デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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本編前に補足説明

渚ちゃんはバスケ部キャプテンという設定があります。
未だ渚ちゃんがどこのポジションをやっていたのか明らかにされてませんが、本編ではパワーフォワードをしていたという設定にします。

この設定にする理由は私が知っているバスケのポジションと背番号の関係において、背番号8を背負う人はパワーフォワードというポジションの人が多いからです。
因みにパワーフォワードは野球で言うところの打順4番みたいな感じです(間違ってたらごめんなさい)。

説明が長くなりましたが、以上のことをご理解ご了承の上でお読みください。


パッション
愛野渚編


 

 アイドルなんて考えてもいなかった

 

 ずっとバスケ一筋だったし

 

 これからもそうだと思ってた

 

 そんな私をアイドルにしてくれた人がいる

 

 ―――――――――

 

「渚〜、今日もこのあと仕事〜?」

 

 下校時間になった途端、同じ部活の仲間で親友の子がそんなことを訊いてきた。私たちはもう引退しちゃってるけどね。

 

「え、そうだけど……何か私に用事でもあった?」

 

 もしそうだったら悪いなぁと思う私だったけど、

 

「いんやぁ、渚の大好きな人が校門の前で渚を待ってるみたいだからさ〜?」

 

 ただの冷やかしだった。

 

 そして私はちょっと友達のことを睨みながら校門の方を確認すると、今じゃ私専属のプロデューサーが私の担任の先生と話しながら校門の前にいた。

 

「ね〜、いるでしょ〜? 早く行ってあげなよ〜」

「言われなくても行くよ! ていうか、なんでそんなニヤニヤしてる訳!?」

「え〜? だって〜、あの人って渚の彼氏なんでしょ?」

「うぐっ…………そ、そうだけど、ニヤニヤしてる理由になってない」

 

 そう、彼女が言うように私はアイドルなのにプロデューサーと恋人関係になってる。

 このことは彼女にしか話してない。中学高校と付き合ってきてる彼女なら口が硬いし、誰にも言い触らすことなんてないから。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 私がプロデューサーと恋人同士になったのはほんの1週間前。

 高校最後のバスケの試合で負けて、公園で一人泣いてた私に優しく声をかけてハンカチを貸してくれたプロデューサー。

 そして私にアイドルというバスケ以外で情熱を注げるものを与えてくれて、初めから今まで私を応援してプロデュースしてくれた。

 そんな人を好きになるのって極自然というか……あ、これが恋なんだって自覚した時からずっとアプローチしてきて、この前やっとお返事をもらったんだ♡

 

 仲良しのアイドル仲間に相談して、バスケの試合みたいにバンバン私のハートをプロデューサーのゴールにシュートしてきた結果で。

 いざ恋人になってみると、自然とにやけちゃうんだよね。

 にやけちゃってたから親友にバレたんだけど……。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

「プロデューサー!♡」

 

「お〜、渚〜」

 

 私がプロデューサーに声をかけると、プロデューサーも私の声に反応して手を振ってくれる。

 いつもと変わりないやり取りなのに、恋人となるとそれさえも特別な感覚に思えて胸がドキドキしちゃう。

 

「では、私はこれで……愛野さんのことをよろしくお願いします」

 

 校門に着くと、先生がプロデューサーに頭を下げて、私にも「頑張りなさい」と声をかけて職員玄関へ向かっていく。

 最初は私がアイドルをやるってことに反対してたんだけど、プロデューサーの支えもあって成績も落ちないで来たから今ではすっかり応援してくれてるんだよね。

 寧ろバスケばっかで勉強は二の次だった私としては、今の方がバスケをやってた時と比べるとテストの点は良かったり……たはは。

 でもでも、色んな人に支えてもらって、色んな人にアイドルとしての私がお仕事で恩返し出来るって嬉しくて……もっともっと頑張ろうって思える。

 

「予定の確認は車内でやろう。乗ってくれ」

「はい!」

 

 ―――――――――

 

 恋人になって変わったことがある。

 それはプロデューサーが運転する時の私の席が助手席に変わったこと。

 前までは後部座席だったんだけど―――

 

『俺たちは恋人なんだろ? 俺は彼女のことは助手席に乗せる主義なんだ』

 

 ―――って、プロデューサーが言うから私はそれに従ってる。

 従ってるって言っても、ちっとも嫌じゃなくて寧ろ嬉しい♡

 

 プロデューサーは私より10も年上だから、他の女の人と付き合ってたこともあるだろうし、私から見れば優しくて格好いいから不安な時があるんだよね。

 恋人が出来て自分で初めて自分がすごく嫉妬深いって思えた。もともと負けず嫌いなところもあるからそういうの関係してるんだろうけど……恋ってすごいなぁ。

 

「おい、渚」

「ふぇっ……あ、ごめんなさい。何の話でしたっけ?」

「だから今日は前に特集記事を書いてもらった雑誌社からまた独占インタビューがあるって話」

「あ、この前の……」

「そうだ。なんでも渚の裏表のないハキハキした受け答えが向こうの人たちに好評でな。読者からの評判も上々で、2度目のインタビューがしたいんだと」

「うわぁ……嬉しいですね!」

「そうだな。まあでも、渚の可愛さなら当然といえば当然なんだけどな」

 

 可愛い……だなんて、サラッと言う。

 恥ずかしいけど……すごく嬉しい♡

 

「お、おだてても何も出ないですよ〜?♡」

 

 自分でそう言ってても、自分がにやけてるのが分かる。

 案の定、プロデューサーからは「言葉と表情が違うぞ」って言われちゃった。

 

「まあでもなんだ……そんな可愛い笑顔をもらえるなら、俺にとってはお釣りがくるよ」

「も、もう……プロデューサーったらぁ♡」

「ははは、まあ何にしても、インタビューはしっかりな」

「はい……えへへ♡」

 

 ーーーーーー

 

 今回のインタビューは私たちの方が雑誌社の事務所に招かれるといった感じで、私とプロデューサーはこの前と同じ男性の記者さんにインタビュー用の部屋に案内された。

 前にも挨拶をしてるけど、私はいつも通りに挨拶をしてインタビューに臨んだ。

 

「じゃあ、早速始めさせてもらうね」

「よろしくお願いします!」

「あはは、相変わらず愛野ちゃんの挨拶は気持ちいいね……じゃあ事前に渡しておいた質問用紙の1番の答えなんだけど、教えてくれるかな?」

 

「はい……『バスケでどこのポジションが得意なのか』ですが、私はパワーフォワードです。実際に部活でもそのポジションを任されてました!」

「パワーフォワード……バスケだと相手のゴール付近によく顔を出す役割だよね? 相手のセンターは背が高いだろうし、大変じゃなかった?」

「確かに私より背の高い選手を相手にするのは大変でしたが、それをドリブルで抜いてシュートを決めた時のあの感覚が最高なんですよ!」

「なるほど、他にはどんなポジションを――」

 

 こうして最初の方はバスケのお話をして、アイドルになってからのお話に変わっていき、私はどの質問にも順調に答えていった。

 なんでもこの質問用紙の内容は前の記事を読んだ読者さんたちからの質問を採用したみたいで、どの質問も私は喜んで答えてた。

 でも―――

 

「じゃあ、これが1番多かった質問なんだけどね? ズバリ訊いちゃうと、愛野ちゃんの好きな男性のタイプってどんな男性なのかな?」

 

 ―――とうとうこの手の質問が来てしまった。

 簡単に答えるならプロデューサーみたいな人で終わりなんだけど、当然そんなこと言える訳ないし……学校でも恋バナはずっと聞いてる側だったから正直なところ苦手なんだよね〜。

 プロデューサーにも相談したけど、無難なこと言っとけば大丈夫としか言われなかった。

 

「……うーん……」

 

 プロデューサーの方に"助けて"ってアイコンタクトはしてみたけど―――

 

「♪」

 

 ―――プロデューサーは何故かニカッと笑って親指を立てるのみ。

 寧ろ困ってる私を見て楽しんでる感じ……イジワル。

 

「流石に答え難い質問だったかな〜? それとも事務所的にこの手の質問はNGだったりします?」

 

 記者さんは空気を察してプロデューサーに確認を取る。

 

「いえ、この手の質問はアイドルならばよくある質問ですからね。うちでは特にNGという訳ではありませんよ」

 

 うわっ、すっごく楽しそうにしてるよ、プロデューサー。目がキラッキラしてるもん。

 

「了解です♪ じゃあ、改めて……愛野ちゃんの好きな男性のタイプは?」

「優しい人なんて当たり障りの無い回答はするなよー?」

 

 記者さんに続いてプロデューサーがそんなことを言ってくる。

 他人事だと思って!

 

「あはは、プロデューサーさんにも言われちゃったね〜♪ さて、どうなのかな〜?」

 

 男の人って女の子が困ってるのに、それを見て楽しむ生き物なのかな?

 なら―――

 

「好きなタイプは私のプロデューサーみたいに一途に誰かの夢をちゃんと応援してくれる……強い気持ちを持ってる人ですね!」

 

 ―――へへーん、どうだ♡

 

「!!!?」

 

 あ、効いてる効いてる♪

 目を逸してるもん♪

 

「なるほどなるほど〜! なら、そんな好きなタイプがいつも側にいると、その内惚れちゃったりして?」

「それはお答え出来ませーん♪」

「あちゃー、でもいい笑顔をもらえたから、これ以上は訊けないね! それじゃ最後に―――」

 

 こうして私の今日のお仕事は無事に終わった。

 

 ―――――――――

 

「ったく……してやられたよ、今回は」

「イジワルなことばっかりしたプロデューサーが悪いんですからね?♡」

 

 車で家まで送ってもらう中、私たちの話題はインタビューでの私の答え方で持ちきり。

 

「まあ、実際の記事では『一途に自分を支えてくれる人』ってなるみたいだから、良かったが……あんまり冷や冷やさせるなよ?」

「ならプロデューサーもちゃんと私を助けてくださいね? 本当に困ってたんですから……」

「あぁ、以後気をつけるよ……でも俺って好きな子には意地悪したくなるんだよなぁ」

「えぇ、優しくしてくださいよ〜」

「でもそんな俺が渚は好きなんだろ?」

「…………好き、です♡」

 

 本当にこういうのずるいって思う。

 でも本当のことだから嘘でも"嫌い"なんて言いたくない。

 

「ありがとうな……俺もあんまり渚をいじめないようにするよ。渚に嫌われるのは嫌だからな」

「ちゃんと好き好きスコアを伸ばしてくださいね♡ 今は私の方がスコア上回ってますから♡」

「スリーを立て続けに決めて逆転してやるよ♪」

「えへへ、なら私だって負けませんよっ♡」

 

 その後もプロデューサーと私は雑談をして少し長めのドライブを楽しんだ。

 これからもこの人と……アイドルをしながら頑張ってゲームメイクしていきたいな♡―――

 

 愛野渚⦿完




愛野渚編終わりです!

体育会系の恋人ってのも可愛くていいですよね♪

お粗末様でした☆

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