デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

127 / 196
結城晴編

 

 アイドルなんてやる気なかった

 

 女々しくて

 

 なよっちくて

 

 カッコ悪い

 

 サッカーやってる方が断然いい

 

 そう思ってたんだけど

 

 最近じゃ

 

 アイドルもカッコイイって思うよ

 

 サッカーもアイドルも

 

 真面目にやればな

 

 それを教えてくれたのは

 

 不思議だけどメッチャカッコイイ

 

 特別な魔法使いなんだ!

 

 ―――――――――

 

 わーわー!

 

「いっけー! プロデューサー!」

 

 オレは今、事務所のスポーツ大会を観戦してる。

 事務所にはアイドル部門はもちろんだけど、タレント部門とかミュージシャン部門とかモデル部門とか芸能関係の部門がいくつもあって、どの部門もそれなりに人がいるからその交流って意味で年に数回、関係者が集まってこんなことしてるんだ。

 自分が参加出来ないのはちょっと面白くねぇけど、見るのも好きだからオレは結構熱くなってる。何よりサッカーだからな!

 それにオレ専属のプロデューサーがビブスだけど10番背負ってて、チームの司令塔やってんだぜ?

 

 プロデューサーは身長こそ男の中じゃそんなに高くねぇけど、テクニックとパスセンスで相手を出し抜くめっちゃカッコイイプレースタイルなんだ。

 面接でオレとなんでかパス練した時にコイツは只者じゃないと思ったけど、まさかこんなにサッカーが上手いヤツだなんて思いもしなかった。

 そりゃあ、良くレッスンのあととかオフの時とか一緒にサッカーやってたけど、プロデューサーが本気でプレイしてるのを見るのは今回が初めてなんだ。

 前回の時はバレーボールだったしな。その時もプロデューサーはリベロで凄かったけどさ、サッカーになったら余計に凄え!

 

「ゴール前フリーだぞ! 決めろ! プロデューサー!」

 

 キーパーをやってるデカい人がすぐにプロデューサーとの距離を詰めるけど、プロデューサーは冷静にキーパーの股下にボールを流し込んで、ボールはゆっくりとゴールネットに吸い込まれる。

 

「うおっしゃぁぁぁっ! さっすがオレのプロデューサーだぜっ!」

 

 プロデューサーに手を振ると、プロデューサーもオレに気がついて手をあげてくれた。ただそれだけなのにメッチャカッコ良くて……シビレた。

 

 その後も試合は続いたけど、相手にもサッカーの上手いヤツがいてスコアは2ー4でプロデューサーがいるアイドル部門チームが負けちまった。オレが負けたんじゃないのに、メッチャ悔しかった。

 

 ―――――――――

 

「おい、もうそろそろ機嫌直せよ」

「……別に直す必要ねぇだろ」

 

 スポーツ大会は終わって、参加した人と応援に来た人はみんなで事務所に戻ってパーティしに行った。

 プロデューサーとオレも参加する権利があるけど、オレがこんなだからプロデューサーは断って、オレなんかのためにわざわざ自分のマンションの部屋に連れてきてくれた。

 

 車で移動してる間もオレは悔しくて……本気で悔しくて、何も話せなかった。

 別にプロデューサーが悪いわけじゃないのに、プロデューサーに気を遣わせてる自分にも悔しくなって、余計にオレは不機嫌なわけだ。

 でもそんなオレをプロデューサーは膝の上に乗せて、オレの機嫌が直るように抱っこしてくれてる。

 

 プロデューサーとオレは歳が20も離れてるけど、実は本気で付き合ってるんだ。事務所には秘密な。

 でもちひろさんとか事務所で仲いいヤツらには知られてて、何かとフォローしてもらってる。

 オヤジやアニキたちもプロデューサーのことメッチャ気に入ってて、そんなプロデューサーとオレが付き合ってるって報告した時はみんなして『我が家はクーリングオフは受け付けてないからな』なんて言いやがった! 悪かったな将来が心配な末っ子で!

 でもプロデューサーはそんなオレがいいって言ってくれてる。

 

 プロデューサーと付き合うまで、どうして自分は女なんだろうって悔しかったけど、今は女で良かったと思ってる。アイドルにもなれてるし、なのにサッカーも出来るし……何より大好きなプロデューサーの女になれたし。

 いやまさか自分でもこんな恋愛するなんて思わなかったけどな。興味も無かったし。でもプロデューサーがいたから、オレは恋したんだと思う。惚れたキッカケなんてあとからいくらでも見つかるけど、どのキッカケでもオレはプロデューサーに恋してた。

 だから何度も『オレと付き合おうぜ』って言って、断られた数が3桁に行った辺りで受け入れてくれたんだ。

 

 でも、今は正直、自分でもめんどくさい女だと思う。

 

「俺は結果を気にしてない。楽しくプレイ出来たから満足だ」

「オレはそんな大人じゃねぇんだよ。そもそもアイドル部門の方でサッカー下手なの多過ぎんだよ」

「みんながみんな俺みたいに経験者って訳じゃないからな。経験者が俺だけだったら、逆に俺はキーパーやってたと思うぞ」

「それは、そうなんだろうけどさ……」

 

 ディフェンスとキーパーがしっかりしてれば点は入らなかった。プレイ内容的に1失点目と3失点目はこっちが献上したようなもんだったから。

 なのにプロデューサーは笑ってて、メッチャ楽しそうにプレーしてた。なのに負けたから、オレは納得出来てないんだ。勝ってほしかったんだ。勝って気持ち良くプロデューサーのことを褒めたかったんだ。

 

「まあ俺は部活の時から勝利に拘らない人間だったからな。だから今日みたいな楽しみ方で十分なんだよ」

「あれだけ上手けりゃプロになれたのに」

「それ以上にアイドルの方が好きだったからな」

「ったく、もったいねぇヤツだ」

「そうか? 俺がプロデューサーやってなかったら、晴と出会えてないぞ?」

「そ、それは……」

 

 そうだけどさ。プロリーグで活躍して、カップとか掲げてるプロデューサーも見てみてぇじゃん。彼女的には。

 

「いいんだよ。俺のことは。今の俺はプロデューサーで、晴の恋人で……晴の幸せだけを考えてる」

「は、恥ずかしいこと言うな!」

 

 メッチャ心臓がバクバク言ってる。うるせぇ。顔も熱い。全部プロデューサーのせいだ。

 

「晴からはなかなか言ってもらえないからな。それに俺は大人だし。だから代わりに言ってる」

「お、おぉ、オレだって言うだろ! す、好きとか、だだだ大好きとか!」

「感極まった時ばかりな。俺としては2人きりの時は恋人と甘く過ごしたい」

「悪かったな、恋愛もろくに知らないガキで!」

「謝る必要はないよ。これからどんどん可愛くなる晴を独占出来るし」

「だーかーらーさー! 恥ずかしいっての!」

 

 くっそぅ。悔しさとかどっか行っちったじゃんかよ。ホント、プロデューサーはオレを扱うのが上手いヤツだ。

 

「機嫌は直ったみたいだな」

「うるせっ! 負けたくせに!」

「その笑顔が見れたなら負けてもいいさ」

「いちいちくっそカッコイイんだよ、ちきしょー!♡」

 

 ―――――――――

 

 ダメだ。ホントにオレはダメな女だ。

 プロデューサーを励ますどころか、逆にオレの方が励まされて余計にプロデューサーのこと好きになっちまった。

 話せば話すだけ好きにさせるとか、どんなテクニックだよ。

 

「何にするか決まったか?」

「えっとな〜、このスペシャルザーラピザとマルゲリータのピザ!」

「了解。んじゃそれで注文するよ」

 

 話も一段落すると、今度はオレの腹の音がメッチャ鳴った。恥ずかしかった。だって昼飯まだ食ってねぇもん。気分が落ち着いたから余計に腹減ったんだ。

 それでプロデューサーがピザの出前注文してくれるから、甘えることにした。外で食ってもいいけど、今日みたいな日はプロデューサーと2人きりがいいし、外に出るとアイドルの顔しないといけないからな。めんどうだけど、アイドルの方はプロデューサーのために頑張んねぇと。アイドルなのに女子サッカー日本代表とかカッコいいし!

 

「飲み物はコーラでいいか?」

「ヘプシだよな?」

「そうだよ。俺はコーラ飲まないから殆ど晴のために用意してあるようなもんだ。飲んでもらわなきゃ困る」

「仕方ねーな♡」

 

 へへっ、プロデューサーってホントオレのこと良く分かってるよな。オレもプロデューサーのこともっと知って、いい女にならなきゃ。大好きな男にフラレたくねぇし、いつかはオレが色々とプロデューサーを支えたいしな。

 

「45分で来るって」

「その間どうすんだ?」

「晴のしたいことでいいぞ。この前みたいにゲームするなり、録画してある海外のサッカーチームの試合中継見るなり、色々あるからな」

「じゃ、じゃあさ……」

「うん?」

「えっと……だ、抱っこしてくれよ♡」

「……どういう風の吹き回しだ?」

「分かんねぇけど、されたい……ダメか?♡」

「大歓迎」

 

 プロデューサーはそう言うとすぐにオレを抱っこしてくれた。

 今日はそんな気分なんだ。プロデューサーがサッカーやってて、その姿がメッチャクチャカッコ良かったから、そんな人が自分の彼氏なんだって実感したかった。大声で言えないから余計になのかもしれねぇ。

 

「プロデューサー、今日はマジでカッコ良かった♡ 惚れ直した♡ メッチャ好きだ♡」

「そう思ってもらえて嬉しいよ。おっさんでもやっぱりいいところは見せたいからね」

「オヤジより全然若いんだから、おっさんとか言うなよ。それに今日見た大人の中じゃ、プロデューサーが1番カッコ良かったぜ!♡」

「それは晴が俺に惚れてるからだよ」

「別になんだっていいだろ♡ オレの中じゃプロデューサーが1番なんだからさ♡」

「まあな」

 

 こんなにカッコイイヤツが彼氏なんだ。オレはホントに女に生まれて良かったぜ。じゃなきゃこんな関係になれなかったんだからな。

 

「次サッカーやる時、フリーキック見せてくれよ♡ 2点目の直接決めたヤツ、マジでシビレたんだ♡」

「カーブかけるのは昔から得意だったからなぁ」

「んだよ〜、それならもっと早く教えてくれよ〜。今度コツ教えろよな」

「感覚的なものだから伝わるか分からないぞ?」

「オレはプロデューサーの彼女だぜ?♡ それくらいすぐに理解して、使いこなしてやるよ!♡」

「そうか」

「うん!♡」

 

 それでもしオレがゴール決めたら、プロデューサーに向かって投げキッスしてやるからな!

 

「なぁ、プロデューサー♡」

「ん?」

「これからもずっと一緒にいような♡ オレのこと置いて行ったら許さないからな♡」

「どっちかというと俺が置いて行かれる方だと思うよ」

「んなわけねぇじゃん。オレがどんだけプロデューサーのこと好きなのか分かって……っ♡」

「そこで照れるのかよ」

「う、うるせぇ♡」

「全く、可愛いな、晴は」

「プロデューサーの前だけだ!♡」

「ファンにこんな晴見せられないよ。独り占めする」

「っ……へへ、だよな♡」

 

 これからもプロデューサーに1番の女として独り占めされたい。そのためにオレはアイドルもサッカーも、全部頑張ってプロデューサーと肩を並べても恥ずかしくない女になるんだ!―――

 

 結城晴♢完




結城晴編終わりです!

ボーイッシュだけど、惚れたら女心丸出しになるはず!

お粗末様でした☆

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。