デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


仙崎恵磨編

 

 人生ってどうなるか

 

 本当にわかんねぇもんだ

 

 だってアタシがアイドルだぜ?

 

 ピアスで耳ジャラジャラで

 

 髪も短くて声デカくて

 

 アイドルの真逆じゃん

 

 なのにそんなアタシをさ

 

 カッコイイって言って

 

 マジでアイドルにした

 

 マジでバカなヤツがいたんだ

 

 ―――――――――

 

「んっ……ぁ……んむぅ……♡」

「好きだ……んっ……恵磨……」

 

 アタシは今、遊園地の物陰で大好きな人とキスしてる。その大好きな人ってのはアタシをアイドルにしたプロデューサー。

 前までは他のアイドルも担当してたけど、今はアタシだけのプロデューサー。そしてプライベートではカレシなんだ♡ あ、もちろん事務所にはナイショな。

 

 自惚れかもしれないけど、前からプロデューサーはアタシのこと好きなんだろうなって思ってた。ステージ衣装の確認の時とか目がギラギラしてたし、さり気なく手とか肩とか触れてきたから。

 そんでアタシ見た目とか性格が女らしくないから、プロデューサーから女の子扱いされるのが嬉しくて、絶対に落としてやろうって思ったんだ♡

 

 でもどうすればいいのか分かんなくて、仲のいいアイドル仲間のみんなに相談して、つい先週ライブ成功のご褒美に二人だけでカラオケ連れてってもらって、その時にアタシからプロデューサーを襲った。

 あ、襲ったって言っても店の中で変なことはしてねぇかんな! ただその……プロデューサーを押し倒して、ちゅっとしただけだ! それだけだ!

 

 でもいざキスすると止まんなくて、入ってた部屋の電話が鳴るまでキスしちまってた……♡

 

 んで、今回は付き合って初デートって訳なんだけど、ついいつものノリで遊園地にしちまったんだ。だってデートの鉄板じゃん? 分かってる。アタシらしくないチョイスだってのは自分でよ〜く分かってる。

 遊園地にしたのはホントアタシの間違いだったさ。だって遊園地って遊ぶとこじゃん? 少し値が張る入場料払ったらとことん遊ぶじゃん? だから来てからずっと遊んでたんだよ。

 んでアタシは思った―――

 

 これいつものアタシらと同じじゃん!

 

 ―――って。

 

 ぶっちゃけ全然初デートって雰囲気じゃなかったんだ。

 それにアタシってアイドルとしては異色だから遊園地内でも目立って何人かファンにサインとか写真とか頼まれちゃって……ホントに全く、これっぽっっっっっちも初デート感がなかったんだ。

 

 だからアタシはプロデューサーに謝ったんだ。こんな可愛げのないカノジョでごめんって……。

 そしたら物陰に連れてこられて、今に至るって訳だ。

 

「んはぁ……はぁはぁ……な、なんだよぅ、いきなりぃ♡」

「恵磨が急に謝ったりしてきたからだ」

 

 アタシはプロデューサーからキスされて息切れしてるってのに、プロデューサーは涼しい顔してやがる。なんかムカつくけど、惚れた弱みもあって嬉しくてたまんねぇ♡

 

「だ、だって……せっかくの初デートなのに、アタシずっと普段と変わってねぇじゃん? だから悪いなぁって……」

「何が"悪い"だ。それじゃまるで今までドキドキしながら楽しんでた俺がバカみたいじゃないか」

「え……」

 

 その言葉にドキッとした。だって言葉の通りなら、プロデューサーはデートが始まってからずっとアタシといてドキドキしてくれてたってことじゃん? こんな嬉しい言葉、思わず都合よく聞こえてるんじゃないかって思うだろ、フツー。

 

「俺は……俺は恵磨と初デートだって……。周りには恵磨のオフに俺が付き合ってる風に思われてても、初デートなんだって思って、ドキドキしてたんだ」

「プロデューサー……♡」

「だから謝ったりしないでくれ……俺は普段通りの恵磨が好きだし、付き合ったからって変に彼女らしくしてほしいなんて思ってない。そのままの恵磨が俺は大好きなんだ……」

「バ……バカ……マジでそんなハズいこと言うな……♡」

 

 顔が熱い……。アタシ今絶対に顔が赤い。見ないでほしい。アタシのこんな柄じゃない顔。

 

「何度だって言ってやる。俺はそのままの恵磨が大好きだ」

「わ、分かったって……♡」

「照れてる恵磨も最高に可愛い。ますます好きになる」

 

 いつもプロデューサーはそうだ。アタシを惑わしたり、喜ばせたり、アタシの見られたくない顔を……表情を可愛いって、好きだって言う。

 悔しい。絶対にプロデューサーが先にアタシに惚れてたはずなのに、どうしてこうもアタシが負けてばっかなんだよ。

 

 ぜってぇいつかプロデューサーをアタシ色に染めてやる。

 

「プロデューサー……」

「ん?」

「…………アタシも、プロデューサーのこと好き……だかんな?♡」

「あぁ、俺も好きだ」

「ふんっ♡」

「なんだよ、そっぽ向くなよ」

「うっせぇ♡ いきなり物陰に連れ込んで襲ってきたくせに♡」

「恵磨だって最初は――」

「――あ〜あ〜、聞〜こ〜え〜な〜い〜♡」

 

 プロデューサーに主導権取られっ放しで悔しいから、ぜってぇに負けねぇかんな!♡

 

 ―――――――――

 

「ほい、ありがたく食えよな!♡」

「これを恵磨が……?」

「おう!♡ 朝5時起きして、プロデューサーの喜ぶ顔を思い浮かべながら作ったんだ!♡」

「料理出来たんだな」

「あったり前だろ!? 料理くらい出来るぞ!」

 

 昼飯時になったからアタシはプロデューサーを連れて休憩スペースのベンチに座って昼飯にすることにした。

 プロデューサーをアタシ色に染める作戦の要、弁当作戦の決行だ! この日のために前日に下ごしらえして、彩りとかも考えて、アラーム10個もセットしてめっちゃ頑張って苦手な早起きしたんだ!

 これでプロデューサーももっとアタシに惚れるだろ!♡ やっぱ恋愛でもプロデューサーには負けられないからな!

 

「あの朝がめっぽう弱くて仕事の時は俺が毎回起こしに行ってる恵磨が……もうそれだけで感動する」

「う、うるせぇなぁ。アタシだってやる時はやるんだよ」

「今日だって本当は恵磨の家まで迎えに行こうと思ってたんだ。なのに恵磨が待ち合わせ時間の前より来てて、俺は感動の涙を禁じ得なかった」

「今朝はそれで泣いてやがったのか!?」

 

 アタシはてっきり初デートが嬉しくて泣いてたのかと思ってた……。プロデューサー、アタシと付き合うまで何年もカノジョ出来なかったっぽいから。

 てか、プロデューサーの中のアタシって初デートにまで寝坊するほどマヌケなのか? それは毎回起こしに来てもらってるアタシのせいでもあるけど、なんかムカつくなぁ。悔しいなぁ。

 

「今日は本当に感動の連続だよ。恵磨、本当に大好き」

「う、うっせぇ、アタシだって好きだよ♡」

「うん、うん……」

「あぁ、もう泣くなってぇ……アタシが悪いことしてる人みたいになるじゃんか!」

「ごめん……最近涙腺が緩くて……」

「アタシより7つ年上なだけで涙腺がそうも緩いんじゃ、この先どうなんだよ……」

「ダム決壊みたいに恵磨にキスされただけで泣けるかもしれない……愛ってすごいな」

「愛ってすごいとか言っててしれっとアタシのせいにすんなよ!」

 

 ったく、どんだけ愛が重いんだよ。昔のアタシならぶっちゃけ引くレベルの重さだけど、今のアタシは聞いてて気分がよかった。だってそれだけプロデューサーはアタシに惚れてるってことだし、つまりアタシが勝ってるってことだからな!♡

 

「それよりほら、早く食べて感想聞かせろよ!」

「あ、待って、記念に写真を……」

「やること女かよ!!?」

 

 フツー逆だろ!? ワーキャー言って写メ撮んのは!

 

「だって恵磨からの初弁当だぞい!? 某の脳内メモリーに保存するだけでは足りぬっ! 満足出来ぬっ!」

「ここぞとばかりにオタク全開になんなっ! 隠れオタクっ! 変態っ! 幼女好きっ! 押し入れん中に入ってるエロゲ、全部知ってんだかんなっ!」

「待て。恵磨は一つ大きな間違いをしている」

「んだよ?」

「某は幼女好きではない! たまたま気に入るキャラがみんな小さいだけだ! キリッ!」

「それを幼女好きって言うだよ!」

 

 てかこんな話してないでサッサと弁当食えっての!

 もういいや。面倒だから食わせてやろ。

 

「ほら、あーん!」

 

 もがっ

 

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!?」

訳)思ってたリア充激甘あーんイベと違う!

 

「ほら、どうだ? 美味いか?」

「もぐもぐ……ごくん……美味しい……」

「そうだろうそうだろう!♡ なんたってこのアタシが――」

 

 ダバーッ

 

「――って、涙のダムが決壊してるんだがっ!?」

「これは違う涙ではない。もし涙に見えるならそれは大きな間違いだ。これはついさっき編み出した必殺技で――」

「――長い! つか、なんで変に誤魔化そうとしてんだよ!」

「恥ずかしいのであります」

「かわいいかよ!」

 

 あ〜あ、さっきまでの甘酸っぱい雰囲気はどこか行っちまったじゃねぇか。でもま、これはこれでアタシららしいんだけどな♡

 

「というか、本当にすごいな、この弁当」

「そりゃあ、気合い入れたからな〜♡」

「オムライスのおにぎりとか肉巻きおにぎりなんて、コンビニでしか見たことないぞ」

「コンビニに売ってんだから人が作れない物じゃねぇじゃん。それによく買って食ってるの見てるから、好きなのかなって思って……」

「………………」

(そこまで俺のこと見てくれてるんだなぁ。俺は幸せ者だなぁ)

 

 ダバーッ

 

「うぉっ!? またかよ!? 今度はなんだよ!!?」

「なんでもない……なんでもないんだ……」

「俳優じゃあるまいし、なんでもないのに泣けるのかよーっ!!!?」

 

 ―――――――――

 

 昼飯も終わったアタシらはそれからも遊園地でめっちゃ遊んだ。昼飯は……まあプロデューサーもめっちゃ喜んでくれたと思うが、めっちゃ疲れた。うん。

 

 そんで今のアタシらは―――

 

「夕暮れ時に観覧車とか憧れてたんだ?」

「う、うっせぇな……いいだろ、別に」

 

 ―――最後に観覧車に乗ってる。

 

 ドラマとかマンガとかじゃ鉄板じゃん? だから柄じゃないのは分かってたけど、プロデューサーとならって思ったんだ。

 

「あぁ、もちろんさ。それにここなら二人きりで愛を囁やけるからね」

「な、何言ってんだよ、バーカ♡」

 

 すぐそうやってふざけてきやがって……♡

 

「またオフの時はデートしような」

「誘わなきゃキレる……んで罰としておでこにキスマーク残してやる♡」

「それは是非ともされてみたいなぁ」

「後悔してもしんねぇかんな♡」

「恵磨と過ごすことで後悔することない」

「っ……マジでバカだな♡」

「あぁ、どうしようもなくな」

「♡」

 

 デートは相変わらずアタシららしくドタバタだったけど、ホントにすっげぇ楽しかった。だから次もぜってぇ楽しくなるってそう思った。

 

「なぁ♡」

「ん?」

「観覧車降りたらさ、休憩しようぜ♡」

「あぁ、そうだな」

「二人きりで静かに過ごせる場所に連れてけよ♡」

「…………朝帰りになっても知らないぞ?」

「端からそのつもりだし〜♡」

「どうしよう、泣きそう」

「あとでしこたま泣けよ♡」

 

 そんでアタシはそう言って笑ったけど、朝までアタシが鳴くことになってた……♡

 

 後日のことだけど、遊園地のやり取りがSNSに上がってて『お忍びデートか!?』ってちょっと話題になったけど、アタシとプロデューサーにそんなことある訳ないってすぐに収まった。

 でも暫くは大人しくデートしようって二人で決めて、今度はプロデューサーのマンションの部屋にアタシが行く『お家デート』になったんだ♡―――。

 

 仙崎恵磨⦿完




仙崎恵磨編終わりです!

アイマスシリーズの中でも随一のキャラクターを持つ恵磨ちゃんはこんな感じにしました♪

お粗末様でした☆

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