ダンスが好き
挑戦するのも好き
だからアイドルになりたかった
アイドルなら色んな挑戦が
次から次へとやってくるし
絶対に楽しいと思ったから
そんな時に
このアタシのやる気を
買ってくれた
熱い人がいたの
―――――――――
ガチャ
「たっだいま〜、プロデューサー!」
「お〜、おかえり。レッスンお疲れ様」
「今回もバッチリだったよ! そんでそんで、今度ライブでバク転決める予定だから、期待してて!」
今日のアタシのアイドルとしてやることは無事に終わって、アタシ専属のプロデューサーが使ってるオフィスに戻ってきたとこ。明後日はいつきちゃんと組んでるユニット『ブレイズ・フリーズ』でライブがあって、本番まではオフなんだ♪
「それは楽しみだね。伊吹なら出来るよ、きっと」
「えへへ、サンキュ♪」
プロデューサーからそう言われると本当になんでも出来そうな気がするから不思議。
でもアタシがここまでアイドルを続けてこれたのもプロデューサーが頑張ってプロデュースしてくれたからだし、そんなプロデューサーの言葉だからアタシの胸に響くんだと思う。
「ねね、プロデューサーのお仕事はどう? まだかかる?」
「いや、今やってるのが終われば上がりだ。明日はライブのことで打ち合わせがあるけどね」
「ふ〜ん……頑張ってね♪」
「おう」
「それじゃ、アタシはもう帰る準備は終わってるし、ここで待ってるから♡」
「はいよ〜」
思ってたよりプロデューサーも早く終わるみたいで良かった♪ 早く終わればそれだけデートも長く出来るし♡
アタシはプロデューサーとちょっと前から付き合ってる。もちろん事務所には内緒にしてるけど、アイドル仲間の何人かにはバレてるんだよね……。
まあでもバレてるからって事務所にチクったりする子はいないし、みんなスルーしてくれてるから特に問題はないんだ。
「………………」
プロデューサー、今日も一生懸命お仕事しててかっこいいなぁ♡
アタシ、プロデューサーのお仕事への姿勢とかに惚れちゃったんだよね。
アタシが何か悩んでるとすぐに何気なくフォローしてくれるし、いつも味方でいてくれる。そして大胆な演出とかでアタシを引き立ててくれる。そういうクールなのにアツイとこが大好き♡
でもプロデューサーって真面目な人だから、なかなかアタシのアピールに気がついてくれなかったんだよね〜。遠回し過ぎなアピールをしてたアタシにも原因はあるけど……。
「…………♪」
あ、目が合って手振ってくれた♡
「…………♡」
いいなぁ、こういうの♡ 言葉がなくても心で通じ合ってるっていうね……♡
本当頑張って告白してよかった。じゃなきゃ今頃もアタシは遠回しのヘタレアピールしかしてなかっただろうしね。
―――――――――
「よし、終わった」
「お疲れ〜♡」
「ありがと。帰る準備始めるから、伊吹は先に車乗ってて」
「は〜い♡」
プロデューサーから車のキーを預かったアタシは、自分の荷物を持ってプロデューサーの車に向かう。
さっきも言ったけど、これからプロデューサーとデートなの♡ アイドルだってバレないように今は髪型もポニテにしてるし、伊達メガネもかけてる。まさにカンペキ!
―――
今日のデートはいつものように映画デート。これはアタシたちのデートでは定番♪ その時その時の話題の映画を観たりもするけど、何を観るかも決めずに映画館へ行ってその場で二人で決めちゃったりもする。なきゃないでお家デートになったりもするけどね。
プロデューサーは基本的に映画とかはジャンル問わずに観るからアタシが観たいなって思ったのを観るけど、アタシが翻訳版を観るのに対してプロデューサーは字幕版の方が好きなんだよね。だから同じ物をもう一度観たりする時は字幕版の方を選んだりしてる。
でも今回はお互いにお目当てのがあるの。日本の恋愛映画なんだけど、その映画にアタシが参加してるユニット『エキサイトダンサーズ』で5分くらい出演してるんだ♪ セリフだって貰ったんだから♪
ガチャ
「お待たせ……それじゃ行こうか。伊吹の初映画出演を観に」
「うん、いこいこっ♡」
―――――――――
いつもなら近場の適当な映画館にするんだけど、今回はプロデューサーが「伊吹が出てるから」ってこだわって、いつもより豪華な映画館に行くんだって♡
そこはカップルシートもあって今回はそのカップルシートを予約してくれたんだ♡ 初めてだからちょー楽しみ♪
「上映1時間前には入れるみたいだけど、どうする?」
「お、いいね! なら早めに入ってのんびり待ってようよ♡」
そうすれば上映開始までイチャイチャ出来るし♡
「んじゃ、そうするか。ラウンジも使えるからそこのカフェで軽食を楽しんだり、飲み物を注文出来るみたいなことも言ってたな」
「へぇ〜、ならそこに行くのは映画が終わってからにしない? 確かウェルカムドリンクもあるんでしょ?」
「あるよ」
「なら飲み物はそれでいいじゃん。アタシらポップコーンとかは別にあってもなくてもいい派なんだし」
「んじゃそういうことで」
「うんっ♡」
―――――――――
「うわぁ……♪」
「値段の割にはかなりは広いな」
映画館のカップルシートの所に着いた私たち。完全個室でまさにVIP席って感じ! テンション上がる!
「いくらしたんだっけ?」
「入場料込みで3人の栄一先生が飛んだ」
「高っ!!」
「でもそれ以上のサービスだと思うよ? ソファーも上質でしかも寝そべってても観れるし、ドリンクもそこらのドリンクバー以上に揃ってる上に飲み放題だ」
「ま、まあ確かに……」
でも普通からすれば超絶高いけどね! プロデューサー気合入れ過ぎ!
まあそれだけアタシが出演してるってのが大きいのかな?♡
「あ、プロデューサー、上着貸して〜。シワになっちゃうからハンガーに掛けとくよ」
「お、ありがとう」
「それじゃあ、プロデューサーは先にソファー座ってて。アタシも自分の上着掛けたらすぐに行くから♡」
「はいよ〜」
アタシって好きな人には尽くしちゃうタイプだから、こういうのはよくやる。仮に同棲とかしてたら家事とかは好きな人に絶対せたくない。だって好きな人に尽くすのって気分がいいんだもん♡
―――
「えへへ、アタシの特等席といえばここだよね〜♡」
「そうだね」
プロデューサーの背中に抱きついて座るのがアタシたちのデフォ♡ プロデューサーの背中って大っきくて温かいから、めっちゃ安心するんだ♡ 何よりプロデューサーの匂いとかめっちゃするし♡
「すんすん……」
「おい、いきなり匂い嗅ぐなよ」
「いいじゃん♡ 今は二人っきりだし♡」
あれ? プロデューサーの匂い、いつもとちょっと違う……匂いは確かにプロデューサーなんだけど、ちょっと爽やかっていうか……。
「プロデューサー、なんか付けてる?」
「え、別に付けてないよ? そもそも俺香水とか苦手だし」
「ふ〜ん……」
だよね〜。でも個室のアロマ加湿器の匂いって訳でもないし……もしかして―――
「浮気?」
―――だったり?
「いやいや、どうしてそうなる。仕事してたの見てるだろ?」
「でもずっと一緒だった訳じゃないし……」
「おい、笑えない冗談はよしてくれよ」
「あはは、ごめんごめん♡」
プロデューサーに限ってそんなことしないよね。仮にしてたとしてもこんなヘマするはずないし。
「でも、だとしたらなんの匂いだろ? すんすんっ」
「ちょ、くすぐったい……」
「だって気になるんだもん……すんすんっ」
どっかで嗅いだことのある匂いなんだよなぁ。
「だ〜、くすぐったいって!」
「きゃっ……あはは、ごめんね?♡ もう少しで分かりそうだったから、つい……」
「くすぐったいわ、息で熱いわ、背中は柔らかいわで大変だった……」
「きゃ〜、プロデューサーのえっち〜♡」
「押し付けてたのは自分だろうが」
「アタシのせいなの〜? プロデューサーだって好きなくせに〜♡ いっつもアタシの胸で気持ちよくなってるのに〜♡」
「う、うるさいなぁ、それとこれとはまた話は別だよ」
あはは、照れちゃって可愛い♡
でもアタシもプロデューサーのこと言えないんだよね。アタシもプロデューサーのアレの感触覚えちゃってるから、谷間は敏感になっちゃったもん♡
「まだ上映されるまで時間あるし、おっぱいでしてあげよっか?♡」
「お客様、ここは映画館ですのでそういうことはよそでお願いします」
「あはは、何キャラなのよ、それ〜♪」
「とにかく、今はそういうのはなし」
「はいはい♡ それじゃプロデューサーのマンションに行ったらいっぱいしてあげるね?♡」
「…………うん」
素直でよろしい♡
「それじゃ、上映開始までイチャイチャしよっか♡」
「そうだね」
それからアタシとプロデューサーは二人してソファーに寝そべってイチャイチャした。
お互いに指を絡めて手を繋いだり、ほっぺとかにキスし合ったり、お互いに好きなとこを甘噛みしたり、アタシがプロデューサーの上に乗ってみたり……二人だけの時間を満喫したの♡
―――
「そろそろ始まるみたいだ。トイレとか大丈夫?」
「うん、平気♪ あ、飲み物取ってきてあげる♡」
「んじゃ、お茶」
「は〜い♡」
あ、今になって思い出した。プロデューサーからした匂い、なんだか分かった。千奈美ちゃんの香水の匂いだ。
「ねね」
「ん〜?」
「千奈美ちゃんとハグした?」
「は? そんなことしてないよ」
「じゃあどうしてそんなに匂い移ってるんだろ? 千奈美ちゃんってそんなに香水の匂いキツくしてないのに」
「…………あ、そういえば、事務所を出る時に会ったんだ。それでこれから伊吹とデートだって話したら、香水の一つでも付けてけって言われてそれで……」
あぁ、千奈美ちゃんなら言いそう。とういうか、千奈美ちゃんに普通にデート行くって話しちゃうんだ……隠されてるよりはいいけど♡
「そっかそっか……良かった、プロデューサーに浮気されてなくて♪」
「だから最初からそんなことしないって」
「でもさ〜、普段しない匂いがしてると不安にはなるじゃん? プロデューサーだってアタシから普段と違う匂いしたら不安になるでしょ?」
「俺は別に気にしないな。シャンプーとか変えたのかなって思うくらい」
「え〜、どうして〜?」
「だって伊吹だからな。無条件で信じるさ」
プロデューサーって一途だなぁ♡ そんな人に愛されてるアタシってちょー幸せ者じゃん♡
「プロデューサーは悪い女に騙されそうだね♡」
「そんなことないよ。これでも女を見る目はあるんだから」
「え〜、そうかな〜?」
「だって現に最高の彼女をゲットしてるじゃないか」
「〜っ♡」
だからそういうのズルいって!♡ てか、そんな半端ないセリフをどうしてさらっと言えるの!♡ 映画のワンシーンみたいじゃん!♡ キュンキュンするじゃん!♡
「プロデューサーのば〜か♡ 大好きっ♡」
「俺も伊吹のことが大好きだよ」
「にへへ〜♡」
それから映画も始まったけど、アタシはプロデューサーから言われた言葉のせいでずっとドキドキしっぱなしで映画の内容なんて入ってこなかった。
そんなアタシの隣でプロデューサーはすました顔して映画観てたのが悔しかったから、プロデューサーのマンションの部屋に行った時にうんと仕返しした♡―――
小松伊吹⦿完
小松伊吹編終わりです!
ズバズバ物は言うけど、なんだかんだプロデューサーの前では乙女ないぶきちにしました!
お粗末様でした☆