「ハッ……こ、こちらこそ、どうも。あ、アイドルの松尾千鶴です」

 

 こ、こういう時なんて言えばいいのか分かんないよぉ。プロデューサー、助けて……!

 私が目でプロデューサーに助けを求めると、プロデューサーは小さく笑って引き受けてくれました。

 

「お騒がせして申し訳ありません。私、松尾千鶴のプロデューサーをしてます。今回はプライベートではあるんですが、メルヘンチックなものを勉強しに伺いました」

「当店を選んでもらえて嬉しいです! どうぞ心ゆくまでお楽しみください!」

 

 こうして私たちは店長さんらしい女性の方にテーブルへ案内してもらいました。

 店長さんのご厚意なのか、通されたテーブルは個室のような感じでした。

 

「御用の際はそちらのベルで及びください。今、お冷をお持ちします」

「ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます!」

 

 それからお冷も頂き、私たちはようやく一息吐きます。いや正確には私だけですね。プロデューサーは至って冷静でした。流石です。

 

「千鶴テンパり過ぎ」

「す、すみません。まさかあんなに反応されるとは思ってなくて……」

「この俺が本気でプロデュースしてるんだ。少しは自覚してもらわないと困るよ。アイドルの松尾千鶴さん?」

「はぅ……♡」

 

 注意されてるのに、私はプロデューサーの言葉に喜んでしまいました。

 だってプロデューサーが本気で私のことをプロデュースしてくれてるんですから……嬉しくて堪りません♡

 

「にしても、本当にファンシーだね……不思議の国のアリスのお茶会って感じ?」

「言われてみれば……ここの壁紙は森っぽいですね」

「テーブル毎にテーマが違うみたいだ。ほら、あっちのテーブルの壁紙は美女と野獣のダンスシーンっぽい」

「あ、ホントだ……素敵」

「はは、千鶴もメルヘンチックなのは好きか?」

「ま、まあ人並みには……」

「そっか。なら来れて良かったじゃん」

「…………はい♡」

 

 前までの私なら素直になれず変に取り繕ってたはずですが、今はもうそんなことしません。

 プロデューサーの……好きな人の前では素直でいたいですし、彼の前だと何を取り繕っても無意味ですから。

 

「小物とかも凝ってていいな。このナプキン立てなんてトランプの形だし、ダイヤのマークも彫ってある」

「ウサギの形に織ってある紙ナプキンなんて初めて見ました……可愛い♡」

 

 本当にプロデューサーと一緒にメルヘンの世界に来たみたいです。

 それからも色々と内装や小物……もちろんお菓子や紅茶も楽しみ、最後は店長さんに頼まれて私が色紙へサインを書き、店長さんとのツーショット写真を撮ってお暇しました。

 

 ―――――――――

 

「〜♪ 〜〜♪」

「だいぶご機嫌ね、千鶴」

「はいっ♪ アイドルになって本当に良かったです!」

「あはは、ならもっと頑張ってプロデュースするね」

「よろしくお願いします♡」

 

 カフェからの帰り道、私はプロデューサーの隣で柄にもなくルンルン気分です。車で家まで送ってもらうんですが、車はライブイベントをやったデパートの駐車場にあるので、そこまで徒歩です。

 でもこの時間も私にとっては夢のよう。だから余計に気分は上がってます。

 だって公には出来ないにしても、恋人と夕焼け空の下を肩を並べて歩いているんですから♡

 

「お礼にクッキーもらえて良かったな」

「はいっ♪ 事務所の皆さんにいいお土産が出来ました!」

「あはは、千鶴らしいなぁ」

「そうですか?」

「俺だったら家に持って帰るからね」

「そうなんですか? でも私こんなに食べられませんし……」

「いや、千鶴らしいからいいと思うよ。事務員さんたちも喜ぶだろう」

「ですよね♪」

 

 日頃から事務員さんたちにはお世話になってますからね。私がこうしてプロデューサーと過ごせるのも事務員さんたちの協力があってこそですから。

 

「千鶴は可愛いなぁ、本当に」

「い、いきなり何なんですか?」

「いや、千鶴って背伸びするからさ……そうやって年相応の反応を見るとついね」

「は、恥ずかしい……」

「恥ずかしがる必要はないよ。俺としては可愛い千鶴を見れて嬉しい」

「ぁぅぁぅぁぅ……♡」

 

 そんなことを言われたら、どんな顔をしていいのか分かりません。前に電話で晶葉ちゃんが話していた好きなアニメみたいに笑えばいいんでしょうか? いや、そうだとしても笑顔なんて出来ません。

 

「狼狽してるのも可愛いだけだよ?」

「はぅ〜♡」

「これが俺の彼女だ〜って自慢して歩きたいくらい」

「だ、ダメです!」

「しないよ。したら俺が捕まるわ」

「ほっ」

 

 良かった。プロデューサーがいなくなったら、私はアイドルなんて続けていけませんから。それにこのキラキラと輝く日々もなくなってしまうとなると……私は立ち直れないと思います。

 

「……プロデューサー」

「うん?」

「私を置いて行かないでくださいね? プロデューサーがいなくなったら、私……」

 

 するとプロデューサーがポンッと私の頭を叩くように撫でてきました。

 そして―――

 

「んなことしないから安心して前を向けよ。絶対に俺がトップアイドルにして、幸せにするから」

 

 ―――って、そう言ってくれました。

 言葉でならなんとでも言える。でも私はプロデューサーが言う言葉なら、信じます。だってプロデューサーはずっと私をそう言って引っ張ってくれてましたから。

 

「はい♡」

「うん」

 

 ―――――――――

 

 こうして私たちは事務所に戻りました。

 お土産のクッキーは皆さんとても喜んでくれて、ライブイベントの成功も上の方から褒めてもらえました。

 

 そして私はこれからプロデューサーに家まで送ってもらうんですが―――

 

「プロデューサー、褒めてください♡」

「ん、千鶴はいい子いい子」

「んへへ〜♡」

 

 ―――その前に車の中でプロデューサーから、ご褒美に頭をナデナデしてもらってます♡

 どうしてかは私も分からないんですが、プロデューサーからちゃんと褒めてもらえると気持ちいいんです。

 帰るだけになると、プロデューサーは私をアイドルの松尾千鶴としてではなく、恋人の松尾千鶴として接してくれるから、かな?

 

「千鶴可愛い」

「はぅ……♡」

「絹肌で白いすべすべな頬が赤くなった」

「言わないで……♡」

「言えば言うほど赤くなる不思議」

「ぁぅぁぅぁぅ……♡」

 

 誰かに見られてたらどうしよう。そう頭では思ってるのに、心の中では止めないでと願ってる。これもプロデューサーの魔法なのかな♡

 

「すべすべでいくらでも触ってられるな、千鶴のほっぺ」

「うにゅ〜……♡」

「それでいて反応が可愛い」

「ふにぃ〜……♡」

「あぁ、マジで俺の彼女可愛い。俺人生勝ち組」

「ふへへ〜……♡」

 

 プロデューサーから何を言われても、私はにやけちゃう。だってどの言葉も嬉しいから♡

 

「また明日も頑張ろうな」

「はい……頑張ります♡ だから、またこうして褒めてくださいね?♡」

「千鶴なら無条件で褒めるよ?」

「そ、それだと私がダメなんです!♡」

 

 何もしてないのに褒められてたら、それこそダメ人間になっちゃいますから。

 それに頑張ったら頑張っただけ、褒めてもらえるのってやる気が湧きます。だから私はプロデューサーのためにアイドルを頑張って、可愛いアイドルにも、可愛い彼女にもなりたいんです♡―――

 

 松尾千鶴♢完




松尾千鶴編終わりです!

素の千鶴ちゃん全開で書きました!

お粗末様でした☆

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