デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


沢田麻理菜編

 

 アイドルはサーフィンのよう

 

 波を上手に乗りこなし

 

 最高の瞬間をファンに伝え

 

 自分でもその瞬間を楽しむ

 

 大きな波もあれば

 

 小さな波もあれば

 

 波がないときもある

 

 それでもアイドルになれて

 

 あの人に出会えて

 

 本当に良かったって思う

 

 ―――――――――

 

「それではお昼休憩にしまーす」

「沢田さん、体を冷やさないようにしてくださいね」

「はい、分かりました」

 

 今日の私は東京都内に今度オープン予定の大型レジャー施設に来てる。

 メインは大きな波のプールと特大ウォータースライダー、そして大浴場。

 私専属のプロデューサーくんのお陰でここのキャンペーンガールに選ばれて、オープン前のポスターやパンフレットに使う写真撮影をしてるの。今は流れるプールで撮影してたから、オレンジ色の三角ビキニ姿よ。デザインがシンプルだけど、プロデューサーくん曰く『素材がいいのでシンプルな水着が一番』なんだって。

 

「お疲れ様です、沢田さん。肩からタオル掛けといてください」

「ん、ありがとう、プロデューサーくん♡」

 

 このちょっと頼りない感じのスーツ姿の彼がプロデューサー。

 頼りないのは見た目だけで、実は私の専属になる前は多くのアイドルをプロデュースしてきた大物プロデューサーなのよね。しかも私より2つ年下っていうね。ホント、人は見掛けによらないわ。

 

「責任者の方もこれまでの撮影を見ていてかなり満足してました。午後もこの調子でお願いしますね」

「えぇ、もちろんよ。というか、私ってこういうとこ好きだから、いつもよりテンション高めで……午後からはちょっとセーブしようと思ってたのよね」

「それは要らぬ心配です。責任者の方は『来場してくれるお客様たちにも沢田さんみたいに楽しんでもらいたい』と仰っていました」

「あはは……そんなにはしゃいじゃってたのね」

「いいじゃないですか、はしゃいでても。沢田さんの魅力がより際立ってます」

「も、もう、プロデューサーくんったら……すぐそうやってお世辞言うんだから♡」

「お世辞なんかじゃありません。僕が一番、あなたの魅力の虜になってますから」

 

 ドキッ♡

 

 こんな時に真顔でそんなこと言うなんて……ズルい。

 顔が熱くなってきちゃったじゃない……もう♡

 

 プロデューサーくんと私はアイドルとプロデューサーという肩書があるのに、プライベートでは彼氏彼女の関係になってる。

 どちらが先に惚れたのか、告白したのか……お互い分からないけど、気がついたら一緒にいるのが当たり前になってた。

 最初は"礼儀正しい弟くん"みたいに思ってたけど、一緒にお仕事をしていく内に彼がふと見せる男の子の顔に胸が高鳴るようになって……今は最高の彼氏♡ あ、もちろん事務所には秘密にしてるけど、アイドル仲間で仲良しの子たちには気づかれちゃった。でも別に言いふらすような子たちじゃないし、寧ろ応援してもらってる。

 

「そ、それよりお昼ってどうなってるの? ロケ弁が出るとかは貰った予定表に書かれてなかったけど?」

「お昼ならここのレストランで好きな物を頼んでいいみたいです。この日のために専属シェフも呼んだそうです」

「なるほど! じゃあ、早速行きましょ♪」

「着替えないんですか?」

「着替えた方がいい?」

「いえ、寒くないのでしたら僕は構いません」

「パーカーも羽織っていくから大丈夫よ♪」

「そう言って前に風邪を引かれましたからね〜。やはり着替えた方が……」

「むぅ、いつまで根に持ってるのよ! ちゃんと謝ったし、十分気をつけてるし、あれ以来風邪なんて引いてないんだからね!」

「あはは、ごめんなさい。釘は刺しておかないといられない性分なので♪」

 

 もう、心配性なんだから……。でも風邪を引いた時、熱もないのに本気で心配してくれたのよね。あの時は私がアイドルだからって思ってたけど、今は違うって思ってる。

 だって、プロデューサーくんって私が辛かったり悲しかったりすると、私以上に辛そうで悲しい顔をするんだもの。

 プロデューサーくんには出来るだけそんな顔をさせたくないし、いつでも笑っていてほしい。だから私はあの日から自己管理は徹底してるんだから!

 

 ―――――――――

 

「ここがレストランです。オープンすればここだけじゃなく、他に4か所のレストランも稼働させるみたいです」

「流石にここだけじゃ足りないものね……」

「それだけではなく、5つのお店で売り上げを競わせるのもサービスの向上に繋がるんだとか」

「色々考えてるのね……私には無理だわ」

「そういうのは沢田さんには向きませんしね。でもあなたのプロデュースは任せてください」

「頼りにしてるわ♡」

 

 スカウトされた時から、プロデューサーくんに頼りっきりだもの♡

 

「いらっしゃいませー! 当店にご来店頂きありがとうございます! お冷とおしぼりになります! こちらがメニューです! お決まりになりましたらベルでお呼びくださいませー!」

 

 元気ハツラツな店員さんね。ウェイターの制服は涼しそうで清潔感あるけど、ウェイトレスの制服は水着っぽくなってて可愛い。

 

「あのウェイトレスの制服は上着の半袖パーカーとパレオを取れば水着になれるので、従業員にも好評らしいです。仕事前や仕事後に遊んでもいいみたいですよ」

「いい職場ね〜。アイドルやってなかったらここでバイトしてたわ。制服も可愛いし」

「午後に着れますよ。しかも各レストランのをね」

「わぁ、楽しみ♪」

「僕もとっても楽しみです♪」

 

 うぅっ……そんな嬉しそうに言わないで。撮影中に意識しちゃうじゃない……嬉しいんだけど♡

 

「そ、そそ、それより、何がいいかしら?」

「ここのオススメはロコモコですね」

「ロコ()()コね……っ!」

「沢田さん……」

(言葉を噛んで赤面する沢田さん、可愛いです)

 

「んんっ……ロ〜コ〜モ〜コね、ロ〜コ〜モ〜コ!」

「そうです。ロコみょコです」

(自然に言い直しつつ、今度は噛まないようにゆっくり言う沢田さん可愛過ぎます)

 

「う、うぅ〜、プロデューサーくんのいじわるぅ!」

「ごめんなさい……ふふっ」

「むぅ……一番高いの選んじゃうんだから!」

「僕の奢りではないのでどうぞどうぞ」

「そ、それならプロデューサーくんのも食べちゃうんだから!」

「僕は元々あまり食べないのでどうぞどうぞ」

「うぅ〜! 悔し〜い!」

「僕は大満足です!」

(あぁ、僕の彼女はなんて可愛いんだろう)

 

 ―――

 

 恥ずかしかった……まさかロコモコって言葉を噛んじゃうなんて。しかもプロデューサーくんだけじゃなくて、撮影スタッフの人たちにも笑われちゃった……ロコみょコさんなんて呼ばれていじられる〜!

 

「お待たせしましたー! ベーコントマトロコモコとスペシャルロコモコセットです! ごゆっくりどうぞー!」

 

 流石店員さんね。私みたいに噛まなかった。私みたいに噛んでしまう仲間が欲しかったけど、仕方ないわね。

 それより―――

 

「スペシャルって凄いですね……」

「えぇ、ホントね……」

 

 私が頼んだロコモコセットの内容が大変だわ。

 生ハムサラダ、ハンバーグ、チキングリル、トマト、モッツァレラチーズ、目玉焼き2個……そしてセットのオニオンリング7つにポテトフライだもの。

 

「もし全部を僕が自分で食べるなら4人は必要ですね」

「その換算のしかたはなんなの? でも写真で見るより凄いわね」

「無理して食べないでくださいね?」

「それは大丈夫よ。でもこの量なら、夜は少し減らさいといけないわね」

 

 アイドルだから色々と気をつけなきゃいけないものね。学生の時みたいに食べた分を動いてカバーするのも難しくなってきたし……あ、これ早苗さんとかに聞かれたらグーパンが飛んできそう。

 

「とりあえず食べましょうか」

「そうね……頂きまーす!」

 

 量はその名の通りスペシャルだったけど、味もまさにスペシャルだったから問題なく食べ切れちゃった。それにドリンクのトロピカルフルーツオレもとっても美味しかった!

 それに周りにスタッフさんたちがいても、プロデューサーくんと二人の席で食べたから、ちょっとリゾートデートみたいで楽しかったわ♡

 

 ―――――――――

 

 そのあとの撮影も順調に進んですべてを終えると、責任者さんのご厚意で特別にここのホテルで一泊させてもらえることになったの。

 替えの服はホテルの人がその日の晩に洗濯して、乾燥してアイロンまで掛けてくれるみたい。

 

 それで―――

 

「沢田さんのお陰で得しましたね。沢田さん様々です」

「どーも♡」

 

 ―――私はもちろん、打ち合わせという名目でプロデューサーくんと二人っきり♡

 打ち合わせなんてないから、私はデート気分でプロデューサーくんとくっついて夜景を見てる♡ 最上階のスイートルームだからパパラッチの心配もないしね♡

 

「プロデューサーくん♡」

「はい?」

「もっとぎゅーってして♡」

「お安い御用です」

 

 むぎゅっ♡

 

 はぁ〜、幸せ♡ 私って自分で思ってたより甘えん坊なとこがあるのよね。普段年下の子たちを相手にすることが多いから、プロデューサーくんにだけは甘えちゃうのかも♡

 

「どの写真も最高のものに仕上がりました。お疲れ様でした」

「プロデューサーくんもお疲れ様♡」

「はい。それにしても慣れませんね」

「何が?」

「恋人の水着姿を大勢の方に見せるというのが、です」

 

 キュン♡

 

 プロデューサーくん、いつもはクールなのに実は独占欲が高いのよね♡

 それだけ私に夢中ってことだから、面倒くさいなんてこれっぽっちも思ったことないけど♡

 

「ふふふっ♡」

「笑わないでください。自分でも子どもっぽいと自覚してるんですから」

「そういうことで笑ったんじゃないわ♡」

「では、どういうことなんですか?」

「うーん、これからもプロデューサーくんだけの私であることには変わらないよってことで♡」

「???」

 

 プロデューサーくん、イマイチピンときてないわね。もう、鈍感なんだから。

 

「あのね、アイドルだから水着姿で写真撮ったり、それこそ水着姿でイベントに出たりするでしょう?」

「はい」

「慣れてはきたけど、私だって未だに大勢の人から水着姿とか見られるのは恥ずかしいの」

「………………」

「でもね? そんな私に触れられるのはプロデューサーくんだけなの。これまでもこれからも……ね?♡」

「っ…………な、なるほど……」

「ね、プロデューサーくんだけの私でしょう?♡」

「はい……」

 

 ふふっ、嬉しそうにしちゃって……可愛い♡

 

「それで、プロデューサーくん」

「はい?」

「今夜はこれで終わりだなんてことない、わよね?♡」

「!!!?」

「撮影用の水着……実は全部買い取ってきてたりして♡」

「…………」

「私の水着姿い〜っぱい、大好きな彼氏くんに独占欲してほしいな〜♡」

「き、着替えてきてくだい……最初はスイムスーツで……」

「マニアック〜♡」

「麻理菜だからですっ!」

「あはは〜、知ってるぅ♡」

 

 そんなこんなで、私はプロデューサーくんと最高の夜の水着ファッションショーを夜通しで楽しんじゃった♡―――

 

 沢田麻理菜⦿完




沢田麻理菜編終わりです!

スポーティなのに色気抜群!
そんな麻理菜さんとの甘いお話を書きました!

お粗末様でした☆

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