デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


冴島清美編

 

 風紀は大切

 

 風紀が乱れると

 

 そこに集う人々も乱れ

 

 秩序というものが崩壊する

 

 だからアイドル界も

 

 いや芸能界自体

 

 風紀が乱れていると思ってた

 

 なのに

 

 現実はとても秩序正しく

 

 私は偏見で凝り固まっていた

 

 それを教えてくれた人は

 

 今では掛け替えのない人です

 

 ―――――――――

 

「こんな感じだけど、どうかな?」

「可愛くて素敵な衣装ですね! 軽くステップ踏んでみます!」

 

 私は今、事務所の多目的室で衣装さんと今度のライブでソロの時に着る予定の衣装の確認をしてます。

 特にサイズは変わってはいないし、露出も少ない……強いてあげるとすればスカートの丈が短いくらいでしょうか。

 

「このスカート、丈がちょっと短過ぎませんか?」

「あれ、そうかな? 前と変更なしなんだけど……身長伸びた?」

「いえ、変わってません」

「ん〜だよね〜。私から見ても前と変わりないもん」

「…………」

「清美ちゃんが気になるなら直すけど、どうする?」

「衣装さんから見て変わりないなら大丈夫です」

「そっか、良かった♪ 本番はインナースパッツも用意するから、見えちゃう心配もないからね♪」

「分かりました」

 

 こうして無事にソロでの衣装も決まり、私は元の服に着替え、今度はその報告に私専属のプロデューサーが使うオフィスに向かいました。

 

 ―――――――――

 

「プロデューサー」

「おう、きよみん。衣装合わせどうだった?」

「問題ありませんでした」

「なら良かった。んじゃあ、もうきよみんは上がっていいぞ。お疲れー」

 

 今日の私はこれでお終いのようです。

 ならば私がやることは1つ!

 

「では今日もプロデューサーがセクハラをしないか監視します」

「えぇ〜」

 

 明らかに不満そうな声をあげますね……そんなにセクハラしたかったのでしょうか? 破廉恥です!

 

「もっと素直に俺と一緒にいたいから待ってますって言ってほしいなぁ」

「っ……な、何を馬鹿げたことを言ってるんですか!」

「だって俺がセクハラしないのはもう十分証明してるだろう?」

「それは私が監視してるからです」

「他の人にも俺がセクハラしたことあるか訊いたろ?」

「皆さんないと仰ってました……が、たまたま目撃してないだけです」

「はいはい……まあそれできよみんが安心するなら、好きにしてくれ」

「はいっ♡」

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 私はプロデューサーが……彼のことが異性として好きです。

 これまでの私がそうだと決めつけてきた世界を別の視点で見せてくれた方で、世の中の広さを教えてくれた方。

 アイドルは破廉恥な衣装を着て媚を売る物だと思っていた私に、この人は『やったこともないくせに知った風なことを言うな』と言ってきました。

 そして『そんなこと言うなら俺がアイドルを教えてやる』って言われてスカウトされて、私はここまで来たんです。

 

 アイドル界に入ってみて分かったことは、私が酷い偏見に凝り固まった人間だったということ。

 実際に破廉恥の"破"の字もなく健全で、秩序正しく、皆さん真剣にお仕事をしてます。セクシーさを売りにしてる人はまた別ですが……。

 それなのに私は『アイドル=破廉恥』だと思ってました。

 その間違いを教えてくれて、新たに私の目標をくれたプロデューサーは本当に私の憧れで……大好きな人なんです。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 だから自分でもこれは風紀に反すると思いながらも、私はプロデューサーへ更に一歩踏み込んだ関係を求めました。

 アイドルとプロデューサー……更には未成年女子と成年男性とでの交際なんておかしいのに、私の心はプロデューサーを求めてしまった。

 でもプロデューサーはいつも『自分を信じろ』って言ってくれましたから、私の恋心もそんなプロデューサーだから芽生えたんです。

 

 告白の結果、私はプロデューサーとお付き合いを始めました。事務所には内緒で……。

 しかしプロデューサーとお付き合いしてかれこれもう半年になるのですが、やはり私はこの人に恋をして良かったと実感する日々を送っています。

 

 大々的にデートなんて出来ない中でロケ地の下見という名目でお忍びでデートする機会を作ってくれたり、過度なスキンシップも一切なし。

 

「もう少しでこの仕事が終わるから、そしたらちょっと次のライブ会場の下見でもしに行こうな」

「分かりました♡」

 

 私たちの関係ではこれが普通です。私は形から入るタイプなので、最初は恋人関係になれば手を繋いだり、キスしたりするのが当たり前かと思っていたのですがプロデューサーはそういう方ではありませんでした。

 プロデューサー曰く―――

 

『んなことしなくてもお互いに好きなら、何も無理して特別な何かをしなくてもいいじゃねぇか』

 

 ―――らしい。

 最初はプロデューサーが私に興味がないのではとかなり不安でしたが、彼が前に担当していたアイドルたちや事務所の方々にそれとなく彼のことを訊ねると皆さん決まって『あの人は言葉遣いはアレだけど、性格は真面目』と仰ってました。

 だから私は不安に思うことを止めて、私たちらしい恋人関係を築こうと決めたんです。

 

 ―――――――――

 

「ここが次のライブ会場だ」

「大きな会場ですね……」

「きよみんもそれなりに売れっ子アイドルになってるし、同じ事務所のみんなでやるライブだから派手にするんだよ。でもドームなんかに比べたらここなんてまだまださ」

「なるほど……」

 

 事前に打ち合わせで規模は知ってましたが、実際にこの目で見ると感じ方がより鮮明になります。

 不安があるのにどこかその不安を楽しんでる自分もいる……不思議な感覚。

 でもそれは―――

 

「楽しみだな」

「はいっ!」

 

 ―――きっとプロデューサーがいつも優しい笑顔で、私なら出来ると信じてくれているからでしょう。

 

「あ、そういや知ってるか?」

「?」

「きよみんのライブはファンのマナーが凄く良くて、会場運営の人も心地よく仕事出来るらしいし、他のみんなも見倣ってるんだと」

「そうなんですか?」

「そうそう。やっぱ間違ってることは間違ってるって伝えるのはいいことだよな。だからみんなきよみんが好きなんだと思うし、それを見た他のアイドルファンも見倣ってるんだと思う」

「あはは……」

 

 なんだろう……褒められてるのに凄く胸の奥がくすぐったい。

 

「あ、もちろん俺もそんなきよみんのことが好きだぞ?」

「わ、分かってます……いつもその気持ちは伝わってますから……」

 

 顔が熱い……たったそれだけの言葉だけなのに、私の胸の鼓動はドクドクと早くなる。

 

「そっか……伝わってるなら嬉しい」

「っ……もう止めてくださいっ」

 

 まともにプロデューサーのお顔を見れなくなるじゃないですか。

 本当、この人に恋をして良かった。この人の彼女に……恋人になれて良かった。

 そんな気持ちがとめどなく溢れて、私の心を満たしていく。

 

「ははは、悪い悪い。んじゃあ、下見はこれくらいにしてあとはどっか喫茶店にでも入ってお茶してから事務所戻ろうぜ」

「了解です♡」

 

 ―――――――――

 

 会場から少し離れたところには大きな商店街があり、飲食店も数多く並んでます。流石にここでは私もマスクをしてアイドルだとバレないようにしてます。

 

「どこにしましょうか?」

「手近なとこでいいなら、あそこか?」

「あそこは喫茶店というよりは、小料理屋みたいですが?」

「別にいいじゃん。個室あるって看板にあるし、小腹も減ったし」

「破廉恥なことはなしですよ?」

「したことあるか?」

「ないです♡」

 

 こうして私たちはその小料理屋に入りました。時間帯も良かったのか、待たずに個室席に通してもらえました。

 

 ―――

 

「奢るから好きなの頼めよ、きよみん」

「ではお言葉に甘えて……あ、パフェがいっぱいある♪」

 

 王道のチョコパフェからフルーツパフェ、ストロベリーパフェ……どれも美味しそう♪

 

「ん?」

 

 『カップルで甘いひと時を』?

 

「それがいいのか?」

「え、あ、いや……ただ目に入ってどんなのか気になっただけです」

「そうなのか。別に食べたいならそれにすればいいんじゃね?」

「で、でも……」

「別にやましい関係じゃねぇんだからいいじゃん」

「ぷ、プロデューサーがそういうのでしたら……♡」

 

 どうしよう。パフェなのにカップルで食べるパフェってだけで、何かいけないことするみたいでドキドキする♡

 

 ―――

 

「…………」

「でけぇな」

 

 運ばれてきたパフェは予想以上に大きかったし、妙にハートの形にカットされたフルーツやハートの形をしたチョコレートチップが散りばめられてました。

 そして何より予想以上に恥ずかしい! 個室じゃなかったら脱兎の如くお店をあとにしてましたよ!

 

「普段の俺らからしたらかなりカップルらしいな」

「そ、そうですね……」

「まあ、たまにはいいかもな。きよみんとラブラブなおやつタイムってことで」

「みゅ〜……♡」

 

 今よりラブラブになったら私の心臓が保つか心配です。普段微笑まれただけでも心臓が爆発しそうなのに……。

 

「にしてもでけぇな……どこから食えばいいんだよ」

「や、やはり上からでは?」

「このハート型のチョコプレートから?」

「は、はい……♡」

「んじゃ、ほい」

「え?」

 

 どうして私にそのチョコプレートを差し出してるんです?

 

「えじゃなくて、食べろよ。あーん」

「は、破廉恥ですよ!?」

「個室だし、いいじゃんかたまには」

「………………」

「欲しくない?」

「……欲しいです♡」

 

 これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全これは健全!

 

「ほい、あーん」

「あ〜……んっ♡」

「どう?」

「……緊張で味が分かりません……」

 

 でもいつものより楽しく感じたのは、やはり恋人同士であーんのせいなのでしょうか?

 

「ありゃ残念。なら今度はさくらんぼにするか……あーん」

「あ、あ〜……ん♡」

「どう?」

「……甘酸っぱいです……♡」

「お、味分かって来たじゃん。流石きよみん。順応能力はやーい」

「ちゃ、茶化さないでくださいよ……かなり恥ずかしいんですから」

 

 でも不思議。特別な物なんて口にしてないのに、心が満たされていく。

 

「世の中のカップルって凄いですね」

「きよみんが望むならこれからもあーんしてやるぞ?」

「…………」

「? あーんは別に不純じゃないだろ。健全健全」

「で、では、これからもたまにお願いします♡」

「はいよ♪」

 

 それからも私はプロデューサーに何度かあーんしてもらいました。今度は私からもしてみようかな♡―――

 

 冴島清美⦿完




冴島清美編終わりです!

どんなに風紀に厳しくても、健全なラブラブには弱い清美ちゃんにしました!

お粗末様でした☆
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