ずっと軍人に憧れていた
でも女だから駄目だと
周りに言われ続けていた
だからせめて
そう言ったものに携わりたくて
そっちの趣味に走っていた
女らしくない
うるさい
危ない
心無いことを言われたこともあります
でも
共に戦場を駆ける
戦友に出会えたのです!
―――――――――
「おぉ〜! プロデューサー殿! ここはエデンの園でありますか!?」
「イベント会場だよ」
「むぅ、少しは乗ってくださいよ」
「これから仕事なんだから、遊びに付き合うのはそれが終わってからだ。今日のミッションは分かっているな?」
「はっ! 本日はこのイベントにてトークショーのゲストをこなすことであります!」
「よろしい。無事に終われば褒美に会場内を好きに回ることを許可する」
「サーッ、イエッサー!」
皆様、おはようございます。私はアイドルの大和亜季と申します。今回は都内でも大きなミリタリーイベントにて、トークショーゲストとして参戦致します。
このイベントは私も上京してから2度程訪れたことがあります。世界各国の軍旗(レプリカ)が展示してあったり、プロのプラモデラー殿たちの渾身の力作を展示してあったり、各国の軍服(レプリカ)を着たコスプレイヤー殿たちがいたり、各ブース毎に素晴らしい光景が広がっている祭典であります。
このような素敵な場所でお仕事をさせてくれるイベント運営様方には感謝感謝でありますが、このお仕事を見事に勝ち取ってくださった私専属のプロデューサー殿にはもう足を向けて寝られません。まあこれは前からですけどね。
「おぉ! 見てください、プロデューサー殿! あそこ!」
「?……おぉ、戦艦大和の写真が飾られてるな」
「はいっ! 名字ではありますが、同じ名前の世界に誇る日本の大戦艦っ! その姿をこうして写真でも拝見出来て最高の気分ですっ!」
「へぇ、全部当時の写真なのか……わざわざ借りて展示させてもらったんだな」
「こういうイベントは貴重ですからね。ご協力してくださった方々に感謝しないといけません!」
「そうだな」
あぁ、お仕事でも参戦出来て本当に感無量ですっ!
おおっ! あそこには戦車もありますね! しかも中に入れるみたい!
最近ではミリタリーモノのアニメやゲームも人気を誇っていますからな。栄えるのは当然であります。
でも私が最も気になっているブースは―――
「あぁ……なんと神々しい……っ」
「これだけ並んでると壮観だな」
―――ライフルやハンドガンといったエアガンが販売されているブースであります!
中にはご趣味で1から製作したモデルガンも展示されてて、そう言ったものは非売品ですがどれもクオリティが高く、写真を撮っている方々も多くいます。
「こらこら、ミッション前に浮足立つな」
「はっ! 申し訳ありませんっ!」
「まあ亜季は出会った頃からそうだからな。でも本当に仕事があることは忘れるなよ?」
「はいっ! 了解でありますっ!」
「ん、じゃあ控室に行こうか」
「はいっ!」
―――――――――
その後の私はというと、トークショーでめちゃくちゃテンションが上がり過ぎて司会者殿が苦笑いするくらいでした。だって戦艦大和の主砲の音を流したんですよ? テンション上がるに決まってます! あのブザー音からの轟音……あぁ、今思い出すだけでもよだれが出ます!
そんな風に失態を演じた私めですが、このトークイベントに集まってくださった方々からは『かわいい』『輝いてた』と温かい声援を頂き、ステージ脇で見守っていたプロデューサー殿も笑顔で優しく頷いてくださいました。
自分で言うのもあれですが、自分が変わり者ということは理解しています。
でも好きなことを我慢するのは嫌ですし、そんな私でも共通の趣味から友達は出来ましたからこのままでいようと決めてました。
それがまさかアイドルになるだなんて想像もつきません。その上で同じ事務所のアイドルの先輩方は仲良くしてくださいますし、私の趣味の話もちゃんと聞いてくださいます。
こんなアイドルでいいのかとも悩んだことはありますが、その都度プロデューサー殿が手を差し伸べてくださり、その都度私は救われました。
だから今はミリタリーと同じくらい、アイドルが好きで……プロデューサー殿のことはそれ以上に愛しているんです!
「プロデューサー殿! 少々の失態はありましが、ミッションはコンプリート出来たと自負していますっ!」
「ん、しかと見届けた。何よりアイドルらしく可愛く、笑顔が輝いていた。褒美を取らせる」
「やったー!♡」
私は控室でありながら、プロデューサー殿に抱きつきました。
でもそんな私をプロデューサー殿はしっかりと抱き止め、キスをしてくださいました。
そうです。私はアイドルでありながら、プロデューサー殿と事務所には秘密の恋人関係を築いているのです。
後ろめたさもありますが、私は好きと思ったら止められない性分なので……。
それにプロデューサー殿も私の気持ちをしかと受け止めてくださいましたし、あとは私たちが胸を張って宣言出来るよう鋭意努力をしていければと思っている次第です。
プロデューサー殿は私とは全く趣味趣向が違いますが、私の話をいつも聞いてくださいます。聞き上手なのでしょうね。伊達に私より先に14年生きている訳ではないということです。本当に優しくて、偏見を持たない、素晴らしい御仁です。
だからこそ、私は惚れたんだと思います。私の趣味はどちらかと言えば拒否反応をされる方が多いですから。
親ですら私の趣味には止めさせるようにはしなかったものの、理解は示してはくれませんでしたからね。まあ、何を言われようとも自分を貫きますけどね、私は。
「プロデューサー殿、もっとキスしてほしいです♡」
「ダメだよ。もうそろそろ着替えないと」
「ん〜、ん〜ん〜!」
「駄々こねてもダメなものはダメだ。ほら早く用意しないと、お目当てのエアガン売り切れるぞ?」
「ぐぬぬ……では、せめて帰りの際には……」
「あぁ、ちゃんと約束通りにするよ」
「っ……分かりました!♡ プロデューサー殿、愛してますっ!♡」
「うん。嬉しいけど声は抑えてな」
「はっ……愛してます、プロデューサー♡」
「うん、俺も愛してるよ。それじゃ、着替えが終わったら教えてくれ」
「はいっ!♡」
―――――――――
着替えが終わると、私はプロデューサー殿と一緒にスタッフさんたちとご挨拶をし、イベント会場内を周ることにしました。
人目があるので手は常時繋げませんが、私が走り出しそうになるとプロデューサー殿が私の手を掴んでくれます。ほんの数秒ですけど、私はそれでも幸せです。
そして私はプロデューサーを連れてやってきたのは、やはりエアガン販売ブースです。
今日はこの日のためにお金おろして来たんです。貯金からもちょっと崩してきました。こういう場所でないと買えない代物があるので、それを目の当たりにしたら買わないと次にどこで出会えるか分かりませんからね!
「お目当てのはあった?」
「ありましたっ!」
「これ?」
「はいっ! 64式小銃ですっ!」
「64式小銃、ね」
「はいっ! 正式名称『64式7.62mm小銃』。これは1964年に日本の自衛隊で制式採用された自動小銃でアサルトライフルまたはバトルライフルであります。陸上自衛隊においては普通科……歩兵などの戦闘職種は1989年に制式採用された89式5.56mm小銃に更新され、後方職種も更新されつつありますが、予備自衛官と海上自衛隊・航空自衛隊では現在でも依然として主力であります。この他にも海上の秩序を保つ海上保安庁、特殊部隊の狙撃銃として警視庁に納入されている優秀なライフルなんですよっ!」
「そうなのか。俺には何を言ってるかすら全くだが、良い銃だってのは伝わった」
「これは電動式ですね。しかも付属品も含めて新品で7万円切ってます……これは買いますっ!」
「えぇ、金銭感覚ぅえ」
「? 10万円以上するものもゴロゴロありますし、こちらはまだ安い方ですよ? ほら、お隣のガスガンっていう種類になりますと動きやギミックが本物に近いため、高額にならざるを得ないんですよ」
「うわお、特売なのに軽く13万とか……」
「ガスガンはマガジンからガス缶から何かとお高いですからね。でもそうまでしてでも欲しい人は買いますよ」
「亜季も買うの?」
「サバゲだと私としてはガスガンは不利なのでガスガンで使うように買うならショットガンですかね。ほらあっちに並んでる」
「……それでも軽く4万ってあるけど?」
「ああ、あのショットガンは新品ですからね。中古でもいいなら探せば同じ物で安い物は結構あります」
その後もプロデューサー殿と見て回りましたが、プロデューサー殿は主に金額ばかりに目が行っていて、その反応が新鮮で可愛く思えました。
―――――――――
そしてイベント会場をあとにした私とプロデューサー殿はというと―――
「んっ、はぁっ……ちゅっ♡」
「亜季……んんっ」
―――私がプロデューサー殿のマンションのお部屋に突入しました!
今日は現地解散でいいとのことでしたので、事務所へは電話報告をして帰ることになりました。そしてその足で来ちゃいました。
明日は急なミッション(オファー)さえなければお互いオフですし、私だって女ですから好きな人とイチャイチャして過ごしたい夜があるんです。
それに今日はいいこと尽くしでしたから、余計にテンションが高いです。
「はぁはぁ、入るなり熱烈だな……まだここ玄関だぞ?」
「えへへ、待ちに待ったあなたとの時間だから♡」
「お、素の亜季だ」
「茶化さないでよ……プライベートでは前から素に戻してるでしょ?」
「俺はどっちの亜季も好きだよ」
「そんなこと言うの、あなただけよ♡」
本当に私のことをいつも甘やかして……あなた無しじゃ生きて行けなくなっちゃう。既になってるかも。
「いっぱいいっぱいイチャイチャしたいから、そのつもりでね♡」
「現にイチャイチャしてるけどな」
「もっとよ♡ こんなの準備運動にもなってないんだから♡」
「亜季は甘えん坊だもんな」
「甘やかしてくれる人が悪いの♡」
いつの日か、私の名字が変わっても私はこれまでと変わらない。ずっと彼の隣にいて、私の話を聞いてもらって、彼に愛してもらって過ごすと思う。
だって私、こうと決めたら相手が降参するまでそうするから♡―――
大和亜季♢完
大和亜季編終わりです!
実は素になると女言葉を使うギャップのある亜季ちゃん。そんな彼女の甘々はこんな感じにしました♪
お粗末様でした☆