デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。
大分弁が変だったらごめんなさい。


首藤葵編

 

 アイドルは料理と同じ

 

 基礎を徹底的に磨き

 

 技術を磨き

 

 吹きこぼさず焦らず

 

 じっくりと煮込み

 

 自分にしかない味を

 

 ファンのみんなに提供する

 

 それを教えてくれたのが

 

 あたしの大好きな魔法使いさん

 

 ―――――――――

 

「プロデューサー、寂しいならあたしに抱きついてんいいんちゃ?♡」

 

「いや、そんなことしない。そのせいで葵が怪我や火傷を負ったら、俺は辞表を出して責任を取らないと気が済まなくなる」

 

「相変わらず大袈裟やなぁ……」

 

 あたしは今、あたし専属のプロデューサーが住みよんマンションの部屋にお邪魔して、晩御飯作りよん。

 これはあたしが上京してアイドルデビューする前からプロデューサーと行っちょん反省会。最初は適当なファミリーレストランやらでやっちょったんだけんど、半年前からあたしん希望でプロデューサーの部屋やることになった。

 

 なしそげなことあたしが希望したか。

 その理由はあたしとプロデューサーが付き合うたけん。当然、彼氏彼女ってことでね。

 そうなれば好きな人に手料理ご馳走しとうなるやろ? あたしこれでも料亭の娘ちゃ? 料理は物心ついた頃からしちょんし、小学生の頃から包丁握らせてもろうち、お父さんやお弟子さんたちほどやねえにせよ、自信あるんやけん。

 

 今日は事務所から帰る際に寄った豊洲市場でいい鯛が手に入ったけん、鯛のお刺身と切り身の塩焼き、それとあら汁、残った頭は酒蒸しにする予定。

 こうしてあたしが大好きなプロデューサーのこと考えながら料理しちょんのに、プロデューサーったらずっとリビングでノートパソコンカチャカチャしちょん。

 刃物持っちょんし、あたしが怪我したら大変やけんってのも分かるけんど、プロデューサーも大人なんやけん加減は出来るやろ? あたしとしちゃもっとこう、あたしが料理しちょんの邪魔しにきて―――

 

『あん、プロデューサー♡ 危ないよぅ♡ 大人なんだから、いい子で待ってて?♡』

『こんな可愛い彼女の割烹着姿を前に我慢出来る訳ないだろ!』

『やぁん、プロデューサーのケダモノ〜♡ 今、火ぃ止めるから、それからね♡』

『葵〜!』

『〇〇〜♡』

 

 ―――な〜んてな〜んて! いっぺんくらいされてみてえシチュエーションなんちゃね! きゃ〜♡

 

 なのに―――

 

「そんなに包丁振り回してると危ないぞ〜? それとも葵の料亭ではそういう風に料理するのか〜?」

 

「あ……ご、ごめんなさい」

 

 ―――プロデューサーはいつもと何も変わらん。

 まあ付き合ってからもプロデューサーはプロデューサーのままだけん、あたしが望んじょん展開になんてならんのやけどなぁ。

 

 でも付き合ってから変わったことがある。

 そりゃ―――

 

「あはは、二人きりでテンション上がるのはいいが、怪我だけはするなよ?」

 

 ―――前よりも断然笑顔を見せてくれるようになったこと♡

 

 あたしはプロデューサーん笑顔に惚れて、恋に落ちたん。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 そりゃ本当にたまたまだった。

 プロデューサーは研修だか何だかで東京からあたしの地元まで料理番組の撮影ってことで実家の料亭に来て、そこであたしと出会うた。

 レポートするはずの地元のタレントさんが急遽来れんことになって、機転を利かせたプロデューサーがあたしに代役をするよう言うて、あたしは看板娘でもあったけん目一杯アピールした。

 ローカル番組にはなんべんかレポーターとして出させてもろうたことあるし、自分でも上手く出来たと思うちょった。

 

 でもプロデューサーは『素材はいいと思うよ』っちゅうだけで、満足はしちょらんかった。

 あたしは思うた。流石東京で有名なアイドルを何人もプロデュースしちょん人だって。

 

 やけんあたしはこん人に……プロデューサーにプロデュースしてもらいてえって思うたん。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 アイドルになるんは本当厳しかった。でもプロデューサーはどげな地味なレッスンでも夜遅うまであたしに付き合ってくれたし、1つのレッスンを成功さする度に優しゅう笑って頷いてくれた。

 やけん今のあたしがあるし、今では子ども番組やけど自分の料理番組を持っちょん。

 本当にプロデューサーに付いてきて良かった。

 

 東京に来て友達も沢山出来たし、今はこうしてプロデューサーと彼氏彼女の関係になれたし、本当いいこと尽くし。

 やけんアイドルを頑張ってプロデューサーを安心させて、いつかプロデューサーがあたしを自分のお嫁さんにしとうて仕方ねえような女の子になるんや!♡

 

「料理出来たよ〜♡ テーブルの上なおして〜♡」

「おぉ、待ってました」

 

 ―――

 

 テーブルを挟んでプロデューサーの正面に座ったあたし。今晩の料理の説明をして、プロデューサーに「召し上がれ♡」っちゅうと、プロデューサーは「いただきます」とお行儀良く手を合わせてからあら汁に箸を伸ばす。

 

「あ、お酒飲む?」

「俺は酒を飲み始めたら何も食べないぞ?」

「えへへ、訊いてみただけ♡ それより、どげえ?♡ 美味しい?♡ なあなあ、美味しい?♡」

「美味しいよ。とっても」

「うへへへ、そうちゃそうちゃ♡ あたしのプロデューサーへの愛がた〜っぷり入っちょんのやけんな♡」

 

 あぁ〜、それよ、その笑顔ちゃ♡ その笑顔が見とうて料理したんやもん♡ もっとその笑顔……あたしにだけ向ける笑顔をもっと見せて♡

 

「いつも美味しいって言ってるのに、本当毎回テンションがうなぎのぼりになるのな」

「だってなんべん言われても嬉しいもんは嬉しいもん♡」

「料理上手な彼女を持てて幸せだよ」

 

 相変わらずクールな返答。でもあたしは知っちょん。プロデューサーが照れ隠ししちょんこと。だってプロデューサー鼻の下掻いちょんもん。

 プロデューサーって困った時やら恥ずかしい時やら、何か誤魔化す時には絶対鼻の下掻くんちゃ。それに口元ずっと笑いよんし♡

 普段はクールでカッコイイ感じなんに、こげなとこは可愛く思う♡

 

「あたしをお嫁さんにすりゃ、もっと幸せやと思うちゃ?♡ ちゅうか幸せにしちゃん自信あるちゃ?♡」

「幸せにする自信があるとか、普通なら男のセリフだろ、それ」

「そげなのどっちからだって一緒ちゃ。ほら、早うプロポーズして?♡ 両手広げて待っちょんちゃ?♡ あたしの旦那さん枠空席やし、只今絶賛プロデューサーにだけ募集中ちゃ?♡」

「13歳にプロポーズとか……逮捕待ったなしだわ」

「仁美ちゃんから聞いたけんど、豊臣秀吉の妻のおねは14で嫁入りしちょって、当時は数え年で実年齢は13歳やったみたいちゃ?」

「今は戦国時代じゃないんだよ」

「ん〜! こげえあたしがお嫁さんにしてって言いよんのに! プロデューサーはあたしの何が不満なん!? 身長!? おっぱい!? お尻!?」

 

 そりゃあ、あたしはまだまだ子どもだし、将来に留美さんやら椿さんやら瞳子さんやら礼子さんやら夏美さんやらみたいなセクシーな女の人になれるかは断言出来んちゃ?

 でも、それでも! プロデューサーに対する愛情は誰にも負けんし、プロデューサーがあたし以外の人と結婚するなんて絶対に嫌やけん!

 

「女の子が軽々しくおっぱいだのお尻だの言わない」

「だってぇ……」

「そこまで俺のことを思ってくれてありがとうな」

 

 まるで拗ぬる子どもをあやすんみたいにあたしの頭をなでてくるプロデューサー。なでてくるんは嬉しい。でもそうやねえん。あたしはプロデューサーのお嫁さんになりてえっちゃ。なし分かってくれんの。

 

 こげえこげえ大好きなんに……。

 

「プロデューサーのアホ。ヘタレ。いい男」

「貶すか褒めるかどっちかにしてくれよ」

「だって大好きやもん。どげな態度とられても大好きなんやけん!」

「俺だって同じ気持ちだよ」

「プロデューサー……」

「でもプロポーズなんてまだまだ先だ。それに俺はプロポーズが出来ないってだけで、断ってはいないだろ? 急かさないでさ、その時まで待たせてくれよ」

「プロデューサー……うんっ♡ 絶対ちゃ、絶対絶対ぜ〜ったい待っちょってな!?♡」

「あぁ、待つとも。俺だって生半可な気持ちで葵の告白を受け入れた訳じゃないんだからな」

「〜♡」

 

 プロデューサーは本当に恥ずかしがり屋さんなんやけん。早うそう言うてくれれば、あたしはいつまでも待っちょったんに、もう♡

 

 一安心したら余計にイチャイチャしとうなってきてしもうた。

 やけんあたしはプロデューサーの隣に移動して、今は恋人として振る舞うことにしたん。

 

「あーんして♡」

「嫌だ」

「即答せんでんいいやろ!?」

 

 知っちょった。知っちょったとも。プロデューサーはそげな人やないのはさ。

 でも少しくらい悩んでから拒否してよ。提案したあたしがスベってるみたいちゃ。

 

「い、今は葵が……将来の俺のお嫁さんが真心込めて作ってくれた手料理を存分に味わいたい。だから、その……イチャイチャはあとでな」

 

 キューーーンッ♡

 

 何よ何よ、そげえ顔真っ赤にして!

 可愛過ぎにも程があるやろ!? あたしの心臓壊れるちゃ! プロデューサーへの愛で壊れてしまうちゃ! 大好き! 愛しちょん!

 

「なら、尚更♡ 将来のお嫁さんに食べさせてもろうた方が堪能出来ると違う?♡」

「そ、それはそうだが……」

「素直になって♡ 今はあたしらだけの時間ちゃ?♡」

「あ、あ〜……」

「ほい……えへへ、どげえ?♡」

「悪くない……いや、とてもいい」

「良かったぁ♡」

 

 でも確かにちいと恥ずかしい。やっぱしあたしには早かったかな。

 

「もう一度してくれないか?」

「え」

「もう一度してくれ」

「い、いいけど? はい、あーん」

「あむ……とてもいい」

「よ、良かった……♡」

 

 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい……でも大好きっ♡

 

 こうしてあーんが思いん外気に入ったプロデューサーにあたしは最後まであーんをすることになった。

 ほいで「また頼んでんいいか?」なんて言うてくるけん、あたしは頷くしかのうて、ちいと後悔した……けどあたしもくせになりそうだった。

 

 あ、もちろん、お泊まりもさせてくれたけん晩御飯のあとはいっぱいイチャイチャしたちゃ!♡―――

 

 首藤葵⦿完




首藤葵編終わりです!

大分弁の料理上手アイドル葵ちゃんは押しかけ女房気味に書きました!

お粗末様でした☆

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