デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定で書いてます。



江上椿編

 

 私は写真を撮るのが好き

 

 花や景色、風景は勿論

 

 人々の様子を撮るのも好き

 

 その私に被写体にならないか

 

 そう提案してきた方がいました

 

 君なら最高の1枚になれると

 

 ―――――――――

 

「今日は私の写真展に来てくださってありがとうございました。素人同然の私の写真をたくさんの方々に楽しんでもらえて、本当に嬉しかったです。今後も応援のほどよろしくお願いします」

 

 パチパチパチパチ

 

 私は東京のとあるビルの一室を借りて、これまで私が撮った写真を展示をしました。

 そして今日がその展示会最終日ということで、今最後のご挨拶を来て頂いた方々にしていました。

 

 今では私専属のプロデューサーさんの提案で始まったこの企画。

 展示している写真の販売はせず、元のデータからプリントした写真集を販売することにして、初日は握手会も同時に行い、中日には一緒に写真撮影会を行い、最終日はサイン会を行って多くの方々に来て頂けました。

 

「私も何か撤収作業のお手伝いしましょうか?」

「あ、いえいえ、それは私たちの仕事なので、江上さんは何もしなくて大丈夫ですよ」

「そうですよ。それに俺らにまでサイン書いてくれて嬉しかったです!」

 

 撤収作業をするスタッフさんたちは私の申し出を優しく断って、また撤収作業に戻る。

 アイドルを始めた頃からそうですが、どうもこういう時に一人だけ楽をしてるのって慣れないんですよね。

 

「江上〜、今後のことで話があるからちょっと控室に来てくれ〜」

 

 すると私をプロデューサーさんが呼びました。

 なので私はスタッフさんたちに改めてお辞儀をしてから、控室に向かったのです。

 

 ―――――――――

 

 プロデューサーさんは私をアイドル界に入れてくれた……アイドルの私をここまで育ててくれた大恩人。

 出会いはプロデューサーさんが新潟でその時担当していたアイドルユニットの写真集に使う写真撮影をしていた現場に私が居合わせたことから。

 

 私が好奇心に負けてプロのカメラマンさんたちの技術を見ていたところに、プロデューサーさんが『何なら被写体として撮られてみないか?』と提案してくれて、スカウトもされました。

 最初は私も戸惑いました。私がアイドルなんて想像もしてなかったから。

 でもその時に撮ってもらった写真は被写体が自分なのに、とてもキラキラと輝いてて……まるで自分じゃないみたいだった。

 そして別れ際にプロデューサーさんから言われた言葉―――

 

『君はいい素質を持っている。是非とも君と最高の1枚を残したい』

 

 ―――この言葉がずっと頭に残っていて、気がついたら私はプロデューサーさんを追うように東京まで来てました。

 

 アイドル……撮る側から撮られる側へ立場を変えたのは私にとって新しい出会いと発見の連続。

 戸惑うこともたくさんありましたけど、その都度プロデューサーさんがヒントをくれて、私はひとつひとつアイドルへの階段を登っていけました。

 

 ガチャ

 

「只今参りました、プロデューサーさん」

「ん、お疲れ。んじゃ適当に座ってくれ。まず――」

 

 プロデューサーさんに促されるまま、私は側にあった椅子に腰を下ろします。

 それを確認すると彼はテキパキと今後のスケジュールを教えてくれました。

 

 彼は事務所では中堅にあたるプロデューサーで、前までは私の他にもいくつものアイドルユニットをプロデュースしていました。

 しかし今回の写真展をプロデュースするにあたって私専属のプロデューサーとなることを宣言して、私へ尽力してくれています。

 私が何故今になって専属プロデューサーになってくれたのかと理由を訊ねた時……

 

『これは俺のワガママだ。惚れた女のために……とことん情熱を注ぎたくなった。ただそれだけだ』

 

 ……と、プロデューサーさんは答えられました。

 

 そうです……私はその時、プロデューサーさんに告白をされたのです。

 そして私はお仕事を頑張ることでプロデューサーさんの気持ちにお応えしています。

 アイドルとその担当プロデューサーということで、流石に事務所の方々には内緒ですけど、アイドル仲間で仲のいい人たちには教えちゃってます。色々とご相談にも乗ってくれるので、本当に助かっていますよ。

 

「――という訳で、写真展に出した写真たちは次の写真展まで借り倉庫で保管する。次の写真展は江上の地元で開く予定だ」

「分かりました」

「それと新潟での写真展では地元の図書館の一室を借りて、公民館の方ではライブをするから、明日からそのライブに向けてのレッスンだ」

「ライブですか?」

「そうだ。今回やったみたいに握手会、撮影会、サイン会をする予定でいたんだが、市長さんの方から是非とも地域活性化のために地元出身アイドルのライブをしてほしいと頼まれたからな」

「なるほど……でも家族や地元の友達たちにアイドルの私を見せるのは、ちょっと恥ずかしいですね」

 

 これまで何度かテレビのお仕事もしてきましたけど、映像ではなくて生のアイドルの私を見せるのは初めてです。

 なので今から少し緊張してしまいます。

 

「まあ、小さい頃からお世話になった近所さんたちとかも見に来るだろうしな。そういう気持ちがあるのも分かる」

「はい……」

「でも江上は大丈夫だ。みんな楽しんでくれるさ。それに改めて江上の美しさに惚れてファンになる人もいるだろう」

「もう、プロデューサーさんっ」

 

 そう言って頂けるのは嬉しいですけど、面と向かって言われるのは恥ずかしいんですからね!

 

「本当に美人だよ……俺が保証する」

「……外見だけですか?」

「中身だって美人さ。俺は確かに江上に惚れ込んだが、一緒に仕事していく中で惚れ込んだんだからな」

「ならいいです♡」

 

 自分で聞いたのに恥ずかしくなってきちゃいました。

 プロデューサーさんってこういうこと平気で言うんですから。

 

「まあ話を戻すとだな。ライブは江上だけじゃなくて、前に何度もユニットを組んでる他のアイドルともやる予定だから、明日から忙しくなるぞってことだ」

「分かりました。精一杯頑張ります!」

「おう、その粋だ」

 

 そう言ってプロデューサーさんは少年のような笑みを浮かべると、私の頭をポンポンッと軽く撫でてくれました。

 すると私の胸は心地よく鼓動を早め、私も自然と笑みをこぼしていたのです。

 

 ―――――――――

 

 私とプロデューサーさんは撤収作業をしてくれている方々に挨拶してから、皆さんよりお先に事務所へと戻りました。

 上の方々へのご報告も終わり、私は事務所の隣にあるアイドル寮へと帰るだけなのですが、

 

「さぁて、俺は一休みしたら明日からのスケジュールをもう一度熟考するか」

 

 プロデューサーさんはご自分の個室ですることがあるそうで、まだまだお帰りにはならないみたい。

 

「プロデューサーさん、私にも何かお手伝い出来ることはありますか?」

「江上は明日に備えて休むこと。それが1番だ」

「でも……」

 

 プロデューサーさんの……愛する人の力に少しでもなりたい。

 

「…………何眉尻そんなに下げてんだよ。いつもみたいにニコッと笑えニコッと」

「…………」

 

 笑えるはずがない。

 プロデューサーさんだって今日はとてもお疲れのはずなのに、私には何もしてあげられることがないのですから。

 

「はぁ……本当に困った彼女だなぁ。そういうところも好きだけどな」

「ごめんなさい……」

「謝る必要はないさ……そうだなぁ、ちょっと待ってろ」

 

 プロデューサーさんはそう言うと、デスクを離れてドアの方へ向かいました。

 デスクのドアの外側へ何かを掛けると、プロデューサーさんは今度はドアへ鍵を掛けて、ソファーに座ります。

 

「こっちに座ってくれ」

 

 そしてぽふぽふとご自身のすぐ左隣を叩きました。

 

「……こうですか?」

「あぁ、じゃあ失礼すっぞ」

 

 そう言うとプロデューサーさんはゴロンと横になって、私の膝の上へ頭を乗せてきました。

 

「え、プロデューサーさん?」

「これから10分間、俺を癒やしてください」

「…………ふふっ、それくらいお安い御用です♡」

 

 甘えてくれて嬉しい……これなら私にも出来ることです♡

 

「いつも私のためにお疲れ様です♡」

「俺が好きでやってることだ……今の膝枕もな」

「私はこれくらいならいつでもして差し上げますよ?♡」

「俺をダメ男にする気か?」

「そうなるともっと甘えてくれますか?♡」

「甘えるってか依存するだろうな」

「まぁ……私なしでは生きていけなくなるのですね♡」

「なんでそんなに嬉しそうなんだよ……」

「私はどちらかと言えば尽くしたい方ですから♡」

「なるほどな」

 

 事務所内なのにこうして過ごせるって幸せです♡

 これからは毎回してあげたいって思ってしまいます♡

 

 でもきっとプロデューサーさんは私がそう提案しても頷かれないでしょう。

 元々そんなに自分から進んで甘えては来ない方ですから。

 だから―――

 

「プロデューサーさん」

「ん?」

「たまにで構いませんので、またこうして私の膝をお使いになって頂けませんか?♡」

 

 ―――私から甘えます。

 私は尽くしたくて、うんと甘えてもらいたいんですから♡

 

「彼女が甘い誘惑で俺をダメ男にしようとしてくるぅ」

「誘惑ではなく、魅惑的に迫ってるだけですよ♡」

「惚れた弱みをここぞとばかりに攻めてくるなぁ」

「アイドルになって勝負事にも慣れてきましたから♡」

「ぐぬぬ……可愛い笑顔しやがって」

「プロデューサーさんだからですよ♡」

 

 あぁ、もう我慢出来ません♡

 

 ちゅっ……♡

 

「んはぁ……プロデューサーさん、大好きです♡」

「俺も椿が大好きだ」

 

 ここで名前を言うのはズルいですよ♡

 

「もっと……もっと私の名前を呼んでください♡ あなたに呼ばれると、とても幸せな気持ちになるんです♡」

「……椿」

「はい♡」

「椿……」

「はいっ♡」

 

 ただ名前を呼ばれるだけなのに、私の胸はプロデューサーさんへの愛でいっぱいになり、溢れていく。

 

「椿……好きだ」

「私も……私も大好きです♡ 言葉では言い表せないくらい♡」

「……また膝枕してくれ」

「はい……いつでも喜んで♡」

「…………もう1度キスしよう」

「ずっとでもいいんですよ?♡」

「それだと仕事が出来ないからな……誘惑しないで」

「は〜い♡」

 

 ちゅっ♡

 

 こうして私はプロデューサーさんと短くも幸せな時間を過ごして、今日はお別れしました。

 でも、次の日もそのまた次の日もそれから先もプロデューサーさんは私に膝枕をするよう甘えてくれるようになりました♡―――

 

 江上椿*完




江上椿編終わりです!

お淑やかな中にある熱烈な愛情ってグッときますよね!

お粗末様でした☆
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