デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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ビザとか小難しい話には触れませんのでご了承ください。


ライラ編

 

 日本はとても良い国です

 

 人々が温かくて、優しくて

 

 差別をしません

 

 ワタクシの好きな人も

 

 差別をしませんし

 

 外国人のワタクシに

 

 たくさんのものをくれました

 

 なのでワタクシは

 

 これから恩返しをしようと思います

 

 ―――――――――

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 ワタクシはライラさんです。

 そしてここはワタクシが生まれ育ったドバイのワタクシの実家でリビングにいますです。

 アイドルをして早半年。ワタクシは隣に座っている専属プロデューサー殿のお陰でアイドルとしても人気になり、楽しい日々を過ごしていました。

 しかし、ワタクシのパパにバレました。なので、プロデューサー殿と共にこうして膝を突き合わせてお話し合いの最中です。

 

 パパはドバイでもかなり大きなホテルを経営し、ママはそこのデザイナーさんをしています。

 ライラさんは一人娘なので小さかった頃から2人にそれはもう愛してもらいましたが、何かとやりたくもない経営学やらマナー作法をやらされて、それが嫌で親から逃げました。

 ワタクシの家の元メイドさんが日本の方と結婚して日本へ嫁いで行き、居場所もお手紙で知ってましたので一時期はその家に身を寄せて頂いてました。

 

 でもこのままでは2人の生活の邪魔になると思い、アルバイトをしてお金を貯め、一人暮らしを始めました。

 しかし、外国人のワタクシが遠い異国で上手く行くはずもなく、致命的なミスでアルバイトはクビになりました。間違えてお客様にお返しする金額を間違えて多く渡してしまったのです。それもかなりの額を間違えました。

 店長さんはクビにしたくないとオーナー様を説得してくれましたが、それでもワタクシのしたミスは大きく、これ以上店長さんにご迷惑をお掛けするのも嫌なのでクビを受け入れました。

 

 途方に暮れていたワタクシですが、日課だったのでいつものように近くの公園に行きました。

 そこでプロデューサー殿と出会ったのです。

 

 彼からのスカウトを受け、彼と同じ時間を過ごすようになってから、ワタクシの生活は一変しました。

 まさにシンデレラのような気分でした。

 

 異国人のワタクシでも手を振れば、来てくれた方々は笑顔で手を振り返してくれる。

 拙い日本語だけれどワタクシが歌えば、来てくれた方々は温かく耳を傾けてくれて、声援をくれる。

 

 忙しくて目が回りそうでも、どんな時でも支えてくれたプロデューサー殿。

 そんな方にワタクシはいつしか恋をし、全国ソロライブの成功を祝うともに愛を誓い合いました。

 

 それでその結果が今ですー。

 ライラさんはプロデューサー殿と結婚を前提にお付き合いしていると、両親に再会して一番に告げました。

 事務所にはまだ内緒ですが、両親には言わないと。また変なお見合い相手をあてがわれてしまいます。

 

「…………貴様が私たちのライラと、だと?」

 

 重々しい空気の中、最初に口を開いたのはパパです。

 パパもママも頭がいいので、日本語は話せます。ホテルにも日本人の方は多く訪れますし、パパのグループに投資もしてくれてますから。

 

「はい。真剣にお付き合いをさせて頂いております」

「貴様は歳はいくつだ?」

「29です」

「年間どれほど稼いでいる?」

「彼女の人気もあり、今は1400万弱です」

「…………情けない」

 

 パパはそう吐き捨てるので、ワタクシはパパを睨みました。プロデューサー殿は決して情けない人ではありません。ワタクシを救ってくれた大恩人です。そんな方をそのように言うなら、本気で絶縁を考えます。

 

「っ……いや、日本語はそう話さないからな。きつい言葉遣いになったのは詫びよう。しかしそれでは……ライラを幸せに出来ないのではないか?」

「パパ、ワタクシはお金なんていりません。お金がなければ何も出来ませんが、あればあるほど心が乏しくなります。贅沢はたまにだから幸せなのです。ワタクシはこの方にそのことを学びました。ですからワタクシは、プロデューサー殿と今を生きているのです」

 

 ワタクシの言葉にパパは押し黙ります。

 すると今まで黙っていたママが大笑いしました。いつもは手にしている扇子で口元を隠すのに、それすらも忘れてます。

 

「あ〜、おかしい〜……あなた、もうそのような演技は良いのではなくて? ライラがこうして自らの手で掴んだ婚約者を私たちが握り潰しては、今度こそ親子の縁を切られますわ」

「……そ、それはそうだが……」

「それに、あなただって最初は私の両親に反対されてまで私とこうして結婚したではありませんか。今でこそあなたの事業は成功していますが、私はあの頃のペンション経営も楽しい日々でしたわ」

「…………」

「あなたが私やライラのことを思ってビジネスに身を捧げてきたのを良く知っています。しかし、ライラの幸せは私たちが与える時期ではなくなったことを受け入れないと」

 

 ママの言葉にパパは静かに、でもしっかりと頷くと、現地の言葉でプロデューサー殿に『娘をよろしく頼む』と言いました。

 プロデューサー殿は現地語を知りません。しかしパパの思いが伝わったのか、頭を深く下げて「はいっ!」と力強く返しました。

 

『ふぅ、やっと一段落ね。全く、男ってのはプライドを拗らせすぎて困るわ』

『わ、悪かった……』

『ふんっ、私の可愛いライラが選んだ男性を値踏みしようとするその根性は私が大っ嫌いなとこなの。さぁ、私の可愛いライラ、ママにあなたの婚約者をしっかりと紹介して頂戴ね♡』

『わ、わかりましたわ。ママ』

 

 こうしてワタクシとプロデューサー殿はママにグイグイと手を引かれ、サンルームへと連行されます。そのあとからパパが「わ、私も!」と慌てて走ってきたので、それは前から変わらないパパだったからおかしかったです。

 

 ―――――――――

 

「なんだか、凄いことになってしまった……」

「ライラさんのこと嫌いになりました?」

「いや、そんなことはないよ」

「良かったです……あなたに見捨てられたら、ワタクシはもう生きていけません」

「な、泣くなよ。ただ驚いただけだって」

 

 ママたちとのお茶会はワタクシがここから逃げ出した頃よりも前のように笑顔の溢れたお茶会でした。

 でもプロデューサー殿は萎縮してしまってました。何せプロデューサー殿とワタクシが日本では滅多に口にしない茶葉の紅茶やお菓子がめいっぱい用意され、そして晩餐会でも滅多に食べない高級料理ばかりでしたから。

 

 そしてパパもママも仕方がありませんが気が早くて、今夜からもう同じベッドで寝なさいとワタクシの部屋に押し込まれました。

 しかも使用人たちに頼んで既に2人で生活出来るように整えられています。

 

 なのでワタクシはプロデューサー殿が落ち着けるようにと、ワタクシの部屋の前にあるバルコニーに誘って、夜空の下で肩を寄せ合って過ごしてました。

 

「……プロデューサー殿……いえ、〇〇様、本日はとてもお騒がせして大変申し訳ありませんでした」

「いや、いいよそんな。確かに驚いたけど、ライラはライラだから」

「……またそうやってあなたはワタクシを虜にするのですね♡」

 

 あなたのその全てを包み込む優しさに、ワタクシがどれほど救われてきたか。きっとあなたは知らないでしょうね。

 

「そんなこと言われてもなぁ……」

「いいえ、この際ですからしっかりと言わせて頂きます。〇〇様は優しいのです。いえ、優しすぎます!」

「そ、そう?」

「そうです! 事務所にあなたを想う異性は多くいました!」

「え、何それ?」

「それです! あなたはわ、ワタクシのことばかり想っていて……他の方の好意なんて目もくれなくて! ワタクシが勝手に嫉妬して、勝手に安心させられてたんですよ!」

「そ、そんなこと今怒られても……」

「怒りたくもなります! バレンタインデーの時なんて、他の方々からたくさん手作りの物を頂いて、ワタクシにあなたは『いやぁ、みんな優しいよね』なんて嬉しそうに報告してきました! なのに、なのにワタクシが差し上げた歪なハートのチョコレートをあなたは泣いて喜んでくれました! ワタクシがどんなにあの笑顔に胸を焦がしたか、知ってますか!?」

「知らないです……」

 

 それからもワタクシは怒る気は全くなかったのに、まくし立てるようにプロデューサー殿がどんなに素晴らしいワタクシの恋人なのかを言い聞かせました。

 

 雨が降るといつも傘を差してくれた。

 寂しい時はいつも側にいてくれた。

 悲しい時はいつも笑顔にしてくれた。

 

 今あるワタクシは全てプロデューサー殿がくれました。

 そんな方を世界一愛しているのはワタクシしかいません。

 ですから、それを分かってほしかったのです。

 

「…………ライラ」

「ワタクシがどんなにあなたに惚れているか、自覚出来ましたか? あなたがどんなに優しい方か、自覚出来ましたか?」

「うん」

「ならばもうこれからは愛の言葉しか言いません」

「ありがとう、ライラ。愛してるよ」

「……ワタクシも、愛しています♡ 必ずや、アイドルのてっぺんを一緒に取って、そうしたら結婚してくださいね♡」

「その時はちゃんとこっちからプロポーズするよ」

「高価な指輪はいりませんから♡」

「そこも分かってる。給料三ヶ月分って2人で決めたからな」

「はい♡」

 

 彼の気持ちが嬉しくて、ワタクシはついに彼の胸に飛び込みました。すると彼はしっかりとワタクシの体を支えてくれて、見上げるといつにも増して彼の顔が優しく見えました。

 きっと月明かりのせいで、元の優しいお顔に幻想的な雰囲気が追加されたからでしょう。またはワタクシの恋愛補正のせいですね♪

 

「んっ……温かい。あなたの胸に抱かれるのは、いつだって特別な気分にさせてくれます♡」

「ライラだけの特等席だから」

「永遠にワタクシの特等席とさせて頂きますね♡」

「もちろん、いいよ」

「ふふふっ♡」

 

 するとプロデューサー殿が小さなくしゃみをしました。ドバイは夜でも暑いですが、風邪を引かれては嫌です。

 

「お部屋に戻りましょうか♡」

「雰囲気を壊して申し訳ないけど、そうしよう」

「いいですよ♡ お部屋ではうんと可愛がってもらいますから♡」

「え」

「パパたちも了承してますから、もうワタクシも我慢しません♡」

「あ、アラブの人は婚前交渉はダメなんじゃ……」

「おや? ライラさんの家系はムスリムではありませんから、大丈夫ですよ♡ 良かったですね♡ いっぱいイチャイチャセ〇クス出来ますし、寧ろしましょうね♡」

「…………」

「ゴムは箱で用意されてますから、朝まで余裕ですね♡ しかもちゃんと安心の日本製です!」

「ガンバリマス……」

 

 その夜は本当に幸せな夜でした。朝にはパパたちに良いご報告も出来ました。流石に子作りはまだしてませんけど。

 ですが、将来は笑顔溢れる家庭にしたいですね♡―――

 

 ライラ♢完




ライラ編終わりです!

ドバイ出身ということなのでかなりのご令嬢という設定にしました。
ライラさんがどんな民族なのかは不明なので、そこも私の想像です。

どう書こうかとても楽しく迷いましたが、やっぱり幸せになってほしいですね♪

お粗末様でした☆

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