デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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及川雫編

 

 私のお家は牧場を経営してます

 

 牛さんがたくさんいて

 

 そのふれあいの中で

 生命の力強さと偉大さが分かります

 

 私の夢はお家の牧場が有名にすること

 

 そのためにタレントになろうとしたけど

 

 私に違う道を勧めてくれた人がいます

 

 ―――――――――

 

「どーもーってことでね、やって参りました! 日曜バラエティ『あの人の実家にお邪魔します!』ですけれども、今日はテレビの前の皆さん、見てくださいっ! どうですか、この広がる草原! ここは公園でもテーマパークでもありませんよ? ここは牧場ですっ! 誰のご実家かご存知ですか? 誰のご実家かと言いますと――」

 

 プップー♪

 

「――こんにちは〜、アイドルの及川雫です♪ ここが私のお家でお父さんたちが経営してます、『おいかわ牧場』で〜す♪」

「はーい、そうです! ライガーという小型特殊自動車で颯爽と登場してくれたのは、今岩手だけでなく全国規模で大人気のアイドル、及川雫ちゃん! そんなね、雫ちゃんのご実家にお邪魔しちゃいます!」

「よろしくお願いしま〜す♪ それでは案内するので荷台に乗ってくださ〜い♪」

「いきなり司会者荷台に乗せんの!?」

「徒歩だと疲れちゃいますよ〜? それにちゃんと安全にドリフトしますから♪」

「安全なのにドリフト!? お手柔らかにね!?」

「は〜い♪」

 

 私は今、県内で大人気なバラエティ番組の収録をしてます。

 今日はアイドルのお仕事でもあるんですけど、衣装は牧場のつなぎでいいとのことでいつもよりも気が楽です。

 アイドルの衣装は可愛くて好きですけど、私としては着慣れたこの作業服の方がいいんですよね。

 何よりこっちの方が牧場の宣伝になっていいと思うし♪

 

「いやぁ、それにしても広い牧場だねぇ」

「はい、ここでたくさんの牛さんを育ててるんですよ〜」

「雫ちゃんは牧場を有名にしたくてアイドルになったらしいけど、どれくらい効果があったのかな?」

「お父さんから聞いた話になっちゃうんですけど、かなり評判はいいみたいです♪ 遠方からのお客さんも増えて、ネット販売も好調で……最近だと海外の方からのご注文もあるそうですよ♪」

「ひゃ〜、すごいねぇ。やっぱりそれだけ雫ちゃんが魅力的ってことなんだろうね! 可愛いもん!」

「ありがとうございます♪ でも本当にすごいのは私をここまで育ててくれた家族と……私をアイドルにしてくれたプロデューサーさんのお陰です♪」

「くぅ〜、なんていい子! だからこそ雫ちゃんは人気だよ!」

 

 こんな感じに楽しく収録して、司会者であるお笑い芸人さんや撮影スタッフさんたちに牧場のいいところをいっぱい伝えることが出来ました。

 これがきっかけでもっと多くの人においかわ牧場のことを知ってもらえたらいいなぁ♪

 

 ―――――――――

 

「いやはや、なんと言えばいいか……本当にプロデューサーさんには頭が上がりませんよ。ありがとうございます! 今夜は何も気にせず、好きなだけ食べて飲んでください!」

 

 収録が終わってテレビ局の方たちが帰り、私とプロデューサーさんも一度は事務所に戻って報告を終えると、再び牧場に帰ってきました。

 お父さんがどうしてもって言ってプロデューサーさんだけにバーベキューをご馳走してるんです。

 

「いえ、私は何も……寧ろ撮影の許可を頂けてありがとうございました。テレビ局の方々も大変喜んでいましたよ」

「かぁーっ、若いのに出来た人間だなー! 雫をあんたに任せてよかった!」

「お父さんっ」

 

 もう、すぐ子ども扱いするんだからぁ。

 私これでも最初の頃よりはプロデューサーさんに迷惑かけてないんだからね。

 

「そう言ってもらえて光栄です。これからも頑張りますので、よろしくお願い致します」

「おう、頼むよ!」

「ささ、プロデューサーさん、ビールでもどうぞ」

「いえ、私は車ですから……」

「何堅いこと言ってんだ! 今日はうちに泊めてやっから飲め!」

「しかしですね……」

「雫も賛成してますから……ですから、ご遠慮なく♪」

 

 お父さんもお母さんも強引だなぁ……確かに泊まってもらうのは賛成したけど、プロデューサーさん困ってるよぉ。

 

「お父さん、お母さん、プロデューサーさんはお酒あまり得意じゃないの。だからあんまり勧めないであげて」

「なんだそうなのか……なら胸焼けするくらい肉食え肉!」

「そうですよ、たくさん焼きますから♪」

「恐縮です……」

 

 苦笑いして私の両親に頭を下げるプロデューサーさん。

 それを私も苦笑いで見てると、ふとプロデューサーさんが私の方を見て―――

 

「助けてくれてありがとう」

 

 ―――って言ってくれたので、私は笑顔を返しました。

 

 ―――――――――

 

 辺りがすっかり暗くなっても、お家の庭ではまだまだバーベキューの真っ最中。

 でもお父さんは酔っ払って縁側に座るプロデューサーさんに絡んでる。

 お父さんの酔い方はそこまで酷くないから大丈夫だろうし、プロデューサーさんも笑ってるから私はお母さんとハラミステーキを焼いてました。

 

「どうだい、プロデューサーさん?」

「何がでしょうか?」

「娘のことだよ……雫はアイドルの仕事の方で無理とかしてないのか?」

「……本人は大丈夫と仰ってます。私も細心の注意を払って健康管理には気をつけていますから」

「雫はおっとりしてるように見えて、俺たちのために体を張って広告塔をしてくれてる。親孝行と言えば聞こえはいいかもしれねぇが、親としてはもっともっとわがままを言ったりしてもらいてぇのさ」

「……雫さんはしっかりした娘さんですからね」

「おうよ……俺たちの自慢の娘さ。だから本当に心配なんだよ。自慢出来ることなんて俺の嫁さんに似て美人で胸がでけぇことくらいだ」

 

「雫さんは今のアイドルという仕事に誇りを持って臨まれてますし、笑顔も大変素敵な方です。だからこそファンの方々が愛してくれるのです」

「そうか……娘を見世物にしてるようで複雑だが、本人が楽しんでるなら俺から言うことはないな」

「私もこれからも頑張ってプロデュースしていきます」

「頼むよ」

「はい」

 

 男同士の付き合いなのか、私には何の話をしているか分からなかったけど、二人共すごく優しい笑顔だった。

 

 ―――――――――

 

「本当にいいんですか? 私はよそ者なのですから、最後でも……」

「何言ってるの。お客さんが先よ」

 

 両親に押し切られて結局プロデューサーさんは私のお家にお泊まりすることになり、今はお母さんに背中を押されてお風呂場に追いやられます。

 プロデューサーさんがお風呂場に入ったあとで、

 

「雫、ちょっと」

 

 お母さんが私を呼びました。

 

「な〜にお母さん?」

「雫も風呂に入んな」

 

 えぇ!?

 

「プロデューサーさんが入ってるのに?」

「だからこそだろう」

「で、でも……」

「雫、お母さんがあんたのお母さんを何年してきたと思ってるの?」

「…………」

「雫とプロデューサーさんが前々から付き合ってるのは分かってる。せっかくお母さんが頑張ってお父さんのこと酔い潰れさせたんだから、あとは雫が上手くやんなさい。お母さんは何も聞かないから」

「い、いきなり過ぎるよ……」

 

 そんなこと言われたってまだ心の準備が……。

 

「何も一発かましてこいとは言ってないでしょう。かましたっていいけど、まずはもっと恋人らしい時間を過ごしてきなさいって言ってるの」

「…………」

「雫は優しいから、いつもお母さんたちの顔色ばっかり伺って自分のことは二の次。だから今は自分の気持ちに素直になりなさい」

 

 素直に……プロデューサーさんに甘えたい。

 プロデューサーさんと同じ時間を過ごしたい。

 

「分かった……ありがとう、お母さん」

「うんっ」

 

 ―――――――――

 

 私とプロデューサーさんはお母さんが言ったように、お付き合いしてます。勿論事務所の皆さんには内緒で。

 プロデューサーさんが私専属のプロデューサーさんになってくれて、アイドルとしても人としてもたくさん私が成長出来るように努力してくれて、多くの時間を私のために費やしてくれたから今の私があり、だからこそ私はプロデューサーさんに恋をしました。

 お付き合いして結構経ちますが、私たちはまだキスは勿論、手を繋いだこともありません。

 

 私に魅力がないのかなって悩んだこともありますが、プロデューサーさんからは『本当に大切な時期だから、雫の将来のために俺は行動する』って言ってくれて、プロデューサーさんも我慢してるんだと分かりました。

 

 ただ私はそれでもプロデューサーさんにちょっとでも甘えたいし、出来れば触れてほしい。

 頭を撫でるとかだけじゃなくて……もっと色んなところにも触れてほしい。

 だからお母さんがせっかく作ってくれたチャンスを逃しちゃダメ!

 

 ガラッ

 

「プロデューサーさん、失礼しま〜す♡」

 

「っ……な、なんで入ってきてるんだ!?」

 

「プロデューサーさんと一緒に入りたかったからって理由じゃ……ダメですか?♡」

 

「…………ダメだ」

 

「お母さんが許可してるのに?」

 

「…………」

 

「無言は肯定ですね♡ えへへ、それじゃあ失礼しますね〜♡」

 

 チャプ

 

 湯船に浸かるプロデューサーさんに言って、私も湯船に入る。

 プロデューサーさんとこうして至近距離で向かい合うことはなかったから緊張するけど……でも、全然嫌じゃない♡

 

「…………スクール水着着てきたんだな」

「はい……着てこなかった方がいいですか?」

「着てきて正解だ」

「えへへ、褒められちゃいました♡」

「でもいくらスクール水着を着てても、目のやり場に困る……」

「プロデューサーさんにならどこ見られてもいいです♡ それくらい私はプロデューサーさんのことが大好きですから♡」

 

 それにお仕事ではもっと布の少ない衣装が多いですよ?

 

 まあ、裸を見られるのは流石にまだ恥ずかしいけど、水着越しならたくさん見てほしい。

 それに―――

 

「好きなところ、触ってもいいですよ?♡」

 

 ―――出来ればたくさん触ってほしい。

 

「な、なんかやけに押しが強いな」

「私はもっとプロデューサーさんの彼女なんだっていうことを実感したいんです〜♡ プロデューサーさんから大切にされてるのは知ってますけど、もっと手を繋いだり抱き合ったり……出来ればキスしたり、私だって好きな人としたいことはたくさんありますから♡」

「…………そうだな。雫も普通の女の子だもんな」

「はい……だから、もう少しお側に行ってもいいですか?♡」

「…………どうぞ」

 

 むぎゅっ♡

 

「プロデューサーさん……大好きです♡」

「俺もだよ、雫」

 

 そのまま抱きしめ合った私たちは、惹かれ合うように初めてキスをしました♡

 これからもたくさんプロデューサーさんに構ってほしいから、私からいっぱいおねだりしちゃいます♡

 

 そのあとはお風呂から上がって同じお部屋で仲良くお休みしました♡―――

 

 及川雫⦿完




及川雫編終わりです!

おっとりに見えて実は押しは強い!って感じにしました!

お粗末様でした☆

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