デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

144 / 196
上京してる設定です。


喜多日菜子編

 

 童話の王子様は実在するけど

 

 普通の人には会えない存在

 

 だからいつも妄想してた

 

 白馬に乗って颯爽と現れ

 

 お姫様を迎えに来る

 

 でも

 

 迎えに来たのは

 

 スーツ姿の魔法使いさんでした

 

 ―――――――――

 

「はい、これで撮影終わりでーす! お疲れ様でしたー!」

「お疲れ様でした〜♪」

 

 日菜子は今、西太平洋のミクロネシアにあるグアム島へ来てます。どうしてかというと、ここで今度発売予定のグラビア写真集の撮影だからです。

 アイドルになって暫く経ちますが、まさかグアムにまで来て撮影するなんて思ってもいなかったので、とても貴重な体験が出来ました。

 それに何より―――

 

「お疲れ様、日菜子。撮影も終わったし、まだホテルに戻るのも早いからビーチでのんびりするといい」

 

 ―――日菜子の大切な魔法使いさん……専属のプロデューサーさんと海外旅行気分に浸れるのは最高です!

 

 プロデューサーさんは日菜子をアイドルにしてくれた魔法使いさんで……その正体は日菜子の王子様♡

 事務所の人たちには日菜子たちの関係は秘密にしてますが、過去にユニットを組んだことのあるアイドル仲間の子たちには教えてます。

 だってこの人が日菜子の王子様だって教えておかないと、知らず知らずの内にプロデューサーさんの恋の魔法に惑わされてしまうかもしれませんから。そうならないためにみんなには教えてるんです♪

 

「自由時間頂けるんですか〜?」

「そりゃあせっかくグアムに来たのにただ撮影だけして帰るなんて寂し過ぎるだろ。あ、泳ぐなら日焼けに注意してくれよな?」

「う〜ん……」

「?」

「プロデューサーさんは自由時間ないんですか?」

「俺? まあスタッフさんたちもこれから自由時間みたいなもんだから、あるっちゃあるけど?」

 

 やったぁ♡ なら日菜子がすることは1つです♡

 

「じゃあじゃあ、日菜子と追いかけっこしましょ♡」

「え」

「ほら〜、早くぅ♡ お姫様が誰かに連れ去らわれちゃいますよ〜♡」

「あぁ、こら、そんな水着で走るなっ!」

 

 スルッ……ぽてっ

 

「……あらあら〜♡」

 

 上の水着の紐が解けてしまいました♡

 撮影で後ろの紐を解いた姿は撮影しましたけど、愛するプロデューサーさんにならこの姿を見られても恥ずかしくありません♡

 

「いやいや、あらあらとか言ってないで隠せよ!」

 

 プロデューサーさんはすかさず日菜子の側に駆け寄ってきて、日菜子へ自分のスーツの上着を掛けてくれました♡ むふふ、やっぱりプロデューサーさんはどんな時でも魔法使いさんの仮面を被った王子様です〜♡

 

「ほら、向こうのテントで水着直してこい」

「えぇ〜、プロデューサーさんが直してくれないんですか〜?」

「出来るわけないだろ!? 犯罪だわ!」

「合意の上でも〜?」

「スキャンダルになる!」

「むぅ〜、王子様とお姫様の関係に恥ずべき関係はありませんよ〜?」

「日菜子はまだ学生。俺は社会人。モラル大事。おけ?」

「は〜い」

 

 プロデューサーさんはこういう時は真面目ですね〜。二人きりの時はもっと情熱的なのに……むふふ♡

 

 ―――――――――

 

 そんなこんなで日菜子はプロデューサーさんとビーチでゆったりとした時間を過ごしました。

 一緒に貝殻を集めたり、波打ち際をお散歩したり、絵に描いたようなトロピカルジュースを2つの長いハート型のストローで飲んだり……最高の思い出になりました♡

 あ、もちろんそのオフショット写真は撮影済で今度ブログに載せます♡ 流石にプロデューサーさんとビーチデートなんてことは書けませんけどね♪

 

 最高の時間を過ごしたあとはホテルに戻って、王子様と甘〜い夜の時間が待ってる―――

 

「………………」

 

 ―――はずなんですけど……日菜子は今、愛しの王子様から放置されてます。

 プロデューサーさんは男のスタッフさんたちに誘われて夜遊びに行ってしまったんです。これもお仕事上のお付き合いってことで仕方ないと思ってますけど、お姫様を一人待たせるのって酷いと思うんです。

 

「………………」

 

 しかも遅くなっても0時前には部屋へ行くって言ってくれたのに、もう0時どころか1時過ぎなんですどぉ?

 待ってる日菜子も日菜子ですけど、流石にちょっと頭にきます。

 

 もしかして日菜子を焦らして、ロマンチックなことして日菜子を更にメロメロにさせてくれたり?

 もしそうなら……むふふ♡

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

『プロデューサーさん、日菜子怒ってるんですよ!?』

『ごめんな。だからお詫びにこれからちょっとビーチに行かないか?』

『え?』

『君を連れ去って、君とビーチを独り占めしたいんだ』

『……はい♡』

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 な〜んて、な〜んて!♡ そして日菜子はそのまま王子様の愛に溺れて、二人の愛の結晶が出来ちゃったり〜!♡

 

「むふっ……むふふふっ、むふぇっふぇっふぇっ〜♡」

 

「―――日菜子っ」

 

 ハッ!

 

「あ、プロデューサーさん」

「ごめんっ! 本当にごめんっ!」

 

 土下座でもするかのようにプロデューサーさんは日菜子に謝ってきます。

 これだけ反省してくれてるなら、日菜子も少しは大人の対応をしなくてはいけませんね……仕方ない王子様です♡

 

「いいですよ〜。プロデューサーさんは日菜子との甘い夜より夜遊びの方が楽しかったみたいですから〜?」

 

 でもこれだけ待たされたんですから、これくらいは言ってもいいですよね?

 だって本当に日菜子はプロデューサーさんのことを待ってたんですから。

 

「面目ない……」

「否定してくれないんですね」

「嘘は吐きたくないから」

 

 もう、変なところで真面目なんですから……でもそんなプロデューサーさんだからこそ、日菜子はあなたと恋をしたいと思ったのかもしれません。

 

「もういいです。それで、プロデューサーさんはどうやって挽回してくれるんですか?」

「…………」

 

 ギュッ♡

 

「ふぇ?」

 

 プロデューサーさんに抱きしめられてる?

 大好きな大好きな王子様に……こんなに力強く?

 

「待たせてごめん……でも日菜子のことを嫌いとかそんなんじゃないから。大好きだから」

「ふぁぁ♡」

 

 ダメ……そんなに愛を込めて抱きしめた上で、愛の言葉を囁かないで♡ 耳がとろけて、あなたの声しか聞こえなくなってしまう♡

 なのに日菜子の身体はあなたを激しく求めてしまっています♡

 

「ぷろりゅ〜しゃ〜しゃん♡ しゅきぃ♡」

 

 まるで呂律が回らない……愛の魔法をかけられたかのよう。好きな気持ちが止まらない。

 

「許してくれる?」

「はひ♡」

「じゃあ、仲直りのキスしてもいいかな?」

 

 こくこく♡

 

 日菜子はただ一心に頷いて見せました。だって早くキスしてほしかったから。

 

 ちゅっと日菜子の唇に王子様の唇が重なると、全身に魔法をかけられたかのように日菜子の身体は熱くなります。舌で上顎や下顎を優しく愛撫される度にぴくんぴくんと日菜子の身体は壊れたおもちゃみたいに震え……舌と舌が絡まるとはしたない音が響く。

 

「んはぁ……♡」

「日菜子……」

 

 プロデューサーさんは優しい声色で日菜子の名前を呟き、その大きく逞しい指で日菜子の唇の端々についたつばを優しく拭き取ってくれます。

 ただそれだけなのに日菜子は気持ち良くなって、プロデューサーさんが触れているところ全部が嬉しいって言ってみたいになります。

 

「プロデューサーさん……来てください♡」

「ん〜……嬉しい申し出なんだけど、実は日菜子と行きたいところがあるんだよね〜」

「ふぇ?」

 

 食べ頃日菜子を差し置いて優先すべき場所があるんですか? 今の日菜子はとろとろのふわふわですよ?

 

「いいかな?」

「はぅ〜♡」

 

 でもプロデューサーさんに耳元で囁かれると、何も言い返せません♡

 だから日菜子をプロデューサーさんの思う通りにしてください♡

 

 ―――――――――

 

 プロデューサーさんに連れて来られたのは、ホテル前のビーチ。ビーチには日菜子たち以外にもちらほらと観光客の方々がいて、皆さんビーチに座ったり寝そべったりして空を見てます。

 今日は快晴なので満天の星空が広がってて……それをプロデューサーさんは日菜子に見せたかったみたいです。

 妄想とはちょっと違いましたが、ロマンチックなお誘いをしてもらったのはとっても嬉しかった♡

 それに―――

 

「じゃあ、お姫様が転ばないように……よっ」

「ふぁっ♡」

 

 ―――プロデューサーさんから正真正銘のお姫様抱っこをされちゃいました〜♡

 

「お姫様抱っこのまま星空広がるビーチでお散歩はいかがですかな?」

「最高の気分です〜♡」

「あはは、良かった」

「もしかしてこのために敢えて遅い時間にしたんですか?」

「さぁ、どうかな〜?」

 

 プロデューサーさんはそう言ってとぼけてますが、きっと図星だったと思います。だってプロデューサーさんは嘘を吐く時は決まって『どうかな〜?』って言いますから。

 やっぱりプロデューサーさんは魔法使いさんの仮面を被った王子様です♡

 

「あの、今更ですけど、辛くないですか?」

「日菜子は軽いからヘーキヘーキ。それにそろそろあそこのベンチに着くから」

「分かりました〜♡」

 

 ベンチまではほんの数メートル。でもそこまでの道のりはとても長く感じて、幸せな道のりでした♡

 

 ―――

 

 プロデューサーさんはベンチに腰を下ろしても、日菜子のことは下ろしてくれませんでした。下ろしてくれませんといっても、日菜子はいつまでもお姫様抱っこされていたいので、幸せでしかありません。

 

「綺麗だなぁ」

「はい♡」

 

 日菜子はプロデューサーさんのお顔しか見てませんけどね♡

 だって愛する王子様のお顔がすぐ近くにあるんですから、遠いお星様より日菜子は近くの王子様を見ちゃうんです♡

 でも、日菜子は見ているだけじゃ満足出来ない悪いお姫様になってしまいました―――

 

 ちゅっ♡

 

 ―――だから日菜子、プロデューサーさんのほっぺにキスをしました♡

 

「お、おい……いくら夜だからって……」

「お姫様抱っこされてるんですから、ラブラブカップルにしか見えませんよ♡」

「……それもそっか」

「はい……だからプロデューサーさんからも♡」

「へいへい……ちゅっ」

「んっ……ふふふ、幸せ♡」

 

「これからももっと幸せにするよ」

「プロポーズですか〜?♡」

「違う……プロポーズはもっと幸せにしてからだ」

「楽しみにしてますね、日菜子の愛する王子様♡」

「楽しみにしててくれ、俺の愛するお姫様♪」

 

 こうして日菜子はプロデューサーさんと甘い甘い素敵な夜の思い出を作ることが出来、日本に帰ってもプロデューサーさんとラブラブに過ごしました♡―――

 

 喜多日菜子⦿完




喜多日菜子編終わりです!

妄想系女子の妄想が現実になったパターンって感じですかね?

お粗末様でした☆

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。