デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

128 / 196
神奈川から東京の事務所に通ってる設定です。


吉岡沙紀編

 

 人生って何がどうなるか

 

 分からないもんっすよね〜

 

 趣味に没頭してたら

 

 アイドルにスカウトされたんすから

 

 でもその人の目は

 

 芸術を愛している人の目だった

 

 だから話を聞いて

 

 楽しそうだと思って

 

 実際になってみたら

 

 めちゃめちゃ楽しいんすよ

 

 魔法使いさんに感謝っすね

 

 ―――――――――

 

「………………嘘だと言ってくれよ」

「あはは……いやぁ、なんでもいいってことだったんで、気のむくまま描いてたら、こうなったっす……はい」

 

 初っ端アタシはやらかしたっす。

 実は今日、オフなんすけどアタシ専属のプロデューサーさんにお願いされて、趣味のグラフィティアートを描いたんすよ。

 描いた場所は都内の大通りに面してるけど、こじんまりとしたメンズファッションのお店で、そのお店のシャッターに描いたっす。

 

 ここのお店はプロデューサーさんの友達さんが経営してるお店で、閉まってても印象付けしたくてプロデューサーさんに相談して、アタシにこの話が来た。

 その友達さんからは「とにかく人目に留まるモノがいい」ってリクエストだったし、筆も乗って気分よく描き終えたんすけど―――

 

「LOVEだのForeverだの……英語でアートだからって告白っぽい言葉並べ過ぎだろ……」

「いやぁ、あはは……止まらなかったんすよ、LOVEが♡」

 

 ―――描き終えてプロデューサーさんに指摘されるまで、自分でもこんなに愛の溢れてるモノにしていたとは思ってなかった。

 

 シャッターの中央に黒で大きく縁取りしたハート型。そしてその中に英語で色々と言葉を詰め込んだスタイル。

 極めつけは外側にハートを覆うように最後に描き足した『Until now I have been looking for you』は、日本語で『今まであなたを探し続けていたんだ』ってセリフっすね。

 

「でもそんなに言うなら、こうなる前に止めて欲しかったっす」

「いや、俺も隣で見てて気持ちいいくらいノリノリだったからさ……」

「なら満足してほしいっす♡」

「上手く説明してくれよ?」

「任せて♡」

 

 このアートに込めた言葉は、全部アタシがプロデューサーさんに抱いてる言葉。

 そう、この絵はプロデューサーさんに対するアタシの愛がこれでもかと詰め込まれてるんだ。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 アタシは今でこそアイドルなんてやってるけど、それも全部プロデューサーさんと出会ったから。

 最初に声をかけられた時はナンパかと思った。自分で言うのもなんだけど、ストリートってだけでなんか勘違いしてるチャラいヤツ多いから。

 

 ちゃんと名刺までくれたプロデューサーさんに初っ端失礼なこと言っちゃったけど、アイドルも芸術だって言われて、見る目が変わったんだ。

 

 最初はレッスンのどれも上手く行かなくて悔しかったけど、それはアートも同じ。だからそれと同じように悔しくても楽しかった。

 そしてその悔しさも楽しさも、いつもプロデューサーさんと分かち合ってた。

 

 だからアタシはプロデューサーさんに恋をした。

 バレちゃマズいから自分の心を隠してたけど、プロデューサーさんにバレちゃって……終わったと思った。

 

 でもプロデューサーさんは―――

 

『秘密恋愛になるが、俺と付き合ってほしい。沙紀をずっとプロデュースしていきたい』

 

 ―――そう言って、抱きしめてくれた。

 

 嬉しかった。拒絶されるのが怖かったのに、まさか告白してくれるだなんて思ってもいなかったから。

 歳は10離れてるけど、アタシはそんなの気にしない。プロデューサーさんはちょっと気にしてるみたいだけど、いらない心配っす。アタシ趣味同様、恋愛も一途っすから。

 まあ事務所にバレたらマズいんで、事務所じゃ顔にやけるの隠すのに必死っす。それが大変くらいで、あとは幸せ絶好調っすね。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 今じゃ仲のいいアイドル仲間も応援してくれてるし、プロデューサーさんも空きを見つけてはアタシとイチャイチャしてくれるし……愛って偉大っすよ。

 

「なんとかなって良かった……」

「だから自分に任せてって言ったじゃないすか」

「物は言いようってのがよく分かったよ」

 

 アタシはプロデューサーさんの運転で帰ってる途中っす。

 説明はもちろん大成功。友達さんも満足してくれたし、シャッターなのにアタシのサインも書かせてくれたっす。

 

 どう説明したかというと、メンズファッションのお店なんでそこの服で彼女にアピールとか、好きな子をゲットしようって感じで仕上げたってことにした。

 そうしたら何も疑われずにめっちゃ喜んでくれたって訳っす。まあ半分は嘘なんでちょっと後ろめたいところもあるけど。

 でも流石に友達さんといえどプロデューサーさんのことを考えて描きました、なんて言えないっすからね。あれでいい。うん。

 

「まあとにかく、今日はありがとうな、沙紀」

「いいんすよ、そんな♪ アタシとしては久々に大作を描けたんで、こっちがお礼いいたいくらいなんだから♪」

「そう言ってもらえて嬉しいよ。でも当初の通り、あとは沙紀のしたいことに付き合うから」

「そのことなんすけど……」

「あぁ、遠慮せずに言ってくれ」

「プロデューサーさんのとこに泊まりたいっす♡」

「……彼女が可愛過ぎる」

「は、恥ずかしいこと言わないで! 照れるから!」

「自分で言ったのにな」

「う〜! それでどうなの!?」

「断わる訳ないだろ。てかそのつもりで荷物多めだったんだな」

「……だって、最近はアイドルの方が忙しくて、プロデューサーさんとちょっとしかイチャイチャしてなかったから……」

「そうだな。明日の朝からまた忙しいが、今日はめいっぱい恋人らしく過ごそう」

「うん……へへへ♡」

 

 ―――――――――

 

 それからアタシはプロデューサーさんのマンションの部屋に上がり込んだ。もう朝まで外に出たくないから、コンビニでお菓子とか飲み物とかも買い込んで、プロデューサーさんが言ったようにこれでもかってくらいイチャイチャして過ごす予定。

 

 だったんだけど―――

 

「んんっ……ちゅっ、ちゅぷ……んんぅ、ぢゅるっ……ちゅぷ……ふはぁっ……んふぅ、ちゅ〜……はぁはぁ♡」

「はぁはぁ、ふぅ……愛してるよ、沙紀」

「うん……あたひも……あいひてりゅ……♡」

 

 ―――リビングに入ってからのアタシらはキスしかしてない。いや嬉しいんだけどね。でもこうなるなら余計な買い物したと思って。

 

「蕩けた顔の沙紀も可愛いな」

「やぁ、みるなぁ♡」

「無理言うなよ。絵に残すくらい俺へ愛を送っておいて、そんな相手を見つめない恋人はいない」

「んぅ〜♡」

 

 そんな優しい声色で耳を撫でないでほしいっす。もうとっくに恋に落ちてるけど、プロデューサーさんの愛に堕ちる。いやもう堕ちてるっすかね、これ。

 

「続き……いいよな?」

「ふぇ?♡」

 

 ま、待ってほしいっす! アタシもうヤバいんすよ、マジで! これ以上されたら―――

 

「沙紀……んっ」

「んむぅっ♡ ん、ちゅる……ぷろりゅうさぁ、これ……っ、ちゅっ、ぢゅるる……、しゅご……くひのなか、とりょけりゅ……んんーっ♡」

 

 ―――もうダメ。プロデューサーさんのことしか考えられないっす。きっと今のアタシ、プロデューサーさんから見たら目にハートマーク浮かべて見えてるっす。

 

 激しくキスされて、その動作ひとつひとつにプロデューサーさんからの愛を感じて―――

 

「だめぇ、あっ、ふぁあっ、ほんひょに、これいじょうは……あっ、んんんんーーーっ♡」

 

 ―――キスだけでこんなにも乱れた。というかプロデューサーさんのキスは本当にヤバい。幸せ過ぎて死ぬかと思った。

 

 ―――――――――

 

「…………?」

 

 いつの間にか、アタシは寝落ちしてたらしい。

 電気もついたままだし、プロデューサーさんはアタシの隣で寝てる。お互い床で。

 

「うわぁ……」

 

 起き上がると、それはもう説明もしたくないくらいの生々しい跡がそこかしこにあったっす。アタシ、途中から記憶飛んでて、プロデューサーさんのことしか覚えてないっす。

 でもこの惨状を見るに、余程ヤバい夜を過ごしたみたいっすね。

 

「…………」

 

 あれ、思ったよりも時間経ってないっす。まだ夜中の3時だし。

 

 隣を見るとプロデューサーさんが寝てて、なんかその寝顔にキュンときた。だから彼を起こさないように、アタシはまた彼の隣に寝転んで、愛する彼の胸板に頬を寄せた。

 聞こえてくる彼の鼓動の音。それとは別に耳に触れてくる彼の体に似合わない小さな寝息に、アタシはホッとする。

 愛する人だから、何を感じても心地よくなるんだろうなぁ。

 

「……愛してるよ、〇〇さん♡」

 

 思わずアタシはそうつぶやく。でも彼が寝てるからって自分から言うのはまだ恥ずかしい。だから聞こえていなくても、アタシは照れ隠しで彼の胸板にまた頬を寄せた。

 男性らしい、たくましい胸板。決して筋肉でバキバキではない。けど、その男らしさを目の当たりにすると、意識を手放す前の彼とのキスを思い出す。

 すると胸の奥がどくんと跳ね上がった。どうやら、アタシはもう戻れないらしい。

 

 それはとても嬉しくて幸せなことだったけど、アタシはちょっと素直じゃないところがあるから、彼が寝ているのをいいことに仕返しすることにした。

 

 アタシばっか恥ずかしい思いさせられるのは不公平だからね。

 

「……あ〜……むっ♡」

「っ」

 

 おっ、反応した。可愛い。

 

 アタシは無防備に晒されてる彼の胸板のど真ん中に軽く噛み付いた。

 じっくりと吸い上げれば、そこには真っ赤な跡が残る。あとはそこから周りを埋めるように深いのと軽いのと交互にハートマークの形に跡を残していく。

 仕上げに舌で残らないアタシのサインをして終わり。

 

「へへ……♡」

 

 流石にこんなのみんなが見たら驚くだろう。プロデューサーさんのことだから何としてでも見せられないだろうけど。

 

「…………終わったのか?」

「へ?」

「………………」

「い、いつから起きてたんすか?」

「割と最初の方から」

「ハメたんすか?」

「いや、こうするとは思ってなかった。でも気持ちよかったし、終わるの待ってればいいかなって」

「恥ずかし過ぎて死ぬっす」

「死ぬな。生きろ」

「ちょっと黙っててほしいっす」

 

 またやらかしたっす。あぁもう、どうしてプロデューサーさんの前だとアタシはこんなんなんすかね。

 

「はぁ……好きっす、〇〇さん♡」

「お、開き直った」

「そうでもしなきゃ立ち直れないっすから」

「どんな沙紀も可愛いだけだけどな」

「う〜、〇〇さぁんっ♡」

「ごめんごめん。とりあえず、二度寝するのもあれだし、キスして過ごさないか?」

「え〜♡」

「沙紀とキスしたいんだ」

「そ、そんなに言うなら、い、いいっすよ〜?♡」

 

 そしてアタシは朝までキスされて、その日のヴィジュアルレッスンは酷い有様だった。だって鏡で自分を見る度にプロデューサーさんとのキスを思い出して、にやけちゃってたから。

 一緒にやってたみんなに『爆発しろっ!』って言われたけど、それすらもにやけ顔で返事しちゃったっす―――。

 

 吉岡沙紀♢完




吉岡沙紀編終わりです!

ボーイッシュだけど乙女になったらより可愛いだけです!

お粗末様でした☆

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。