デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


片桐早苗編

 

 今のあたしはアイドル

 

 アイドルをする前は警察官

 

 どうして安定した公務員を辞めて

 

 茨の道を選んだのかと言うと

 

 アイドルの方が楽しそうだったから

 

 それにあたしをそそのかした

 

 悪い人がいたからだ

 

 ―――――――――

 

「ね、ねぇ、プロデューサー君……ホントに行かなきゃダメ?」

「ダメです。いつもの勢いはどうしたんですか?」

「だ、だって……」

 

 あたし片桐早苗は今、人生の山場を迎えようとしてるわ。

 あたし専属のプロデューサー君にわざわざオフを取ってまで連れて来られたのは、新潟県にあるあたしの実家。

 どうしてプロデューサー君と一緒にこうして実家にやってきたのかと言うと、

 

「電話でお父さんめっちゃキレてたんだもん……」

 

 これからあたしの両親に……主には父親に会うから。

 

 ―――――――――

 

 あたしの父親は新潟県警に今も務め、階級は警部。

 今は現場に出ることもかなり減ったみたいだけど、丁度あたしが物心つく頃は警部補でバリバリ現場へ出て現場責任者とかしてたから、学校行事とかに来るなんて無理だった。

 事件があると家を空けることが当然、でもお休みの時は自分が携わったりした事件のお話をたくさん聞かせてくれた。

 あたしはそんな父親が大好きだった……だから家にいなくても、遊園地とかに連れてってくれなくても、『お父さんは悪い人と戦ってるんだから、ワガママは言わない』って小さな頃は思ってた。

 

 でも人って不思議で、思春期・反抗期になるとあたしは父親へ反抗的な態度をとるようになった。

 人一倍正義感が強くて堅物だった父親はあたしの私服とかにも口出ししてくる始末で、あたしはそういうのが嫌で高校を卒業すると同時に実家から逃げるように東京の大学へ進学した。

 

 そしてあれだけ当時は嫌ってた父親に倣うように卒業後はあたしも警察官になってた。

 やっぱり小さい頃から聞いていた正義の味方に憧れていたから。

 一人暮らしをするようになって一人の時間が増え、あたしもそれなりにものの見方が大人になると、冷静に父親の思いとか理解するようになった。

 

 一方でいざ警察官になってみると、やることは地味で物足りなく思ってた。けど生活のために割り切って日々を過ごしてた。

 そんな時にプロデューサー君と出会って、スカウトされたから思い切って転職したの。

 

 両親にはアイドルに転職したのをずっと黙ってて、ついこの前あたしのファーストシングルが全国発売されたのがきっかけでバレて、鬼電された挙げ句にしこたま怒られた。

 

 ―――――――――

 

 そんで今日はプロデューサー君と一緒にご挨拶に帰ってきたって訳。

 ただ今回はアイドルになりましたって報告だけじゃなくて、

 

「というか、プロデューサー君はどうしてそんなにいつも通りな訳? もしかしたら殴られるかもよ?」

「別に怖がる必要ないじゃないですか。我々は決してやましい関係ではないのですから」

 

 実はプロデューサー君とお付き合いしてますっていう報告もするんだよね……。

 

 プロデューサー君とは少し前から付き合ってて、事務所の方には内緒にしてる……といっても、飲み仲間の志乃さんやら楓ちゃんやら礼子さんやなんかには酔った勢いで話しちゃってるんだけど。

 でもでもみんなはそんなあたしたちを応援してくれて、フォローもしてくれてる。だから東京に帰る時にはこっちの美味しい地酒を日頃のお礼に買って帰るんだ。

 

 そもそもプロデューサー君ってあたしより3つ歳上なんだけど、芸能界の波に揉まれてきたから見た目なよっちいのに肝が座ってるのよね。そして何気にマッチョだし……俺に惚れろって言われてるみたいじゃん?

 だからしこたまアピールしてゲットしたの!

 

 でも……だからこそ、父親にこうして報告するのが怖い。

 

「…………まあ、同意してもらえなかったら、私が責任を持って早苗さんを攫いますから覚悟していてください」

「誘拐犯としてタイホされちゃうぞ?」

「逮捕されないように既に28通りの逃げる手段をあげてますから、ご心配なく」

「ほ、ほうほう……♡」

 

 さらっとすごいこと言ってる。でもそれだけ言ってくれるとこっちも腹くくるしかない。そもそも否定されたってあたしはプロデューサー君と別れる気0だもんね!

 こうしてあたしはプロデューサー君と一緒に家の敷居を跨いだ……

 

 ―――――――――

 

 ……んだけど、

 

「そうかそうか! いやぁ、実にめでたい! 良かったな早苗! お父さんは本当に嬉しいぞ! 〇〇君、娘をこれからもよろしく頼む!」

 

 お父さんってばめっちゃ歓迎ムードで、二つ返事で交際OKしてくれた。

 アイドルを続けることもやっぱりOK。怒ってたのは報告が遅過ぎたからだったみたい。あたしの覚悟を返してほしい。

 だってあのゴ〇ゴ13みたいなお父さんが、今あたしの目の前であたしの名前入り半纏(背中には顔写真入り)着て、あたしの名前入り鉢巻きしてプロデューサー君と厚い握手してるんだよ? かなりカオスじゃない?

 てかそもそもお父さんのツンデレのせいであたしはビクビクしてた訳で……誰得なんだよ!?

 

「はい。私の生涯をかけて娘さんをトップアイドルにし、更には結婚して幸せにしてみせます」

 

 そんでもってプロデューサー君もさも当然のように結婚宣言までしちゃってるしーっ!

 いや、嬉しいよ? あたしだってプロデューサー君のこと大大大好きだからね。でもさ、こんなカオスな結婚宣言で喜べるほど、この早苗さんはお笑いセンスを携えてない訳。

 だから―――

 

「お前ら一旦物置小屋で正座してろーっ!!!!」

 

 ―――あたしに気持ちを整理する時間を頂くことにした。

 

 ―――――――――

 

 父親とプロデューサー君の二人を豚箱(物置小屋)にしょっ引いたあと、あたしは居間に戻って大人用炭酸入り麦茶(ビール)を片手にクールダウン中。

 だってプロデューサー君にまだプロポーズもされてないのに、あそこまで言われたんだよ? 飲まなきゃやってらんないじゃん。

 でも―――

 

「…………幸せ♡」

 

 ―――プロデューサー君との結婚生活を思い浮かべると、自然と口からそんな言葉が出てた。

 

「良かったわね、早苗」

 

 やべ、お母さんいたの忘れてたよ。てかお父さんのせいでお母さんどころじゃなかった。

 

「う、うん……ありがと」

 

 でもあたしはちゃんとお礼は伝える。

 

「まだ結婚は先なんでしょうけど、その時をお父さんと楽しみにしてるわね」

「うん……」

「でも早い内に子どもは作った方がいいわよ? 年とると出産も大変だし、幼稚園とかでの親子競技とか辛くなるから」

「う、うん……」

 

 後半やけにリアルなんだけど……。

 

「〇〇さんも忙しいご職業だし、あなたが大変になると思う。時には子育てのストレスで〇〇さんへ辛く当たることもあるかもだけど、〇〇さんもただ遊んでる訳じゃないのをちゃんと理解してあげてね? 私だってそうやって乗り越えて来たんだから」

「うん、そうだね。お母さんは凄いよ」

 

 夫婦喧嘩してるとこなんて見たことないし、あたしが『お父さん嫌い』って言ったら自分のことのように怒ってたのを思い出した。

 それと同時にあたしもお母さんみたいな母親になりたいって思った。

 

 だから暫く、あたしは母親から夫婦円満の秘訣を教えてもらってた。

 物置小屋にいる父親とプロデューサー君を忘れて……。

 

 ―――――――――

 

「いやぁ、とても有意義な時間だった……」

「そーですかー……」

 

 夜になって、あたしたちはそのまま今夜は実家に泊まることにして明日の朝に東京へ帰ることにした。明日の午前中は仕事も入ってなかったし、あたしが思いの外母親と話し込んでてたから。

 慌ててあたしが物置小屋に行くと、プロデューサー君はお父さんと話し込んでて『あ、今いいところだから、あと少しこのままで』なんて言われたんだよ。

 なんでも、父親伝手で今度新潟県警の1日署長をするお仕事の依頼を受けてて、その打ち合わせをしてたみたい。

 慌てたあたしが馬鹿みたいじゃん!

 

「それにしても、早苗さんのご実家のお部屋は東京のアパートのお部屋と違って綺麗ですね。あちらもこのようにして頂きたいものです」

「う、うるさいなぁ……こっちはお母さんが定期的にお掃除してくれてるからだよ。東京だと仕事仕事でそれどころじゃないの」

「でもオーバーワークしないように徹底管理してますよね? ちゃんとお休みの日はありますよね? それなのにどうしてお掃除はサボるんですか?」

「うっ……」

「本当に早苗さんは……私がいないとてんで駄目なんですから」

 

 カッチーン☆

 おうおう、天下の早苗様に向かって言ってくれるじゃないの。

 

「なら他の人と結婚したら!? あたしはどーせズボラで女子力底辺のお調子者な年増アイドルですよー!」

 

 自分で言ってても虚しくなる。でもあんな風に言われたらこっちだって黙っていられないわよ。ふんだっ。

 

「え、嫌ですよ、そんなの。私は早苗さんが好きなんですから、他の人なんて無理です」

 

 っ!?

 何? さも当然のように、さらっと、自然に何こっ恥ずかしいこと言ってる訳!?

 胸がキュンキュンして爆発しそーなんだけどっ!?♡

 

「嫌です。私は早苗さんと結婚したいんです。私じゃどうして駄目なんですか? 嫌なところがあれば直します。だからそんなこと言わないでください」

 

 なんかあたしが悪いことしてるみたいになってるんですけどーっ!!?

 てか普段はクールなくせに、こういう時だけ捨てられた子犬のような眼で縋り付いてこないでよ! ギャップ萌えで更にキュンキュンするじゃないのよ!!!♡

 

「…………も、もう一度、ちゃんとプロポーズしてくれたら、許してあげる……かm――」

「――早苗さん愛してます。結婚してください」

 

 早っ!!!! 食い気味でしてくる普通!? しかも何その顔!? 顔にキリッて書いてあるように見えるんだけど!? めっちゃカッコいいんだけどっ!!!!♡

 

「…………もっと気持ち込めて♡」

「早苗さん、あなたを愛してます。あなたをトップアイドルにしたら、この私と結婚してください」

「…………♡」

「結婚してください……私にはあなたしかいないです。あなたじゃないと駄目なんです。だから私と――」

「――ああもう! 恥ずかしいから止めて! 結婚するから!」

「ありがとうございます。幸せにしてみませす」

「じゃなきゃタイホするし……」

 

 やっぱりムードもへったくれもないハチャメチャなプロポーズ。

 でも、これが一番あたしたちらしいのかもしれない。

 

「私の心は既に早苗さんに逮捕されています」

「っ……もう、だからそういうの真顔で言わないで♡」

 

 ダメだ……結婚後もあたしのキュン死には確定している模様。

 だからこの人に好きなだけ管轄されちゃお♡―――

 

 片桐早苗⦿完




片桐早苗編終わりです!

早苗さんは普段からグイグイ行く系なので、後手に回る感じにしました!

お粗末様でした☆
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