デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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雪菜は"ゆきな"ではなく"せつな"と読みます。


井村雪菜編

 

 可愛くなりたい

 

 私は小さかった頃から

 

 ずっと可愛くなりたかった

 

 いつも自分に自信が持てなくて

 

 いつも人の真似ばかりしてた

 

 そんな私に運命の出会いが訪れた

 

 その時から私は……

 

 ―――――――――

 

「せっちゃーん、これ先輩からせっちゃんに渡してくれって頼まれたんだけどー」

「え」

 

 高校でのお昼休み。私は学校で一番仲良しの友達から1通の手紙を受け取った。

 

「いやぁ、流石はアイドル。モテモテですなぁ」

「そんなことないよぉ」

 

 ファンレターを貰うのは嬉しい。それだけみんなが私を好きになってくれて応援してくれてる証拠だから。

 でも今回みたいな()()()()()は本当に困ってる。

 別に迷惑とは思ってない。私もアイドルとして色んなお仕事をしてきたから、人が人を好きになることの大切さとか気持ちは理解してるつもり。

 それでもその気持ちが私宛てとなると、未だに慣れない。

 

『前から気になってました』

『前からいいと思ってた』

『前から好きでした』

 

 みんな大抵同じ文句を使う。

 アイドルになったから、テレビや雑誌にも出るようになったから、そんなことを書いてるのかなって思ってしまう。

 中には本当にそう思ってくれてた人もいるんだろうけど、今になって言われても……ってなっちゃうだよね。

 元々仲が良かった訳じゃない学校の女の子たちでも、変に声をかけてくる子もいるし、陰口を叩く子もいるし……アイドルになれたのは嬉しいけど、実際にこうなってみるとなんとも言えない感じになる。

 

「それで、どうすんの?」

「そりゃあ、お断りするわよ」

「まあそうなるよね〜。アイドルって恋愛禁止っしょ?」

「別に私の事務所は禁止って訳じゃないけど……」

「じゃあなんで彼氏作んないの?」

「作ってもその人を放ったらかしにしちゃいそうだから。今の私にはそんな余裕ないもん。レッスンとかお仕事で手一杯なのに、恋人の方にまで使える時間がないよ」

「はぁ〜、なるほどね〜」

 

 友達はそう言ってなんか感心してる風。

 

「なんでそんな感じに言うのよ?」

「だって私はてっきりせっちゃんはもう心に決めた人がいるんだと思って」

「ど、どうしてそう思うの?」

「そこはほら、何気私ら付き合い長いからなんとなく」

「そんなこと――」

「――あの男の人の前だとせっちゃんってすごくキラキラしてるんだよねぇ」

「っ!?」

 

 そ、そんなに私って分かりやすかったかな?

 

「でも確かにせっちゃんがあの人に惚れるのは分かるよ。だって大人だし、同世代の男子とは全く別の世界にいるじゃん? それに何よりせっちゃん好みの優しそうな人だし」

「…………違うもん」

「はいはい。ま、私は別に言いふらしたりしないからさ。上手くいったかいかなかったくらいは後々教えてね♪」

「そんなことありません」

「ははは、せっちゃんムキなってかーわいい♪」

「もう……!」

 

 友達が言ってる男の人……それは私をアイドルにしてくれて、今では私専属のプロデューサーになってくれたプロデューサーさん。

 何も分かってなかった私に優しくイチから基礎を教えてくれて……そしてここまで引っ張ってきてくれた、私の大切な人で、大好きな人。

 だからこそ友達には見透かされたんだと思う。

 

 ―――――――――

 

 1日の授業が終わった放課後。

 私は友達と別れてバスで事務所に向かう。

 さっきプロデューサーさんからメールがあって、今日予定してた雑誌の取材が明後日になって今日はお休みでいいって言われた。

 だから私はお休みを利用してプロデューサーさんに会いに行くの。

 

 だって私は友達に言われた通り、プロデューサーさんのことが大好きなんだもん。

 それに友達には嗚呼言っちゃったけど、実は私……事務所の人たちには内緒で、もうプロデューサーさんとお付き合いしちゃってる。

 告白は私からで、プロデューサーさんはとても驚いてたけど『とても普通の恋人のようには接することは出来ないけど、それでもいいなら』って受け入れてくれた。

 でもこれまで辛いと思ったことはない。それくらいプロデューサーさんは私のこともお仕事も頑張ってくれてる。

 だからこそお休みの私はプロデューサーさんのために何かしてあげたいの。

 

「プロデューサーさん♡」

 

 事務所内のプロデューサーさんの個室のドアを開けて、彼のことを呼ぶ。

 すると彼は驚きながらも「やっぱり来ちゃったのか」って、優しく笑って手招きしてくれた。

 だから私は「来ちゃった♡」って返しながら、彼の側まで歩を進める。

 

「レッスンはないぞ?」

「知ってまーす♡」

「俺を癒やすことくらいしかすることないぞ?」

「謹んでお受けしまーす♡」

 

 むぎゅ♡

 

 ん〜、やっぱりプロデューサーさんにギューッて抱きつくと落ち着くなぁ♡

 

「いきなり熱烈だなぁ」

「いいじゃないですかぁ♡」

「事務所の中なんだけどなぁ」

「ちゃんと誰か来たら離れますから、大丈夫です♡」

「まさか雪菜がこんなに甘えん坊になるとは思ってもいなかったよ」

「そりゃあ、私だってお仕事以外ではただの女子高生ですから……好きな人の前では甘えますよ♡ それとも嫌なんですか?」

「恋人に甘えられるのが嫌ってほど俺はひねくれ者じゃないぞ。それにちゃんと受け入れてるじゃないか」

「ですよね♡」

 

 特になんの変哲もないただの会話。

 ただそれだけなのに、私の胸の奥はトクントクンって大きく鳴り響いて『プロデューサーさん大好き♡』って言ってるみたい。

 こんな素敵な人が恋人なんだもん。学校の男の子たちに目がいかないのも仕方ないよね。

 

「あ、そういえばまた雪菜宛のファンレターが事務所に届いてたから読んでくれ。俺はまだやることがあって構ってあげられないから」

「はーい♡ 終わったら構ってくれるんですか?♡」

「…………そりゃあ、な?」

「ふふふ、約束ですよ?♡」

「あぁ」

 

 私はプロデューサーさんから離れると、ファンレターが置かれたソファーテーブルへ向かった。

 届いたファンレターは……5通。その内2通が男性のファンからで、もう2通は私と同世代くらいの女の子から。そして最後は小さな女の子からだ。

 この子は前にデパートのイベントで私のファンになってくれた小学2年生の女の子で、よくこうしてファンレターをくれる。

 私は貰ったファンレターにはちゃんと直筆でお返事を書いてるんだけど、この子とはなんか文通でもしてるような感じになってるなぁ。

 今回はどんなこと書いてくれたのかな?

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 せつなちゃんへ

 

 このまえ、せつなちゃんがテレビにでてたのみたよ!

 おけしょうのテレビで、せつなちゃんがピンクのくちべにぬってた!

 だからママにわたしのたんじょう日になったらかってっておねがいしたの!

 でもママからはまだはやいよっていわれた!

 わたしもせつなちゃんみたいにかわいくなりたいのに!

 

 せつなちゃんはどうやってそんなにかわいくなったの?

 やっぱりおけしょうしてるからあんなにかわいくなれるの?

 よかったらおしえてください!

 

 〇〇より

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 うーん……なんてお返事したらいいかなぁ。

 私もこの女の子と全く同じことしてたんだよねぇ。

 でもそれはプロデューサーさんから『基礎をしっかり』って教わって、今はしっかりと基礎を磨いてる。

 それを書いても小学には難しそうだし……。

 

「プロデューサーさ〜ん、助けて〜」

 

 こういう時は頼れる人に頼ろ。

 これもアイドルになってプロデューサーさんから教わったこと。

 

『一人で抱え込む前に頼れる人に頼ってみよう』

 

 だから今回もプロデューサーさんに聞いてみよう。

 

「どうした、また告白ファンレター?」

「違います〜、これですこれ」

 

 私はその子のファンレターを心の中で女の子に謝りながらプロデューサーさんに読んでもらった。

 

「……なるほど。女の子らしい質問だね。それにとても誰かさんにそっくりだ」

「……怒りますよ?」

「はは、ごめんごめん。でも別に難しい質問じゃないんじゃないか?」

「難しいですよ〜。なんてお返事すればいいんですか?」

「そのまま雪菜が感じたことを書いて返したらいい」

「"基礎をしっかり"とか通じますかね、小学2年生ですよ?」

「分からなかったらお母さんに聞いてみてね、とか書いておけばいいだろう。余程の親じゃなければ上手く子どもに説明してくれるだろうからな」

「確かに……私も小さかった頃はお母さんに色々と訊いてましたから」

 

 なんかあっさり解決しちゃった。やっぱりプロデューサーさんは頼りになるなぁ♡

 

「ふふふっ♡」

「ん、どうした?」

「ううん、頼りになる人がいつも近くにいてくれて幸せだなぁって思っただけです♡」

「そりゃあ雪菜より長く生きてるからな。それなりに場数だって踏んでるし」

「これからも頼りにしますね、プロデューサーさん♡」

「頑張ってその期待に応えるよ」

 

 ―――――――――

 

 それから私は各ファンレターへちゃんと丁寧にお返事を書いて、それを書き終える頃には外はすっかり暗くなってた。

 時計の針はもう夜の7時を回ってる。

 

「よし、今日はこれで終わりにするかぁ」

「お疲れ様です、プロデューサーさん♡」

「ん、雪菜もお返事書くのお疲れ様」

「ありがとうございます♡」

 

「それじゃあ、せっかくだし家まで送るついでに夕飯でも食べないか?」

「え、いいんですか?」

「そりゃあ、待たせたお詫びもあるからね」

「やった♡ あ、なら私が奢りますよ、日頃の感謝を込めて!」

 

 いつもいつもプロデューサーさんに奢ってもらってるのも悪しい、私だって一応お仕事してお金もらってるし!

 

「大人が女子高生から奢ってもらう訳にはいかないだろ」

「えぇ〜、私だって何かプロデューサーさんに恩返ししたいです〜!」

「会いに来てくれるだけで十分だよ」

「あ……ぁぅ……♡」

 

 今そんなこと言うのズルい……嬉しくて何も言い返せないよ♡

 

「ほら、行くぞ。車のとこに着くまでに何が食べたいか考えといてくれ」

「はーい♡」

「あと、親にちゃんとメールしとくこと」

「プロデューサーさんとラブラブして帰りまーすって?♡」

「ご飯食べて帰りますって!」

「ふふふ、はーい♡」

 

 こうして私はプロデューサーさんの運転でレストランに行って、楽しく食事をして家まで送ってもらった。

 勿論、別れ際にキスのサービス付きで♡―――

 

 井村雪菜*完




井村雪菜編終わりです!

雪菜ちゃんは素だととてもひたむきな子なので、こんな感じにしました!

お粗末様でした☆
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